『ストリートファイターV』プロゲーマー・ボンちゃんインタビュー!――格闘ゲーム世界大会“EVO2017”を終えて

2017年7月に開催された格闘ゲーム世界大会“EVO2017”を終えたボンちゃん選手にインタビュー。

●EVO2017を終えて――

 2017年7月に開催された格闘ゲーム世界大会“EVO2017”。既報の通り、ファミ通.comでは、レッドブルアスリートとして活躍するプロゲーマー・ボンちゃん選手(以下、ボンちゃん)の動向を取材した。ボンちゃんは、約2600人が参加した『ストリートファイターV』部門に出場し、まさかの初戦黒星スタートとなったが、なんとそこから15連勝を達成して最終日に残れるTOP8決定戦まで駒を進める。しかし、最後は同じ日本のプロゲーマー・MOV選手(春麗)の前に敗れ去ってしまった。

 そんなボンちゃんに、後日インタビューする機会を得られたので、EVO2017の話題を中心に、使用キャラクターや今後についてを伺ってみたぞ。

※『ストリートファイターV』レッドブルアスリートのボンちゃんは伝説を築けるか? EVO2017大会2日目リポート【EVO2017

ボンちゃん選手(写真手前)
レッドブルアスリートとして活躍するプロゲーマー。『ストリートファイターV』ではナッシュを使用。海外大会に積極的に参戦するだけではなく、オフイベントを主催するなど、国内の対戦シーンの盛り上げも行っている。

――まずはEVO2017出場、お疲れ様でした。トーナメントを振り返ってみて、いかがでしたか?

ボンちゃん 結果的に9位まで行けたから、がんばれたと思います。初戦で負けてしまったあとは、トーナメントのいいところに入れたのですが、後半はいつ負けてもおかしくない相手ばかりでしたね。

――TOP8に近づけば近づくほど強敵と当たり、接戦も多かったですね。

ボンちゃん そういう接戦をモノにできたのは自分の成長だと思うし、そういった面では、自分をほめてあげられる部分かなと。でも、最後に負けてしまった対戦相手のMOV(7位入賞を果たしたプロゲーマー)に関しては……。正直自分が想像していたよりもかなり強かったです。彼が使う春麗というキャラクターは、ナッシュにとって相性的に絶対勝たなきゃいけないマッチングだったんです。僅差で負けた試合は時の運もあるとは思っているのですが、彼との対戦では自由に戦わせてもらえる時間がすごく短くて。

――かなり辛い対戦だったんですね?

ボンちゃん 自分のキャラクターが有利に戦える展開でもぜんぜん楽をさせてくれなくて、その結果選択肢が狭まってしまい、その選択肢すら対応されてしまった、という試合でした。でも、納得のいく負けだったと思います。すごく価値のある負けかたでしたからね。

――MOVさんは、今後もカプコンカップで当たることになるかと思います。

ボンちゃん 個人的にMOVには、カプコンカップ本戦まで上がってきてほしいですね。春麗は、いまの環境だと彼くらいの練度があって初めて戦えるキャラクターですから。ああいったキャラクターのポテンシャルを引き出せる人は、大きい舞台でプレイしてほしいと思っています。

――立ち位置としては、ナッシュを使うボンちゃんと非常に似ていますね。

ボンちゃん そうですね。お互い、シーズン1のころのキャラクターがすごく強かったのですが、シーズン2になって大幅に弱体化してしまった。当然、勝つことが第一なので強いキャラクターを使うのは当然ですが、そうしなくてもいくらでも戦いかたはあると思って使い続けたんですよ。

――シーズン2からキャラクターを変えたプロゲーマーも少なくないですよね。今回のEVOでは、ももちさん(EVO優勝経験のあるプロゲーマー)がいぶきを使っているシーンもありました。

ボンちゃん 最近のももちくんは、いぶきのほうが使用比率が高い印象を受けますね。ケンはシーズン2ではかなりキツい状況になっていて、それでいぶきを選ぶことのほうが多くなったんだと思います。このゲームはキャラクターの差を覆すのが本当にたいへんで、いまのケンは長所や武器が少ないんですよね。一方、いぶきは最強キャラクターの一角だから、勝ちやすさは段違いでしょうし。でも、個人的には、ももちくんはケンを使っているときのほうがすごくワクワクします。だから「彼にはケンを使ってほしい!」と思っています!

――そのあたりは難しい問題ですよね。こういった勝負では勝つことが第一なわけですし。

ボンちゃん そうですね……って、なんでこんなにももちくんのことを話してるだってことですけど(笑)。

――(笑)。では、話題を変えまして、初戦に敗北してから15連勝。かなりの長期戦でしたね。

ボンちゃん いや~ふだんは大会でこんなに試合をすることはないので、もう疲れました(笑)。そもそも、通常の大会はこんなに参加者数が多くないので、どんなに勝っても7勝、8勝すれば最後まで行けちゃうんです。いい見かたをすれば、こんな注目される大会で2ケタを超える試合をこなせたのは、貴重な経験でした。あと、結果論なんですけど、もしもプールをウィナーズで抜けていたら、9位までは行けなかった可能性が高いですね。

――え、どういうことですか?

