いまだから語れる! 新ボスキャラクター誕生秘話

 2017年1月19日発売に発売された、『GRAVITY DAZE 2 重力的眩暈完結編:上層への帰還の果て、彼女の内宇宙に収斂した選択』の大型DLCとして、2017年3月21日から配信中の『GRAVITY DAZE 2 Alternative Side:時の箱舟 -クロウの帰結』。このDLCには、吉川達哉氏と竹安佐和記氏がゲストキャラクターデザイナーとして参加し、クロウの強敵となるキャラクターをデザインしたことが話題となった。今回は、吉川氏、竹安氏のおふたりと、クリエイティブディレクターの外山圭一郎氏にインタビュー。新しい敵キャラクターのデザインや、本DLCの魅力についてうかがった。ラスボス関連で多少ネタバレもあるので、まだ知りたくないという人は、先にクリアーしておくことをオススメする。

【ネタバレ注意】『GRAVITY DAZE 2』クロウ編DLC特別企画 吉川氏&竹安氏&外山氏インタビュー_02
■吉川 達哉氏(写真左、文中は吉川)
“光の番人 ルミノ”と“闇の番人 テネブリア”のデザインを担当。『ブレス オブ ファイア』シリーズなど多数の作品でゲームキャラクターをデザイン。テレビアニメ『ブブキ・ブランキ』(2016年放送)では巨大人型生命体“ブランキ”のデザインを担当した。

■外山圭一郎氏(写真中央、文中は外山)
ソニー・インタラクティブエンタテインメントJAPANスタジオのクリエイティブディレクターで『GRAVITY DAZE』シリーズの産みの親。『SIREN』シリーズなど、ホラー系のゲームの制作にも定評がある。

■竹安佐和記氏(写真右、文中は竹安)
“時空の番人 ガベージコレクター”と本DLCの最終ボスをデザインした。『El shaddai(エルシャダイ)』ディレクター兼キャラクターデザイナー。『GOD WARS ~時をこえて~』ではモンスターデザイナーを担当。 東京・新宿の『エルシャダイ』のギャラリー兼カフェ“ギャラリーエルシャダイ”で2017年4月28日~5月16日まで“エルシャダイ6周年記念展”を開催中。

『GRAVITY DAZE 2 Alternative Side:時の箱舟 -クロウの帰結』とは

2017年3月21日から無料で配信されている『GRAVITY DAZE 2』の大型DLC。本編ではキトゥンのパートナーであるクロウが主人公となり、『GRAVITY DAZE』で箱舟に囚われてしまった子どもたちを救うための戦いが描かれる。

【ネタバレ注意】『GRAVITY DAZE 2』クロウ編DLC特別企画 吉川氏&竹安氏&外山氏インタビュー_03
【ネタバレ注意】『GRAVITY DAZE 2』クロウ編DLC特別企画 吉川氏&竹安氏&外山氏インタビュー_01

数年越しでやっと実現したゲスト参戦

――吉川さんと竹安さんは、カプコン時代の先輩後輩ですよね。お会いになったのは久しぶりですか?

吉川 そうですね。今日、久しぶりに会いました。

竹安 何年かぶりですよね。いきなり敬語で話し掛けられたので、「敬語はやめてください」と(笑)。吉川さんは、僕がサラリーマンになって、初めて教えてもらった方ですから。大先輩に敬語を使われると、ぞわっとします(笑)。僕が入社してすぐ、吉川さんのところで研修だったんです。「ドラゴンを下から見た絵は、こうやって描いたらいいんだよ」とか、教えていただきました。

吉川 みんなドラゴンを横から描いていたから「下からも描けるんだよ」と。

竹安 ええ。よ~く覚えています。

――先輩後輩と言うより、師匠と弟子のような感じですね。

竹安 そうなんです。だから当時はこんなふうにごいっしょできるとは夢にも思っていなかったですよ。だから、今日は何かやりづらいですね(笑)。

――(笑)。いろいろとうかがっていきますので、そう言わずに。では、まず最初に、外山さんにうかがいますが、今回、おふたりにキャラクターデザインを依頼するという話は、いつごろ決まったのですか?

外山 これが少し複雑で、ゲストとしてキャラクターデザインをお願いしようという話は、プレイステーションVita版の『GRAVITY DAZE』(以下、『1』)のころに決まったんです。まだ描けていない部分を描く大型DLCをやりたいと考えて、お話をさせていただいていたのですが、そのときは実現に至らなかったんです。おふたりには申し訳なかったのですが……それから数年(笑)。今回、あらためてお願いする形で、やっと実現したというわけです。

――前作のころからだとすると……かなり温めましたね(笑)。それで、そもそもおふたりを指名された理由というのは?

外山 おふたりとも、日本のゲーム文化のよさを持ちつつも、無国籍感というか、日本的な枠を越えた部分も持ち合わせている。そういった部分にすごく魅力を感じていたので、お声を掛けさせていただきました。

――おふたりは、オファーを受けたときに、どんな感想を抱かれましたか?
吉川 最初にデザインを見せてもらったときに、昔関わっていた作品との親和性を感じたので、「できるものなら、ぜひ!」という感じでお話をさせてもらいました。

竹安 ふつうに『1』はユーザーとして遊んでいましたからね。まさかこういう形で参加できるとは思っていなかったので、うれしかったです。

――あらためて声を掛けられたのは、『2』の本編がひと段落したあたりですか?

