新たに就任した日本運営プロデューサーにインタビュー

 ゲームオンが運営するPC用MMORPG『ロードス島戦記オンライン』。2017年6月より新たな日本運営プロデューとして岡崎賢治氏が就任し、公式サイト上に5つの公約を打ち出している。

 これまでが未熟だったことを認め、問題点を明らかにした意図はどこにあるのか。岡崎Pに話を伺いつつ、2017年秋以降の展開や今後の運営の方向性についても語ってもらった。

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▲右写真は『ロードス島戦記オンライン』日本運営プロデューサー・岡崎賢治氏(文中では岡崎)。

――岡崎さんはこれまでにどのような仕事に携わってこられたのでしょうか?

岡崎 2010年10月にゲームオンに入社して、6タイトルほどに関わってきました。入社当時は『新・天上碑』、直近ですと『TERA』ですね。
 担当してきた業務はいろいろです。デバッグ、サポート、Webのディレクション、企画。現場の仕事はひと通り経験してきましたが、プロデューサーとして全体のスケジュールをまとめるのは、今回の『ロードス島戦記オンライン』が初めてです。プロデューサーの補助的なことはやってきましたが。

――「問題点を改善していく」というテーマで5つの公約を掲げているわけですよね。

岡崎 公約は公式サイトにも掲載していますけど、思うところがありまして。私は今年の3月から『ロードス島戦記オンライン』に配属されて、6月から日本運営プロデューサーに就任しました。内外から状況を見て、まずは不具合を解消したり、日本語のテキストを直したり、安心して遊べる環境を整えるべきだな、と。

――派手なアップデートも大事だけど、まずは環境作りを丁寧にやっていきたいということですか。

岡崎 そうですね。それが5つの公約となります。

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――「プレイヤーにとっての環境改善が大切だ」という話はほかのタイトルでも聞く話です。結局、何が悪かったんですか? 開発とのコミュニケーション不足なのか、寄せられた意見を実現するのが遅かったのか。

岡崎 実感として大きいのは“意見を反映させるスピード”ですね。リリース当初からあった問題が、対応できるかどうかもプレイヤーに報告できないままだったりしました。テキストのミスも指摘が多くて。こういった部分は改善の余地があるんじゃないかなと。
 7月12日に小説第2巻ぶんのストーリーが実装されました。お話が大切なゲームですから、テキストの問題は同じことをくり返すわけにはいきません。ということで、公約のトップに掲げました。

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――原作はテーブルトークRPGや小説ですから、文章のクオリティーを気にするプレイヤーは多いでしょうしね。

岡崎 テキストの不完全部分の改修は、絶対というか、当たり前の部分でもあります。自分でプレイしていても、ビックリするくらいおかしい部分もありました。

――テキスト類に続いて、プレイヤーの声を受けてからの修正、調整、報告のスピードアップというわけですね。

岡崎 連絡帳で不具合の報告を受けたら早めに返信する、修正に時間がかかるようならその旨を報告する。こういう部分は疎かにしてはいけないと強く感じています

――少し話は戻りますが、翻訳状態のチェックはどういう流れで進んでいくものなんですか? テキストのミスはなぜ起こりうるのか知りたくて。

岡崎 韓国の開発元からテキストをもらって、ざっと日本語に翻訳してチェック。おかしいところを直してゲームに適用して、おかしいところがあったら直して……という作業をくり返すのが基本です。テキストデータがストーリーの流れに沿って並んでいるとは限らないので、文章を読むだけだと気づかない部分も多いんです。なぜミスが起こるのかと言われると、力不足としか言いようがないですね。

――たとえば、“チェック時点でスルーしてしまったのか”とか、“スケジュールの都合で本当は3回チェックするべき部分が2回しかできなかった”とか、原因はどういう部分なのかなぁと。

岡崎 うーん、どちらも関係していたと思います。チェックが未熟、時間も足りない。

――それを解決できると、(修正や報告の)スピードアップにもつながりますよね。早めにパッチの準備をして翻訳作業に取り掛かれば、それだけミスを減らせる。

岡崎 そうですね。ですので、2巻分の作業をするときは、こちらから早めにテキストを要請しました。どんどんくれと。開発側としてはギリギリまで自分たちで作業をしてから渡したいでしょうから、向こうのペースに合わせるとなかなか翻訳作業の時間が取れないんです。

――早めに要請して、ちゃんと来るものなんですか?

