渡辺篤史さんの目に、新進気鋭メーカーの社内はどう映る?
俳優・渡辺篤史さんがエンターテイメント企業のオフィスを巡る企画“渡辺篤史のゲームオフィス探訪”。長年にわたって建物を見続けてきた氏の目を通して、各社のワークスタイルに迫る。
前回のコーエーテクモゲームスに続き、今回訪れたのは『白猫プロジェクト』や『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ』など、数々の大ヒットスマホゲームを開発・配信し続けているメーカー・コロプラ。
コロプラのオフィス所在地は恵比寿ガーデンプレイス内。事前に伺ったお話だと、一般的な企業とかなり異なる雰囲気の、ユニークなオフィスとのこと。果たして渡辺篤史さんはコロプラで何を発見したのだろうか。
渡辺篤史さんはエントランスから興味津々!
都内屈指の洗練された街・恵比寿のシンボル“恵比寿ガーデンプレイス”にオフィスを構えるコロプラ。オフィスに向かうエレベーターの中で、渡辺篤史さんは「今日のオフィスは楽しい職場と聞いてますので、楽しみにしてきました」と期待で胸を膨らませる。
フロアに到着してエレベーターを降りると、そこは暖色系の落ち着いた照明のエントランスが広がる。エレベーターホールで出迎えてくださったコロプラ人事担当の中川珠花氏に「今日はようこそお越しくださいました」と迎え入れられ、オフィス探訪がスタートした。
今日はよろしくお願いします。エレベーターにクマが描かれていますね。
弊社のイメージキャラクターで、名前は「クマ」と言います。
お名前も「クマ」なのですか? 珍しいですね!
オフィスのあちこちに飾ってありますので楽しみにしていてください。
中川氏に連れられてエレベーターホールからオフィスのエントランスを覗き込むと、そこには巨大な水槽が広がっていた。渡辺篤史さんは驚き、「え? あれは本物なのかな? 早く行きましょう!」と足を速めた。
コロプラのエントランスに入った渡辺篤史さんは、「なーんだ!(笑)」と思わず笑顔に。先程見た水槽はモニターだったのだ。コロプラのエントランスは21枚の4Kモニターが壁を覆い尽くしており、さまざまな映像が映し出されるようになっている。
渡辺さんが見た水槽の映像だけでなく、コロプラスタッフの顔や開発したゲームなど、映像が数分おきに変更される。訪れたお客さんたちを喜ばせる楽しい演出だ。
じっくりと水槽を堪能した渡辺篤史さんは、「いかんいかん……今日は取材をしにきたんだったね!」と我に返り、エントランスホールを見渡した。コロプラのエントランスは、大きなソファーやゲーム大賞などで受賞したトロフィー、少し古めのサーバーなどが飾られていた。
このサーバーは、コロプラ創業当時、まだ社屋がマンションの一室だったころに社長が使っていたマシンとのこと。渡辺篤史さんは「すべてはこの1台から始まったんですね。それがいまはこんな立派なオフィスに。いやはやご立派です」と感心していた。いまやスマホ業界にその名を知られる企業に成長したコロプラ。初心を忘れないようにと、エントランスに飾ってあるのかもしれない。
さらに、このコーナーには、コロプラが東証マザーズや東証一部に上場した際に贈呈された記念品や、日経ニューオフィス賞(※)でクリエイティブオフィス賞を受賞したときのトロフィーまで展示されていた。
(※日経ニューオフィス賞:“ニューオフィス”作りの普及・促進を図ることを目的として、創意と工夫をこらしたオフィスを表彰するもの)
コロプラの会議室にはそれぞれ特徴的な名前がついており、渡辺さんが通された会議室は“広大な大地”。室内には名前にちなんだ作品が飾られていて、作品はすべてコロプラ社員が制作したのアートワークとのこと。会社を訪れたお客様へのおもてなしの気持ちが感じられる。
都会の真ん中なのに自然を感じるオフィス
