ミンスク取材の大きな目的のひとつがついに公開

 Wargamingがサービス中のオンラインタンクバトル『World of Tanks』。2017年7月には、開発拠点であるベラルーシのミンスクに世界各国のメディアを招いたオフィスツアーを敢行した。その際に、ファミ通.comでは大きくふたつのテーマについてお伝えした。

 ひとつは、オーディオ・サウンドをHD化してグレードアップさせるプロジェクトについて、オーディオ・サウンドチームに伺った(彼らは本プロジェクトを“ミュージック2.0”と読んでいた)。

『World of Tanks』はここで作られている――ベラルーシ・ミンスクで本作の楽曲・サウンド制作について聞く

 もうひとつは、“スペシャルプロジェクト”について。こちらは、博物館と協力した歴史保存(戦車の修復や資料保存、企画展示など)をはじめ、映画や音楽とのコラボレーションなど、ゲーム以外の部分で、幅広い人を対象に興味を持ってもらえるよう、さまざまな活動を行っているものだ。

戦車の修復からVR展示、映画や音楽とのコラボまで――Wargamingが進める“スペシャルプロジェクト”の活動とは?

 じつは、このミンスクオフィスツアーでは、隠し玉というべきもうひとつの目的があった。それが、既報(→こちら)でお伝えしている、音楽プロデューサーの山岡晃氏とのコラボレーションだ。ミンスク取材時には、山岡氏に今回のコラボレーションについて、直接お話を伺う機会を得た。ここでは、コラボ実現のいきさつや活動予定についてお伝えしよう。

『World of Tanks』と音楽プロデューサー・山岡晃氏のコラボが始動――「新しいものを提案したい」という今回のコラボ実現の経緯は意外なところから_01
▲音楽プロデューサーの山岡晃氏

 山岡氏は『サイレントヒル』などで知られる音楽プロデューサーで、作曲以外にゲームデザイナーとしても活動する。映画やテレビなど多彩な分野で活躍する一方で、自らプレイヤーとして世界各国でコンサートも開催し、海外での人気も非常に高い。山岡氏は現在、グラスホッパー・マニファクチュアに所属しており、『LET IT DIE』の運営や『ディバインゲート零』の楽曲も手掛けている。

 今回のコラボレーションのきっかけとなったのは、意外にもSNSを通じてだという。2016年に山岡氏がコンサートのためにベラルーシを訪れた際に、WargamingスタッフがSNSに「コンサートを見に行こう」と投稿した。それが社内で話題になったと同時に、山岡氏が以前から交流を持つWargamingスタッフのオザン・コチョール氏に、山岡氏が「いまベラルーシにいます。『World of Tanks』のラッピングを施した飛行機を見ました」と、メッセージを送ったそうだ(このときは、山岡氏はベラルーシに『World of Tanks』の開発拠点があったとは知らなかったらしい)。山岡氏はかねてより『World of Tanks』のプレイヤーだったこともあり、これをきっかけとしてオザン氏が声をかけ、「何か一緒にできたらおもしろいですね」と、今回のコラボに至ったのだという。

 山岡氏は、過去に何度かベラルーシを訪れた経験があったこともあり、今回の件で「ベラルーシと『World of Tanks』がつながったときに、親近感のようなものを感じた」と語った。コラボが決定したときには、「音楽以外にも何かやってみたい」とチャレンジの意味も込めて、引き受けたそうだ。

『World of Tanks』と音楽プロデューサー・山岡晃氏のコラボが始動――「新しいものを提案したい」という今回のコラボ実現の経緯は意外なところから_02

 取材時には、まだ具体的なコラボ内容は決まっていなかったものの、コラボ用の楽曲制作を行い、すでに曲は完成しつつあること、ミンスクのオーディオ・サウンドチームと打ち合わせを行っていることを明かした。もともと、山岡氏はベラルーシの音楽には、旋律や感覚が日本の音楽と通じるところがあるという印象を持っていたが、今回のコラボ実現にあたって打ち合わせやセッションを行っている際にも、山岡氏の楽曲についてオーディオチームから「今の部分、ロシアの民謡みたいな感じだ」と、言われることもあり、非常に興味深く感じたと語った。実際に、ベラルーシでは日本のザ・ピーナッツ(あの往年の!)の歌が人気だということで、記者も驚かされた。

 山岡氏の好きなゲームにも話題は及び、山岡氏はシューティングゲームが好きで『Marathon』をMacでプレイしていたという。それ以外にもリアルタイムストラテジーが好きで、『Age of Empaires』をはじめとする数々のRTSをプレイしていた。そして『World of Tanks』については、シューティングのおもしろさに加えて、RTSのような戦略性も必要になる部分に興味を感じており、まさにいいとこ取りだと語る。

 また、最近興味を持ったゲームは『INSIDE』で、同作の音響やサウンドに驚愕したという。山岡氏は、つねづねゲームサウンドについて“音楽的にいい物にする”とは考えておらず、“ゲームがよりよくなる物にする”という姿勢や想いを持っているとのこと。ゲームはあくまでも補助的な役割だと考えていて、『INSIDE』ではそれが実現されている。ゲームの“遊び”の部分にサウンドが活かされていると絶賛していた。

 そして山岡氏は、今回の『World of Tanks』とのコラボをするにあたり、そういった“ゲームがよりおもしろくなる演出”を、Wargamingのチームと作っていきたいと述べる。作曲やサウンド面でのアプローチだけでなく、コラボ全体を通じて「新しいものを提案したい」という意気込みを強く語った。

 いよいよスタートした、山岡氏と『World of Tanks』とのコラボ。まずは、山岡氏とスウェーデン生まれのウォー・メタル・バンド“サバトン”がタッグを組んで制作した楽曲が、ミュージックビデオとして『World of Tanks』公式Youtubeチャンネルにて公開された。そして、Gamescom 2017では、両者のライブセッションも予定されている。今後、どのような形でコラボが展開していくのか、楽しみに待ちたい。

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▲オフィスツアー取材時、山岡氏もミンスクにある軍事博物館“スターリンライン”に訪れていた。
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▲射撃体験をする山岡氏。じつはこれ、空砲なのだがものすごい発砲音がする。耳当てなしで聞いた記者は、しばらく耳鳴りが収まらないほどだった。
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▲戦車のデザント体験も。記者も体験したが、甘く見ていると簡単に振り落とされるくらいの衝撃がガンガン来る。日本の安全基準ではとてもできないであろう体験。
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▲Wargamingがレストアに協力している戦車“KV-1”の前にて。