初回の公演を終えた植松伸夫氏らのインタビューも!

 2017年4月2日(日)、『ファイナルファンタジー』(以下、『FF』)シリーズのコンサートツアー“BRA★BRA FINAL FANTASY BRASS de BRAVO 2017 with Siena Wind Orchestra”の始まりを飾る東京公演が、東京・新宿のオペラシティにて行われた。本記事では、その昼公演の模様をお届けする。
※本記事には、コンサートのセットリスト等が掲載されています。今後コンサートツアーに参加予定で、ネタバレを見たくないという人はご注意を!

“BRA★BRA FINAL FANTASY”コンサートツアーが開幕! 前回以上に変化に富んだ『FF』音楽に植松伸夫氏も手応え_03

 “BRA★BRA FINAL FANTASY BRASS de BRAVO”(以下、BRA★BRA)は、2015年より始まった吹奏楽コンサートツアーで、今年で3回目の実施となる。制作総指揮を務めるのは、『FF』音楽の生みの親である植松伸夫氏だ。

 記者はBRA★BRA第1弾、BRA★BRA第2弾ともに取材をしているが、取材をし続けて感じるのは、植松氏の「BRA★BRAは堅苦しいコンサートではない。自由に楽しんでほしい」という思いが、着実にファンに浸透していっているということだ。植松氏は、コンサートが始まる前に“ブラボー係”を決める。これは、演奏がすばらしいと感じたら、率先して「ブラボー!」という係。日本人はシャイなので、演奏に感動してもなかなか行動で表せない人が多いが、ブラボー係がいれば、みんなもっと気軽に声を出したり、スタンディングオベーションをしたりできるはず……という考えから、植松氏はずっと前から、コンサートを開催するたびに、ブラボー係を任命し続けている。

 そして今回は、ブラボー係に立候補する人が、本当に多かった! 「ブラボー係、やりたい人!」と植松氏が挙手を促すと、迷いもなく手を挙げる人が多数。記者がいままで見た中で、いちばん多かったと思う。まさに、“継続は力なり”だと感じた。

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▲植松氏(右)は司会としても活躍。左は、ともに司会を務める山下まみさん。

 また、3回目にして印象深かったこととしては、楽曲のバリエーションのさらなる広がりが挙げられる。しっとりとした原曲とは対照的に、ビッグバンド風のアレンジで演奏された「親愛なる友へ」や、リコーダーと打楽器で奏でられた「いつか帰るところ」、パーカッションが大活躍の「クレイジーモーターサイクル」など、多彩な音色が波のように訪れる。もちろん、王道のブラスバンドアレンジで奏でられる「FINAL FANTASY V メインテーマ」や「反乱軍のテーマ」などもカッコいい! とにかく来場者を飽きさせない構成になっているのだ。

 バリエーション豊かな楽曲の中に、来場者が参加できる楽曲があることも、BRA★BRAの特徴だ。来場者がボディパーカッションで参加する「モーグリのテーマ」(今回はラテン風アレンジ)、リコーダーを持参すれば演奏に参加できる「FINAL FANTASY メインテーマ」、そして、楽器を持ってきた人ならステージに上がって演奏できる、恒例のアンコール曲「マンボ de チョコボ」は、いずれも大盛況だった。

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▲「モーグリのテーマ」演奏時、ボディパーカッションをレクチャーしたのは、打楽器奏者の東佳樹氏。今回はラテンアレンジということで、メキシコ風の衣装を身にまとって登場。しかし、話す言葉はなぜか関西弁混じり。

 まだツアーは始まったばかりだというのに、会場全体からエネルギーを感じた今回のBRA★BRA。“吹奏楽ツアー”というよりは、“バリエーション豊かな楽曲が楽しめるツアー”と言ったほうが、このコンサートの真髄を伝えられるのではないか……そんなことを考えさせられる、表情豊かな公演だった。

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▲こちらはアンコールの模様。楽器を持参したファンが、シエナの皆さんといっしょに演奏!

■東京公演 セットリスト
<第1部>
FINAL FANTASY V メインテーマ(『FFV』)
ティナのテーマ(『FFVI』)
Ami(『FFVIII』)
モーグリのテーマ(『FFV』)
FINAL FANTASY メインテーマ(『FFI』)
いつか帰るところ(『FFIX』)
クレイジーモーターサイクル(『FFVII』)
反乱軍のテーマ(『FFII』)

<第2部>
Force Your Way(『FFVIII』)
グルグ火山(『FFI』)
親愛なる友へ(『FFV』)
水の巫女エリア(『FFIII』)
Vamo'alla Flamenco(『FFIX』)
エアリスのテーマ(『FFVII』)
片翼の天使(『FFVII』)

<アンコール>
ビッグブリッヂの死闘(『FFV』)
マンボ de チョコボ(『FFV』)

東京公演 昼公演後の植松氏らにインタビュー!