エントランスを抜けて、まず案内されたのは社員が働くオフィスの中枢部。中川氏が「こちらになります」と案内した部屋は、ビルの高層階に構えるオフィスらしく、見晴らしの良い明るい部屋だった。渡辺篤史さんファーストインプレッションは、「芝生の緑が印象的ですね」。
コロプラのオフィスは“家”をイメージして作られているそうだ。ゲーム開発の現場はストレスを感じることが多くなりがち。そこで、コロプラでは少しでも社員の負担を減らすように、安心して働ける環境造りを最優先にしている。前述した日経ニューオフィス賞を獲得した理由もうなずける。
室内に入ると、そこはまるでカフェのよう。数多くの椅子と本棚、さらに大きなテーブルが並んでいる。南国をイメージさせる観葉植物も心地いい。よくあるオフィスとはまったく異なる雰囲気だ。
このスペースは“リビングエリア”と呼ばれている。オフィスの入り口にあるため、まるで住居のリビングのように多くの人が行き来する場所だ。落ち着ける椅子やソファー、テーブルが並んでいる。人が集まりやく、自然と交流も生まれるそうだ。
ふつうのご家庭はリビングに人が集まると思います。
そうですね。玄関から入って廊下を抜けると、リビングにつながる家が多いです。
私たちのオフィスも、この場所がそうなるようにデザインしました。ですので「リビングエリア」と名付けています。
僕が取材したあるご家族の家は、リビングルームを通らなければ、いっさいほかの部屋に入れない作りになっていましたね。
その家主さんはリビングでの一家だんらんを大切にされているんでしょうね。私たちのオフィスも同じような設計思想なんです。
なるほど。コミュニケーションが生まれるすばらしい設計ですね。
お昼どきになると、リビングエリアで昼食を取る従業員も多いそうだ。自然と言葉を交わす機会が増え、まさに家庭の“リビング”そのものとして機能している。
リビングエリアの説明を受けた渡辺篤史さんは散策続行。まずは大きな本棚が気になったようだ。木材で作られた本棚には、新聞や情報誌、エンターテイメント誌が多数並んでいる。本棚の後ろにはいくつもの座席があり、ゆったり読書できる。
なお、この本棚は社員たちが手作りしたお手製の家具。「少しでも会社に愛着を持ってほしい」という意向から、オフィスに設置する家具の一部を自分たちの手で作り上げたそうだ。商品として売られている本棚と比べれば仕上がりは少々大雑把に見えるが、世界でたったひとつしかない本棚。何より、温もりがある。愛着も湧きます!
この説明を受け、渡辺篤史さんは「とてもよくわかります。じつは似たような話があるんですよ……」と、長寿テレビ番組『建もの探訪』第1回放送のエピソードを語った。初回放送のロケ地は沖縄の城西小学校だったそうだ。現地で歓迎してくれた生徒たちから、「僕たちが作った小学校なんだよ」と自慢されたと言う。
子供たちが作った小学校と聞いて、何でだろう? って不思議に思いましたよ(笑)。理由を聞いたら、建物の瓦の裏に、生徒たちの名前が書かれているんですって。さらに玄関のコンクリートに埋め込まれた装飾品のビー玉も、子供たちが飾り付けをしたそうなんです。だから子どもたちは、自分たちもこの建物を作ったメンバーの一員だと感じて、校舎を大切に使っているんです。
渡辺さんはコロプラ社員お手製の本棚に触れながら、「この本棚を作った方々も、きっと城西小学校の子どもたちのように、この本棚に入魂したんでしょうね。職場を大切に思っているんじゃないかな?」と、優しげな眼差しを向けた。
リビングエリアの奥には、リゾート施設を連想させる蚊帳で仕切られたスペースが。コの字型に並んだソファーとガラスと籐のテーブルが何とも優雅。渡辺篤史さんは「オフィスだけどお酒が飲みたくなるくらい心地いいね(笑)」と気に入って腰を下ろした。