VRが新たなUIの未来を切り拓く! VRコンテンツのトップクリエイターが描く“空間UI”の可能性【TOKYO SANDBOX 2017】

2017年5月10日から14日まで、“TOKYO SANDBOX 2017”が開催。11日には、開発者向けのサミット“PUSH”がTKPガーデンシティ渋谷で開催された。ここではそのサミットの中から、VRを新たなインターフェースの可能性として捉えたセッションについてリポートする。

●VRコンテンツを手掛けるトップクリエイターが共演

 2017年5月10日から14日まで、インディーゲームにフォーカスした大型複合ゲームイベント、“TOKYO SANDBOX 2017(東京サンドボックス 2017)”が開催。11日には、開発者向けのサミット“PUSH”がTKPガーデンシティ渋谷で開催された。ここではそのサミットの中から、VRを新たなインターフェースの可能性として捉えたセッションについてリポートする。

 最初のパートは、エクシヴィ 代表取締役・近藤義仁氏による“The Future Now Virtual Reality Operating System”。この講演では、VRに向けたOSの現状についての説明が行われた。
 ちなみに近藤義仁氏だが、“GOROman”という名前のほうが有名だろう。2012年、Oculus RiftのDK1と出会い「人生を狂わせられた。全部パルマー(※Oculus社の共同創業者、パルマー・ラッキー氏)のせいです(笑)」という近藤氏だが、「将来、VRの時代が来る」と確信。2013年ごろからたくさんのVRコンテンツを作り始め、現在では、自分の会社であるエクシヴィに戻り、経営者として、またこれまで通り“VRの伝道師”として、幅広い活動をしている。

 近藤氏はUI(ユーザーインターフェース)の歴史を振り返り、CUI(Character User Interface)から現在のGUI(Graphical User Interface)へと発展し、将来はSUI(Spatial User Interface)の時代になると説いた。“Spatial”、つまり立体を使ったUIのことで、さまざまな素材を上下左右のどの空間にも配置できる。平面だったデスクトップの狭いスペースに限らず、広いスペースを使用できるようになるとのことだ。現在はまだHMDは大きいが、いずれHMD(ヘッドマウントディスプレイ)が小型化・軽量化・スタンドアローン化されていけば、SUIが主流となり、PCやスマートフォンが不便に感じる時代が来るだろうと説明してくれた。

▲エクシヴィ 代表取締役・近藤義仁氏

▲CONCEPT DEMOを担当したのは、エクシヴィのエンジニア・WATARU氏。

 続いては“The New Face of Interface”と題されたパネルセッションへ。2014年にスタートした、日本初のVR専門Webメディア“PANORA”を手掛ける広田稔氏(パノラプロ 代表取締役)をモデレータに、近藤義仁氏、能代和哉氏(ViRD 代表取締役社長)、根岸匠氏(ねぎぽよちゃんねる 開発者)が、VRコンテンツにおけるインターフェースについてディスカッションした。

▲左から、近藤義仁氏、能代和哉氏、根岸匠氏。

▲モデレータは、広田稔氏が担当。

▲能代氏が「いちばん簡単な3Dモデリングツールを作ろう」と開発した『Makebox』は、VRで3Dモデリングが簡単に作れる。2017年1月よりOculus Storeで、Viveでは5月10日より販売を開始している。

▲根岸氏は某社に勤めながら、VRで本を読んだり、買ったりする体験ができるアプリ『VR本屋(VR Bookstore Project)』を開発中。ちなみに、“ねぎぽよちゃんねる”は根岸氏のサークル名。

 今回のパネルディスカッションでは、3つのテーマが提示された。

Question 1:VR/AR/MRにおけるインターフェースの理想形は?
 まずは、3人が現在目指している“ゴール”がどこなのかについての質問。

 近藤氏は、自分の頭の中に思い描いた期待通りのものが理想だとし、たとえば、エレベーターに乗った時、実際のボタンに触れずにVR上で行先ボタンを押す、といった例を上げた。現在は空間上に行先ボタンを表示できたとしても、“ボタンを押す”という感覚はないが、将来的にはVR上でも実際にボタンを押したようなフィードバックが得られるようになるのが究極のインターフェースだと言う。能代氏も「UIは、自分のやりたいことを実現するもの」と定義し、近藤氏のエレベーターの例は好例だとした。また、将来的には、HMDを付けずともディスプレイを表示させられるようになるのが理想だと語った。根岸氏も、人間には簡単かつ楽に操作したい願望が根本的にあるとしたうえで、まさに近藤氏のエレベーターの例がすべてを示しているとした。