ボンちゃん EVOが終わってからトーナメント表を見返していてわかったんですけど、順調にウィナーズを勝ち上がったと仮定した場合、TOP64付近でsakoさん(今回13位のプロゲーマー)と当たっていたんですよ。仮に、そこでsakoさんに勝ったとしても、そのつぎにMOVと当たっていたんです。

――ウィナーズで進むと、きびしい相手に早い段階で当たっていたんですね。

ボンちゃん そこでMOVに負けたとすると、ルーザーズに落ちたさきにいるのはK-Brad(アメリカのプロゲーマー)、そのあとはハイタニくん(日本のトッププロプレイヤー)と当たるのかな。「ぶっちゃけそっちのほうがキツいわ」みたいな(笑)。

――ボンちゃんとしては、あそこで落ちたからこそ、9位まで勝ち上がれたということですか?

ボンちゃん トーナメントではよくあることなのですが、負けても必ずしも悪い方向に進むわけじゃないんですよね。ウィナーズで進んでいても、サクっと2連敗して終わることも多いですし、ルーザーズだとはいえ、相性のいい相手と当たることができれば勝ち上がれますから。今回は結果的に「15連勝してすごい」と言われていますが、初戦で負けたから15勝できたとも言えたかなと。もちろん、きびしい試合が続きましたけど、「この一瞬だけ読み勝てば俺の勝ち!」 という状況をしっかりものにできたので、トータルで見るとツイていた日だったなと。とはいえ、今回はかなり充実感があります。

――やっぱり勝ち上がると楽しいですよね。

ボンちゃん そりゃあすごくうれしいですよ。とくにEVOの場合は、どんなに強いプレイヤーでも500位とかで終わることもあるし。予選に限って言えば、今回いちばん楽しめたプレイヤーは俺なんじゃないかと思っています。誰よりも対戦しただろうし。でもやっぱりMOVの壁は高かったですね(笑)。

――MOVさんの実力は予想以上でしたか?

ボンちゃん ネモ(Red Bull Kumite 2017優勝のプロゲーマー)がMOVに負けて、ユリアン戦はうまそうだなというのは漠然と思っていました。ネモは今回優勝候補に挙がるくらい強いプレイヤーなので、その彼を倒したMOVはすごい仕上がっているんだろうと。ネモも「思った以上に強くてビビった」と言っていて、実際に対戦してみたら俺も同じ印象を持ちました。

――MOVさんに負けた瞬間は、力が抜けて伏せていましたけど、あのときはどんな気持ちだったのでしょうか?

ボンちゃん 負けたときは「うわーっ」というのがまずあって、そのつぎには「なんで負けるかねー」という想いがこみ上げてきました。やっぱりトップ8に入るのはひとつの目標なんですよ。トップ8以降は、みんなが観てくれている大きなステージで対戦できますから。初戦黒星スタートして、その後は幸運が続いて勝ち残れて、それで最後の最後で負けてしまうのは、情けなくも感じるんです。ここまでお膳立てしてもらって負けてしまうのかって。

 俺はふだんあまりツイッターは使わないのですが、大会中のふとしたタイミングでツイートしてみたら、たくさんの人から応援の言葉をいただいて。みんな観てくれていたのに、「なんで仕事できないかなー」って。だから悔しくもあり、申し訳なくもあり……。負けた瞬間はいろいろな感情がこみ上げてきましたね。

――でも、それくらい見てくれている人がいるなかでプレイできるというのは、プレイヤー冥利につきますね。

ボンちゃん 多かれ少なかれ、自分に対しての言葉というのは目にするじゃないですか。負けたら非難されることもありますが、それも含めて、自分を見てもらえているということだから、うれしいですよね。非難するようなコメントに対して自分に心当たりがあるときは、「これは言われてもしょうがないな」と受け止めることにしていますし。たとえば今回の場合は、体調を崩してしまったこととか……。

――見ていてかなりキツそうでした(笑)。

ボンちゃん (笑)。これについては「何してんだ!」と言われても、「すまん!」としか言えないんですよ。だってマジで腹いてえんだもん(笑)。ネタっぽく言われていることもあるようでしたけど、「マジだったんだって釈明はしたい(笑)」。……まあ、そんなスタートだったけど、あのまま第1プールで負けましたってたら、俺はどうしようもない奴と思われても仕方ないと思うんですよ。年1回しかない大規模な大会に参加して、腹痛でプール敗退しましたという終わりかたはやばい(笑)。そういう意味では、第3プールに入った時点で最低限の仕事はこなせたなという実感が沸いたので、そこからは気が楽になりましたね。