岡崎 強引に取り寄せました。開発側ではそんなに手を入れなくていいからって。韓国語のまま取り寄せて、まずは機械的に翻訳。そこから小説と見比べて進めていきました。いい感じにできた感触はあったんですけど、一部のミスが残ってしまって。パッチの送受信をしている中で抜け落ちたか何かで。

――ありえそうな話ですね。

岡崎 そういう後悔もあるんですけど、1巻のときのようなひどいことにはなっていないと思います。
 あとは、コミュニケーション不足も少し感じていますね。頻繁にお互いの状況を確認し合っていれば、もっと精度は上げられるでしょうし。

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――大勢で作業をしている以上、コミュニケーション不足はどこかで出てきてしまいますよね。続いて、ふたつ目の公約“不具合の改善速度向上”。これもプレイヤーからすると「それは何とかしてくれよ」としか言えないと思うのですが。

岡崎 7月12日のアップデート後、韓国の仕様が実装されたり、サーバーダウンが起きて遊べない状況が続いたりしました(※)。気持ちよくアップデートを提供したかったんですけど、完全に守ることができず、反省しています。

(※インタビューを実施した2017年7月時点では不安定だったが、現在は収束している)

――どういう風に直していこうと考えていますか?

岡崎 運営のスタイル自体を変えようと思っています。少し前にチームの体制を半分くらい刷新したんですよ。物事を後回しにしがちな空気がチーム内に蔓延していたような気がして。
 そういうところで膿が溜まると、意思決定のスピードダウンにつながります。不具合の対応速度もそうですし、お客様へのレスポンスも3日、1週間とかかり、不満が溜まる。仮に不具合の数がそれほど変わらないにしても、不満度が大きい時期だったんです。そこで、オンラインゲームの運営経験が長いスタッフを入れたりして、チーム全体の引き締めを図りました。

――チーム内の空気の入れ替えみたいなものですかね。

岡崎 以前はスタッフがバラバラの方向を見ていたんだと思います。自分はテキストを見ればいい、自分は不具合の確認をすればいい。担当分けを細かくしすぎていたんですね。いまは各人がメインの作業をこなしながら、もっと横も見るように心がけています。

――どんな世界でも聞く話ですよね。チーム内の空気がよどんで仕事にも影響を及ぼすって。

岡崎 完璧なチームにするのは難しいですけど、それがゲームの中身に影響したというのは初期の反省点だったと思います。

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――3つ目の公約は“情報伝達量と品質、情報速度の適正化”。プレイヤーとのコミュニケーションについてでしょうか。

岡崎 必要最低限の情報しか公式サイトに載せていなかったりだとか、お客様とのコミュニケーションが不足していました。これはぜひとも改善したい。
 ニコニコ生放送やTwitterで情報を提供したり。情報の提供もそうですけど、お客様に周知してもらうことを徹底したいんです。

――ファンとの付き合いかたがうまい企業ってありますよね。Twitter界隈だと、シャープさん、タニタさん、キングジムさんとか。情報出し+親しみやすさ。

岡崎 そういう方たちは目標としたいですね。うちもGMがTwitterをやったりしていますけど、不具合のことを謝罪するようなつぶやきが多くて。状況が落ち着いたら、もっとお客様と仲よくできれば。

――ニコニコ生放送はどれくらいの頻度を考えていますか?

岡崎 月に2回を目標にしています。2016年12月までは月1回あったんですけど、そこから途絶えていたんですよね。

――なくなると不安になりますよね。続けることが大事。月に2回というと、ほかのタイトルと比べても多いほうじゃないですか?