外山 いいえ。前作のDLCはサイドミッション的なものでしたが、『2』はサイドミッションが充実しているので、『1』と同じようなサイドミッションではなく、クロウ編として大型DLCでやろうというのは、当初から決まっていました。ですから、企画を立ち上げた後、タイミングを見ながらお話を進めていくという形でしたね。

――おふたりにどのようなキャラクターを描いてもらうかというのは、『1』のときから決められていたのですか?

外山 『1』のときは、とにかく身体が動いた、という感じで、考える前にお話をしました。ですが、『2』でお話を持っていくときは、2回目ということもあったので、ちゃんとしようと(笑)。物語もある程度固まって、キャラクターの立ち位置や役割が決まった時点でお願いしました。

――吉川さんは、外山さんからどんなオーダーを受けられたのですか?

吉川 僕がいただいているオーダーの中では、わりとアバウトというか、余裕がある感じでした。僕としては、いろいろと試せるから、うれしかったですね。イメージがガチガチに固まっているオーダーも、それはそれでチャレンジなのですが……。できれば新しいことを試して、驚いてもらいたいという思いがありますから。今回はそれが試せるオーダーでしたし、ちょうどこのあたりのデザインラインに飢えていたので、「やります!」と。そのときは忙しくて死にそうな時期でしたが、やっていて楽しかったですね(笑)。

外山 ルミノとデネブリアは、本編にもあったタッグ戦の構図にしたかったのもあって、ふたり組ということでお願いしました。ただ、本編の少女たちの戦いとは差別化を図りたかったので、ある意味『GRAVITY DAZE』らしくない、ストレートな男性キャラクターを入れてほしいと。あとは、空を飛んで戦うことになるので、飛ぶということと、武器を持っているということ。こちらからのオーダーは、それくらいだったと思います。

吉川 あとは年齢の加減ですね。お客さんから見て喜んでもらえる年齢帯で、すでにい
る主人公たちにあまり被らないような立ち位置で、というのは決まっていました。

――竹安さんには、どのようなオーダーを?

外山 竹安さんには、ガベージコレクターと、ラストのボスをお願いしました。ただ、こちらは、ルミノとデネブリアとは違い、スタッフ全員がものすごく抽象的なイメージしか持っていなかったんです。具体的にはわからないけど、この世の中にないようなものを描けるのは、竹安さんだろうと(笑)。ラスボスに関してのオーダーは、文章だけなんですけど、“遺跡のようであり、機械のようであり、それでいて生き物のような姿”という感じのものでした(笑)。

竹安 僕も、誰も描かないようなものを描きたいというのがあったので、オーダーを受けたときは、おもしろそうだと。
外山 具体的な指定は、コアが必要です、というくらいでしたね。

竹安 そうですね。だから僕も最初に『GRAVITY DAZE』的な「黒い塊系の流れがいいですかね」と聞いたのですが、いきなりメカの奴を見せられて、「ロボットみたいなのでもいいですよ」と言われたので、「そうなのか~」と。とにかく、あまり人が描けないようなものを描くのが好きなので、デサインもそういった感じでやらせてもらいました。絵を描いていたら、テクニックでどうにかなる部分もあるんですが、そういうごまかしが効かない形状にしようと。

外山 最初の打ち合わせから、ぶっ飛んでいましたよね。「ガウディみたいなのはどうですか?」とか。

竹安 そうそう。ガウディの建築をひっくり返したみたいなのとか。そういう訳がわからないデザインは好きなので、今回のオーダーは楽しかったです。でも、けっこうすんなり通るので、逆に不安だったんですよ。打ち合わせが終わった後、「アイツ、ふざけんなよ」と言われているんじゃないかと(笑)。

――(笑)。実際のところは、どうだったんですか?

外山 僕と齊藤(齊藤俊介氏。本作のアートディレクター)が見て、ふたりともすごくインパクトを受けているんですが、それを本人の前でボソボソとやるわけにもいかないから、その場ではふたりとも慎重に言葉を選びながら「うーん」という感じで(笑)。竹安さんが帰られたあとに、「ものすごいのがきたね」と話し合っていました。ラフスケッチの段階で、何度かそんなやりとりがあったのですが、竹安さんは、ラフに細かいギャグを入れてくるので、ラフを見るのは毎回楽しみでした。たとえば、動きを示すイメージみたいな絵の中に、遠くからそれを見ているキトゥンが小さく描いてあったりとか。「これ、いるかな?」みたいな(笑)。

竹安 お尻だけ描いていたというのもありましたね。

――(笑)。『GRAVITY DAZE』と言えば、アートディレクターである斎藤俊介さんが描かれるキャラクターのイメージが強い作品だと思いますが、ゲストキャラクターデザイナーとして参加するにあたって、気をつけられたことはありますか?

竹安 とくになかったです。そもそも吉川さんといっしょという時点で、腕では勝てないですから。もう新しいギャグを考えるとか、そういった発想ですよね(笑)。

吉川 僕は、自分の持っている経験や知識がありつつですが、齊藤さんの雰囲気というか、テイストのようなものを少しでも入れたいと思ってがんばった部分はありました。ユーザーとして、あまりにも違う作家さんの個性がひしめき合っているイメージの作品はそこまで好きではないので、親和性を感じてもらえるような仕上がりにしたかったんです。