ファン待望の新タイトル

 1995年に発売され、海外で爆発的ヒットを記録した近未来のバトルレースゲーム『Wipeout(ワイプアウト)』。日本でもその独特の浮遊感や超スピードのスリルでゲームファンを魅了し、かなりの人気を博した作品だ。以後、シリーズ化して何作も発売されたが、2012年のプレイステーション Vita版を最後に新作が途絶えてしまっていた。

 開発元スタジオの閉鎖というハプニングもあって長い空白の期間が続き、もはやシリーズで遊べることはないのかも……と思われていたのだが、なんと! 2017年6月8日より、ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジアからプレイステーション4のダウンロード専売タイトルとして『Wipeout Omega Collection(ワイプアウト オメガ コレクション)』が配信されたのだ。サンキューSIE!

 完全新作ではないリマスター作品ではあるものの(『Wipeout HD』と、その追加コンテンツ『Wipeout HD Fury』、そして『Wipeout 2048』をリマスター)、最新ハードで『Wipeout』を遊べるのはまさしく僥倖! もともとスタイリッシュなアートワークが、プレイステーション4のパワーで洗練された美しさに生まれ変わっており、そのビジュアルインパクトはより絶大なものに進化している。本作で初めてシリーズを体験することになるユーザーは、思いがけない幸運と言えよう。

 そんなわけで今回の記事では、『Wipeout Omega Collection』の魅力についていろいろと語っていきたい。しばらく遊んでいないシリーズファンはもちろん、『Wipeout』をそもそも知らないというゲームファンにも、異彩を放つレースゲームの存在を脳裏に焼き付けていってほしい。

『Wipeout Omega Collection』独特の浮遊感や最高のBGM、オンライン対戦など充実しまくりの本作をプレイ。これぞシリーズの集大成!_01

独特の浮遊感と超スピード

 『Wipeout』シリーズを語るなら、やはり浮遊感とスピード感は外せない要素だ。本作で操作するのは、反重力テクノロジーを搭載した“クラフト”と呼ばれるマシン。地上から数メートル浮いた状態で超高速走行ができるというシロモノで、何とも形容し難い浮遊感がある。タイヤがないためコースを滑るように移動……現実のものに置き換えて表現するなら、左右にのみ移動できる戦闘機を操っているような感覚だろうか。

 加えて超高速なスピード感も本作の大きな特徴。先程、戦闘機と表現したが、まさに飛んでいるかのごとき速さでコースを疾走していくので、アドレナリンが分泌しまくり状態になること請け合いだ。近未来的な街並が高速でヌルヌルと後ろに流れていく様子は、見ていて本当に気持ちがいい。コース上にはクラフトを加速させるギミックもあり、壁にぶつかることなくスピードがノッてきたときは、誰しも意図せず感嘆・詠嘆の声を漏らしてしまうはずだ。うっかり主観視点で操作しようものなら、ジェットコースターに乗っているときと同じ声が出てしまうだろう。

『Wipeout Omega Collection』独特の浮遊感や最高のBGM、オンライン対戦など充実しまくりの本作をプレイ。これぞシリーズの集大成!_02
▲尾を引く青い炎がカッコイイ! 浮いた機体が超加速していく。

 ジャンプ中に左・右・左などにスティックを入れることで機体がバレルロールし、着地後に加速するシステムがあるのだが、これがなかなか秀逸。通常、操作ができなくなるジャンプ中は一瞬のブレイクタイムになるものなのだが、本作はバレルロールがあるため、つねに緊張感を保たねばならない。最初は操作を忘れがちだが、慣れて毎回決められるようになると、これが最高に気分がよく楽しいから困ったもの。おかげでレース中は息をつく暇もない!