岡崎 そう思います。アップデートやプロモーションに合わせて行うタイトルは多いですけど、とくに何の話題もないときでもやりたいので。

――ゲームオンさんは『Alliance of Valiant Arms』が週1ペースで配信してましたっけ。

岡崎 『Alliance of Valiant Arms』、『ArcheAge』、『RED STONE』あたりは頻繁にやってますね。ファンとのコミュニケーションを大切にしようというのが会社全体の方針でして。

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――そういうのを大切にしてもらえると、ゲーム好きとしてはありがたいです。4つ目は“ガイド機能の改修”。これは初めたばかりの人に向けてですか。

岡崎 自分もいちから始めて感じたんですが、わからないことが多いような気がして。『ロードス島戦記オンライン』は複雑なシステムが多くて、レベルを上げるだけじゃ済まないんですよね。強くなるための要素がいろいろあるんです。

――経験値も複数ありましたよね。

岡崎 経験値が3種類もあるんですよ。最初はピンと来ませんよね。新規の方が理解しにくいところもあったので、ガイド機能も強化したい。
 7月12日のアップデートで、一定のレベルに達するとつぎにやることが表示されたり、遊びやすくなりました。あとは公式サイトでゲームガイドのページを新たに設けて、クラスの紹介や適性レベル帯のマップ、ドロップアイテムを調べられるようにしたり。

――僕はたいていのオンラインゲームのガイド機能はわかりにくいと思っているんですよ。説明文を読ませるだけのガイドが多くて、それはプレイヤーの頭に残らない。何をして親切なガイドなのか、各メーカーがどう考えているかはすごく気になりますね。

岡崎 それは私も感じます。興味を持ってくれたら、プレイヤーは自分で調べるじゃないですか。そこに至る前に辞めてしまう人もいると思うので。

――何をググったらいいかわからないというか。

岡崎 そこも課題ではありますね。もっとしっくりしたものを用意したいと思ってはいるんですが、どうしても時間が足りなかったので、いまの形のガイドを実装しました。もっとわかりやすいガイドは今後の課題としています。

――現状では満足しているわけではなく、可能なら今後もっといいものを作りたいというわけですね。プレイヤーからの反応はどうですか? 満足しているときは意見を出してくれないから見えにくいとは思いますが。

岡崎 そうなんですよ。仮に「○○がよかった」と思ってもらえても、その意見は回収しにくくて。座談会をやったりして、会話をする形で回収したいですね。

――プレイヤーとの座談会ですか?

岡崎 チャットでコミュニケーションを図りたいんですよ。落ち着いたらゲーム内座談会を開きたくて。

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――では、5つ目。“初期レベル帯の快適なプレイ環境のご提供”について。

岡崎 ガイドの話と近いところもあるんですけど、低レベル帯で辞めてしまうお客様もけっこういるというのがデータ上ではわかっています。能力値が低かったり成長が遅いのがストレスになっているのが原因のひとつだと思います。
 そこで、8月30日までレベルが少し上がるだけで星5のレア武器や経験値が通常のチャンネルよりも多くて育成しやすいプレミアムチャンネルに入れるアイテムがもらえるキャンペーンを実施しています。脱落しがちなレベル帯をどんと突き抜けていってほしいんです。

――強い武器をすぐにプレゼントしたり、レベルを上げやすくしたり。こういう施策を実施するにあたって、葛藤はありませんでしたか? 僕のような古いMMORPGファンからすると、プレイヤーを甘やかしているように感じてしまって。

岡崎 『ロードス島戦記オンライン』を本当に楽しめるレベル帯や立ち位置、高みに到達してほしいという気持ちはあります。本当のおもしろさに気付く前に辞められるのは悲しいですから。レベルが上がればやれることが増える。そこを楽しんでもらいたい意識のほうが強いですね。このキャンペーンを考えたときのチーム内ミーティングでも、「これはあげすぎ」、「しばらく装備を更新しなくなるよ」みたいな意見は出ました。古参のMMOプレイヤーも多いもので。
 でも、さすがに最初のキャラクターのパーンすら見ずに辞めてしまうのは、あまりにももったいない。『ロードス島戦記』感のないところで終わってほしくないんです。せめて、パーンやディードリットあたりが出るところまではやってほしい。

――そのふたりは大事ですよね。『ロードス島戦記』の中にいる気持ちを味わってもらうためにも。

岡崎 見てもらいたいんですけど、レベル13くらいまでいかないとヒロインが出てこない。『ロードス島戦記』が懐かしくて始めたのに、自分の知らないオリジナルキャラクターしか出てこないじゃんってなってしまうので。最初の少しずつMMORPGをプレイする感じも楽しいんですけどね。せめて入りやすいキャンペーン中の期間だけは、こういう風にしようとしたわけです。