 こうした“空間UI”が実現すると、物理的な制約がなくなるので、さらにVRが飛躍する可能性を秘めているのだろう。近藤氏もMicrosoft HoloLensなどを体験して、“空間UI”は夢物語ではなく、確信的なものだと認識しているそうだ。

▲ちなみに先日の“Unite 2017 Tokyo”でも、グーグルが“空間UI”について講演した。

Question 2:そのゴールに向けて、いま作っているVRタイトルでは、どんな工夫をしている?
 “空間UI”の話を受け、VRコンテンツを作る際にどんな工夫をしているかという質問。根岸氏は、『VR本屋』では実際の本屋で不自由に感じる点を取り除くように工夫しているそうだ。また、VRなら仰向けの状態でも腕が疲れることなく本を読める点は、VRならではの特徴であり、強みになるという。
 能代氏は、それほど遠い未来を設定しておらず、そもそも一般的に作るのが難しいと思われている3Dモデリングも、VRなら簡単に、直感的に作れることを『Makebox』を通して伝えたかったそうだ。それによりクリエイターが増え、VRやARのコンテンツが作りやすくなるのではと考えている。
 近藤氏は能代氏の意見に共感しているといい、たとえばパソコンの登場で、楽器が弾けなくても作曲ができるように、VRによって、苦手だと思っていたクリエイティブ領域が少なくなることで、今後さまざまなクリエイターが増えるのではないかと予想した。近藤氏の目指すゴールは、VRがより便利に、より生活に溶け込むようにしたいというもので、スマートフォンも使うことでより生活が豊かに、そして便利になったからこそ、10年でここまで発達し、普及した。ゆえに、VRをOSの中心として捉えていて、そのために3つ工夫しているという。それは、音声認識、バーチャルなキャラクター、パブリックによるフィードバックとのことだ。

 また、広田氏は、現在VRが注目されているのは、便利さというよりも目新しさによるものと分析している。ということは、目新しさを感じなくなった途端に使われなくなる可能性をはらんでいる。そのため、“便利さ”を重要視しているパネラーの意見に感心していた。

Question 3:インターフェースのアイデアは、どんなところから得ている?
 能代氏は「ひとつには絞れない」としながらも、『遊戯王』でモンスターを召喚するシーンなどを挙げた。しかし、あまりに未来的過ぎるデザインにしてしまうと、ユーザーからは使いづらくなってしまうことを危惧しているので、『Makebox』ではiPadのようなタブレット感覚で操作できるように工夫している。そういった工夫ができるのも、VRの強みだという。
 根岸氏の『VR本屋』は、やはり実際の本屋を参考にし、前述のように、本屋で面倒と感じるような部分を取り除いているとした。VRの特徴である“空間を利用した表現”により、そういった問題点の解決を図っているそうだ。
 近藤氏は、アイデアはたくさんインプットしないと浮かんでこないとし、それこそ今までに見たアニメやSF映画など、たくさんの作品を参考にしているそうだ。そして、それらを咀嚼することで、さまざまなアイデアに昇華されるそうで、一方では、それまでの常識を一度捨てることを意識しているという。マウスのクリックが、スマホではフリックになったように、今度はVRで別の操作方法が生まれるだろうと考えている。

 最後は参加者からの質問コーナー。VR機器が子どもの体に与える悪影響の可能性として、HMDの場合、多くは対象年齢が設定されていることについて、近藤氏は「パソコンも目が悪くなるから止めなさい、と言われましたよね?」とパソコンが登場した当時のエピソードを出し、VRでは目への負担なども科学的に解明されて、将来は学校の視聴覚室にVR機器が置かれるようになっているのでは、と予想した。

 また、広田氏から「2016年は“VR元年”などともてはやされたが、ぶっちゃけ今後儲かりそうですか?」と、ストレートな質問が投げられた。根岸氏は「現状は儲かりづらいですね」と答え、能代氏も「儲かっていないです(笑)」としながらも、「どんどんと進化していくVR業界を楽しまない手はない」と前向きな答え。
 そして近藤氏は、「自分が楽しんで開発することが大事で、お金はその後についてくるはずと信じている」と熱弁をふるうとともに、「10年後には、みんな超お金持ちになっているのではないか(笑)」と大きな夢を語ってくれた。

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