\カービィ25歳? おめでとう!/ 『星のカービィ』25周年オーケストラコンサート 東京公演リポート

2017年4月16日、東京のBunkamuraオーチャードホールにて、“星のカービィ25周年記念オーケストラコンサート”が開催された。歴代シリーズの開発スタッフたちからレアなトークも飛び出した、公演初日の模様をお届けする。

●珠玉のメドレーでふり返る、『カービィ』25年の歩み

 2017年4月16日、東京・渋谷のBunkamuraオーチャードホールにて、“星のカービィ25周年記念オーケストラコンサート”が開催された。長年親しんできた『カービィ』の名曲の数々が、このコンサートのためにオーケストラアレンジされて生演奏され、さらにはコンサート仕様の限定グッズが販売されることもあって、チケットは瞬く間にソールドアウト。公演日直前に解放された見切れ席も満員御礼で、6月に予定された大阪公演も含めて、追加公演が決定したという過熱ぶりとなっている。
※追加公演の情報についてはコンサートの公式サイトをご確認ください

▲昼公演前。早い時間から、限定グッズを求めるファンでにぎわいを見せた。

 ステージに登壇したのは、『カービィ』の生みの親であるゲームデザイナーの桜井政博氏、『カービィ』シリーズのゼネラルディレクター、熊崎信也氏。歴代シリーズの楽曲を手掛けた石川淳氏、安藤浩和氏、池上正氏、酒井省吾氏、大原萌氏、カービィの声を演じる声優の大本眞基子さんといった豪華な顔ぶれ。司会進行は、みずからも『カービィ』のファンだという、でんぱ組.incの古川未鈴さん、フリーアナウンサーの楪 望さんのふたりだ。

 大型スクリーンで演奏楽曲にまつわるゲーム映像を観ながら、25周年のお祝い&お祭りムードたっぷりで綴られた当コンサート。6月に大阪公演を控えているため、ここからは出演者のトークを一部抜粋してリポートする。東京公演のセットリストを記事の後半に掲載しているので、まだ知りたくないという方はどうかご注意を。

▲左から、楪 望さん、桜井政博氏、熊崎信也氏、古川未鈴さん。『カービィ』シリーズのディレクターふたりが肩を並べる様子は、めったにお目にかかれないかも?

▲指揮は、『スマブラ』や『ゼルダ』のコンサートでもおなじみ、ゲーム音楽に深い理解を持つ竹本泰蔵氏。演奏は、東京フィルハーモニー交響楽団が務めた。

 ステージには、1作目の『星のカービィ』から携わる石川氏、『星のカービィ 夢の泉の物語』から携わる安藤氏、そして、『星のカービィ2』から携わる池上氏ら3人の作曲家が登場し、音楽制作の裏話を打ち明けた。「桜井氏と熊崎氏というディレクターの違いは?」と聞かれた石川氏は、「ふたりとも非常に優れたディレクターだが、個性がまるで違う」と前置いて、「この曲はもっと“グワーン”とさせて!」という具合に、桜井氏はものすごい迫力で指示を出すことが多かった。対して、熊崎氏はPC上の譜面を指で指しながら、「ここを2倍にして、ここをヘビメタにして」と、緻密な指示を出すことが多かったと告白(どちらの指示にも「どうすればいいの?」と悩んだのだそう)。また、安藤氏は『星のカービィ ロボボプラネット』のボス戦の効果音に、「ニワトリの声を入れて」と熊崎氏に指示され、その日のうちに自宅のニワトリにマイクを近づけて鳴き声を拾おうと必死になったが、夜なのでなかなか鳴かなくて困ったという苦労を語った。そんなふたりの後輩にあたる池上氏は、「仕事のためとはいえ、ニワトリを飼わなくちゃいけないなんて、たいへんな仕事場に来てしまった」と思いつつ、「ディレクターの熱意もすごいが、それに応えようとするサウンドチームの熱意もすごく熱い」と締めくくった。

▲コンサートのメインビジュアルのモチーフにもなっている『星のカービィ 夢の泉の物語』演奏時の様子。星いっぱいのライティングがかわいい!

