狂気を感じるが何故か惹かれる『ファークライ』シリーズ最新作の誕生秘話

 2017年6月13日~15日(現地時間)、アメリカ・ロサンゼルスで開幕した世界最大規模のゲーム見本市“E3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)2017”。ファミ通.comでは、ユービーアイソフトが放つ期待作『ファークライ5』のエグゼクティブ・プロデューサー ダン・ヘイ(Dan Hay)氏へのインタビューに成功した。(ファミ通のインタビューに登場するのは、約5年ぶりである)

 ここでは、敵となるジョセフ・シードについてや、プレイ動画でお披露目させて以来、注目を浴びている犬のBOOMER、舞台にモンタナ州を選んだ理由などについて、時間の許す限り伺ってきたので、ぜひチェックしてほしい。

『ファークライ5』インタビュー 敵となるカルト教団の予言者“ジョセフ・シード”や犬の“BOOMER”について聞く【E3 2017】_04
▲『ファークライ5』エグゼクティブ・プロデューサー 
ダン・ヘイ(Dan Hay)氏(文中ではダン)

「“自由、機会、驚き”の3つを提供したい」

ーー前作『ファークライ4』で山岳地帯を舞台に選んだ理由は「象に乗りたかった」と答えていましたが、本作でモンタナ州を選んだ理由は何でしょうか?

ダン 5年ほど前からずっとアメリカ本土を舞台にしたものを作りたいと思っていたが、どのようにやるかわからなかったので保留にしていたんだ。3年前に具体的にどういったものにするか、飛行機を使うのか、ペットを取り入れるのか、辺境の地にするのか、どのようにしてアメリカで展開するのかなど検討した。またリアルなキャラクターにしたいがどういうキャラクター像にするか、カルトを取り入れるアイディアはどうかなども検討したんだ。
 いつの時点だったかわからないが、モンタナ州が浮かび上がり、“驚きに満ちた不完全な場所”、これこそ『ファークライ』だと感じたんだ。疑問の声もあったのでリサーチしてみると、歴史的にほかからは干渉されたくないと考える人たちが多く住まうところであることが分かったんだ。モンタナ州は辺境の地であり荒っぽいが、とても美しい場所で、この地域にはとてもクールなストーリーが背後にあることも分かったんだ。動物もたくさんいるしね。考えをまとめてモンタナへ向かい、2週間滞在したが到着後24時間以内にモンタナに夢中になった。ここでリタイアしたいと思ったほどだよ。その結果、この場所でやりたいということがとても明確になり、納得できるものになった。
 自分の考えでは、『ファークライ』のブランドというのはトワイライト・ゾーンに入ったと思っている。自分にはひとつのアイデアやピッチが、『ファークライ』に似合っているかどうかを判断するためのやり方をもっているんだ。例えば、自分がバーでスコッチを飲んでいるところを想像する。誰かが入ってきて隣に座り、私の話を聞き始める。ストーリーはその地に伝わる逸話であり、それを聞く。辺境の地での話でユニークな主人公がいてユニークな状況にあり、信じられるものであり、幻想的なものであればそれは『ファークライ』にぴったりのストーリーだ。そしてこのプロジェクトを進める中で気付いたのは、『ファークライ3』、『ファークライ4』、『ファークライ プライマル』のときも自分が想像していたこのバーは、モンタナにあるということだった。これに気付いてからはすべててが変わって、これからは誰かのピッチを聞いてバーで飲んでいるところを想像すれば、自分はいつもモンタナにいると感じている。

『ファークライ5』インタビュー 敵となるカルト教団の予言者“ジョセフ・シード”や犬の“BOOMER”について聞く【E3 2017】_01

ーーバースといいパガン・ミンといい、『ファークライ』シリーズのヴィラン(悪役)は複雑な内面を持っておりそして魅力的でもありますが、本作のヴィラン、ジョセフ・シードはどのような男でしょうか?

ダン まずバースでは錬金術のように色々なパーツを集めて、俳優にもそれぞれ違うものを演じてもらってキャラクターを作ってきた。パガン・ミンでも同じように作ったんだ。だが今回は、非常にパワフルな信念を持ったキャラクターたちであり、そしてその信念が正しいと信じている。またひとり対ひとりの話ではなく、彼らは世界の終わりが来ると固く信じ、できるだけ多くの人を救わなくてはいけないと考えているんだ。従ってプレイヤーにフォーカスしているわけではない。これはいままでと違う、おもしろい現象だと思う。また悪役とは当然闘争があるが、ジョセフは何かをやろうとしていて、プレイヤーはその邪魔をしているわけだ。彼は絶対に世界は終わると思っているので、やりたいことを続けていく。彼は人々に信じてもらえないだろう、反対されるだろうと思っているが、それでもほかの人を助けなくてはいけないと信じているんだ。そして人々が助かった時には、絶対に「ありがとう」と言ってくれるだろうと信じている。この関係によって複雑なゲームができている。

ーーでは、キャラクターイメージが先行して作られ、カルト教団という組織ができあがったのか、あるいはギャングや悪徳企業などではなくカルト教団を導入することが先に決まり、それに似合ったキャラクターが生まれたのでしょうか?

