『攻殻機動隊 S.A.C. ONLINE』って原作ファンから見てどう? 会一太郎さんに感想を訊いた。そしてピカピカさせた

『攻殻機動隊 S.A.C. ONLINE』はよくできたFPSだが、原作ファンの評価はどうなのだろうか。攻殻好きの声優・会一太郎さんに話を聞いてみたら謎が解けました。

●「こんなの攻殻じゃない」なのか「いいキャラゲー」なのか

 いわゆる“キャラゲー”って、原作を愛するファンの目にはどう映るのだろう。

 ここで言うキャラゲーとは、マンガやアニメなどを原作とするゲームを指している。たとえばネクソンのPC用オンラインFPS『攻殻機動隊 S.A.C. ONLINE』。素材の知名度としては一級品である。

 自己紹介が遅れました。ファミ通.comのミス・ユースケと申します。好きなお菓子はアルフォートです。

 冒頭の疑問を解消するにはファンに話を聞くのが手っ取り早い。だけど、『攻殻機動隊』ほどのコンテンツとなると、ファンが多すぎて取っ掛かりがない。

 そこで、知人のゲーム好き声優・会一太郎さんを頼ることにした。前に本作の記事を公開したとき、Twitterで「声優って原作アニメのままですか?」と質問してきたからだ。

▲会一太郎(青二プロダクション所属)。ニコ生で共演していたことがあるので話を聞きやすかった。豹柄が僕。

 声優を気にするということは、アニメ版『攻殻機動隊』に思い入れがあるに違いない。サービスが始まったことを教えたらプライベートで遊び始めたようなので、しばらく泳がせてから、アニメ版『攻殻機動隊』ファンとしての感想を聞かせてもらった。

▲最終的にこんなことになった。理由は記事の後半で。

 なお、本稿ではマンガとアニメをまとめて“原作”と表現しています。こだわりの強いファンのみなさんは「原作ってのはマンガのことだろ」と思うかもしれませんが、広い気持ちでお読みください。

 また、本稿の中で語られている作品の設定や世界、ストーリーの解釈は個人的な見解です。

●ゲームは『攻殻機動隊』の“if”のひとつ

 そもそもですよ。

 まだ何も聞いてないんですけど。

 「ただのSFだと思ってません?」って話ですよ。

 (めんどくさい人に話を聞いちゃったかもしれない)

 『攻殻機動隊』はSFの皮をかぶったハードボイルドなんですよ。登場人物の大半がおっさんで、主人公(草薙素子)ですら原作でメスゴリラなんて言われてる作品が、どうしてこんなに注目されるのか。

 それはですね、芯にハードボイルドがあるからなんです。これだけはどうしても言いたかった。

 それではインタビューは以上で。おつかれさまでした。

 おつかれさまでしたー。って、違う違う。

 ノリツッコミ。さすがにもう少し聞きますね。何をもってハードボイルドなのか教えてください。

 『攻殻機動隊』にはメカニカルなイメージがありますけど、すごく人間くさいんです。ちょっとしたやり取りや仕草が。
 電脳(脳とネットワークを接続する技術)化している人とはコネクタ挿せば意識を共有できるのに、あえて言葉を交わしますからね。トグサとサイトーは体をほとんどサイボーグ化していません。非効率的なはずなのに、それをよしとしている。

 有名な概念で、“ゴースト”ってのがあります。人間の自我や精神性を指す言葉ですね。少佐(草薙素子の通称)はサイボーグなのに、非科学的な“ゴーストの囁き(直感での判断)”を重視する。そこが何だか人間くさい。人間くささって対戦ゲームにも共通するんじゃないかなって。

 たしかに。人間くささや人間関係、そういう部分があるから、対戦ゲームとしてのおもしろさが生まれるというのはあると思います。

 ゲーム性と原作の魅力がリンクするのがおもしろい。これネタバレになっちゃうかな。作中で公安9課にスカウトされる人が、「僕は野球が下手だから」って断るんです。その意味として……あっ、僕の解釈ですけど話していいですか?

 どうぞどうぞ。

 このゲームの何がおもしろいかって、それぞれにスキルがありますよね。その能力が合わさってチームワークになる。

 おっ、あれですね。みんなの好きな名言。

 そうそう。やっぱりね、あれなんですよ。「チームプレイなどという都合のいい言葉はない。あるとすれば、スタンドプレイから生じるチームワークだけだ」。

 野球はプレイのひとつひとつが個人技なのに、それぞれが高いレベルで融合するとチームワークに昇華される。そのキャラは公安9課の活動を野球と表現しているんですかね。

 厳密にその言葉の意味が説明されているわけじゃないですけど、きっとそういうことなんでしょう。
 たとえば、サイトーがヒートセンサーを使って、少佐が光学迷彩を使った後に、パズが加速して突っ込んで、ボーマが回復スキルでフォローして、敵が混乱しているところにバトーがアームランチャーを撃ち込む。これをチームでやったらすげー強いですよね!