▲“デデデ大王&メタナイト・タッグメドレー”演奏時のワンシーン。ゲーム体験が蘇ってくる演出だ。

 カービィに初めて声がついた作品は、1999年発売の『ニンテンドウオールスター!大乱闘スマッシュブラザーズ』だったということで、桜井氏と大本さんのつきあいも長い。配役決めのときにふたりの候補が残っていたが、かわいく演じたもうひとりの候補者に対し、大本さんがナチュラルに演じていたのが、採用の決め手となった。これは、“遊び手がカービィに自分を投影できるニュートラルさが必要だったため”だという。

 指揮者の竹本氏に代わって『カービィのエアライド』を指揮したのは、作曲者である酒井氏。当コンサートのオーケストラアレンジを、1曲を除きすべて担当している。酒井氏いわく、「石川さんと安藤さんの作るメロディーがすばらしいので、それを中心に据えてオーケストラに再構築するのがいいと思った」ということだ。また、酒井氏といっしょに登壇した大原さんは、残りの1曲のオーケストラアレンジを担当。2年前にハル研究所に入社した新人であり、カービィと同じ25歳。「『タッチ!カービィ スーパーレインボー』で初めて作曲した“天かける虹”という楽曲は、とても苦労して作ったので、今日の演奏は非常に感慨深い」と話した。

▲左から2番目が大原氏、中央が竹本氏、その右隣りが酒井氏。「立派な指揮でした」と竹本氏に言われ、酒井氏から笑顔がこぼれる。

 「わざわざ足を運んでくださったお客さんのために」と、桜井氏が約25年前の貴重な開発資料をスクリーンに映し出しつつ、初代『カービィ』の開発秘話を語るサプライズも! まず驚かされたのは、この作品が昔懐かしい“ツインファミコン”で作られたということ。詳しく書くと、一般的に販売されていたツインファミコンにハル研究所特製のトラックボールをつけ、ディスクで開発ツールを読み込ませていたもの。ドット絵を描き、キャラクターを自在に動かすことができる優秀な開発機材だったという。この機材で実際のゲームのイメージを作っていったため、『カービィ』は企画段階で製品版同等レベルの内容だったということだ。また、『カービィ』の製品版は2メガバイトのROMで発売されたが、開発中は512キロビット(=0.00006ギガバイト)という微々たる容量だった。その中でいかに豊かなゲーム表現をするか、さまざまな工夫が凝らされているのだ。

▲シリーズおなじみのキャラクター、ワドルディとワドルドゥがなぜ兄弟のように姿形が似ているか? じつは、足に対して顔を挿げ替えることで、1.5匹分の容量で、2匹分のキャラクターを作りたかったから。「でも、ワドルドゥのほうが足の部分で1ドット多いんです」(桜井氏)。

 また、桜井氏みずからが手書きした初代『カービィ』の企画書に、『スマブラ』の“蓄積ダメージの概念”がすでに書かれていたという事実も初めて明かされた。1990年ごろにすでに考えられていたものが、それから9年後に発売となる『スマブラ』でなぜ採用されたのか……? なぜなら、「正直、忘れてた」ということで、これには会場からドッと笑いが起きた。そのほか、“なぜゲームクリア時にカービィが3人になるのか?”、“ワープスターは何で出来ていて、どうしてカービィを運搬してくれるのか?”、“最終戦、デデデ城に向かうときに、道を切り開いてくれるもうひとりのカービィが登場する謎”などといった、カービィが持つ理屈抜きの不思議さをピックアップ。こうした解説の締めくくりには、前述のツインファミコンで作成した、スーパーファミコン版『星のカービィ スーパーデラックス』のプロトタイプキャラクターをお披露目するなど、最後まで見どころたっぷりのコーナーとなった。  
 
