『FIRE PRO WRESTLING WORLD』は、“ファイプロLOVE”でファンと作り上げる新たなファイプロ。ディレクター松本朋幸氏へのインタビューをお届け【GDC 2017】

スパイク・チュンソフトのプレスカンファレンスで発表されたプロレスゲームシリーズ最新作『FIRE PRO WRESTLING WORLD』について、ディレクターの松本朋幸氏に話を聞いた。

 『FIRE PRO WRESTLING WORLD』は、“ファイプロ”の略称で愛されるプロレスゲーム『ファイアープロレスリング』シリーズの最新作。プラットフォームはプレイステーション4とPCで、SteamでのPC版は2017年第2四半期にアーリーアクセスの開始も予定している。

 アメリカ・サンフランシスコで開催中のGDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)に合わせて行われたスパイク・チュンソフトのプレスカンファレンスで、本作のディレクターを務める松本朋幸氏に話を聞いた。

●ファンが望むファイプロを目指す

――ついに発表ということになりましたが、まずはいかがですか。
松本朋幸氏 (以下、松本) 待ってましたよこの1年。言いたくてしょうがなかったですからね。やっとこれで皆さんにご報告できましたが、まだこれからですね。皆さんの声を聞いて、ファンが待ち望む“ファイプロ”にしていけたらいいなと思っています。

――今回、あえて2Dグラフィックを維持したというのは勇気ある決断だと思います。シリーズの復帰作となると、どうしても3Dにしたりしがちじゃないですか。
松本 なんというか、ファイプロは2Dじゃなきゃ駄目なんですよ(断言)。2Dじゃないと“ファイプロ感”が出ないんです。以前、渋谷にある開発会社で3Dのモデルを作ったこともあるんですけど、やっぱり駄目。「2Dで作るからファイプロ感が出る」というのを実感しましたね。(従来のファイプロで)斜めに立つとちょっとおかしかったりするじゃないですか。アレがファイプロなんですよ。それを再現するためには2Dしかなかったです。恐らくファンも2Dを望んでいるはずなので、絶対に2Dだと始めから決めていました。

――ところでタイトルに“WORLD”ってつくのは、新日本プロレスワールド(編注:新日本プロレスの動画配信サービス。英語中継などもあって海外の視聴者も多い)のオマージュですか?
松本 違います(笑)。これはもう、世界の人にも遊んで欲しいという思いを込めてですね。もちろん日本も入ってます。オンライン対戦を入れているのもそうなんですけど、今回みんなで遊んで欲しいから“World”なんです。

――Steamにも出すということで、ファイプロの歴史の中で初のPC版となります。それについてはどうでしょう。
松本 (パブリッシャーであるスパイク・チュンソフトで)Steamの調子がすごいいい時だったから企画が通ったという部分もありますね。

――ああ、スパイク・チュンソフトさんはSteamだと海外でも自社パブリッシングの形が増えてきていますからね。そして今回はオンライン対戦もある。これは挑戦だと思うんですけども、なぜ採用することになったんでしょう。
松本 世界中のファイプロファンと遊びたかったんですよね、僕がまず。「俺より強い奴いるのか!」とやってみたかった。

――「やれんのかこのヤロウ!」と。
松本 そうです。自分がやりたかったというのが大前提です。「僕はやりたい。みんなはどうだ?」と聞くと、やっぱりやりたそうだったので、なら作ろうと。今回の新しい売りを作りたかったというのもありますね。「ファイプロ復活」だけではちょっと弱いですから。もちろんオンライン対戦は、自分で動かすだけじゃなくて、ロジック(AI)対戦もできます。それを観戦するのもいいし、みんなの要望に応えられると思っています。

●Workshop経由でエディットデータのシェアが可能

――ファイプロというと仮名レスラーも要素のひとつですよね。でも今の時代、その辺の扱いはちょっと厳しくなってきているし、一方で逆に過去にファイプロ女子であったように、プロモーションを兼ねて実名を公認してもらうというのも今っぽいと思うんですよ。そこは今回どうなんでしょう。
松本 今回“氷川”や“冴羽”など(実在レスラーが元ネタの)デフォルトレスラーはいません。架空のレスラーが30人ぐらい入っていてそれでも遊べるんですが、基本はエディットで作って欲しいというスタンスなんです。

――となると、エディットしたレスラーの書き出しや読み込みなどはいかがでしょうか。
松本 PC版はSteam Workshop(編注:Steam上でユーザー作成のデータをシェアするシステム)に対応していて、自分の作ったレスラーの共有ができます。