 なお、本作ではクラフトが46種類以上登場。MAXスピード、ハンドリング、攻撃力、シールドといった性能が細かく異なっているため、それぞれ機体ごとに特徴が出ていておもしろい。

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▲クラフトの形状もじつに多彩。よく見るといろいろ絵が描かれている。

超高速でも安心のアシスト機能

 本作の凄みのひとつが超高速な疾走感であることは前述した通りだが、「そんな速いマシンを操作するのはムリ!」と思っていないだろうか? Exactly! まったくその通り。超絶テクを持つゲーマーならともかく、ふつうのゲームファンには無理! まあ、無理は言い過ぎかもしれないが、操作がかなり難しいのは間違いない。

 でも安心してもらっていい。本作には優秀な“パイロットアシスト”機能が備えられており、壁に激突しにくいようにアシストしてくれるのだ。この機能がかなり優秀で、アシストしてもらっているのに自分の運転がうまくなったように錯覚させてくれるからすばらしい。結果的に何の負い目もなく、気持ちよく超高速走行を楽しめるというわけだ。

 筆者などゲームスタートから2ラップ目くらいにはもうアシストをオンにしていたのにも関わらず、この原稿を書くときまで存在すら失念していたほど。そのくらい不自然さを感じさせず、つねにアシストしてくれていたわけだ。サンキュー、パイロットアシスト!

『Wipeout Omega Collection』独特の浮遊感や最高のBGM、オンライン対戦など充実しまくりの本作をプレイ。これぞシリーズの集大成!_04
▲コースアウトしてしまいそうな場所もアシストがあればスムーズに進める。

奇抜なコースを最高のBGMで疾走

 キラキラぴかぴかネオンが輝く、未来感あふれる景色。そんな景観の中をかっ飛ばしていくのだから気持ちよくないわけがない。しかも本作のコースはジャンプ台や分岐がそこかしこにある、なかなかにトリッキーなものになっている。突如として垂直の坂を登らされたり、コースが途切れていてアッと思ったときには落下していたりするなど、控えめに言っても驚きの連続。初見であればまず「うおっ」と声をあげてしまうだろう。そんなユニークなサーキットが26以上登場するのだから、満足度はかなり高い。

 また、『Wipeout』シリーズと言えば、テクノミュージックの存在も忘れてはいけない。本作のBGMにはハイセンスなテクノ楽曲が使われており、1作目が登場したときも相当な話題を呼んだ。当時のファミ通編集部でもテクノ好きが狂喜乱舞していたことを記憶している。筆者がテクノに疎いのが心苦しいのだが、かっこいいアートワークとBGMが見事なまでに融合して最高の世界を構築しているのだけはわかる。ちなみに、『Wipeout Omega Collection』では、Kraftwerk、Booka Shade、Stanton Warriorsといった海外の大物アーティストが楽曲を提供しているとのこと。

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『Wipeout Omega Collection』独特の浮遊感や最高のBGM、オンライン対戦など充実しまくりの本作をプレイ。これぞシリーズの集大成!_06
▲リバースコースも存在。逆回りになるだけで難度はまるで異なってくる。

敵クラフトを破壊する楽しさ

 反重力の浮遊感と超高速なスリルについては解説したが、本作はさらにライバルクラフトを破壊する爽快さも併せ持っている。アイテム有りのレースでは、コース上に多種多様なアイテムが配置されていて、武器を取得できればライバルを攻撃可能。相手クラフトのシールドをゼロにすれば、破壊してレースから脱落させることもできる。もちろん、自機クラフトも敵の攻撃を被弾したり壁にぶつかり過ぎたりしてシールドがゼロになると、ちゅどーんと見事なまでの爆炎を巻き上げてレース終了になるので覚えておいてほしい。

 レースのルールもさまざまで、バトル重視のルール“エリミネイター”では、ライバルを攻撃するか破壊することでポイントを稼いでいく。高速走行しながら敵を破壊するのはなかなか難しいが、破壊できたときの爽快感は凄まじいものがある。徐々に距離を詰めながらミサイルをぶち込んでやったときは、世紀末のモヒカンよろしく「ヒャッハー」と叫びたくなるのは筆者だけではないはずだ。なお、このルールでは自機が破壊されても稼いだポイントが下がるだけでリスポーンしてくれる。思う存分に破壊し、破壊されまくっても大丈夫だ。

