SIE織田氏、添田氏を直撃 「中国発の優れたコンテンツを世界に展開していきたい」【ChinaJoy 2017】

ChinaJoy 2017の前日に行われた“2017 PlayStation Press Conference in China”後に行われたSIEJA織田博之氏とSIE上海の添田武人氏へのインタビューの模様をお届けする。

●SIE中国戦略のカギを握るふたりに聞く

 2017年7月27日~30日、中国最大規模のエンターテインメントの祭典ChinaJoy 2017が、中国・上海新国際博覧中心にて開催。会期前日の7月26日に、ソニー・インタラクティブエンタテインメント上海(SIESH)による“2017 PlayStation Press Conference in China”が上海・メルセデス・ベンツアリーナにて行われた。中国市場における今後の戦略が明らかにされたカンファレンスの模様については、リポート記事をご覧いただくとして、ここではイベント後に行われた、ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジア デピュティプレジデント(Japan&Asia 営業統轄)の織田博之氏とSIESHプレジデント添田武人氏への合同セッションが行われた。本セッションは、おもに中国メディアが対象であったが、筆者はそのセッションに参加。ここではその模様をお伝えしよう。なお、冒頭にはカンファレンス直前に伺った直撃インタビューの内容を補足的に付記している。SIEの中国市場戦略のカギを握るツートップだけに興味深いお話が飛び出した。

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■プレイステーションをユーザーに浸透させるのは、まさにこれから

――まず、中国におけるゲームファンの特性を教えてください※。


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▲SIESHプレジデントの添田武人氏。

添田武人氏(以下、添田) 長いあいだコンソールゲーム市場がなかったものの、ユーザーの皆様は確実にいらっしゃることも明らかでした。ですので、このように中国国内で拠点にできることで、そういったユーザーの皆様とダイレクトにコミュニケーションできる。それがユーザーの皆様にとっては非常に嬉しく、かつ親近感を感じていただているようです。それが現在、ブランドが支持されているという要因だと思っています。

――ご自身は、SIESHに着任する前はソニーエレクトロニクスに在籍していたとのことですが、ファンベースとしてはどのような違いがありますか?

添田 ソニーエレクトロニクスのほうは中国で20年以上の歴史があり、ブランドも形成されていますが、“プレイステーション”についてはまだ知らない方がたくさんいるというのが現状です。ですので、ソニーグループのブランドの中でもプレイステーションは皆様に楽しんでいただけるブランドであるということを、ハードおよびソフトを通して皆様に伝えていければと思っています。

――昨年から発売されたプレイステーション VR(PS VR)の状況について教えてください。

添田 昨年10月上旬に発売されてから、6ヵ月ほどは、需要に対し供給が間に合わないという状況でした。従って、入荷された瞬間に完売という状況が続きました。あの時は本当に申し訳ないという気持ちでいっぱいでした。今年の4月ごろから徐々に生産能力も上がり、需要と供給のバランスが取れ始めており、オンライン、店舗ともに購入できるようになってきました。これはいいことです。
 ただ個人的な感覚では、PS VRはまだまだ認知度が足りないという印象があります。ですので、普及に向けてがんばっていかなければなりません。具体的な話としては、無錫で出会った家族の話があります。街頭販売をしていた際、もともとその家族はゲームに対して興味すらもっていない状況でしたが、実際にPS VRを体験していただいた直後、非常に興味を得たらしく、プレイステーション4(PS4)とPS VRを同時に購入していただいたんです。これ以降、まだ本来やるべきことがまだできていないと実感しました。これからそれらを進めていきますので、引き続きご支持をいただきますようよろしくお願いします。

――今回PS VRで、中国国内大手動画配信サイトとの提携が発表されましたがその背景は?

添田 以前、私のほうではPS VRのもっとも重要な用途はゲームだと説明してきましたが、じつは同デバイスは映像ビューアーとしても非常に優れています。北米では、当初から動画配信サイトとの連携がなされています。これは各国の状況はユーザー行動に違いがあるからです。
 ですが、私たちが提供しているのはプラットフォームです。各国に存在している優れたコンテンツを多くの方に伝えようと努めています。中国においてもつねに探しています。そのような意味でもこれら大手動画配信サイトから、PS VRというプラットフォームに優れたコンテンツをご提供いただけることに期待しています。これによりユーザーの皆様も映像視聴におけるVRの可能性を改めて認識いただけるのではないかと思っています。

※の質問は、カンファレンスの前に筆者が個別インタビューしたもの。


■映画『グリーン・デスティニー』のときのハリウッドでの成功を、中国発のゲームでも体験したい

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――今回、『Monkey King Hero is Back(西遊記 ヒーロー・イズ・バック)』のゲーム化が発表されたのですが、こういったコンテンツのゲーム化についてどのような基準で選んでいるのでしょうか?

