日本でも5月18日にPS4/Xbox One/PC版の発売が決まった、ベセスダ・ソフトワークスの一人称視点アクションアドベンチャー『Prey』。海外で行われたプレス向けの体験会に参加し、PC版の序盤1時間程度をプレイしてきたので、その模様をお伝えしよう。
なお実際のプレイ動画を元に2本の映像を作成したが、前編にはオープニング直後のとある“どんでん返し”が含まれているので、ネタバレが気になる人はゲーム本編が始まってからの基本的なプレイ感を収めた後編だけをチェックするのを勧めたい。なおテキストでは、既にトレイラーや過去の取材などで判明している部分以上のネタバレは極力避けるように執筆している。
エイリアン大発生で地獄と化した宇宙ステーションでのサバイバル
本作の概要を簡単に紹介しておくと、本作の舞台は、2030年代の近未来。ケネディが暗殺されず、逆に謎のエイリアン“Typhon”(ティフォン)の出現により米ソが一体となってエイリアン研究を進めた……という架空の未来が描かれる。
主人公であるモーガン・ユウの目的は、ティフォンの大発生で壊滅状態に陥った宇宙ステーション“タロス・ワン”を探索し、事態収拾を図りつつ脱出すること。ゲームとしては本作を開発しているArkane Studiosの前作にあたる『ディスオナード』シリーズと同系統の一人称視点アクションアドベンチャーとなっている。
なお超人的能力やガジェットを使いこなし、複数の敵を一気に倒したり、常人ではたどり着けない場所に行くという部分も『ディスオナード』と共通する特徴なのだが、今回のデモは最序盤のプレイだったため、ティフォン由来のエイリアン系能力の習得はまだ登場せず、入手できるガジェットも限られていたため、探索や世界観重視の内容となっていた。
SF的な不安感と『バイオショック』との繋がり
『ディスオナード』との違いとして挙げられるのが、『ディスオナード』がミッションごとにプレイエリアとストーリーが区切られているのに対して、『Prey』は比較的マップがオープンな作りで行ったり来たりができ、さらに話も連続して進んでいくこと。実際の進行としては、まずメインミッションの目的地が設定されていて、そこまでのルートは比較的自由。自分なりのやり方で目的地にたどり着いてミッションクリアーすれば、話が進んでそのまま次のミッションが始まるという感じだ。人によっては『ディスオナード』より、むしろ『バイオショック』辺りと似たフィーリングを感じる人もいるかもしれない。
そして遊んでいて感じる心理的なトーンも、『バイオショック』に似ている部分がある。特にデモで顕著だったのが、「自分は何なのか?」とアイデンティティが揺らぐSF的な不安だ。オープニングでは豪華なアパートから大企業“トランスター”に出勤し、ラボで幾つかの心理試験を受けるのだが、やがて自分自身の存在について、大きな謎が隠されていることに気付かされることになる。『バイオショック』で導かれるように灯台から海底都市に潜っていった“彼”と同じように、本作の主人公モーガン(男女の選択が可能)も、半ば廃墟と化した宇宙ステーション“タロス・ワン”を探索しながら、自身に隠された謎に迫っていくのだ(ちなみにE3 2016で本作が発表された時のトレイラーに出てきたのがモーガンの部屋)。
そして擬態能力を持つティフォン“ミミック”がそこに潜んでいるんじゃないかと疑心暗鬼になるパラノイアな感じも、本作の心理描写では重要な部分。実際、視界の隅で段ボールなどが「カサッ」と動くのを見ると、疑いたっぷりに初期武器のレンチで叩きたくなる(実は見間違いで、ミミックが化けているのはその隣の物だったりするのだが)。
さらに、デモの後半では生きている人間がまったく出てこなかったのだが、死体の横にたまに落ちているオーディオログを再生することで、生前のやり取りを知ることができる。すでに阿鼻叫喚の地獄があらかた一段落していて、残された録音からその様子を知ることになる置いてけぼりにされた感覚も、『バイオショック』のそれに近い。
実は『バイオショック』シリーズを手掛けたIrrational Gamesと、本作を開発するArkane Studiosは、ともにLooking Glass Studiosという伝説的なスタジオの元スタッフが大きな役割を担っている、親戚のような関係。より正確に言えば、いずれもLooking Glass Studiosの『System Shock』シリーズという共通の祖先を持つ、同じ血をひいたゲームなのだ。今回のデモでも、作中の架空の技術として“ルッキング・グラス・テクノロジー”なる名称が登場していて、同スタジオへのオマージュが捧げられているのが確認できた。
探索・戦闘・特殊スキルの有機的な相互関係
