『メビウス ファイナルファンタジー』コンポーザー鈴木光人氏に聞くサウンドトラック第2弾の魅力

スマートフォン向けのRPGとして2015年6月に配信がスタートした『メビウス ファイナルファンタジー』。サウンドトラック第2弾『MOBIUS FINAL FANTASY Original Soundtrack 2』が、2017年8月2日に発売を迎えたことを記念し、コンポーザー・鈴木光人鈴木氏のインタビューを公開!

●第1部“光の戦士篇”完結までの楽曲を収録したサントラ第2弾

 スマートフォン向けのRPGとして2015年6月に配信がスタートし、ハイクオリティーなビジュアルと野島一成氏が手掛ける骨太なシナリオ、オリジナリティーに溢れるバトルシステムなどで好評を博している『メビウス ファイナルファンタジー』(以下、『メビウスFF』)。そのもうひとつの大きな魅力が、鈴木光人氏が手掛ける数々の楽曲たちだ。それらをCD3枚組の大ボリュームで堪能できるサウンドトラック第2弾『MOBIUS FINAL FANTASY Original Soundtrack 2』が、2017年8月2日にSQUARE ENIX e-STOREなどオフィシャルショップで発売を迎えた。それを記念し、『メビウスFF』の楽曲についてや、サントラの聴きどころなどをうかがった鈴木氏のインタビューを公開!

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▲鈴木光人氏(インタビュー文中は鈴木)。スクウェア・エニックス所属の作曲家。『ライトニング リターンズ FFXIII』、『スクールガールストライカーズ』、『メビウスFF』などを担当。近年ではゲームのみならず、TVアニメ『スクールガールストライカーズ Animation Channel』の楽曲も手掛ける。音楽専門誌での機材レビュー執筆や舞台音楽の制作にも携わっており、多方面で才能を発揮している。

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【商品概要】
■商品名:MOBIUS FINAL FANTASY Original Soundtrack 2
■品番:SQEX-10602-4
■発売日:2017年8月2日(水)(※SQUARE ENIX e-STORE 他オフィシャルショップ限定販売)
■価格:¥3,200+税
■音楽:鈴木 光人
■仕様:12cmCD 3枚組
■発売元:株式会社スクウェア・エニックス


■2年間走り続けたことで感じる変化

――前回のサントラが発売されたのが、2016年2月26日でした。ユーザーからの反響などはいかがでしたか?

鈴木 サントラとしての収録曲の構成がおもしろいという感想をいただきましたね。というのは、すべてがゲームの進行に沿った曲順ではなく、全体通して聴いたときのテンポを考えて入れ替えつつ構成していたので、それがひとつの作品としておもしろかったと。とくに聴き込まれている方から、そうしたご意見をいただきました。

――そうした評価を受け、第2弾の発売も決まったわけですね。今回のサントラは3枚組の大ボリュームだとか。

鈴木 前回のサントラが、『メビウスFF』のスタートから3章までの楽曲を収録していて、つぎを出すときはエンディング曲まで入れたいというのは漠然とあったんです。それで今回、サントラ第2弾の話が出たとき、ちょうど『メビウスFF』も第1部“光の戦士篇”が近々完結するということでタイミングが合い、最後の曲まで収録することになりました。ただ、その時点で配信されている曲の数を確認したら、思っていたよりたくさんあって(苦笑)。スタッフと「何枚くらいにするのがいいだろうね」と話して、2枚組だった前回よりは確実に多くなる……3枚にするか、4枚にするか、どちらかなと。

――4枚にする選択肢もあったんですね。

鈴木 あったんですよ。でもそうなると、最初にすべての尺を出さないといけなかったりと作曲以外の作業工程が増えるのと、ゲーム本編のほうも切羽詰まっていて余裕がなかったので、最終的には3枚で収めることにしました。7月15日のアップデートで実装されたばかりの曲も入っています。まさに、その日にサントラのマスタリングをやっていたんですけど(笑)。

――臨場感のあるお話です(笑)。

鈴木 締切からこぼれた曲が出たら、e-STORE購入者限定特典のダウンロード専用の楽曲にするという話もあったのですが、なるべく全部収めたくてギリギリまで調整しました。ちなみに、特典用の曲は2曲あって、いま(取材は7月下旬に実施)から編集します(笑)。

――メビウスFF』は2015年の6月に配信が始まり、鈴木さんは2年間同作のために曲を作り続けてきたわけですよね。同じコンテンツに長期にわたって曲を書き続け、一旦の完結まで走りきった感想をお聞きしたいです。

鈴木 そうですね……やっぱり独特です。配信ものというのは。前回のインタビューでもお話したと思うんですけど、毎月の締め切りが確実に来るわけで。

――そのペースは、2年間ずっと変わらずに?