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▲左から、指揮者の栗田博文氏、植松伸夫氏、コンサートマスター/サックス奏者の榮村正吾氏。

――まずは初回の公演を終えての感想をお聞かせください。

植松 お客さんがすごくアツかったですね。1回目からあんなに盛り上がるとは思っていなくて、びっくりしました。それから、通して聞いてみると、前回、前々回以上にバリエーションに富んだ音楽が並んでいるんだな、いいなぁ、と思いましたね。

栗田 植松さんがおっしゃっていたように、「お客さんが最初からアツいぞ!」という状況の中で、シエナの皆さんがいい緊張感を持って、いい音をもって演奏をしてくれたので、とても楽しかったです。

榮村 3回目になって、お客さんも慣れてきたなと感じます。ノリかただとか、参加のしかただとか。いい意味で、最初からテンションが高い演奏会でしたね。演奏する側としては、転換が多かったり、いろいろな編成の曲があったりするので緊張が走ったのですが、その緊張も夜公演のときにはとれて、もっといい演奏会になると思っています。

――いよいよ全国ツアーが始まりますが、今後への意気込みを語っていただけますでしょうか。

栗田 23公演中の1回が終わったわけですが、残りの22回が、いい形で熟成していくようにしたいですね。去年も一昨年も、ツアーが後半に向かうにつれて、いろいろな出会いもあって、みんなの想いが変化していったんです。今回も楽しみです。

植松 (去年、一昨年の経験を踏まえると)何回も公演をやっていくうちに、途中から楽しくなっていくんですよ。早くその時期が来ないかなー、と思っています。

榮村 地方で待っていらっしゃる『FF』ファンの皆さんに、いいものを届けられればと思います。侍ジャパンの皆さんが1試合1試合と重ねるうちに強くなっていくようなことが、僕らの世界でもあって。公演をひとつひとつ重ねることで、新しいものが生まれるので、楽しみにしていただければと思います。

――3年目だからこそ、ここが聴きどころだと思うポイントはありますか?

栗田 BRA★BRAは、毎ツアー変化に富んでいて、それがおもしろいんです。前回と重なっている曲も少しありますが、それ以外は全部曲目が入れ替わっていますから! アレンジも、例年とは違うものになっていますので、それも楽しめると思います。

――1年目と比べて、ここが変わったな、よくなったなと思うところは?

植松 スタッフの皆さんと話をしたり、お酒を飲んだりしてお知り合いになったことで、回を増すごとに、結束力がすごく高まっているなと思いますね。僕としてはどんどんやりやすくなっています。

栗田 人間どうしがチームとなって取り組んでいるので、最初は「相手はどう感じているんだろう?」と手探りの状態で始まったんですけど……僕が思ったのは、全員が正直な人であるということ。植松さんもシエナの皆さんも、ウソはぜったいにつかない。要するに、ボケたら必ずツッコんでくれるわけですね。言葉でも音楽でも、球を投げたら「あれっ、行ったっきり!?」ということがぜんぜんない。一生懸命投げたら、こちらが痛い思いをするくらい、ブワッと返ってくる。これはどの社会でも同じことだと思いますが、人間がお互いのことを尊重しながらやっていくと、こんなによくなるんだということを、コンサートのたびに感じていますね。

榮村 ふだんはみんな違うところでいろいろなことをやっている中で、パッと集まったときのチーム力の強さを感じます。演奏していてやりやすいですし。お客さんって、そういうところを敏感に感じ取るんですよね。僕らがただ座って演奏するだけじゃないということを、感じてもらえているなと。

――3年目の公演のテーマを教えていただけますでしょうか。

植松 て、て、テーマ?(笑)。正直に言うと、毎回テーマを意識したことはなくて。バリエーションに富んだものにしたいなあ、という意識はつねにありますが。

栗田 共通しているテーマは、「まずいビールはあるのか」でしょうか。

植松 そうなんですよ(笑)。僕ら、ずーっとまずいビールを探しているんです。まずいビールに出会ったら、そこで僕らのビール探しの旅は終わるんですよ。でも出会えないものだから、毎晩飲み歩いているんです(笑)。

栗田 毎日「残念!」と言っています(笑)。それがテーマかもしれません(笑)。

――(笑)。選曲のコンセプトはありますか?

植松 それはいつも通りですね。ほかのオーケストラや管弦楽のコンサートで演奏されていない曲ですとか、それでもファンの人たちが好きだと言ってくれている曲。意外に地味な曲を上げていたりするんですよ。「水の巫女エリア」とか、『FFIII』で1回だけかかるような曲なんですけど、みんな予想していなかったんじゃないかな。でも、美しい演奏は美しいし。あまり知られていなくても、いいものはいいんじゃないかって。いわゆる『FF』クラシックスだけを集めようという気はないですね。

――今回、少人数編成の曲が増えたという印象を受けたのですが、それはバリエーションを広げるためなのか、それともDistant Worldsといったコンサートとの差別化を図ろうとしたためなのでしょうか。

植松 バリエーションのためですね。みんなでバッと吹く迫力もあると思いますが、たとえばカルテットで4つの音が皆さんに明確に聴こえるというのは、味わいが違うじゃないですか。管弦楽でも、そういう小編成はできなくないんでしょうけど、なんだか吹奏楽だと、フットワーク軽くできちゃうんですよね。なんででしょう? いろいろなバリエーションがやりやすいですね。

――ところで、植松さんはアンコールでサックスを吹いていましたが、演奏してみて、いかがでした?
※植松氏は、去年の8月にサックスを購入。ただし、本格的に練習を始めたのは、この3月から。

植松 いやー、ひどかったですけど(笑)。途中で戦線離脱するかな!? と思っていたのですが、そんなことはなくて、楽しかったですね。これなら、ツアーを続けるうちに多少はうまくなるかな、と!

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▲アンコールでサックスを吹く植松氏。

――では最後に、BRA★BRAに参加予定の人、BRA★BRAのことが気になっている人へ、メッセージをお願いします。

植松 いつもコンサートの前に言っていることなんですが、皆さんが想像しているような堅苦しいコンサートとは違って、僕らがやろうとしていることは、ゲーム音楽なりのオーケストラコンサートなんです。楽しめるコンサートを作っていきたいんですね。僕らも楽しみたいですし、来ている人も聴いて楽しむ、参加して楽しむことができるような。気楽に来てほしいですね。そして、来た以上は、積極的に楽しんでいってほしいです!