『System Shock』シリーズは、一人称視点のアクションアドベンチャーというジャンルを確立した作品のひとつなのだが、ゲームシステム的にどんな部分が一番『Prey』に影響しているかと言えば、それは探索重視の部分だと思う。基本的には、戦闘すらも探索して問題を解決していく上での一要素に過ぎない。
例えばデモではロビー区画の一室に強力なティフォン“ファントム”がおり、周囲には便利なアイテムがいくつか置かれていた。プレイヤーはファントムがいる部屋を迂回してもいいし、倒せばアイテムを入手できるという状況だ。倒し方もバリエーションがあって、正面からショットガンをぶっ放しながら戦ってもいいが、接着剤を飛ばす武器“グルーキャノン”を使えば、一定時間ファントムの動きを制限できる。これによって、グルーキャノンで固める→武器をショットガンに切り替えて接近して撃つ→グルーキャノンで固める……というループにハメることもできる。
さらにグルーキャノンは戦闘だけでなく、壁などにスロープ状に吹き付けることで、(階段などが崩れていても)その上を通って上階に進んだりすることができるようになる。もちろんあんまり使いすぎると弾がなくなって困るのだが、弾の設計図を入手した後なら、アイテム生成マシンに素材を放り込むことで生成可能。その素材アイテムは、探索中に手に入るジャンクアイテムを“リサイクラー”という機械に放り込めば変換できるので、探索→ジャンクアイテム入手→リサイクラーで素材に変換→アイテム生成マシンでグルーキャノンの弾作成→グルーキャノン活用でさらに探索範囲が広がる、といった具合のサイクルを作れるのだ(ちなみに今回のデモでは出てこなかったが、ゲーム中盤以降に出てくる“リサイクラーグレネード”で周囲の物体を吸収させることでも素材アイテムをゲットできるし、さらにそれが部屋の入口などを塞いでいる障害を取り除く方法のひとつにもなっている)。
武器の活用法で言うと、探索していておもちゃの銃“ナーフ”のような非殺傷性のクロスボウを発見したのだが、関係者に話を聞いた所、これも単なるジョークアイテムではなく、(弱いとはいえ)ダメージ判定もあるし、柵の向こう側など手では届かない場所のスイッチを矢で押したり、あるいは敵の注意を惹いておびき出すために放つといった利用法が可能なんだとか。ちなみに体験会の同じ回でこのクロスボウを発見したのは記者だけだった。まさに探索が役に立ったわけだ。
単に目的地に行くにしても、複数の解決策があるのが一般的で、これがうまくハマった時は非常に楽しい。例えばデジタルロックのかかったドアの向こうに行きたい時、王道の方法はどこかからカードキーを手に入れること。カードキーのある場所は、オーディオログやコンピューターに残されたメッセージが参考になるかもしれない。
しかしカードキーがなくても、特定の能力やガジェットを利用することで、問題を解決できることがある。近くのダクトから扉の向こうへ進むというルートが存在することもあるし、探索やハッキングを通じて解錠ナンバーを入手できることもあるのだ。実際記者は、今回のデモの終着点とされていたモーガンの部屋に入るにあたって、扉の近くのコンピューターをハッキングして情報を探ろうとしたところ、メール記録から解錠ナンバーを手に入れることができた。
ちなみにハッキングは人間系3種類、エイリアン系3種類あるスキルツリーのうち、人間系のスキルとして割り当てられていた。スキルツリーの成長は特殊アイテム“ニューロモッド”が必要で、これはマップのさまざまな場所に置かれているので、これまた、寄り道してでも探索して見つける甲斐がある。
今回の範囲ではエイリアン系のスキルはまだ出てこなかったのだが、その代わりに通路のあちらこちらにタレット(自動小銃)が仕掛けられているのを確認できた。タレットは近付くティフォンを自動的に攻撃してくれるのだが、以前本誌で行ったインタビューによると、エイリアン系のスキルを伸ばしていくに連れてモーガンのエイリアン度が上がっていき、一定レベルを超えるとタレットがモーガンをエイリアンと認識して攻撃するようになるのだという。そうなってくると、タレットをどう破壊・妨害するか、あるいは迂回するかという新たな問題に頭を悩ませなければいけなくなるというわけだ。
遊ぶ人の数だけ違った姿を見せるグッドゲーム
とまぁそんな感じに深掘りできるほど遊んできたわけだが、探索を通じてホラーSF的シチュエーションにどっぷりと浸れ、さらに自分なりのルート発掘や問題解決法を模索するのが楽しいグッドゲームだった。一直線に目的地を目指す人、寄り道大好きな人、ランボースタイルで正面からドンパチする戦闘が好きな人、トリッキーな能力や罠に敵をハメるのが好きな人……遊ぶ人の数だけプレイが異なると思うので、今回のプレスイベントのように体験する機会があるといいだろうなぁと思った次第。恐らく、配信も人によってスタイルが違って面白くなるのではないだろうか。いずれにしても、今から発売が楽しみなタイトルだ。