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――開発と運営が分かれているからこその葛藤なんですかね。「ある一定のラインまでやったらおもしろい」っていうゲームはけっこうあると思います。プレイヤーがそこに到達せずに辞めていくのであれば、それはゲームの作りが悪いということ。開発だったらゲームの中身に手を入れられるんですよね。運営はそれができないから、キャンペーンを使って何とか問題点をクリアする必要がある。
 ところで、5つの公約の達成度は現時点で何%くらいですか?

岡崎 不具合が起きてしまう点については0点に等しいレベルです。まだ安定していないので。そのほかは……難しいですね。

――自分としての満足度と言い換えたらどうですか?

岡崎 50%ということにしておきましょうか。不具合の対応はこれからも丁寧に進めていきます。お客様の声を注視しつつ、私たちプレイしている中で見つけた問題はすぐに対応。簡単なものであれば、つぎのメンテナンスですぐに修正できる体制を整えています。スピードは格段に上がっています。以前に比べて進んでいる実感はありますから、甘く採点したとして50%。

――バグや意見を開発に伝えるとき、緊急性の判断は運営側でするわけですよね。そのスピード感が上がっているのでしょうか?

岡崎 はい。だいぶ上がっています。私も運営プロデューサーに就任したばかりですけど、実感はあります。

大型レイドを準備中! 今後のロードマップについて

――公約については今後も満足することなく追求していくということで。つぎは今後の展開を教えてください。

岡崎 2017年の秋にギルドに関するアップデートが行われます。もともとは夏予定だったんですけど、少し押してしまいまして。ここでギルドのメンバーだけが入れるダンジョンやギルドホールを実装します。

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――ギルドホールはメンバーの溜まり場みたいなものですか?

岡崎 そうです。ギルドメンバーだけが入れる憩いの場所みたいなイメージですね。

――ギルドダンジョンでは特殊な報酬が得られるのでしょうか?

岡崎 ギルドに恩恵があるダンジョンです。個人の成長というより、ギルドの成長に結びつく予定です。ギルドアップデートのつぎは“傭兵コンテンツ”を膨らませます。7月12日のアップデートで傭兵をふたりまで雇用できるようになりました。パーンのような主要キャラやモンスターみたいな傭兵を連れて狩りができるんですけど、いまは通常マップでしか使えないんです。秋のうちに傭兵といっしょに入れるダンジョンを実装予定です。

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――具体的にはいつ頃ですか? 人によって季節の考えかたは違うじゃないですか。

岡崎 寒くなる手前ですかね……。

――僕のなかでは9、10、11月が秋なんですよ。

岡崎 私もその認識です。

――秋の後ろのほうということは、11月ですか?

岡崎 紅葉が美しくなる頃に出せれば(笑)。

――それが目標と。傭兵ダンジョンにも特殊な報酬があるんですか?

岡崎 報酬はこれから詰めるところです。傭兵で何ができるか、何が楽しいかを見極めてから、報酬の話になるかと。
 そのつぎがLv上限の開放。これが冬に入るか入らないか、といったところです。現時点の上限が100で、このタイミングで150まで上がる予定です。いまの最高レベルの人で80台くらいですので、経験値を増やしてレベルが上がりやすくするキャンペーンを実施すると思います。マップやスキルの調整も行ったりして。

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――どういったレベルの調整なんですか?

岡崎 純粋にマップを増やします。プレイヤーのレベル帯が増えれば、当然その狩場が必要になりますから。あとは既存スキルの性能を調整して戦いやすくします。新スキルは今後も開発側と協議していきます。

――新しい装備は増えますか?

岡崎 増えます。実際のところ、データ上は存在していてもまだ入手できない装備はあるので、逐次投入している感じです。

――キャラクターが強くなったら、つぎはその強さを試したいですよね。

岡崎 まさにそのとおりで、精霊王レイドが2017年度の冬に実装予定です。『ロードス島戦記』にも出てくるジンとエフリートを倒すコンテンツです。

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――ジンとエフリートは同時に入るんですか?

