インディーゲームの複合イベントが開幕! 角川ゲームスの安田社長が基調講演で“日本のゲーム産業に対する大いなる誤解”を語る【TOKYO SANDBOX 2017】

2017年5月10日~14日に都内各所で開催されるインディーゲームの複合イベント“TOKYO SANDBOX 2017(東京サンドボックス 2017)”。5月10日には開幕を飾る“プッシュ”が、東京・渋谷“JINNAN CAFE(ジンナンカフェ)”にて開催された。ここでは、その模様をお届けしよう。

●「日本のゲーム産業にとっても歴史的なイベント」

 2017年5月10日~14日に都内各所で開催されるインディーゲームの複合イベント“TOKYO SANDBOX 2017(東京サンドボックス 2017)”。“プッシュ”、“VR ラウンジ”、“東京インディーフェス”、“コーディング・フォー・ライフ”の4つのパートで構成されている同イベントだが、5月10日には開幕を飾る“プッシュ”が、東京・渋谷“JINNAN CAFE(ジンナンカフェ)”にて開催された。イベントでは、まずは“TOKYO SANDBOX 2017”を主催するkulabo, Incのオーガナイザー、ケヴィン・リム氏が登壇。「デベロッパーのサポートを目的として、“TOKYO SANDBOX 2017”を開催しました。サポートを行き届かせて、この業界を盛りあげていきたいです」と挨拶した。

▲kulabo, Inc ケヴィン・リム氏

 “プッシュ”は5月10日、11日、12日のあいだ行われるのだが、初日の10日に用意されているのは投資家向けのセッション。インディーゲームと投資家との組み合わせは、記者にとって正直理解の及ばぬ部分ではあったのだが、何事も先立つものはお金……ということで、“投資家からの資金援助を受けてゲームを制作する”という流れがあるようだ。“TOKYO SANDBOX 2017”には、デベロッパーと投資家の “マッチング”も大きな目標としてあるのだ。この日、基調講演を行ったのは角川ゲームス代表取締役社長、安田善巳氏だったのが、30年にもおよぶそのゲーム業界歴において、投資家とゲームメーカーの経営者にしてプロデューサーという“ふたつのキャリア”をほぼ半分ずつ経験したという安田氏は、今回の基調講演としては適任だったと言えるだろう。

▲角川ゲームス 安田社長。

 “日本のゲーム産業に対する大いなる誤解”と題された講演で登壇した安田氏は、「ゲーム業界に30年関わっていますが、クリエイターと投資家が一堂に会するイベントはおそらく初めてで、日本のゲーム産業にとっても歴史的なイベントです」と口火を切ったあとで、日本のゲーム産業の現在の状況を伝えつつ、「クリエイターとインベスター(投資家)がうまくいくための問題意識を提供したい」と、本講演の趣旨を語った。

 “日本のゲーム産業に対する大いなる誤解”とは、日本のゲーム産業がシュリングしているという世間の認識。安田氏は、「日本のゲーム産業は1997年をピークに右肩下がりの状況にあり、技術力的にも欧米に比べて遅れを取ったというのが一般的な認識だと思いますが、それは違います」とコメント。「いまは、これまでのトレンドとはだいぶ違う市場が生まれている」と続けた。違う市場とは、言うまでもなくモバイルゲームだ。モバイルゲーム市場は年々急成長を遂げており、信用できる調査機関によれば全世界での市場規模は3.6兆円。うち日本市場は9453億円と、世界ナンバーワンのマーケットになっているのだという。アメリカが8700億円というから、日本市場の規模がうかがい知れる。

 また、日本市場にはクオリティーの高いコンテンツが溢れていると安田氏は言う。「日本のモバイル市場は他国に比べて規制が少なくオープン。ゲームのおもしろさで競われるから」というのがその理由だ。そんなモバイルゲームの躍進により、日本のゲーム産業は新陳代謝により活性化が進んでいるという。安田氏は、日本には1600社のゲーム会社が存在し、GDPは4兆円規模だが、モバイルゲームの成功者が続々と登場し、株式を公開。10年前と比べて、企業価値の総計は2倍の7兆円に及ぶらしい。

