アリソン・スノウ誕生の経緯を徹底追求
2015年のElectronic Entertainment Expo(以下、E3)で技術デモコンテンツが公開されて以来、多くのゲームファンから注目されてきたもうひとりのヒロイン、アリソン・スノウ。約2年の沈黙を破り、ついに正式タイトルとして発売されることになった、彼女が活躍する最新作の見どころを、シリーズの生みの親のひとり・玉置絢氏に直撃インタビュー! アリソンのビジュアルや性格、舞台設定に関する裏話などもたっぷり語ってもらった。
金髪美少女×のどかな日本家屋 アリソンはたどたどしい日本語がカワイイ
――シリーズ第1弾『サマーレッスン:宮本ひかり セブンデイズルーム』の発売から約半年が経ちましたが、ユーザーからの反応はいかがでしょうか。
玉置 「キャラクターとの距離が想像以上に近い」、「恥ずかしくて、顔を見て反応できない」、「この感動は実際に体験しないとわからない」など、印象的なご意見を多数いただきました。とくに、友だちの家でちょっと遊んで感動したとか、人に勧めたくなるタイトルとして受け入れられているのかな、というところは感じています。その一方で、「E3で発表された、金髪の女の子はどうなったんだ?」という声も非常に多くて。もともと『サマーレッスン』自体が、ソフトを発売して終了……ではなく、ユーザーさんからご意見をいただきながら、つねに新しいコンテンツの開発を目指すプロジェクトですので、皆様のご要望にお応えする形で『アリソン』編を開発・発売できることを、とてもうれしく思います。
――第2弾のヒロインであるアリソンは、どういった経緯で誕生したのでしょうか。
玉置 もともと、開発チームの内部で「ひかりちゃん以外に仲間を増やすとしたら、どんな子がいいだろう?」と話していました。そのときに、「金髪のキャラはどうか?」という意見が出たんです。ビジュアル面やCG技術的には、色素の薄いタイプの髪や肌のキャラとVRで出会ったら、どういう見え方をするのか? 誰も見たことがないのでワクワクできるのでは? ということでした。そういった研究開発の立場から新キャラクターが生まれてくるのも『サマーレッスン』プロジェクトらしいところだと思っています。実際、ひかりちゃんの黒髪とは表現の仕方がぜんぜん違うので、演算装置への負荷を抑えながらもキレイに透き通った色を表現したり、自然になびくように見せたりするのは、かなり苦労していますよ。アニメっぽい表現と、アリソンのキャラクター性の表現には、かなり違いがあります。アニメの中に出てくるような、大声で「~デース!」としゃべるようなキャラクター風にすると、すごく嘘が大きくなるんです。とは言え、ハリウッド女優のようなキャラクターにすると、こんどは親しくなれそうにない距離感と言うか、隔たりを感じてしまいます。VRでキャラクターと出会うという体験を多くの人に受け入れていただくには、親しみやすいキャラクターにしなければ意味がありませんから。そこは難しかったのですが、挑戦しがいのあるキャラクターです。
――単純に、髪の色を変えて終了……というわけではないのですね。顔立ちもかなり作り込まれています。
玉置 もともと鉄拳チームは、さまざまな国のキャラクターが登場していますので、いろいろな見た目を作るのが得意なんです(笑)。いま世界中で顔の表現技術はどんどん向上しているのですが、VRキャラクターと会話するという分野を根付かせるために、『サマーレッスン』はこの路線で行こうと決めました。ただ、ひかりちゃんの顔がベースにありますので、モデル作成はそれほど苦労していないんです。ひかりちゃんのときは、身長や目の高さなどの調整をかなりの回数行っているのですが、アリソンちゃんは数回でオッケーになりましたよ。
──こだわりを持って作られているのが伝わってきます。
玉置 それともうひとつ、『サマーレッスン』シリーズの新展開となる本作では、舞台の設定にもこだわっています。2014年のことになりますが、『ソードアート・オンライン』のOculus Rift用デモソフトを『サマーレッスン』開発チームが作成しました。こちらは、のどかな草原に寝転がり、ヒロインの寝顔を眺める……といった内容のコンテンツなのですが、このコンテンツをプレイされた方から、「開放的な空間で、この風景を眺めてじっとしているだけで、癒される」というお褒めの言葉をいただいたんです。その言葉をずっと覚えていたんですね。前作の『ひかり』編は、VRの特性を前面に打ち出すため、やや圧迫感のある狭い部屋が舞台になりましたが、本作はコンセプトを切り換え、“眺めているだけで癒される空間”を作ろうと思い、海辺にたたずむ日本家屋の縁側を舞台にしています。
