現在『ファイナルファンタジーXIV』のコラボイベントのモチーフとなっているイヴァリース。その元ネタのひとつでもある“王都ラバナスタ”が登場する『ファイナルファンタジーXII ザ ゾディアック エイジ』(以下、『FFXII TZA』)も発売中だ。その『FFXII TZA』の全BGMが生演奏で再収録された本作のオリジナル・サウンドトラックもリリースされており、好評を博している。何かと話題のイヴァリースを舞台とした、『FFXII TZA』の開発当時の苦労話や新録された楽曲について、崎元氏と10年ぶりに集結した『FFXII TZA』サウンドチームへのインタビューをお届けする。音でも個性を放つ奥深い世界観が展開しているイヴァリース。本インタビューで展開している開発陣のこだわりに溢れたやりとりからイヴァリースにさらに興味を持ったなら、『FFXII TZA』もプレイしてみては?
全曲を、生演奏で新録するという決断
――サウンドチームは、今回のオーケストラ収録のために、10年ぶりに集まったことになりますね。
加藤 そうですね。新録を決めたときは曲数が多くて大変かなと思ったのですが、いまは発売に向けて、最終段階に入ったので安心しました。
――今回のリマスター化にあたっては、新たに全BGMがオーケストラで再収録するなんて豪華ですよね。どのような経緯で再録をすることになったのですか?
崎元 僕から、せっかくHDリマスター化するなら、「音のほうもなにかをしよう」という話をしたのがきっかけですね。オリジナル版『FFXII』の音楽は、プレイステーション2の内臓音源で鳴らしていたのですが、後に発売したサウンドトラック版は、シンセサイザーで鳴らしているんですよ。その音源を使ってもよかったのですが、「せっかくなんだから、オーケストラで録音をし直そう」と。当時から、シンセサイザーでは、微細な弦の段階音などに、どうしても越えられない壁を感じていたので。そういった当時できなかったことをやるために、今回の収録が始まったという感じですね。
――それは加藤さんが提案されたのでしょうか?
加藤 本作の開発が始まるときに、僕の中ではプレイステーション2音源と、サウンドトラック音源の両方を用意して、コンフィグで選べるようにできたらいいな、と思っていたんです。どちらのサウンドも、非常に良いものでしたからね。……ですが、崎元さんとお話をしていく中で、さらに音楽をグレードアップさせるチャンスなのではなか、と思い至り、崎元さんにお願いしました。
崎元 僕はどんなゲームでも、いつも「生で収録したいよね」みたいなこと、冗談で言うのですけどね……まさか、本当にやらせて頂けるとは!
一同(笑)
崎元 ただ、よく考えると『FFXII』の音楽は100曲以上あるんですよね。「やったー!」と思ったあとに、「あれ、この仕事、たいへんなのではないか……?」と、気づいて。
――たしか、サウンドトラックは全100曲でしたよね。100曲以上というのは……?
崎元 サウンドトラックはちょうどいいので、100曲に収めるようにしていたんです。たとえば2曲あるものを1曲に繋げて、100にしていたんですね。ですが今回は新曲も作りましたから、少なくとも100曲以上は新録です。
――しかも、新曲も入っていますよね。
加藤 ええ。新曲は全8曲収録しています。フィールド曲が5曲、ボスバトル曲が2曲入っていて。あとは、今回のスタッフクレジット用に、長い曲が1曲ありますね。さらには、イベント曲も新たに作り直しています。カットシーンに合わせて、見直してみて、別の表現のほうがいいだろうと感じたところは、崎元さんが新曲を合わせてくださいました。
――新曲はどのような基準で増やしたのですか。
崎元 オリジナル版の『FFXII』では、フィールド曲やバトル曲の一部は、ほかの場面の曲を使いまわしていたので、そこは今回、しっかり専用曲にしてあげたいと考え、新曲を描き下ろしたんです。そして、イベント曲なのですが……いまだから話すと、オリジナル版の開発当時は、開発の終盤にドタバタと制作したような曲もあって。あらためて余裕のあるときに聴き返すと、「俺はもう少しできたんじゃないか」と思ったような曲については、今回、思い切って作り直しています。