 (興奮してるなー)

▲キャラクターはそれぞれ固有のスキルを所持している。素子、サイトー、パズ、ボーマのスキルは周辺の仲間と効果を共有可能。

【各キャラクターのスキル】

◇素子……光学迷彩
光学迷彩で姿を消す。半透明になり、敵からは非常に視認しにくくなる。

◇バトー……アームランチャー
強力なロケット弾を撃ち込む。

◇トグサ……シーカードローン
敵を発見すると自動追尾し、自爆しつつ閃光効果を発生させるドローンを射出する。

◇サイトー……ヒートセンサー
熱源感知で、壁の向こうや遠くに離れた敵の位置を一定時間視認できる。

◇イシカワ……セントリーガン
範囲内の敵を自動で攻撃するセントリーガンを設置・回収する。

◇パズ……加速疾走
移動速度とジャンプ力が大幅に上がる。

◇ボーマ……ナノゲルアーマー
体力の上限が増え、効果時間中は体力が自動回復する。

◇メイヴン……電脳遮蔽膜
敵の視界を遮りつつ銃弾の威力を低下させる壁を設置する。

一太郎 強キャラひとりでは成立しない。個々のスキルがチームワークになる。これが原作ファンからするとたまらんところですよ。

 いやー、安心しました。攻殻ファンの中には、パッと見の印象で「攻殻っぽくない」という人もいるだろうなと。でも、「システムが攻殻っぽい」と感じる人もいると思っていた。そういう話を攻殻ファンから聞けてよかった。

 『攻殻機動隊』シリーズにはいろんなアニメ作品があって、微妙に設定が違ったりしています。要はパラレルワールド。全部がひとつの歴史でつながっているわけじゃない。“if”がいっぱいある世界だと思うんです。
 『攻殻機動隊』のifのひとつとして、このゲームみたいにトグサが最前線でバッチバチに戦う未来があってもいい。

 なるほど! それは攻殻ファンならではの考えですね。

 ひとつの作品がきっかけで少しくらい破たんしても、厳密に言うとそれは破たんじゃないのではと思います。それも攻殻のひとつだと考えれば。

 『攻殻機動隊』は“if”と“破たん”を受け入れる作品群だ、と。うおー! そういうの聞きたかった!

▲「うぉー!」と、ふたりして大興奮。

 ゲームのタイトルに“S.A.C.”って付いてますけど、S.A.C.シリーズを軸にした別作品と断言したほうが、ファンはイメージしやすいんじゃないかなーと。
 原作に寄せる寄せないではなく、もうひとつの『攻殻機動隊 S.A.C.』。僕は自分でそう落とし込みました。

 「『攻殻機動隊 S.A.C.』をゲーム化しました」ではなく、「原作ベースのパラレル世界を描いたFPSです」って感じですね。ふつうは原作から離れることを嫌がるファンも多いと思いますが、『攻殻機動隊』はちょっと違うということでしょうか。

 そうですね。いろいろな監督が作った(アニメの)『攻殻機動隊』があって、それはすべて攻殻ファミリー。それでいいと思う。開発スタッフさんに「あなたの攻殻を作って、見せてください」と言いたいですよ。

 そのひと言、作り手にとってめちゃくちゃうれしいと思います。

 クイックマッチに参加するときのボタンが“DIVE”じゃないですか。この時点ですごくいいゲームだと思いました。スタートでもインでもないく、ダイブ。(開発者スタッフは)いいおたくですよ。

 そりゃもちろん、(独自解釈の攻殻を)嫌いな人も出てくるでしょう。でも、嫌いだからといって、ネガティブキャンペーンをする必要はまったくない。それは『攻殻機動隊』の未来を閉ざすだけだから。
 声優が変わった作品もありますよね。好き嫌いはあるだろうけど、あれはあれできちんと成立してると感じましたもん。

 世の中には完全な原理主義者っていますよね。原典以外は認めない人。それはもったいないと思うんです。攻殻に関して言えば、パラレル世界が存在することも本質のひとつなんでしょうから。

 原作を知ってるかどうかで、このゲームは感じかたがだいぶ変わるでしょうね。原作を知らないニコラス(※)は「課長の声が邪魔」って言ってました。デモリッションモードで残りひとりになったときですね。

(※エリック・ニコラス:よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属のゲーマータレント)

 僕は課長大好きなんで全然気にならなりません。あんなにかっこいいおっさんはいないわけですよ。あの人に「最後のひとりだ」って言われたらがんばれる気がする。
 でも、ニコラスに言わせると「足音が聞こえにくくなる」。僕のゴーストは鼓舞されるけど、あいつのゴーストはそうじゃない。その違いもおもしろかったりして。へー、そういう風に感じるのねって。