――日本家屋に海外から来たヒロインとは、ミスマッチな気もしますが……。
玉置 いかにも日本家屋が似合う、純和風な風貌の教え子を用意することもできましたが、それだとあまりにもふつうすぎて、おもしろ味に欠けるなと。むしろそこに、ホームステイでやって来た女の子がいたほうが、組み合わせとしてはおもしろいのではないか? ならば、もともと考えていた“金髪キャラのVR表現”というネタが、ぴったり当てはまるのではないか? そんな偶然の合致から技術デモコンテンツを制作することになり、2015年のE3で発表したことで、アリソンはようやく日の目を見ることになったのです。
──アリソンはプロの歌手とのことですが、E3の技術デモコンテンツでも歌手として作られたのでしょうか。
玉置 E3版からは変えていませんね。ひかりちゃんは、“元気で明るい運動部所屬の女子高生”という、キャラクターとして分かりやすい人なんですが、“日本の文化を学びたい”というこの子はどういう子なんだろうと。その考えを深めるために、アメリカの人にとってのあこがれの職業を調べてみたんです。スポーツ選手や航空系の職業などがある中で、いちばん目を引いたのが“アーティスト”でした。歌手という職業は、キャラクターを作るうえで立ちやすいし、日本にいても分かりやすいので、歌手にしようと。また、日本の“アイドル”とも立ち位置が違うのもポイントです。そうして、雰囲気的に癒やされる場所、魅力的なキャラクターが決まりましたが、つぎはその設定をPVで紹介しなければならない。そのときに、“楽曲があったほうがイメージが伝わりやすいよね」という話になり、洋楽風の英語の曲にしてアーティスティックな感じにしました。それならこの子が歌手として演奏しているものにしたいと。ちなみに、このときに話題になった“本格的な洋楽風の楽曲”や、“ミュージックビデオ風のPV”の演出は、原田(※原田勝弘氏。『鉄拳』シリーズプロデューサー、『サマーレッスン』では立ち上げ時からの旗振り役)の提案だったんですよ。そのおかげで、アリソンはいまの時点でも多くの人に期待をいただいている、独特の人気があるキャラクターになれたと思っています。
――そんなアリソンとの交流が、約2年の時を経てついに楽しめるわけですが、技術デモ版から変わった部分はありますか?
玉置 まず、見た目ですが、オブジェクトの配置や雰囲気は、ほぼ変えていません。E3版を見て“欲しい”と思っていただけた方が多いので、なるべく変えないように注意しています。ただ、ゲームエンジンなどが進化、向上していますので、よりよくなるように微調整は行っています。大きな変化としては、話していることが理解できるようになりました。デモ版では英語でしゃべっていましたが、アリソンちゃんも登場してから2年の時が経って、本作では勉強中の日本語でしゃべってくれるようになっております。全編英語のままで、何をしゃべっているのかまったく分からない教え子、というのもロックでおもしろいとは思うのですが、それではあまりにも心の交流ができないので、先生と話しをしたい一心で、日本語で話しかけてくれます。アリソンちゃんが頑張ってしゃべる日本語にも注目していただけるとうれしいです。
――アリソンはどのような性格のキャラクターなのでしょう?
玉置 パッと見ると、なんだか気が強くて、ひとりでも生きていけそうな印象を受けるかもしれませんが、じつは見た目とは正反対の性格なんです。物静かで優しい性格で、ひかりに比べると、ちょっとほんわかした雰囲気の人ですね。とはいえ、プロのミュージシャンらしく、音楽に関しては情熱的な一面もあるので、ご体験の際には、そうしたギャップも楽しんでいただきたいですね。
今回のテーマは“癒やしのVR”! 独自のレッスンで日本の文化を伝授
――『サマーレッスン:アリソン・スノウ 七日間の庭』は6月22日配信予定ですが、もともとこのタイミングでのリリースを予定されていたのでしょうか? もしくは、ファンの要望に応える形で、発売時期を早めた……とか?
玉置 本来ならば、もう少し早めに展開したかったのですが、あまり前倒しにすると、せっかく『ひかり』編で蓄積したデータをフィードバックできませんので。もっと早く出してほしかったという方も多くいらっしゃるかと思いますが、ひかりで得られた知見を受け継げる最速のタイミングがいまだということで、ご了承いただけますと幸いです。
――夏休み以外のシーズンでも、彼女たちとの交流を楽しみたいという声も多いのでは?