添田 現在のSIESHの状況をお話すると、まだそこまで多くの優れたIPをご提供できているとは言えません。ですので、第一ステップとしては、さらに多くの優れたIPを国内のプレイステーション4でプレイ可能にする必要があります。
 つぎのステップは優れたIPを世界に伝えていくということです。これは私がソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(以下、SPE)在籍時の話ですが、アン・リー監督が、映画『グリーン・デスティニー』を作った際、中国で培われたアクション映画の技法を海外の人たちにも伝わる形で示したことで、アカデミー賞を受賞することができました。中国のIPがオスカーを獲得したのです! ここはすごく重要です。同じように、もし『Monkey King Hero is Back』の魅力を全世界のユーザーの皆様に対して伝えることができれば、それはとてもすばらしいことです。私自身、中国で育ちました。子どものとき孫悟空や、西遊記に親しんできましたが、それをこのような形でお伝えできています。これは、私が少年時代に思い描いてきた夢です。これを大作として現実にすることができればそれほど嬉しいことはありません。優れたIPの存在は、今後、我々にさらに多くの選択の幅を与えてくれます。

――中国国内にはそれ以外にも多くのIPが存在しますが、どのようにしてプレイステーション4での展開を選んでいくのでしょうか?


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▲SIEJA デピュティプレジデント(Japan&Asia 営業統轄)織田博之氏。

織田博之氏(以下、織田) 我々が作品を選ぶときは、単に売上だけを期待して決めるわけではありません。また、当方が選ぶIPの人気がつねに高くなるとも限りません。IPが持つユニークな内容が重要だと思っています。

――現在、China Hero Projectが進行中で、開発もかなり進行し、プロジェクトとしては成熟しているように見受けられますが、今後開発速度が早くなるということはないのでしょうか? また品質を維持するためにどのようなことが行われる予定でしょうか?

添田 China Hero Projectにとって最重要なのは品質です。まず、最初の10作品からですが、とくに毎年10作品あるべきと考えているわけではありません。私たちとしてはある種のエコシステムを構築しようと考えているのです。優れたIPを見出し、国内の優れた開発者の皆様とそれらを醸成し、最高の環境下で開発したうえで、中国ゲーム産業を代表しうる作品へと導くのです。ですから、これらを“中国の星”と呼んでいるのです。従って、クオリティーがもっとも重要です。

――現在、アニプレックスのように御社のグループ会社のコンテンツが中国国内で大きく支持されているのですが、今後グループとしてのシナジー効果を発揮するといったことはないのでしょうか?

織田 本日具体的に“何か”を伝えることはできないのですが、いろいろなグループ会社とも中国市場に向けて何がやれるかはディスカッションしています。引き続き、ご注目いただければと思います。

――ユーザーの声は、デベロッパーに届けるということはあるのでしょうか?

添田 開発者は皆様は常時制作を続けています。我々はつねに彼らが制作できるように環境を整えています。“開発者の皆様がゲームを制作すること”と“どの程度、ユーザーの皆様の要求に応えるか”は別の話です。ですが、この両者が交流するのは重要です。この点、中国国内の開発者の皆様は、SNSなどを通してプレイヤーと直接交流をしているので、ある意味海外の開発者の皆様よりも密に交流していると言えるかもしれません。海外の開発者の皆様と会う際は、中国国内の声もつねに届けています。もちろん、最終的な決断は開発者の皆様によって行われますが。


■各国に最適化した形や表現でローカライズしたい

――外国製ゲームのローカライズについて、台湾、香港版(繁体字版)と中国版(簡体字版)で訳しかたが違ったりする場合があるのですが……。

添田 中国国内で販売する作品は、すべて中国国内で翻訳しています。なぜなら繁体字版と簡体字版は言葉の言い回しなども含め大きな違いがあるからです。私たちが翻訳する際は、まず国内でもっとも受け入れられる表現は何かを考えて、その場所においてどの表現がもっとも適切かを意識して訳しています。ですので、台湾・香港版ではこれらの地域で適切だと思われる表現が採用され、中国国内ではそれとは違った方法で訳されることがあるのです。

――外国製ゲームについては、行政側からの審査があるのですが、ここ最近の作品はほかの地域との同時期発売が実現しています。この背景を教えてください。

織田 中国に来て2年経ったのですが、中国市場はソフトウェアメーカー様にとっても新しい市場ということで、期待値が高いです。とくに、中国のお客様に喜ばれるのが、他地域との同時発売、つまりほかの地域に遅れないで発売して欲しいということです。我々を通じてこの情報をソフトウェアメーカー様にフィードバックしたところ、そのうちのいくつかのソフトウェアメーカー様が、今年の場合はテイクツー・インタラクティブ様やコーエーテクモゲームス様などですが、我々の声を聴いてくださって、一生懸命努力していただいた結果、ほぼ同時発売を実現したという状況です。中国における審査は、コンテンツの内容をすべて見せる必要があるのですが、早めにコミュニケーションを取り、どのような内容のゲームなのかを事前に伝えています。これらの関係の中で審査部門の方たちとも互いに分かり合えるようになり、少しずついろいろなプロセスをスムーズにできるようになっていきました。この勢いで、これからもどんどん続けていきたいと考えています。


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 合同記者会見は、こういった形で非常にフランクな形でざっくばらんに展開された。結果的に内容自体を筆者側が項目ごとに再構成する必要に迫られたものの、現地メディアの方々と非常に和気あいあいとした雰囲気の中にありながら、SIESHおよびSIEJAとしての今後の展望がしっかりと示された点も印象に残った。つまり、こういったコミュニケーションの継続性が重要であるというのがSIE側の意向とも取れる。China Hero Projectや、中国最大級のIPでもある『Monkey King Hero is Back』のゲーム化といった施策がいよいよ全貌を見せつつある中で、これらの展開が業績という点において、いかなる結果を示せるようになるかに期待がかかる。