 いやー、いい話を聞けてるな。事前に準備しておいたインタビュー事項はほとんど聞いてないけど。

 おたく同士が話すと、たいていこうなりますよね。

●原作のよさ、もっと教えてください。

 僕も『攻殻機動隊』をそんなに知らない側なんですよ。一応、最低限の知識はあるつもりですけど。このゲームをやって、いま話を聞いて、ふつふつと興味がわいてきてます。

 ほんとハードボイルドだからいいっすよ。(個人的には)『シティーハンター』以来のハードボイルド作品なんじゃないかと。世界最高の萌えキャラ、タチコマもいますし。

 タチコマかわいいですよね。強さのバランスも絶妙。FPSにおける戦車って戦局を変える兵器みたいな扱いだけど、タチコマはそんなことなくて。ただ、かく乱したり敵を追い払ったりとか、そのためのキャラと割り切ると、印象が変わります。

 原作ではけっこう使い捨てにされるんですよ。あくまでも道具なので。ドックにいっぱいいて、並列化されて。兵器としてAIで動くんですけど、AIが発達しすぎて並列化できなくなっていくんです。そうすると使い捨てにしづらくなるのが人間じゃないですか。

 情が湧きますからね。

 そんなんだから、タチコマに乗るよりも、タチコマのAIを育てたいです。フレンドやクランで作ったAIを共有するのもおもしろそう。
 アニメだとあの声もあいまって悲しさも怖さもあるんです。AIには善悪の観念がないので。こういう部分も込みでタチコマに萌えられれば、その人はもう攻殻仲間です。

 Welcome to 攻殻 Worldだ。

 バトーを使ってると、どうしてもタチコマに愛着が沸く。これが僕のロールプレイ。精神がバトー側に寄っちゃうんです。

 バトーはこだわりが強い性格で、タチコマも決まったやつにしか乗らないんですよ。並列化されてるんだから全部いっしょだろって話なんですけど。
 ほかにも、少佐がいちばん効率厨なのに、変に人間くさい瞬間もあったりして。トグサに「(体を)電脳化してないのは不便だろ」なんて言うわりに、じつは理解もしている。

 ハードボイルド作品は人間関係の描きかたがいいんですよね。

 キャラクター性や人間性を深読みしたくなる。そうだ、いちファンとしては、マテバ(ハンドガン)が入ったのがうれしかったですね。マテバはトグサの代名詞。トグサを使うときはマテバに持ち替えます。

 キャラに対する愛着やこだわりはFPSでは生まれにくいと思いますけど、『攻殻機動隊 S.A.C. ONLINE』は別。

 僕みたいなMMO寄りのFPS初心者からすると、かなり入りやすいゲームでした。敵も自分もやられやすいから試合展開が速い。死に覚えゲーとしてすぐ飲み込める。
 心が折れそうになったときには、1話の少佐の言葉。「落ち込んでいる暇があるなら自分の特技で貢献しようと思わない?」ってトグサに言うんですよ。

 うわー、それクランメンバーが落ち込んでるときに言いたい。

 やられまくって「何だよこのクソゲー」とか言う人もいますけど、僕だったらスキルを使う準備ができたらうまい人にスキル効果を共有して使ってもらう。敵を倒すこと以外で貢献したい。

 それと、ふつうにマップを歩きたいですね。マップをうろちょろして、どの角度でグレ投げたらいいとか練習になる。公安9課はじっくり見たいですよ。タチコマのハンガードックなんて、めちゃくちゃ燃えますよ。

 僕が見ても興奮しますもん。

 アニメでもまさしくあんな感じでした。アニメはけっこう古いので印象は違いますけど。あのクオリティのフル3Dで見られる日が来るなんて。

 単なるファンゲーにも単なるFPSにもなり得るわけだから、微妙なバランスの上に成り立ってるゲームですよね。どっちつかずに倒れる危うさもあるし、両方を囲える強さも持ってる。
 個人的にはガチクランに入ってちゃんとやり込みたい気持ちはあります。仕事につながるかもしれないですし。

 仕事くださいアピールしておきます?

 (ネクソンさんからしたら)それもウザいんじゃないですか? 結局、強いやつには仕事が来ますから。
 FPSとか対戦ゲームの仕事もおもしろそうだなと思っていたところに、キャラが際立っていて、原作が好きな『攻殻機動隊』、さらにFPS。いろんな要素がすとーんとハマったゲームが来たな、っていうふうに思ってます。

 「こういうものを実装してほしい」みたいな、ファン目線の要望はありますか?

 ファンとして実装してほしいものはたくさんありますね。電脳を一瞬でパーンッと焼き切る接近攻撃があったらかっこいいなーとか。原作どおりに全員が光学迷彩を使えてもいいと思うし、少佐は相手をハッキングできてもいいかなと。でもどうだろう、強すぎるかなー。

 前に開発ディレクターさんに話を聞いた感じでは、ファン目線のモードの構想もあるみたいだったから、期待していいと思います。