鈴木 ほぼほぼ2年、ずっとやってきました。ただ、『FFVII』や『FFXII』、『FFXIII』とのコラボなどがあったので、そのときは既存曲がベースになるから「休みがある!」……と思いきや、カットシーンの曲が必要だったりで、よく考えたらけっきょく毎月何かしらやっていましたね(苦笑)。

――2年のあいだに作曲のしかたが変わってきたなど、そういった変化はありましたか?

鈴木 自分でフィニッシュする場合と、アレンジなどを手伝っていただく場合があるんですが、その配分や判断がだいぶスムーズになったかな。今回だったら『プレリュード ~謹賀新年 MOBIUS FF~』などで和楽器を取り入るときなどに、僕のほうではできないので専門の方にお願いしたのですが、そうした適材適所へのお仕事のお願いもうまくやっていけたことで、2年間走れたなというのはありますね。あとほとんどの楽曲でミックスをお願いしてるエンジニアの松田正博さんに、全体の音量バランスなどを見ていただいているので、僕が曲に集中できるというのがあります。

――楽曲に携わる方々との連携がうまくいっていると。

鈴木 あとは僕自身、2年やってきて、「あ、こういうのが『メビウスFF』っぽいんだ」っていうのが徐々に見えてきたんです。その中で、プレイヤーさんから、ビートが効いている曲が『メビウスFF』っぽい、という声をいただいたり、スタッフからもいろいろ意見があって、それらを意識していくうちにノリのいい曲が増えていったように思います。振り返ると、やっぱり曲、とくにバトル曲が多いとたいへんですね……たいへんだった(苦笑)。

――改めて振り返ると、実感しますよね。

鈴木 だからこそ、明るい曲だったり、歌ものだったりと、雰囲気がガラッと変わる曲もあるから飽きずにできたんじゃないかな。うん、そういうのを含めて『メビウスFF』らしさっていうのが見えてきたというのが、僕の中で大きかったですね。

――前回のサントラ発売からここまでに、画集『MOBIUS FINAL FANTASY 画集 First Anniversary Collections』も出版されましたよね。そこから影響を受けたりは?

鈴木 もちろん。そうそう、前回のサントラができたとき、板鼻(板鼻利幸氏。『メビウスFF』のキャラクターデザインを担当)に持っていったらサインを希望されたんです。画集が出たとき、同じように持ってきてくださったので、板鼻と松田(松田俊孝氏。『メビウスFF』のアートディレクター)にサインを入れてもらって。そんなやり取りもありました(笑)。画集を見ていると、開発当時のことを鮮明に思い出したり、ちょっと忘れていたものが出てきて刺激になりましたね。


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■サントラ第2弾でもこだわった全体の流れと楽曲構成

――では、サントラの内容についておうかがいします。今回3枚組にされていて、各ディスクの頭に『Beep』というジングルが入っていますが、これにはどういった意図が?

鈴木 これは以前からやりたかったことなんです。というのは、僕が小さいときに聴いていたゲームのサントラって、クレジット音から入るものが多かったんですよね。アーケードゲームのサントラだったら、コイン投入から入って、オープニングがあって、それを聴いたらゲームセンターの光景が思い浮かぶ。同じように、プレイしているときの状況を思い出せるようなものを作りたかったんですよ。『メビウスFF』は、ワールドマップからリージョンに飛んで、といった構成になっていることもあり、そういう仕掛けを取り入れたらおもしろいだろうなと思っていました。

――世界に入る足掛かりというか、そういった意味合いなんですね。

鈴木 ……というのはね、ひとつの表向きな理由で(笑)。裏の理由は、『メビウスFF』は曲のジャンルが本当にバラバラだから、これによって一度リセットする、フラットにするというのが狙いです。1枚目が静かな感じで終わって、それを2枚目の『Beep2』でリセットしてから『FFVII』の曲で始まるっていう。うーん、なんて言うんですかね、お茶請けというか箸休め的な?(笑)。曲ではないぶん、けっこうリフレッシュされる感じがあるかなと。その話を『メビウスFF』でサウンドディレクター兼サウンドデザイナーを務めてもらっている小森雄介に話したら、すぐに準備してくれまして。「あ、ごめん、ひとつでなくて3つ欲しいです」と、CD3枚分用意してもらいました。

――今回も各ディスクにどの曲を入れるか、構成をどうするかにはこだわっていらっしゃるんですね。

鈴木 はい。同じ章の曲は、ディスクをまたいで収録しないとかね。基本的にゲームの流れに沿いながら、イベント用の曲なども入れ込みつつ、3枚に分配しています。たまに、「これ、どこにいれるんだ?」みたいなめちゃくちゃ陽気な曲があったり……後半の緊迫しているときに急に夏っぽい曲が挟まったりも(笑)。

