ふたりのプロデューサーに聞く!
クラシカルな2Dスタイルの『ソニックマニア』と、3D空間と高速で走り回るモダンな『ソニックフォース』。いずれもE3 2017の会場ではプレイアブル出展がなされ、とくに『ソニックフォース』は初公開の第3のプレイスタイルが遊べるとあって、たいへんな注目を集めていた。そんな『ソニック』の2作について、E3会場に来場していたセガゲームス飯塚 隆氏と、中村 俊氏に、新たに明らかになった情報や開発状況を、たっぷりと聞いてみた。
『ソニックフォース』第3のプレイスタイルはカスタマイズが可能!
――ついに公開された3つめのプレイスタイルは、まさかのカスタマイズが可能なキャラクターでした。このアイデアが生まれた経緯をお聞かせください。
飯塚 私がプロデューサーを受け持っていたプロジェクトの立ち上げ時に、今回のアバターシステムを考案しました。ここ何十年か『ソニック』を作っているあいだに「僕の考えたオリジナルキャラクターをぜひゲームに出してくれ!」という要望がたくさん寄せられ続けていたんです。とてもありがたいことなのですが、ユーザーの方が考えたキャラクターをそのまま採用するわけにはいきません。でも、そうしたファンの方の夢をどうにか叶えてあげたいなという気持ちがずっとあり、今回、カスタムキャラクターとして、ソニックといっしょに戦う自分だけのヒーローを、ゲームの中に登場させることにしました。
――それを受けて中村さんが実作業を進めていったのでしょうか?
中村 そうです。まず、カスタムキャラクター以前に、ゲーム全体の方向性としては、「ハイスピードアクションをド直球で作りましょう!」と定めました。 “アバター”と呼んでいるカスタマイズキャラクターも、その方向性に沿う形で作っていった感じですね。モダンソニックのシリーズはたくさんの仲間がプレイアブルキャラクターとして登場しますが、やっぱりキーワードとなるのは、ソニックと比べたときの遊びの感覚。これまではキャラクターごとに違うベクトルのアクションを制作することが多かったのですが、今回は3つのスタイルともハイスピードというコンセプトでで制作しようと決めました。
――なるほど。
中村 アバターの遊びがソニックを超えてもいけないし、下回り過ぎてもいけないしで、いろいろと悩みました。最終的なキャラクター設定としては、エッグマンに支配された場所にいる一市民が立ち上がって、ソニックとともに戦うということにしたので、それだったらこういうことができるだろうと言うふうにアイデアを膨らませていきました。
――今回の出展ではあらかじめ用意された中からランダムでアバターが出現する形でしたが、製品版ではどこまでカスタマイズができるようになるのでしょう?
中村 まずは顔や口、体の色、性別といった項目を選んで、自分の分身としてゲームをスタートします。選んだ種族によって、たとえばオオカミだったら、周囲のリングを吸い寄せられるといった固有のスキルがあるんです。
――武器やコスチュームもカスタマイズが可能なようですが。
中村 はい。アバターは『ソニックカラーズ』に登場したウィスプの力を借りた武器“ウィスポン”を使ってゲームを進めていきます。ウィスポンには、敵を攻撃する以外にもさまざまな機能があります。そこからゲームを進めることで入手できる、新たなウィスポンやコスチュームで、さらにカスタマイズを進めることができます。そうした要素の組み合わせによって遊びの幅が変わってくるので、自分なりの最適解を探すやりこみが楽しいですよ。
飯塚 ウィスポン、それにコスチュームなどの身につけるものは、ステージ間で付け替えが可能です。ステージ攻略で新しいパーツを入手して、それでアップグレードをしていく遊びになります。
――アバターは複数持てるのですか?
飯塚 あくまで自分の分身なので、ゲームを進める途中でキャラクターを変えることはできません。一度ゲームクリアーすることで、アンロックされる要素はあります。
――モダン、クラシック、アバターと、同じゲームの中に3種類のスタイルが登場しますが、それぞれの色分けはどうされているのでしょう。
中村 2D視点のクラシックと奥行き視点のモダンに関しては、いままで培ってきた歴史があって、その上で『ソニックフォース』ならではの仕掛けに注力しています。新規スタイルのアバターは、モダン同様にスピーディーでリズム感があるけれど、ベクトルが違う。たとえば、ボタンを押すタイミングが違ったり、動きに関してもウィスポンに幅を持たせてトリッキーさを入れることで、ソニックと違うテイストにしました。
エッグマン軍には歴代のボスと謎のリーダーの姿が!