 また、“デトネイター”というジライやボムを破壊してスコアを稼ぐ風変わりなモードも存在。こちらはもはやレースというよりシューティングといった風情で、出現パターンを覚えて効率よく破壊し、スコアをアップさせていくやり込み的な楽しさがある。風景のグラフィックも特殊なものに変化するため、音楽と相まってちょっとしたトリップ感も味わえるのもおもしろい。

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▲ミサイルのほかにも多数の武器がある。コースを揺るがすクエイクといった特殊なものも存在。
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▲デトネイターモード。プレイしていると軽くトリップしてしまう。

世界のプレイヤーとオンライン対戦

 当然と言えば当然だが、本作ではオンライン対戦も楽しむことができる。ライバルクラフトを操作しているのが人間になると、いつものレースでも異様なほどに燃えてくるから不思議だ。部屋を作って参加者を募る方式で、最大8人まで参加が可能。すでに参加者がレース中でも部屋に入って待ち、つぎのレースから参戦するなんてこともできる。もちろん、招待したフレンドとだけバトルを楽しんでもオーケーだ。

 日本だけでなく、EUやUS、AUSなど、ロケーションを切り替えることで海外のプレイヤーの部屋にも簡単に乱入が可能。筆者はEUの部屋に何度か乱入してみたが、ラグもなくスムーズに遊ぶことができた。時間帯によって部屋の数も変わってくると思うので、いろいろとロケーションを切り替えてレースしてみるのもいいだろう。対戦を繰り返すと“オンラインバッジ”のランクが上がっていくので、世界中のプレイヤーと戦って最高位を目指してみるのもアツイ。

 それから、通常のひとり用レースでもゴールした際に“ワールドレコード”を確認して、いまの走りが世界で何位だったかチェックすることもできる。タイムトライアルが好きなプレイヤーは、とことん走り込んで世界最速を目指してほしいところだ。

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これはうれしいフォトモード

 本作ではゲーム中にポーズをかければ、いつでも好きなときに“フォトモード”に切り替えることができる。最近、『GRAVITY DAZE 2』や『Horizon Zero Dawn』でフォトモードにドハマりしたため、この機能の存在はマジでうれしかった。サンキューSIE!

 フォトモードでは、クラフト、操縦席、サーキットと視点を切り替え、カメラを自由に動かして撮影が可能。要するに、メーカーの公式スクリーンショットみたいなイカす写真を簡単に撮影できる機能だ。HUDのオンオフや明るさといった基本的なものから、“被写界深度”に加えて“レンズの絞り”、“焦点”などを調節可能。珍しいものでは“ぼやけ”、“シャッタースピード”も調整できる。クラフトのスピード感や疾走感をより強調したいときに使うとよさそうだ。高速走行しているプレイ中は、美しい街並がキチンと見えていないことが多いので、こういった機能で改めて景色を堪能できるのは非常にうれしい。

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▲カメラの位置は自由自在。クラフトの前方から撮影。
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▲シャッタースピードを変えて背景をブレさせてみた。

3タイトル分の大ボリューム

 本作の魅力をかいつまんで紹介させてもらったが、響く部分はあっただろうか。現状、最高の状態で『Wipeout』シリーズを楽しめるのが、この『Wipeout Omega Collection』。3タイトル分でボリュームは申し分ないし、加えて4K&HDR対応かつ60fpsでヌルヌル動く。画面分割によるローカル対戦も最大8人で競えるオンライン対戦もできて、いたれり尽くせり。

 決定版と言っても過言ではない仕上がりだと思うので、スタイリッシュなバトルレースゲームに興味がわいたら、ぜひこの機会に『Wipeout Omega Collection』を体験してみてほしい。とてもエキサイティングな体験になるのは間違いない。