――音源を試聴させていただきましたが、3枚目で終盤に向かっていく流れの中で、『シーサイドクイーン』が流れて「バカンス感すごい」みたいな展開がありました(笑)。

鈴木 そうそう(笑)。それも箸休めじゃないけど、1回息が継げるというか、そういう感じですね。それから、1枚目の『モーグリの里』とか『ルーンの大地』、このあたりもゲームの流れを気にしつつ、リセット感を出したくて入れていたり。3枚目の『シドのテーマ』から『あやふやな大地』につながった後で、『はじまりのものがたり』でちょっと明るさを出すといった、ずっと重いままにはしない編成を心掛けたりもしています。

――キャラクターのテーマ曲として、メイアとシドの曲が新しく収録されていますが、それぞれどういうイメージで書かれたのでしょうか?

鈴木 『メイアのテーマ』は当初、ピアノとヴァイオリンだけだったんです。魔女という設定は決まっていたけれど、絵は簡単なスケッチが上がっているくらいで、イメージ先行で作った記憶があります。前回のサントラに収録した『ウォルのテーマ』はけっこうストレートな楽曲ですけど、それに対してちょっと“妖しさ”のあるイメージで作りました。それで、ちょっとスパニッシュな、フラメンコ調のところを足したのかな。今回はこのメイアの比重が大きく、これを肉付けしたものをいろいろなバージョンとして収録していますね。

――シドのテーマ』はいかがでしょうか?

鈴木 シドは『FF』シリーズでおなじみの要素というのがありつつ、カットシーンを見てそのイメージで重い感じを出しつつまとめていきました。あまり悩んだり、作り変えたりはしなかったですね。音符が細かい曲は、後でアレンジバージョンを作るのが楽なんですけど、この曲はそうではないので、もし「『シドのテーマ』でバトルのアレンジを作って」と言われていたら困っただろうなあ、というのはあります(笑)。

――現状はそれがなくてひと安心と(笑)。『FF』ならではの要素というと、オリジナル曲のアレンジである『モグるみ』のほかに、ちょっと衝撃的な曲がありますが……。

鈴木 『きまぐれケットシー』ですね(笑)。

――前回のサントラの『ファイト de チョコボ』も、日本語の歌詞がついていてボーカロイドが歌うという衝撃の構成でしたが、今回もまた歌もので仕掛けてきましたね。

鈴木 これは……ディレクターの鳥山(求氏)が(笑)。最初に歌詞が来たんです。「歌詞書いたから、あとはよろしく」みたいな感じで。「歌詞先行はけっこうたいへんなんだけどな」と思いながら見たら、“ネコパンチ”って書いてあるわけですよ。加えて、例のきぐるみのイラストがあるだけで(笑)。


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――あとは好きにしてくれと(笑)。

鈴木 「これは腕の見せどころだ」と気が引き締まりました(笑)。この曲は中村祐介(作曲家、音楽プロデューサー。ジャズバンドBLU-SWINGキーボーディスト)さんにお願いしています。けっこう前から付き合いがあるものの、仕事ではご一緒したことがなく、チャンスがあれば……と思っていたんです。中村さんは、ご自身のバンドもあって、いろいろなジャンルの音楽を手掛けられている方だから、今回みたいな楽曲をお願いしたらおもしろいだろうと。中村さんの楽曲はデモが来た時点で世界ができていて、もう何も問題ありませんでした。聴いてうれしくなっちゃって、すごくアガりましたね。

――ほかにも、アレンジャーさんとのやり取りでそうした斜め上をいく仕上がりになった曲はありますか?

鈴木 印象深いのは、3枚目に収録されている楽曲でけっこうお世話になっている鈴木克崇くんです。「メイアといえば克崇くんでしょ」と言えるほど、メイア関連の曲はお任せしていて、非常にいい感じに仕上げてもらっています。

――FFXIII-2』や『FFXIV』、『FFXV』など近年の『FF』で楽曲制作をされている鈴木克崇さんですね。

鈴木 おもしろいことに、克崇くんに「『メイアのテーマ』をもとに、ここのシーンでこう使うから、こんな風にアレンジして」ってお願いするんですけど、まったく違うものが来るんですよ。

――それは大丈夫なんですか?(笑)

鈴木 まあ「かっこいいからいいや」となるんですけどね。本人に「これどこに『メイアのテーマ』が入っているの?」って聞いたら、「ここのところの裏の旋律が」と返されて、「うわ~、そうなんだ、わからない!」……そして本人はニヤッとしているという(笑)。彼にはそういう変化を期待してお願いすることがほとんどで、これはもうアレンジの範疇じゃないということで、今回コンポーザーとしてクレジットしています。