『World of Tanks』開発拠点を訪問
Wargamingがサービス中のオンラインタンクバトル『World of Tanks』。2017年7月に、本作の開発の拠点となっているベラルーシ・ミンスクのオフィスを訪れる機会を得た。本稿では、今回の取材を通じてわかった『World of Tanks』と『World of Tanks Blitz』の最新トピックスや今後の予定についての情報をお届けする。
■『World of Tanks』では、10月に新たなコンテンツが発表か
まずは、PCでサービス中の『World of Tanks』について、パブリッシングプロデューサーのArtem Safronov氏と、パブリッシングプロダクトマネージャーのOlga Fadeeva氏に話を伺った。
(右)パブリッシングプロダクトマネージャーのOlga Fadeeva氏
『World of Tanks』の最新トピックスについて。2017年6月6日に、“9.19”アップデートが実施され、TierX車輌専用の15対15モード“ランク戦”が追加された。ランク戦は約1ヵ月のシーズンを通じて行われ、車輌のさらなるカスタマイズが可能となるアイテムと交換可能な通貨“ボンズ”などの報酬が得られる。
現在はランク戦のβシーズンが終了したところで、Artem氏によれば非常に多くのプレイヤーが参加し、さまざまなフィードバックを得たという。中でもとくに多かったのが、ボンズの獲得方法について、“報酬意外の入手手段が欲しい”というもの。ランク戦以外でも獲得できるように、今後調整したいとのことだ。
また、ボンズで入手できるアイテムはランク戦以外のランダム戦でも使用可能だが、通常のアイテムよりも少々性能がいい程度なので、ランク戦に参加したプレイヤーが一方的に優位になるという展開にはならないとの見通し。ボンズで購入できるアイテムによって不公平が生まれないよう配慮し、(少し時間はかかるが)すべてのプレイヤーがボンズを獲得できるように平等な調整を行う予定だという。
その他、プレイヤーから意見がもっとも多く挙がるのは、全体のバランス調整。これについて両氏は、意見どおりにそのまま調整するのではなく、問題を解析したうえでプレイヤーが得をする形で損をバランス調整することが重要だと述べた。プレイヤーへのアンケートを行い、さまざまな角度から情報を得るようにしている、とも。
両氏によれば、ヒストリカルバトルの実装時には、一部の史実ファン以外からは、いい評価を得られなかったという。これを教訓として、新モードを追加する際には、可能な限り多くのプレイヤーが楽しめるものを目指すと説明。また、プレイヤーのフィードバックを元にテストを重ねて調整を行う。この新モードの発言には、“ランク戦”や今後実装予定の“フロントライン”も含まれている。
現在開発中で、サンドボックス・テストサーバーに実装された“フロントライン”は、30対30で戦闘を行う新ゲームモード。使用車輌はTier Xの中戦車、重戦車、駆逐戦車、自走砲に加え、Tier VIIIの軽戦車のみとなるが、将来的には全車輌がTier Xに統一される予定だ。フロントラインでは、ゲームバランスの調整やマッチメイカーの刷新、自走砲の見直し、グラフィックスの強化などに注力しているという。実装時期については、まだ明かせないが、8月22日から開催される“Gamescom 2017”にて、何かしらの発表を行うとのことだ。
そして、10月ごろにはフロントラインとは異なる、新たなインゲームアクティビティの情報を公開する予定で、こちらも楽しみにしていてほしい、とのことだ。
■『World of Tanks Blitz』は、対戦要素や車輌の拡充に力を入れる
スマートフォン、タブレット、PC(Win10/Mac/Steam)で展開中の『World of Tanks Blitz』(以下、『Blitz』)について、ゲームデザイナー兼チームリードのStepan Drozd氏と、プログラムマネージャーのStanislav Patskevich氏に話を伺った。
(右)ゲームデザイナー兼チームリードのStepan Drozd氏
(左)マーケティングプロダクトマネージャーのArina Lozyuk氏
『Blitz』はより広いゲーマー層をターゲットにしたモバイル向けタイトルで、スピーディーなバトルのほか、空想車輌などの“遊び”を楽しめる点が特徴的。アニメ『ガールズ&パンツァー』やゲーム『戦場のヴァルキュリア』のコラボ車輌、大河原邦男氏デザインの車輌(アーティストシグネチャーシリーズ)などがゲーム内に登場している。『Blitz』では、実際の歴史とは違う、もうひとつの歴史、“オルタナティブヒストリー”というものにも力を入れており、機会があれば今後もオリジナル車両を追加したいとの考えだ。
コラボのラインアップを見て、『Blitz』では日本のファンの熱量が高いのか、との問いに「はい」と答える両氏。プレイヤー人口で見るとロシアやヨーロッパが多いが、それに次ぐのが日本を含むアジア地域だという。そして、アジアのプレイヤーはフレンドリーであり、かつ(eスポーツ的な)競争性が高いとの見解を述べた。『Blitz』では2016年に本作初の世界大会“TWISTER カップ”が実施され、ロシアチームとアジアチーム(韓国)が決勝に進んだ。そのほかにもアジアには強豪のチームが多く存在し、そのパワーに驚かされたという。
『Blitz』では、今後もeスポーツを始めとする“コンペティティブ(競争的な)”なアクティビティに力を入れていくとのことで、今後のアップデートについては、ランキングやトーナメントなどの競争性の高いコンテンツをメインとしていくと述べた。
またアップデートや新要素については、年々進化するスマートフォンのスペックに合わせる形ではなく、古い機種でも遊べるように、幅広いプレイヤーに向けて開発することを意識している。
PC(Win10/Mac/Steam)でも展開する『Blitz』は、PC版『WoT』と競合してしまうのではないかと思うが、「PC版とはまったく遊びが異なるもの」と両氏は説明。よりスピーディーなバトルや、オリジナル車輌、よりコンペティティブな体験といった部分で、PC版とは差別化しており、棲み分けができているという(Stanislav氏は、コカコーラとコラコーラ・ライトのような感じだと表現していた)。PC版『WoT』開発チームと意見交換を行うこともあり、『WoT』に登場する車両は、今後もどんどん『Blitz』に追加していく予定だという。
Nintendo SwitchやプレイステーションVitaといった携帯ゲーム機での展開については、将来的に対応は可能だと思うが、現状のプレイヤーの方に向けてコンテンツを充実させることに力を入れたいというのが、現在の考えのようだ。