 会場から幾度も感嘆の声が上がったこの開発秘話は、週刊ファミ通5月11・18日合併号(2017年4月27日発売)の“桜井政博のゲームについて思うこと”にて、画像つきで桜井さんみずからの解説が掲載されるので、きちんと知りたい方はこちらの記事にご期待ください。

▲来場者全員に配布されたケミカルライトが、“夢の泉”のようにさざめく。“Kirby 25th Anniversary Orchestra Concert”のロゴ入りなのがうれしい。

 『カービィ』の楽曲は、過去にもオーケストラコンサートで演奏されたことがあるとはいえ、シリーズを広く網羅したものは今回が初めて。それだけに、ファンにとっては待ちわびたコンサートだったことだろう。作品ごとに異なる、ちょっと不思議な冒険に、いつも私たちを誘ってくれるカービィ。このコンサートは、彼の活躍を彩る楽曲が、こんなにも多彩で美しいメロディーであふれていることを再確認させてくれる、生誕25周年にふさわしい内容だった。カービィとその仲間たちの世界はさらに拡大し続け、現在、基本プレイ無料で配信されている『みんなで!カービィハンターズZ』(ニンテンドー3DS)、今夏発売予定の『カービィのすいこみ大作戦』(ニンテンドー3DS)など、これからもどんどん活躍のステージが増えていくようなので、楽しみに応援したい。

●星のカービィ25周年記念オーケストラコンサート 2017年4月16日東京公演セットリスト ※アンコールを除く

■第一部
1.星のカービィ25周年 グランドオープニング
  タイトル、グリーングリーンズ(『星のカービィ』より)

2.星のカービィ 夢の泉の物語メドレー
  LEVEL8の最初、雲の面、海中の面、エンディング・デモ

3.デデデ大王&メタナイト・タッグメドレー
  Mt. DeDeDe(『星のカービィ』より)、マスクド・デデデのテーマ(『星のカービィ ウルトラスーパーデラックス』より)、戦艦ハルバード:甲板、戦艦ハルバード:艦内、友と夕陽と…(『星のカービィ スーパーデラックス』より)

4.星のカービィ2なかまメドレー
  リックのテーマ、カインのテーマ、クーのテーマ

5.星のカービィ3&64メドレー
  海ステージ、砂漠ステージ(『星のカービィ3』より)、ポップスター、リップルスター:ステージセレクト、VS. ゼロ・ツー(『星のカービィ64』より)

6.星のカービィ スーパーデラックスメドレー
  グランドオープニング、激突!グルメレース、水晶の畑エリア、メタナイトの逆襲:戦艦マップ、VS. マルク、カービィ凱旋

■第二部
1.カービィのエアライドメドレー
  エアライド:プランテス、エアライド:マグヒート、伝説のエアライドマシン

2.星のカービィ 鏡の大迷宮&参上!ドロッチェ団メドレー
  森・自然エリア、宇宙エリア(『星のカービィ 鏡の大迷宮』より)、プリズムプレインズ、ドロッチェ団のテーマ(『星のカービィ 参上ドロッチェ団』より)

3.ボールになったカービィメドレー
  ウィスピーウッズランド(『カービィのピンボール』より)、コース8:雪ステージ(『カービィボウル』より)、ドロシア ソーサレス(『タッチ!カービィ』より)、天かける虹(『タッチ!カービィ スーパーレインボー』より)

4.星のカービィ トリプルデラックスメドレー
  浮遊大陸の花畑、月影の帝都セクトラトア、あやつりの魔術師タランザ、狂花水月

5.星のカービィ ロボボプラネットメドレー
  桃球発進!ロボボアーマー、VS. スタードリーム、ココロプラネット

6.星のカービィ Wiiメドレー
  ぼうけんのはじまり、スカイタワー、デンジャラスディナー、CROWNED、Return to Dreamland



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