ジョブHUD誕生秘話を激白! 『FFXIV』開発者インタビュー第3弾【完全版】

週刊ファミ通7月6日号に掲載された、『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)開発者インタビューの第3回をお届け。最終回となる今回は、同作のUIセクションを統括する皆川氏と村澤氏にお話を聞いた。

●“紅蓮”の象徴、ジョブHUD制作秘話に迫る

 クロスホットバーに代表される『FFXIV』の優れたユーザーインターフェース(以下、UI)は、『紅蓮のリベレータ―』発売を機に、新たな機能が多数追加された。しかし、それらがどういう経緯で開発されることになったのかは、ほとんど明らかになっていない。そこで、『FFXIV』のUIセクションを統括するふたりのスタッフにご登場いただき、ジョブHUD(戦闘中に表示されるジョブ専用のゲージ)制作の流れから4.XシリーズにおけるUIのアップデートの基本スタンスまで、幅広くお話をおうかがいした。

▲プレイヤーから“HQヒロシ”の愛称で親しまれる、アートディレクターの皆川裕史氏。

▲皆川氏の頼れる右腕、リードUIプランナーの村澤裕一氏。

 なお、本インタビューは、2017年5月23日の第36回プロデューサーレターLIVEが放送される以前に取材が行われている。取材陣に事前情報がなかったため、ジョブHUDの仕様に関するやり取りなどに若干かみ合わない部分があるのでご容赦願いたい。

●村澤氏はUIセクションの番頭的存在

──おふたりが所属しておられる部署は、ゲームのどの部分を担当されているのでしょうか?

皆川裕史氏(以下、皆川) 『FFXIV』ではUIの部分を担当しています。最近では、おもにデザイナーセクションのアートチームの管理や、ゲーム全体の絵作りに関する調整、ウェブ制作チームのスタッフ編成みたいなことも行っています。

──スタッフ編成のお仕事は、いつごろから始められたんですか?

皆川 『新生エオルゼア』くらいのころからです。アートチームの管理は、『蒼天のイシュガルド』が発売される直前ごろからでしょうか。「人員が足りない!」という声を受けて「スタッフを引っ張ってきます!」みたいなやり取りをしています(笑)。

──いまでも(パッチなどの)ロゴは作られているんですか?

皆川 今回の『紅蓮のリベレーター』のロゴも、僕のほうで作りました。天野さん(天野喜孝氏。イラストレーター)からイラストを直接受け取りに行く……といった感じで携わっています(笑)。

──村澤さんはいかがでしょう?

村澤裕一氏(以下、村澤) 自分は皆川のもとで、UIセクションのセクションリーダーを担当しています。

──皆川さんと同様、部門を管理されるお立場ですね。

村澤 自分自身はプランナーですが、デザイナーやプログラマーの統括も行っています。UIセクションは、ほかの部署からさまざまな発注を受けたりする性格のため、(プランナー/デザイナー/プログラマーが)三位一体で動く必要があります。その部分を円滑化するため動いている感じです。

皆川 (村澤は)番頭さんみたいな感じですね。実質的には部門を仕切っています。彼がいるおかげで、僕は好き勝手ができます。

──そういうときに村澤さんは何と?

皆川 「そんなの間に合わないですよ」と(笑)。村澤とは、そんな関係です。

──ともにお仕事をするようになったのは、いつからですか?

皆川 ふたりでいっしょに仕事している期間は『FFXIV』よりもずっと長くて、『FFXII』から同じチームの所属です。

村澤 その前は『ファイナルファンタジータクティクス アドバンス』のディレクターを担当していました。そこからさらにさかのぼると……(かつて存在した)株式会社クエストのもと同窓です(笑)。

──そうだったんですか! ということは、本作に携わることになったきっかけも、おふたりはほぼ同じなんですか?

皆川 そうですね。僕が、吉田(吉田直樹氏。プロデューサー兼ディレクター)や髙井(髙井浩氏。デザインセクションマネージャー)といっしょに新しいプロジェクトを立ち上げようとしていた矢先に、「ちょっとたいへんなことになっているので、見てくれないか」みたいな感じで『旧FFXIV』チームに呼ばれたのが、そもそもの話です。そこから、現在の体制が発足した時点で正式合流となりました。

──当時のいきさつは、吉田さんのコラム本『吉田の日々赤裸々。『ファイナルファンタジーXIV』はなぜ新生できたのか』でお話されていましたね。ということは、皆川さんが現体制に合流した時点で、村澤さんも参加されたのですか?

皆川 多少のずれはありますが、ほぼ同時期です。今後(開発の)手が回らなくなることがわかっていたので、長年いっしょにやってきた村澤にカバーしてもらえる部分を担ってもらおうと。

──村澤さんは、『旧FFXIV』にも携わっていたのですか?

皆川 村澤は『新生エオルゼア』の側をうまく進行するための要件定義や、必要な機能を制作するためのタスク(業務)の分解作業に注力してもらいました。その一方で、僕は当時まだサービス中だった『旧FFXIV』のほうを、できる限り改修していました。

──『旧FFXIV』の制作とは別に、皆川さんはクロスホットバーのアイデアも練られていたんですよね。

皆川 『新生エオルゼア』側の仕様の概要までは、「だいたいこんな感じで作りたい」と僕が書きました。大まかな部分だけ村澤に伝えて、「あとはこれを機能別に分解してほしい」とお願いした感じです。

●スタッフのローテーションが風通しのいい仕様を生む

──『紅蓮のリベレーター』を制作するに当たり、『蒼天のイシュガルド』との違いを感じた部分はどのあたりですか?

