福岡を拠点とするゲームメーカーである、レベルファイブ、サイバーコネクトツー、ガ
ンバリオンの3社が2004年に設立したGFF(ゲーム・ファクトリーズ・フレンドシップ)。“福岡をゲーム業界のハリウッドに”というスローガンのもと、クリエイター育成や人材の確保を目的として活動する中、2006年には、九州大学、福岡市と提携して“福岡ゲーム産業振興機構”を設立。10年に渡る活動を経て、産・学・官からのアプローチによる福岡・九州のゲームクリエイターの育成や市場開拓などを精力的に行ってきた。
そうした取り組みの一環として、2007年よりゲームコンテストを開催。後に“GFF AWARD”と名前を変え、ことしで10年目の節目を迎えることとなった。
これまでゲスト審査員として、『メタルギア ソリッド』シリーズの生みの親である小島秀夫氏や、スクウェア・エニックスの『ドラゴンクエスト』シリーズのプロデューサー齊藤陽介氏など、著名なクリエイターが協力している。10周年となる今年は、ソニー・インタラクティブエンタテインメント ワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平氏と、カドカワ株式会社取締役 浜村弘一ファミ通グループ代表が登壇予定。そんな節目となる10回目の開催直前となる今回、GFF設立メンバーにして、主要3社の代表による鼎談が実現!“GFF AWARD”の取り組みへの手ごたえと、今後の課題を語っていただいた。
GFF設立メンバー3社、10周年を迎える“GFF AWARD 2017”の取り組みを語る
10年の積み重ねと課題
――福岡市、九州大学とで立ち上げた福岡ゲーム産業振興機構も設立10年目ですが、こちらの取り組みについての手応えはいかがですか。
山倉 先日もちょうど発表があったのですが、福岡市でIT系の企業が4社ほど、福岡に新たに拠点を作られたそうです。大手イラスト投稿サイトのPixivさんも、2017年の春をめどに支店を増やすということで、福岡市長が会見されたりと、10年前と比べてコンテンツを取り扱う企業が集まりつつあるのかな、と感じています。
松山 福岡市調べでは、いま福岡県内でゲーム産業に従事している社員やクリエイターは、1500人を超えているとのことです。ですので、今年は2000人を超えるんじゃないかなと思っています。
山倉 ここ10年で増えましたね。
日野 それは、産学官連携で“官”のアクションをしっかりやれるようになってきた、ということなのかもしれないです。クリエイター向けのUターン転職の推進や、企業誘致にも積極的に取り組んでいただいています。
松山 ゲーム会社だけではなくて、スマホの会社やアニメ会社も増えてきて。福岡でゆっくり人を育てていきたい、という理由で選ばれる場所になっているようです。おかげさまで、全国からどの県に行っても、「福岡って、ゲーム産業を行政が応援してくれているらしいですね」という話をよく聞くようになりましたので。
山倉 レンタルオフィスもいっぱいありますし。行政が支援や起業の相談に乗ってくださったり。
――10年間で環境がさらに整ってきたのですね。
松山 そう思います。それに、10年目になるGFF AWARDも、福岡でゲームクリエイターを目指す学生さんたちに関しては、「我々がきちんと育てようぜ!」という考えから、“福岡モデルチーム”を作っていて。
――モデルチームですか。
松山 ええ。GFF加盟企業のクリエイターたちが、モデルチームに直接アドバイスをして、推薦枠としてコンテストに出場してもらう、という特別な取り組みをしているんですよ。せっかく近い距離にいるのだから。オプションで、我々との交流会もついてきますし(笑)。
10回目を迎えたGFF AWARDの厳しいジャッジ
――GFF AWARDも10回目ですが、どのようなスタンスで取り組まれてきたのでしょう。
松山 スタンスか……いままでの経験則から言うと、作品が集まっても、優秀賞の選考に困るときもあるんです。でも、そこで安易に賞を与えたりしてこなかったことですね。
日野 僕らとしても、賞の選考で“該当者なし”というのは、やりたくないんですよ。でも、ね。
松山 そう。そのハードルを下げると、賞自体の意義に関わってきてしまう。ですから、そうした受賞作品がない年には、すぐに「クリエイターたちのレベルを上げるために、何かやろう」と、説明会や勉強会を開いたりしてきました。
山倉 すると、その次の年の応募作品が、グッとよくなるんですよね。
松山 若いクリエイターの作品が頼りないかも、と感じたときは、我々が行動しようと。行動したぶんの結果は、ちゃんと応募作品の品質に反映されてきました。そういったことをくり返してきた10年かな、とも思う。