玉置 よく、「『ウィンターレッスン』はいつ作るんだ?」と聞かれます(笑)。でも、夏の青空って本当にきれいで、VRの映像表現にすごくマッチするんですよ。技術的な向上もありますが、今回お届けする製品版では、技術デモ版よりさらに青空がきれいになっていて、背景もくっきり見えます。
──これまで展開されてきた『ひかり』編と、『アリソン』編には、どのような違いがあるのでしょう。
玉置 『ひかり』編は、プレイステーション VRと同時発売ということもあって、体験できる授業内容も“VRでできることのプレゼンテーション”という意味合いが強かったのですが、『アリソン』編は“VR空間に浸っていただくこと”に重点を置いています。これを“VRで癒されよう”というテーマで呼んでいます。好評発売中の『ひかり』シリーズにおいても、激しくて疲れるVRコンテンツなどを体験したあとで、“癒される”ために『サマーレッスン』に逃げ込むという現象が相当数起きていまして、だったら今度はその“癒やし”に特化して作ってみようと。学校や会社で疲れて帰ってきて、誰かにいっしょにいてほしい、心を癒やしてほしいと願うニーズはありますよね。それを叶えるのに、「VRなら、『サマーレッスン』がやらずに誰がやる?」という気持ちで、チーム一丸、取り組みました。
――前作では、主人公は“女子高生の家庭教師”という設定でしたが、本作では立ち位置も異なるのでしょうか?
玉置 基本的に“家庭教師と教え子”という関係性は変わりません。ただ、旅行中の彼女に、日本語や日本文化を教えてあげるというのがレッスンのテーマになります。その具体的なところは、配信開始までに追ってご紹介できればと思います。
――『ひかり』編をやり込んだユーザーからすると、両作の連動も気になるところですね。
玉置 連動要素もありますよ! “ひかり”を教えている先生と、“アリソン”を教えている先生は同一人物という扱いです。VRにとって主人公とはプレイヤーそのものですから。ですので、『ひかり』編でいい成績のセーブデータがあれば、先生のスキルが上がっているようなイメージで、プレイ状況に応じて“話題アイテム”が追加されます。授業選択時に使えば、成長度アップにつながるので、うまく活用していいエンディングへの短期到達を目指してください。それと、『サマーレッスン:宮本ひかり エクストラシーン 喫茶店編(衣装&シチュエーション)』というDLCをすでに配信していますが、そちらをお持ちの方は、同じ喫茶店の服装を『サマーレッスン:アリソン・スノウ 七日間の庭』で最初から利用可能になります。また、6月21日に配信予定のパッチを適用した状態であれば、パッケージ版の『サマーレッスン:宮本ひかり コレクション』をお持ちの方も同様に、喫茶店の服装をアリソンちゃんで利用可能になります。『花火大会編(衣装&シチュエーション)』の浴衣のほうは、花火鑑賞のイベント中のみの専用衣装ですので、残念ながらアリソン・スノウでは使用できないのですが……。今後も、ひかりちゃんを含めた、『サマーレッスン』の世界の全体を楽しんでいただけるとうれしいですね。
――衣装の連動は、ファンにはうれしいポイントですね。続いて『サマーレッスン』シリーズの、今後の展望についても教えていただけますでしょうか?
玉置 本シリーズでご提供するVR体験のシチュエーションにおいて、決められた枠のようなものはなく、ユーザーの皆様のご意見を積極的に取り入れながら、さまざまなシチュエーションを盛り込むようにしています。そんな中、このたびようやく、もっともご要望の多かったアリソンとのコミュニケーション体験を、製品として世に送り出せることとなりました。もちろん、『アリソン』編で終了するわけではなく、その後も続々と追加コンテンツを予定していますので、今後の展開にもご注目いただきたいですね。
――それでは最後に、ファンの皆さんに向けて、メッセージをお願いします。
玉置 初お披露目から随分と時間が経ってしまいましたが、ようやくアリソンと、ひと夏の交流を楽しんでいただけることになりました。まだ日本語には不慣れですが、がんばってコミュニケーションを取ろうとする彼女と正面から向き合い、ぜひ、いろいろなことを教えてあげてください!
サマーレッスン:アリソン・スノウ 七日間の庭(基本ゲームパック)
メーカー | バンダイナムコエンターテインメント |
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対応機種 | PSVPlayStation Vita / PS4プレイステーション4 |
発売日 | 2017年6月22日配信予定 |
価格 | 2759円[税抜](2980円[税込]) |
ジャンル | コミュニケーション |
備考 | CERO:15歳以上対象 ダウンロード専売、プレイステーション VR専用 『サマーレッスン:アリソン・スノウ デラックス版』は6月22日配信予定、7704円[税抜](8320円[税込]) |