Blizzard Entertainment主催によるオンラインカードゲーム『ハースストーン』春季選手権大会“ハースストーン 2017年春季選手権ツアー”が、中国・上海にて2017年7月7日から7月9日まで開催されている。グループステージの試合は7日と8日に行われ、プレイオフトーナメントは9日に実施。各地域の春季プレイオフで上位4位までに入賞した選手16人名がしのぎを削っている。

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 ファミ通.comでは、同イベントにて『ハースストーン』eスポーツ施策のマネージメントを行っているMatt Wyble(マット・ワイブル)氏へのインタビューを実施したので、その内容をお届けする。

 なお後日、新拡張パック『凍てつく王座の騎士団』リードミッションデザイナーのDave Kosak(デイブ・コサック)氏と、Eloise選手(Tempo Storm所属)、そしてTredsred選手へのインタビューをお届けする予定なので、併せてチェックしてほしい。

「日本からいつか絶対に世界王者が現れるであろうと信じている」

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▲Matt Wyble(マット・ワイブル)氏 (文中はマット)
Blizzard Entertainmentでeスポーツ施策に関するマネージメントを行っている。

ーー事前に経歴を見せていただいたのですが、Blizzard Entertainmentのいくつかのタイトルで活躍したと記載されていました。『ハースストーン』以外では、具体的にどういった活動をしてきたのでしょうか?

マット これまでに『World of Warcraft』や『オーバーウォッチ』で、ゲーム内要素のデザインに関わってきました。

ーーご自身も『ハースストーン』をかなりプレイしていると聞きましたが、1日にどの程度プレイするのでしょうか?

マット プレイテストでたくさんプレイしますが、個人アカウントでは15000回ほど勝利しています。

ーーちなみに、お気に入りのデッキを教えてください。

マット 2シーズン前は、ジェイドシャーマン(翡翠シャーマン)を気に入っていて、メインで使っていました。

ーー前回の冬季選手権は、バハマで開催していましたが、今回上海で開催するに至った経緯を教えてください。

マット “ハースストーン 2017年春季選手権ツアー”と謳っていますので、ツアー形式にのっとってさまざまな地域で大会を開催しようと考えています。もちろん中国には熱狂的なファンが多くいることも、ひとつの要因です。

ーー中国では『ハースストーン』は爆発的な人気を誇っており、eスポーツシーンも非常に盛り上がっています。人気を確立した要因はなんでしょうか?

マット 中国において『ハースストーン』はカルチャーのようなものにまで成長しており、みなさんが毎回選手を応援してくれていることが最大の要因だと思います。日本でもb787選手がバハマの冬季大会に出場し日本のコミュニティからたくさんの応援をいただいていました。中国も同様に、選手を応援する場を設けていること、コミュニティが盛り上がれる場を提供したことが、人気を確立できた理由であると考えています。

ーー会場では『凍てつく玉座の騎士団』の巨大なジグソーパズルがあり、来場者がピースをひとつずつはめて完成させるような作りになっていました。会場にはほかにも撮影ブースなどがありますが、一番注力した展示はなんでしょう。

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▲メイン会場の入り口付近では、巨大なシグゾーパズルが展示されている。ピースは横の箱にバラで入っており、来場者が裏に書かれた番号を頼りに所定の場所にはめ込んでいくというシステムだ。

マット 注目してほしいのは、エントランスから会場へ続く画廊です。できれば、もっと長くしたかったのですが、あれが限界でした(笑)。画廊では、『ハースストーン』の歴史を振り返ることができるポートレートをたくさん飾っています。

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ーー『ハースストーン』では選手のデッキが公開されるという特殊なルールがありますが、選手のデッキを公開するメリットはなんでしょうか?

マット 一部の選手はTwitchなどでストリーム配信をしており、どういったデッキを使うのかある程度分かってしまいますが、オフストリーム(動画実況などをしない)プレイヤーのデッキは一切分からないので、フェアではないと考えました。また、以前あるひとりのプレイヤーが、「対戦相手の使うカードをすべて覚えている」と言ってきたのです。当初は嘘だと思ったので試しに試合相手のデッキを聞いてみたら、なんとすべて正解でした。それを受けて、「デッキの暗記に時間を使うくらいであれば、スキルを磨くことに時間を注いで欲しい」と考え、プレイヤーのデッキ公開に至ったのです。

ーー選手へのサポートについてはどうでしょう? 今回出場する選手へは渡航費・宿泊費はもちろんサポートされており多額の賞金も出ますが、そのほかにも具体的なサポートを考えていらっしゃいますか?

マット もちろん大会である程度の賞金をプレイヤーにお渡ししますが、それ以外にも我々ができることはないかと考えた結果、プレイヤーの宣伝に力を入れています。プレイヤーの宣伝をすることで、プロチームへ雇われやすくなるんです。プレイヤーをヒーローにしてあげるんことですね。ほかにも、賞品なはにがいいのか、どの程度の賞品を用意したらたくさんのプレイヤーが参加してくるのかを考えています。

ーー昨今では多数のデジタルカードゲームがリリースされており、ほかタイトルのカードゲームにおいても、eスポーツの活動を積極的に行っています。これらのゲームは『ハースストーン』のライバルでありますが、『ハースストーン』がユニークであり続けるためには、どうするべきだと考えていますか?

マット やはり『ハースストーン』がよりすばらしいゲームになることが一番大切です。いつもプレイヤーが楽しめることを意識しています。シンプルで簡単なことに聞こえますが、とても難しいです。

ーーHearthstone Championship Tour Japan Majorは以前実施されたのですが、ハースストーン世界選手権を日本で行う予定はありますか?

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マット まだ検討中です。不可能ではありません! 日本の『ハースストーン』コミュニティが育っていくのを見るのはとても楽しいです。日本語版『ハースストーン』がリリースされたのは最近のことですし、ローカライズされる前からたくさんの日本人プレイヤーがいることを知って驚きました。本当にうれしかったです。

ーー今回春季選手権ツアーに出場しているTredsred選手を含め、日本にも実力のあるプレイヤーがたくさんいます。彼らに激励をお願いします。

マット 日本人プレイヤーはスキルもありますし、日本からいつか絶対に世界王者が現れるであろうと信じています。日本においてゲームの歴史は長いので、『ハースストーン』もその歴史のひとつに刻まれてほしいです。私自身としては、日本のプレイヤーはもっとチームワークを鍛えたらよいと考えています。

ーーチームワークですか。

マット 世界中の強豪たちは、ライバルとはいえ、競い合いつつもお互いに高め合っています。日本のプレイヤーどうしも、お互いに高め合うことを意識すれば、もっと結果を残せるのではないかと感じています。

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▲愛犬家であるマット氏。スタッフロールで見られる開発陣をモチーフとしたカードでは、愛犬とともにカード化されている。効果は「雄叫び:ふわふわの白い獣を召喚する」。