日野 それは本当に感じますね。毎回、やったらやっただけ、きちんと効果が出ているという手応えがあります。でも、課題としては、クリエイターの数が1500人では、まだまだ少ない。これからは、福岡を拠点にすると決めた若いクリエイターたちのことを、もっと意識的に特別扱いしてでも、ちゃんと育てて、業界に送り出していかないと。
松山 たしかに。ずっと現場でゲームを作って、見てきた人間が審査するので、ほかのコンテストに比べると、多少はきびしめだとは思います。でも、ゲームクリエイターが直接見て、評価をしてきた10年なので。そうした姿勢が伝わったからなのか、この10年で応募総数は増え続けていて、今回の第10回では、応募総数が800を超えましたからね。
――応募数が、しっかりと増えているんですね。
山倉 きびしく本物を育てるという意味合いで、これまでGFF AWARDがやってきたことが少しずつ伝わってきたと感じています。
松山 私はずっと、ゲーム開発に挑む学生たちのいる全国の学校を行脚しているのですが、その中でここ数年は、どの学校でも“GFF AWARDを強く意識している”と言われ始めてきて。これは、10年の積み重ねがないとありえなかったと思いますね。
山倉 それに、昨年の第9回の受賞作が、際立ってよかったんです。クリエイターの視点から見ても、これはすぐにデビューできるんじゃないかって思う作品もあったほどで。継続は力なりだと。とにかく、10年続けてきてよかったと思いました。
日野 第9回の受賞チームは、それぞれの会社に散らばって入社したんですよ。
――え、そうなんですか!
日野 優秀な作品と出会って「これだ!」と思った人は、やはり声をかけていますから(笑)。GFF AWARDは、そのために開催しているという意味合いもあります。ここ最近は全国からたくさん作品を応募してもらっていて、実力のある学生も多数参加してくれています。そういう学生たちにも、このコンテストをきっかけにGFFを始め、“福岡のゲーム会社”を知ってもらえる機会にしていきたくて。
10年間で感じる福岡の若いクリエイターに共通するもの
――10年に渡ってGFF AWARDを通じて発掘してきた福岡の若いクリエイターたちを見て、“福岡で生まれるゲームの特徴”を感じられたことはありますか?
山倉 “福岡で生まれるゲームの特徴”ですか? そうですね……。私が感じているのは、プロでもアマチュアの人でも、みんなに共通しているのは、サービス精神の旺盛さではないかと思いました。
日野 ああ! それは若いクリエイターだけではなくて、うちの社員たちもそうだな。
山倉 プレイヤーに対して、「そこまで考えてあげるの?」とか、「そこまでしてあげるの?」という“おもてなし”の心ではないですが、遊ぶ人への心遣いというか。オープンなマインドが福岡のクリエイターの特徴のように感じています。その土壌が、福岡にあるのでは、と。やはり、福岡市は博多商人の町ですから、昔から、いろいろな場所から人が集まってきていた場所です。ですので、集まってきた人たちに対して“おもてなし”をするという思想が、福岡の土壌にあるように思うんです。博多美人という言葉がありますが、これはもともと、顔のつくりが美人なのではなく、“いつでもキレイに見てもらい、楽しんでもらうために、いつでも化粧をしておく”という意味らしいんですよ。そういう、サービス精神が宿るのが、福岡という土地だと思うんです。
日野 それがゲームクリエイターになって、作品に活かせていると。
山倉 そう。だからきっと、“プレイヤーのために”という考えが、物づくりのいちばんに来ているんですよ。
松山 ……私が言いたかったことは、最後に山倉さんがすべて代弁してくれました。まさにその通りです。GFFの会議では、だいたい私と日野さんが激しく意見を交わすんですが、最後はいつも山倉さんが収めてくれるので(笑)。
日野 10年間、ずっと姫ポジションだからね(笑)。
2017年3月11日(土)に、“GFF AWARD 2017”の公開最終審査が福岡市の天神イムズホール(9F)にて13時~16時半まで開催予定(会場は12時を予定)だ。
さらに、10年目の節目となる記念すべき今回は、ゲスト審査員としてソニー・インタラクティブエンタテインメント ワールドワイド・スタジオ プレジデントの吉田修平氏と、GFF AWARDは初回からゲスト審査員を担当してきたカドカワ株式会社取締役 浜村弘一ファミ通グループ代表のふたりが登壇。
“ゲーム業界のこれまでの10年、これからの10年”をテーマとしたトークショーも予定されている。なにやら、秘蔵の資料も公開予定とのウワサも……?
本イベントは入場無料だが、事前応募制で定員は先着300名までなので注意が必要だ。