当時人気の投稿プログラム『ZEPLIS』のデモも

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▲“第56回静岡ホビーショー”で初公開された“PasocomMini MZ-80C”

 2017年5月11日~14日まで、ツインメッセ静岡(静岡市)にて開催された、日本最大級の模型見本市“静岡ホビーショー”。タミヤやバンダイなど静岡に本社や工場を構える企業をはじめ、国内の模型メーカーが一堂に会し、プラモデルやラジコン、ダイキャストミニカーやNゲージなどの新製品を展示するイベントで、今年で56回目を迎えた。

 やはり静岡に本社を置くアオシマこと青島文化教材社も、毎年、大規模なブースを出展。近年は伝統の艦船模型“1/700 ウォーターライン”シリーズを活かし、『艦隊これくしょん -艦これ-』人気に応えて仕様変更した“1/700「艦これ」プラモデルシリーズ”などをフィーチャーした展示で注目を集めていた。今回、その一角にて本邦初公開されたのが、ハル研究所の“PasocomMini MZ-80C”だ(10月中旬発売予定、予価19800円[税別])。

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▲“第56回静岡ホビーショー”にて大盛況のアオシマブース。

 “PasocomMini MZ-80C”とは、1979年にシャープから発売されたパソコン“MZ-80C”を、手のひらに乗る1/4スケールモデルとして再現したもので、SBC(シングルボードコンピュータ)“ラズベリーパイA+”を内蔵している。この筐体部分を制作しているのがアオシマということで、“静岡ホビーショー”でのお披露目となった。

 実機のオールインワン設計を精巧に再現した“PasocomMini MZ-80C”だが、ディスプレイやキーボード、カセットテープレコーダを実際に使うことはできない。ただ、“ラズベリーパイ A+”の仕様により、モニターはHDMI接続、キーボードはUSB接続が可能で、microSDカードも使える。さらに、スマイルブームの“SmileBASIC”を搭載しているのでプログラミングもできるし、MZ-80シリーズのエミュレータが組み込まれているため、当時のコンピュータ誌に掲載されていたマシン語のプログラムを実行することも可能だ。

 会場では、実際にモニターとキーボードを接続しての実演を公開。デモンストレーションでは、当時人気だった投稿プログラムのシューティングゲーム『ZEPLIS』を見ることもできた。なお、“PasocomMini MZ-80C”市販時には、この『ZEPLIS』を含め3タイトルのゲームを同梱する予定とのことだ。

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▲会場ではモニターとキーボードを接続しての実演展示が行われていた。
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▲デモンストレーションでは『ZEPLIS』を見ることもできた。

“PC-8001”や“FM7”の試作品も参考出展

 さて、“静岡ホビーショー”は前半2日間がビジネスデイとなり、後半2日間は無料にて一般公開される。取材当日は一般公開日で、“PasocomMini MZ-80C”の展示コーナーにはゲストたちがひっきりなしに訪れ、試作品を興味深そうに眺めたり、すがやみつる先生描き下ろしマンガ入りのチラシを手にしたりしていた。

 会場では、ハル研究所の開発担当者自らがゲストに対応。「自分がこういうのが欲しかったから作ることにした」という同社代表取締役社長の三津原敏さんによると、ビジネスデイに訪れていた業者さんの多くは年代的にドンピシャだったようで「食いつきがよかったです。問屋さんから“扱わせてもらえないか”という問い合わせも何件かありました」とのこと。また、ただのスケールモデルではなくSBCを内蔵していることを説明するため、“これはコンピュータです”と説明していたところ、「見ればわかるよ」と言われてしまったんだとか。確かに、クルマでも艦船でもなくパソコンなのは一目瞭然だ(笑)。悩んだあげく、“こちらはコンピュータです。実際に動きます”との説明書きとなったが、そこはホビーショー。「“これ、完成品ですか?”と聞かれるんですよ。最初は何を言っているのかわからなくて“そうです”と答えていたんですけど、組み立てキットなのか完成モデルなのかって質問だったんですよね」。“PasocomMini MZ-80C”は“BEEP秋葉原(店頭・ECショップ)”のみでの販売となるが、「たとえばデパートに置いたとして、売り場の店員さんが説明できないと思うんです」との三津原さんの判断にも納得がいく。

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▲会場では『こんにちはマイコン』ならぬ『こんにちは! PasocomMini MZ-80C』が掲載されたチラシを配布。
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▲ハル研究所 代表取締役社長の三津原敏さん(写真左)と開発ディレクターの郡司照幸さん(同右)。

 取材当日はすでに発表後ということで、“PasocomMini MZ-80C”を目当てに会場を訪れる元マイコン少年たちの姿も。ブースには同じく1/4スケールの“NEC PC-8001”と“FUJITSU MICRO 7”の試作品も参考出品され、そちらにも注目が集まっていた。「“オレは○○を使っていたんだけど、商品化されないの?”って聞いてくる方が多いんです。そこから当時の思い出話になってしまって」とは、開発ディレクターの郡司照幸さん。三津原さんは「もちろん、シリーズ化を希望しています。自分がいろんな機種を並べてニヤニヤしたいですから」と、今後の展開について触れた。

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▲参考出品された1/4“NEC PC-8001”。
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▲参考出品された1/4“FUJITSU MICRO 7”。

アオシマの開発担当者は当時“COMPO BS/80”を使っていた!

 郡司さんは、筐体部分をアオシマに依頼した経緯について、「昔、お蔵入りになった企画でやり取りがあったので。それに、軍艦島や漁船を商品化しちゃうようなメーカーさんなので、もうアオシマさんしかないでしょう」と説明。いざ、アオシマに企画を持っていくと、古いコンピュータに詳しい担当者が対応してくれて驚いたという。

 アオシマ企画開発部の堀田雅史さんは、当時のコンピュータはほとんど触っていたという強者。NECのワンボードマイコン“TK-80”や、それを専用キャビネットにおさめた“COMPO BS/80”まで使っていたことがあるというからビックリだ。しかも堀田さん自身、パソコンをスケールモデル化する企画を会議に提出し、没になっていたという経緯もあった。

●アオシマの開発担当者は当時“COMPO BS/80”を使っていた!

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▲アオシマ企画開発部の堀田雅史さん。

 「私の企画はあくまでもプラモデルで、実際に動くものを作りたいというハル研究所さんの考えとは開きがあった」と語った堀田さんだが、打ち合わせで“SmileBASIC”を知るとニンテンドー3DS用『プチコン3号』を実際に使ってみたりして、「キチンと遊べて鑑賞に堪えられるものを作りたい」というハル研究所のコンセプトへの理解を深めていったそうだ。

 板金製である“MZ-80C”の筐体をプラ板で再現するにあたっては、「デザインで本物に近づける工夫をしました」とのこと。たとえば、もともと薄い作りの板金を、プラ板にて忠実に1/4の薄さで再現すると、カセットテープレコーダーの開口部分などは薄すぎて割れてしまうそうだ。そこはアレンジで対応したという。

 クルマのモデルなどと違ってディフォルメはせず、忠実に再現することを大切にし、「郡司さんのチェックは厳しかったですね(笑)。譲らなかった」と回想した堀田さん。郡司さんは「本物と並べると、やっぱりいろいろ違いはあります。でも、色からなにから、“記憶のなかのMZ”とは合っているのでは」と、そのこだわりを語っていた。

 “PasocomMini MZ-80C”は2017年6月1日より予約受付を開始する。