ダン 自分の中ではキャラクターが先にできあがっていた。このことはチームも知らないかもしれないね。自分が想像したのはふたつ。ひとつ目は、ホープ・モンタナの看板があり、そこにはグラフィティが施されている。どこかから街を見下ろして、この看板が語るストーリーのあるところへ行くということだ。ふたつ目はファーザーとそのファミリーの声が、最初から頭にあった。信念を持つ人物だ。そのイメージから、カルト教団ができ上がったんだ。

ーーでは、犬のBOOMERはどのような役割を果たすのでしょうか? 命令をして攻撃させたり、武器を奪ってもらうこともできるのでしょうか?

ダン 犬なので何か命令することはできるが、BOOMERは自分が好きなように行動するだけだ。「あの武器が欲しい、あいつを殺せ」と命令することはできるが、必ずしも武器を持ち帰るとは限らない。先日プレイしていてカルト地区へ入り攻撃方法を考えていたら、後ろからクマが現れ唸り声をあげたんだ。びっくりしているといきなりBOOMERがクマに向かって吠え、クマは驚いて後ずさり逃げようとした。そして襲われるのではなく、こちらがクマをハンティングする展開になったんだ。こんなことができるとは思っていなかったのでびっくりしたが、素晴らしい経験だった。

ーーAI対AIの戦いということですよね?

ダン そうだ。クマは野生のオスのせめぎ合いから逃げたわけだ。ほかにもこんなエピソードがあって……、とてもストイックな人たちが楽しそうにプレイしていたんだが、それでも感情をあまり出さずにプレイを続けていたんだ。でも、猛攻撃を仕掛けている最中にBOOMERが敵を倒した瞬間、そのストイックな人たちが「Good dog!」と大声をあげたのにはびっくりしたよ(笑)。

『ファークライ5』インタビュー 敵となるカルト教団の予言者“ジョセフ・シード”や犬の“BOOMER”について聞く【E3 2017】_02

ーーキャッチコピーの“Trust, Pray, Obey”とは誰に向けたメッセージですか?

ダン これはカルト内でファーザー(ジョセフ)が言っていることであり、実際に遂行されていて、ファーザーが“Trust, Pray, Obey”と言うときは、「自分を信じなさい、従えばすべて大丈夫だ」と言っている。だがゲームはそれより大きなものだ。ゲームを作っているときは、“自由、機会、驚き”の3つを提供したいと考えているので、『ファークライ3』、『ファークライ4』では前衛地を攻撃するようになっていたが今回はまず360度どこからでも攻撃できるようにした(自由)。そして、動物を導入して逸話が生まれる機会も作り(機会)、さらに攻撃をしてもプレイヤーが思った通りには進まないようにした(驚き)。これはクマや犬と同じだ。ドアの向こうに何が待っているかはわからない、しかし自由、機会、驚きを提供することにしているんだ。プレイヤーにどこへ行くかを指示するのではなく、真ん中に落として好きなところへ行き好きな人に会い、好きなやりかたでプレイしてもらう。『ファークライ5』では、北へ行ってもよし、飛行機に乗ってもよし、そしてドライブしてもいいんだ。

ーーでは、本作のCO-OPは進化していますか?

ダン 『ファークライ4』のCo-opではキャンペーンをプレイできなかったので、今回はCo-opでもキャンペーンを楽しめるようにしている。ほかにも、フレンドといっしょに飛行を楽しんだり車に乗って出かけたりして、楽しめるんだ。

ーー『ファークライ』シリーズファンにとって、本作の見所はどこでしょうか?

ダン 『ファークライ5』は、初めてプレイヤーのゲームの進め方に変化をもたらす機会を提供するゲームだ。『ファークライ3』や『ファークライ4』、『ファークライ プライマル』をけなしているわけではなく、つねに変化し続けているだけだ。どこへ行って何をしてもいい。間違った答えはない。

『ファークライ5』インタビュー 敵となるカルト教団の予言者“ジョセフ・シード”や犬の“BOOMER”について聞く【E3 2017】_03

 まさに『ファークライ』らしさが詰まったクレイジーなストーリーと、魅力的なキャラクターが多数登場する本作。いままでのシリーズとは異なるアクションにも注目していきたい。海外では2018年2月27日発売と少し時間が空くが、いまから発売が楽しみだ。