――エディットレスラーとWorkshopって、1+1は200というか、ファイプロにはジャストじゃないですか! あえて冴羽を作った人とかいたら、絶対インポートしますよ。ファイプロファンのレスラー本人が作ったりもするかもしれませんしね。PS4版での共有はどうでしょう?
松本 そこをどうしようかと考えているところですね。はじめ“復活の呪文”(編注:カナなどの文字列でデータを表現したもの)とか考えていたんですけど、3ページぐらいの分量になってしまったので。もうちょっと簡単にできる交換手段を考えています。

現状の仕様では、ベースパーツに最大9レイヤー(部位によっては9以下のこともある)のパーツを重ねていくことができる。なお某大統領とは関係ない。

●ファイプロLOVEでファンと作るファイプロ

――12年ぶりとなると、プロレスシーンで言えば1世代まるまる違うぐらいだと思うんです。ファイプロって現実のプロレスを参照してるわけで、それって結構大変なことだと思うんですよ。たとえばエディットに使う技とかも、今のレスラーが使う技もちゃんと入っていて欲しい。そういった部分はどうお考えですか。
松本 技に関しては、初期の段階でもそこそこ入っていて、まるまる新規の技も80個ぐらいあったかと思います。それでリリース以降も追加していくということを検討しています。一方でレスリングのスタイルなどは、ファイプロってファイプロのままでよくて、必ずしもすべてを現実に寄せていく必要はないと思うんですよ。
 僕は“プロレスLOVE”(編注:武藤敬司のキャッチフレーズ)なんですけど、それ以前に“ファイプロLOVE”なんです。僕はとにかく、ファイプロを復活させたい。それで、その後にいろいろ要望があれば、それに応えていくのが僕の仕事だと思っています。

――リリースの話で行くと、アーリーアクセス(編注:プレイアブル可能なプログラムを有料配信し、ファンのフィードバックを受けながら正式な製品版に向けて充実させていく仕組み)をするというのがすごいですよね。
松本 会社的にチャレンジですよね。やったことがないと思うんで。「おもしれぇな、ファイプロちょうどいいじゃないか」って、やらせていただくことになりました。やっぱり、ファンのみんなと作り上げていくのがファイプロですから。復活そのものがそうですし、みんなの力があってこそ。口コミで広がるかもしれませんしね。なにしろみんなで盛り上げていこうという気持ちがあってのアーリーアクセスという選択ですね。

――今回のプレスカンファレンスは形として海外向けの発表ということになりますが、日本と海外でのリリース日は違ったりするんでしょうか。
松本 日本語版と英語版で同時です。

――PS4版も含めた発売時期はどのあたりを見据えていますか。
松本 アーリーアクセスの具合によっても変わってくるのでなんとも言えないのですが、流れとしてはまずはPC版が完全に出来上がってから、PS4版はそのちょっと後ぐらいになると思います。

●ファイプロをやりたいか!?

――ティザー動画の反響がすごかったですが、それについてはいかがでしたか。
松本 ただただ嬉しいです。リングが(ファイプロの)ひし形に見えるアングルから撮るとか、レスラーが組む時の演技指導とかやったんですが、いかに「ファイプロ」と言わずに「お、ファイプロだ!」と思わせるかを念頭に置いて作っていました。狙った通り「ファイプロじゃんか!」という反応が来たので「でしょ?」と気持ちよかったです。

――あのロックアップの動きとタイミングが最高でした。普通の組み方したら普通のプロレスになってしまって、それはファイプロではないじゃないですか。
松本 そうなんです。それと実はファイプロってロックアップしてから腰を落とさないんです。組むだけで技をかけるんですけども、ファイプロのイメージって“組んで腰を落とす”の人も多いと思うんですよ。だから2パターン、組んですぐ終わる奴と、腰を落とすの両方作って、どっちがファイプロとして伝わるか悩みました。最終的には「一般的には腰を落とす方だろう」ということでそちらを採用しました。

――そこの違いのためにわざわざ2パターンも(笑)。余談になりますが、観戦者モード、いわゆるスペクテーターモードはいかがでしょう。eSportsのオンライン大会中継なんかである、AさんとBさんが戦うのを大会運営側のCさんが観戦者として入って配信するような機能ですが。
松本 そのネタ、貰っていいですか? 面白そうですね。

――どうぞどうぞ! まぁそんな感じに、ファンと一緒に作り上げていくファイプロであると。
松本 はい、そういうことです。気持ち的には金の雨を降らせたいですけど(編注:新日本プロレス所属のオカダカズチカのキャッチフレーズが“金の雨を降らせる男”)。ただ、今回金じゃなくて、すべてはファイプロ愛だと思うんですよ。「ファイプロをやりたいか!?」という僕の気持ちに、ファンの方が応えてくれたらすごく嬉しいですね。

――「ファイプロファン、元気ですか!」と。
松本 はい。「ダーッ!」とやりたいですね。