 ファイナンスの立場から見ると、日本のゲーム産業はラッキーで、「日本の市場が解放されるタイミングで、日本のゲーム産業が成長していきました。1990年前半、スーパーファミコンやPCエンジン、メガドライブの時代に多くの企業が上場していったんです」(安田氏)という。

 一方で、この5年もたくさんのモバイルゲーム企業が上場しており、資金調達ができているという状況にあるようだ。ただし、現状のファイナンスはあくまで成功した人に対する資本政策が中心で、スタートアップやリスクファイナンス(リスクに備えての資金面での対応)はないと、安田氏。さらに、日本の中堅のゲーム企業は、大手パブリッシャーからの開発資金でゲーム開発を行い、運転資金を銀行から調達している現状をレクチャーしてくれた。

 自身投資をしているという安田氏は、「こういう業界に関わった者としては、(投資は)あまりうまくいかないというのが率直な感想だと思います」と前置きしたうえで、“クリエイターと投資家のマッチング”を目標としている本イベントの来場者に対して、双方の立場に立ってのコメントを寄せてくれた。

 まずクリエイターに対しては、「ゲームビジネスは複雑でわかりにくいですが、(投資家に対して)わかりやすく説明することができます。いかにそれを的確にプレゼンして、パートナーに理解してもらい、目的を共有できるか」が大事だとした。さらに、ヒットはご褒美であって、(もちろんそれを望むが)結果として起こればいいくらいの感覚でいたほうがいいと安田氏は続け、大切なのは「いかにいい会社にしていくか」や「スタッフが活き活きとして働けるか」を考えることであると語った。そのためには、小さな成功や1度失敗してもへこたれない姿勢だとした。そして、「ゲームに関わる技術がエンターテインメントとして拡散するという問題意識を持っているかどうか」や「相手はこういう物差しだという視点で見てほしい」とアドバイスした。

 続けてファイナンスに向けては、クリエイターは、ファイナンスに関して知識がある人とない人の2種類にわかれると説明。ときに、ファイナンスに興味はあるけれど、よくわからないので、こういう交流会に出てみようという人もいるとのことだが、実際のところ学校教育でファイナンスを教える機会はなく、なかなか理解が及ばないのが現況だという。「ファイナンスは人間で言えば血液なので、なくなれば死んでしまうので、とても大切ですが、多くの人にその認識がない」との安田氏の言葉はわかりやすく、いかにファイナンスを重要視しているかがわかる。「ファイナンスが仕事だというゲーム会社の経営者にはお目にかかったことがない」と安田氏。クリエイターは、クリエイティブに物事を変えていこうという発想でいるので、おそらくファイナンスでも大きなポテンシャルを持っているのだが、「残念ながら食わず嫌い」だという。

 さらに安田氏は、「出会いの場では寛容な気持ちでいてほしいです。クリエイターはどこまで口を出すかを気にするので」とコメントしつつ、「コミュニケーションをするために、メニューみたいなものを出すのがいい機会になるのではないかと思います」と助言した。

 さて、冒頭で述べたとおり、“TOKYO SANDBOX 2017”は、“プッシュ”、“VR ラウンジ”、“東京インディーフェス”、“コーディング・フォー・ライフ”の4つのパートで構成されている。“プッシュ”は関係者を対象としたゲームサミットとなるが、5月14日に行われる“VR ラウンジ”、“東京インディーフェス”及び“コーディング・フォー・ライフ”は一般の入場が可能だ。とくに、80社以上のデベロッパーが集まる“東京インディーフェス”は、最新のインディーゲームに触れる絶好の機会と言えるだろう。一般入場券は発売中なので、気になる方はお求めになってみては? 前売り券は2000円(学生1000円)となっている。

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