岡崎 まだ協議を進めている段階です。もともと『ロードス島戦記オンライン』には大きいボスがいなかったんです。1巻のときもカーラと実際に戦いたいという要望をいただいていたんですけど、なかなか叶わない。そこで、もともとリソースとして存在していた精霊王が出てきます。これは前から話をしていて、ようやくある程度まで進んだ段階です。早く具体的なビジョンをお見せしたい気持ちはあるんですけど。レイドの人数も調整中です。

――通常のパーティーが8人ですよね。

岡崎 そうですね。現時点で40人のレイドはあります。

――人数が多いほうが盛り上がるけど、メンバーを集めにくくなってしまうんですよね。報酬とのバランスもありますし。いまお聞きしたコンテンツの中で、岡崎さんが個人的に楽しみにしているのはなんですか?

岡崎 やっぱりレイドですね。

――どう調整するか、運営プロデューサーとして腕の見せどころだと思いますが。

岡崎 もともとはLv上限の開放に合わせて入れる予定だったんです。ですから、高レベルプレイヤー向けになると思います。そこを満足させるためには、それなりの手ごたえも必要。討伐に苦労したり、倒しかたを考えたり。最上級のものを提供して、苦労している様子を見て、しめしめと思いたい気持ちは少しあります(笑)。

――倒せないくらい強くしておいて、時間が経ったら弱体化というパターンはほかのゲームでもありますね。すぐ倒せてしまうよりいはいいんでしょうけど。

岡崎 戦闘が作業になってしまうのも嫌なんですよ。強いボスはそうなりがちですけど。作業にはしたくないけど、手間をかけさせすぎるのもよくない。難しい手順を踏まないと倒せないのはたいへんです。この辺のバランスは微調整を続けるしかないと思います。

――倒せないくらいにして、“プレイヤーへの挑戦状”みたいな企画にしましょうよ。

岡崎 未調整のボスをいきなり実装して、期間内にクリアーしたら何かをプレゼントするみたいな企画もアリですよね。『TERA』なんかではお客様も沸いていました。

――プレイヤー同士で倒しかたを話し合ったりとか、コミュニケーションの手段としてボスが存在するのはいいですよね。

ふたつのキャンペーンでゲームを盛り上げる

――いまはカムバックキャンペーンを実施中です。そういった施策についても聞かせてください。

岡崎 みなさんにアピールしたいのは、公約の中にもあった新規プレイヤー向けのものですね。レベル4で強い武器、レベル5で経験値がお得なチャンネルに入れるアイテム、レベル6で防具がもらえる。レベル40になるまでいろいろなアイテムがもらえるキャンペーンです。それが8月30日まで。9月13日までシナリオコンテストを実施中です。

※クエストシナリオコンテスト特設ページ

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――それはどういったものですか?

岡崎 せっかく『ロードス島戦記』という素晴らしい物語を母体にしているわけですから、うまく活かしたいと思いまして。1巻の“灰色の魔女”から2巻の“炎の魔人”の範囲でオリジナルシナリオを募集しています。最優秀賞に選ばれると、賞金がもらえて、なおかつその内容がゲーム内に実装されます。ストーリーが好きな方には興味を持ってもらえるのではないかと。

――名誉ですよね。実装日は検討中ですか?

岡崎 シナリオの途中で死んでしまうキャラクターがいたりするので、内容は細かく精査しないといけません。お時間はそこそこいただくと思います。作品の内容にもよりますけど。

――作品の選考って緊張しますよね。盗作の可能性もあるわけですから。

岡崎 ですよね。相応の時間をかけてじっくり選考する予定です。

――大きな文学賞でもそうですもんね。シナリオのボリュームは1万字まで。400字詰め原稿用紙25枚と考えると、ショートストーリー1本ぶんくらいですかね。

岡崎 少しハードルは高いとは思いますが、『ロードス島戦記』のファンは人生の経験値が高い大人が多いですし、そもそも小説が好きな方も多いですから。期待しています。

原作があるゲームを運営する難しさ

――そろそろインタビューも終盤と言うことで、運営プロデューサーとして何をしたいですか? いろいろとあると思うんですけど。

岡崎 ひと言で表すと、“みんなをワクワクさせたい”です。私はMMORPGもソーシャルゲームもいろいろ遊ぶタイプですけど、どこかしらで辞めてしまうんです。楽しいとかつまらないではなく、フッと辞めてしまう。自分がそういう気持ちを味わっているので、ワクワクをずっと提供できるゲームでありたいと考えています。なかなか明確には言いにくいんですけど。

