サンフランシスコで開催中の、ゲーム開発者向けの国際カンファレンス“ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス”。同イベントには世界中からメディア関係者が集まることもあり、例年たくさんのプレスイベントが平行して行われる。
今年はOculus VRが、GDC開幕前日より会場近くでプレス体験会を行っていた。その中でもここでは、Oculus RiftとモーションコントローラーのTouchに対応したVRFPS2作品を紹介する。
『メトロ』級の廃墟美でVR!
まず最初は、以前も一度ご紹介したが、核戦争後のモスクワを舞台にした『メトロ』シリーズを開発した4A Gamesのマルタスタジオによる『ARKTIKA.1』のインプレッションから行こう。『メトロ』シリーズ同様に荒廃した近未来のロシアを舞台としつつも、弾をカーブさせて壁の向こうに隠れている敵を撃てる銃が出てくるなど、武器関係のテクノロジーだけは超絶進化しているという設定で、廃墟感と未来感を両立した世界になっているのがポイントだ。
ゲームとしては、障害物に身を隠しながら二丁拳銃で戦い、ストーリーにそって進んでいくという比較的ストレートなキャンペーン型FPSで、移動は決められた場所にボタンを押してワープするという方式(酔いにくい)。戦闘シーンなどでは敵からの遮蔽度が異なる複数のポイントがあって、自分の体力やリロードのタイミングなどを考慮に入れつつ、ワープで有利な位置へ動き回って戦っていくことになる。
4A Gamesではかねてから本作をVRでもAAA(最上級)として開発する作品と位置づけており、実際に背景美術をはじめとするアート面の作り込みは凄まじい。GDCデモの舞台になっていた、ジャンボジェット機の残骸がそこら中に転がっている空港跡のステージなどは、まさに『メトロ』の廃墟美の中に入り込んだかのような感じを味わえた。AAAというのはまったく誇張ではない。
かと思えば、チュートリアル部分で「ではバーチャルトレーニングをしましょう」とVR世界の中でVRヘッドマウントディスプレイを被らされる羽目になったり、暗証番号が必要なパネルの前で手詰まったかと思いきや反対側の壁になぜかその番号が張り紙してあったり、空港の金属探知機を通るシーンで一度銃を外さなければならず、直後に敵と遭遇して慌てる羽目になったり、唐突にビデオゲーム的ジョークがぶっ込まれてくるのにニヤリ(「動くなよ」と念を押されてから思わず動きたくなるシチュエーションになるという、ダチョウ倶楽部的ネタもある)。
(変な銃は多いが)ゲームプレイ自体はあまりトリッキーなことをせず、まさに正統派の大作FPSをVRにした感じで、投資額が回収できるのか心配になってしまうほどだが、VRでのギミックに頼りすぎて作り込みが甘めのタイトルもちらほらある中、ここまでの正面突破の力技は意外とありそうでなかった感じ。製品版では全12章あるそうなので、発売の暁にはあらためてエンディングまでトライしてみたい。
“普段は一人称視点で移動中は三人称視点”というユニークな移動方法に注目
そしてもう一本はGunfire Gamesの『From Other Suns』。同スタジオはVRゲームの開発を積極的に行っており、すでにアクションRPG『Chronos』、対戦シューティングの『Dead and Buried』などをRift向けにリリースしている。
新作となる『From Other Sun』は、スタッフいわく「『FTL』を3DにしてVRにしてマルチプレイにしたようなゲーム」。プレイごとに自動生成でさまざまな構造の宇宙船が用意され、その中で侵入してきた敵を倒してまわったり、破損部分の修理に向かったり、クルーの一員としてお仕事するのだ。というわけで協力プレイが前提の設計。
なお自キャラにはローグライク的な要素があり、戦闘などで死亡すると、別のクルーメンバーとして再出撃が可能。復活回数をオーバーするとゲームオーバーになるという形だ。ちなみにシールドをうまく使ったり、仲間とうまく連動して動かないと、結構あっという間に死ぬ。
面白かったのが移動方法で、ジョイスティックを使った任意移動も可能なのだが、酔いを低減する“コンフォートモード”では、ジョイスティックで移動を入力しているあいだは三人称視点になって、目の前をキャラクターモデルが駆けていく。
ワープ方式だと酔いにくいものの体験の連続性が若干損なわれるのだが、このやり方の場合は移動中は“自分”と“キャラクター”が分離するものの「動いている」という感覚がうまく間を繋いでくれるので、慣れると意外と快適。「VR世界での移動をどうするか」というテーマに対するひとつの選択肢として、ユニークな解決策だと感じた。