――ストーリー面についてもお聞かせください。
中村 今回はストーリー面にも力を入れて、ソニックらしいヒーローたちの物語を描きたいと考えたんです。そこで仲間のキャラクターを操作できることで、世界観を含めたお話の広がりを出せればよいな、と。元々のストーリーコンセプトとしても“ヒーロー軍vsエッグマン軍”というのがありましたので。その中で誰を操作させようと考えていく中で出てきたのがクラシックソニックということです。
――ステージ攻略中に、テイルスやエミーといったソニックの仲間からの通信音声が入ってきますね。
中村 今回のソニックたちはエッグマン軍に立ち向かうレジスタンスを結成しているのですが、そこの本部からの情報になります。仲間たちがほかのエリアでどうしているかの“戦況”を感じてもらうために通信の演出を設けました。
――会場で公開されていた新たなトレーラーには、ソニックたちの目の前に立ちふさがる敵の存在が描かれていましたが、カオスやメタルソニックなど、過去作のボスキャラクターが勢揃いする姿が確認できました。
中村 はい。大きな勢力どうしがぶつかり合うという構図を描くために、過去のボスキャラクターたちがエッグマン軍として立ちはだかります。
――シャドウ、そして謎の新キャラクターの姿もありました。
中村 新キャラクターについては、エッグマン軍を束ねる存在である以上のことはまだヒミツです。
――これまではザコロボットの姿しか明らかになっていなかったので、正直「エッグマン軍……?」という印象でしたが、新トレーラーを見て合点がいきました。
飯塚 エッグマンが過去の強敵を引き連れて、最強の軍団としてヒーロー軍に挑むのが物語のキモとなります。それを束ねる謎の強敵を今回チラ見せしたというわけです。
中村 エッグマンだけが出てきて「世界のほとんどを制覇した」と言われても説得力がないなーと思われた方もいると思うのですが、じつはその裏には彼らの存在があったのです。「なぜシャドウが敵側にいるの?」というあたりも気にしていただけると、よりストーリーを楽しんでいただけると思います。
――ところで、タイトル発表後の反響はいかがですか?
飯塚 トレーラーなどの発表ごとは海外先行で行ってきたので海外のリアクションが先に入ってきますけど、昨年6月の最初のティザー映像、今年3月のトレーラー、そして4月のNintendo Directと、新しい映像を公開するたびにビューアー数は増加していて、世界のファンの方の好感触は実感しています。日本の方々には、今回お話がシリアスタッチということ、そしてカスタマイズで自分だけのキャラクターが作れるというところを好意的に思っていただけているようです。
――新たにゲームエンジンを“HedgehogEngine2”としましたが、そのことでの苦労はありますか?
中村 新エンジンの開発当初はいろいろな苦労はありましたが、それらをひとつひとつ解決して、最近はかなりのスピード感で開発が進んでいます。開発途中でNintendo Switchの発表があり、そこで新たなハードに対応するためもうひとつ大きな苦労がありました。プロジェクトが始まったときは「任天堂の新ハードが出るだろう」くらいの状況だったので……。でも、そこもやっと目途が立った感じです。
飯塚 Nintendo Switchに対応できるのも、自社でエンジンを開発している強みですね。他社製だと新規のハードウェアについては先方任せになってしまいます。やはり、『ソニック』のファンは任天堂ハードでシリーズをプレイしきた歴史もあるので、絶対に任天堂さんの新ハードで出そうということでプロジェクトがスタートしていますし、自社エンジンだからこそ実現できたと思います。
――今回のE3で初プレイアブル出展となりましたが、日本での公開はどんな予定になるのでしょう?
中村 日本では、9月の東京ゲームショウでのお披露目を予定しています。プレイアブルを含めて、大々的に打ち出していければいいな思っています。日本独自の新情報を出せるように調整中なので、『ソニック』ファンの皆さんご期待ください。
飯塚 新情報は日本の皆さんにも随時発信していきますので、公式サイトやファミ通さんをチェックしていただければと思います。
発売が迫る『ソニックマニア』はこだわりが満載!
――8月16日に発売が決まった『ソニックマニア』についてもお伺いします。E3出展バージョンについての解説を。
飯塚 GREEN HILL Act2とMIRAGE SALOON Act2の2ステージが遊べるバージョンを出展しました。前者はおなじみのステージがどう変わっているのかと驚きのボス戦を見てもらうため、後者は本作での新規ステージということで出展しました。それと、スタート時にソニック、テイルス、ナックルズの3キャラクターを選んでプレイができるようになっています。
――5月末には、新しいトレーラー映像も配信になりました。
飯塚 はい。映像には『ソニック・ザ・ヘッジホッグCD』からのステージを新たに追加しています。『ソニックCD』にあったタイムワープの要素はありませんが、そのテイストを感じられる工夫はしています。
――開発の進捗はいかがでしょうか?
飯塚 もう修羅場ですね(苦笑)。発売順からすると『ソニックマニア』が『ソニックフォース』より先にマスターアップするハズなのですが、同じくらいのタイミングになりそうです。正直、E3用の体験版ビルドを作る手間に躊躇するくらい忙しいです。
――開発者あるあるですね(笑)。
飯塚 でも、コンテンツとしてはすべてのステージとすべてのボス、ひととおり制作が終わっていて、現在はデバッグとチューニングが進んでいるところです。終わりは見えてきました。
――手応えはいかがでしょう?
飯塚 2Dゲームの純粋なよさ、遊びやすさが再現され、いい感じで仕上がっていると思います。気軽に遊べるし、見たことあるステージだけど「ここでこんなのが出てくるんだ!」といった驚きが詰まっています。私もビルドがアップされるたびに「おやっ?」という発見があるくらい、つねに更新がかかっています(笑)。『ソニックマニア』の名のとおり、クラシックシリーズが好きなファンの方には、たいへん楽しんでもらえる内容になっていますので、発売日を楽しみにお待ち下さい。
――ところで、毎年6月恒例のバースデーイベントはやるのでしょうか?
飯塚 例年は東京ジョイポリスでリアルバースデーイベントを行っていましたが、それだとどうしても遠方の方に情報が届けられないので、今年はオンラインでさまざまな情報をお届けしようと考えています。