皆川 今回、長期のサービスのためのセクション体制が確立した、と感じます。『FFXIV』はMMORPGなので、サービスが続く限り開発も続きます。そのため、我々のように長く在籍している者も含めて、『蒼天のイシュガルド』のときよりも多くの現場スタッフをできるだけローテーションするようにしています。

──といいますと?

皆川 MMORPGは長期間基本のスペックが変わらないので、現場の担当者としては(同じ仕事を)長く続けられるぶん、新しい技術など未体験の仕事に触れるチャンスが失われていきます。これを防ぐために、担当スタッフのローテーションを意識的に行っています。『新生エオルゼア』当時は(失敗が許されない状況だったため)、絶対にこの人ならやれるという陣容で臨みました。しかし現在の長期運用に入った状況では、スタッフがつぎに試したいこととプロジェクトの求める業務がマッチしないケースが出てきます。

──そのためにローテーションを行っているんですね。

皆川 『蒼天のイシュガルド』まではベテランのスタッフで固めてきましたが、『紅蓮のリベレーター』は比較的新顔のスタッフに新しいことをやってもらうよう意識しました。当然一時的とはいえ、マンパワーの低下といったリスクがあるのでマネージメントを担うスタッフ層はドキドキしていましたが、UIセクションにも『FFXIV』をプレイしている者が多いので、高いモチベーションでこだわりを持って開発を進めてもらえました。

──開発の現場でいちばんドキドキされたのは、村澤さんではないでしょうか(笑)。

村澤 『蒼天のイシュガルド』は初の拡張パッケージだったこともあり、ある意味手探りで制作した面もありました。『紅蓮のリベレーター』はその部分を1回経験しているので、大まかな段取りは付けやすかったです。とはいえ、いま皆川が話した通り、新しいメンバーや体制で進められたので……(苦笑)。

──やはりドキドキされたと。

村澤 『蒼天のイシュガルド』当時と同じ作業であれば楽なんですが、当然ながら吉田のほうから(前回にはなかった)要求がいろいろ来るわけです。それを組み込んだうえで、時間が読めない部分をうまくコントロールしながら、何とかギリギリ間に合いそうなところまで来ている……それがいまの状況です。マネージメント役としては、ドキドキする期間が今後1~2週間くらい続くのではないでしょうか。そういうところも含めて、チーム運用のおもしろさみたいな部分はありますね。

──現在のご苦労が、今後さらに活きてくるわけですね。

村澤 どうなるかわかりませんが、この先の発売があるかもしれない(拡張パッケージの)5.0に向けて、継続的に開発を行う体制ができつつあると思います。

──ということは、5.0の制作に着手される際は、また人員のローテーションが行われるのですか?

皆川 これからもUIセクションに限らず、担当のローテーションはほかのセクションでも行われていきます。ちゃんと引き継げていないと「あれ? これは前はこういう取り決めだったよね?」と打ち合わせることになりますが……(笑)。

──村澤さんとしては、スタッフが代わるたびに「またここからか」という感じになるのではありませんか?

村澤 それがあることは当然わかっているので、事前準備みたいなことはしています。いちばん怖いのは、スタンドアローンの家庭用ゲームソフトを開発する際によくあることですが、仕様や書類もなしに「とにかく作ってしまえ!」となることです。これを(長期の開発が前提の)『FFXIV』でやってしまうと、たいへんなことになります。

──それは怖いですね。

村澤 『FFXIV』では通常の開発工程の中に、仕様の整理や変更点をまとめる作業が含まれます。引き継ぎが行われることを前提に、「あなた以外のスタッフに代わっても作業できるように作ってね」と担当者に説き続けているところです。こうした部分はなかなか表に出にくいですが、それがプレイヤーの皆さんから「またおかしな状態になってる!」という思いをさせることを防いでいます。

──担当の方が代わることで、それがゲームの目新しさにつながることもあるんですか?

皆川 『FFXIV』のUIセクションだと、「目新しさよりも伝統を継承していくぜ」という意識がより強く働くように思います。個々の技術に関していえば、広く知られている方法と、我々が蓄積してきたノウハウをどれくらいのサジ加減で混ぜていくのかが重要になります。長期運用に耐えうる安全性や拡張性を確保するための配分を考える……みたいなところを、担当を交代して理解している人を広げていくことが変える目的です。

──なるほど。

皆川 さきほども村澤が話していた通り、従来のオフライン系のゲームは発売後をさほど考えなくてもいいため、いろんな意味で走り切れてしまう面がありました。ですが、僕たちの場合はいまでも『紅蓮のリベレーター』の最終チェックと並行して、パッチ4.1の仕様の相談も行っているところです。このため、つねに先々を考えた仕様にしておかないと、あとで自分たちが苦しむ結果を招きます……マラソンに近いですね(苦笑)。

──いまはよくても、あとで苦しむと。

皆川 ひとつひとつの作業は、他社さんでもふつうに行われていることです。それらをまとめたときに、土壇場で破たんが起きないようどう組み合わせていくか……このあとで苦しまないためのノウハウは、かなり積み上がってきた実感があります。