――ワクワクは“冒険”に置き換えてもいいかもしれませんね。MMORPGは生活をするタイプと冒険をするタイプがあると思います。御社の『ArcheAge』なんかは生活をするゲーム。『ロードス島戦記オンライン』はお話を読んでもらって、冒険を提供するゲームなんだと思います。

岡崎 『ロードス島戦記』という小説が原作ではありますけど、中身はゲームなんですよね。お話を読ませるだけではいけなくて、その世界に没入してほしい。
 そのためにやりたいことを整理して順番に言うと……。まずは快適で安定したゲーム環境をご提供する。いままで携わってきたタイトルで学んだ成功や失敗の経験を活かし、いままで変わらなかった、変えられなかったものを変えることにもチャレンジしたい。プレイヤーの皆さんに、ロードス島に行けば息抜きになる、気晴らしになる、楽しい、いつまでも島人でいたいと思ってもらえるゲームを目指す。こんなところでしょうか。

――オンラインゲームの運営は、ゲームを作るクリエイターとは見るべきビジョンや比重が違うんでしょうね。クリエイターは自分が思う最高のゲームを作ることを重視しますが、オンラインゲーム運営はいかに居心地のいい場所を作るかが大切。プレイヤーの声を取り入れるのがうまい運営プロデューサーほど優秀なんだろうな、と。『ロードス島戦記オンライン』の場合、原作ファンとMMORPGファン、両方の声を聴く必要がありますよね。

岡崎 その辺のバランスは悩みどころです。一般的なMMORPGの場合、昔はストーリーを楽しみにする方も多かったと思いますが、いまは比率としては減っているのかなと。長期に渡って遊ぶゲームなので、ストーリー自体が終わったり途切れたりするじゃないですか。そこから長い年月をかけてキャラクター強化に時間をかけていくので。運営側ではなく、いちプレイヤーの感覚としては、ストーリーを重視している人は少ないと思うんです。でもきっと、『ロードス島戦記オンライン』はそうじゃない。

――ほかのゲームの運営やプレイで磨いた感覚が使えないこともあるわけですか。

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岡崎 IPゲーム(ほかの知的財産を使って作られたゲーム)なので、普通のMMORPGの考えかたは合わないのかなと思うこともあります。「ファンはこれを本当に求めているのか」という葛藤が初期の頃からあって。7月に2巻の内容を実装しましたけど、本当に喜んでもらえているのかなと。
 相応の評価をいただけているようなので安心はしましたが、それでもゲーム的な別のコンテンツや企画を準備したりして。いまだにストーリーメインにするべきか、そうじゃない方向に振るか、答えは出ていません。

――IPゲームはその判断が難しそうですね。もともとの原作ファンは声を上げてくれないんじゃないかと思います。ゲームに慣れた方ほどたくさん意見をくれるけど、そういう人に合わせるとIPゲームのよさがなくなる可能性もある。原作が好きな方はおとなしいかたも多いでしょうし、自分に合わないと思ったら静かに去っていくイメージが。

岡崎 まさにその通りで、私に限らず、IP系の担当者は誰もが悩んでることだと思います。年配のファンが多くて、その人たちは声を出すことを恥ずかしがる傾向にあるんですよ。

――と、なると、ファンの心情を察する能力がすごく大事ですよね。人が何を考えているか、何となく理解できないといけない。

岡崎 そもそも原作もののMMORPGは少ないですよね。ソーシャルゲームではよく見ますけど。

――だから、原作ファンの声をMMORPGに取り入れるノウハウを誰も持っていない。

岡崎 そうなんですよね。幸運なことに、ゲームオンの内部にはもともと『ロードス島戦記』のディープなファンだった人もいます。彼らの意見を取り入れつつも、ゲームとしておもしろい方向に舵を切って、両立を目指すことが今後の大きな課題。そこは期待してほしいですね。