アイテム課金&ガチャ浸透の歴史を知る男・ネクソン山崎氏にインタビュー──PCを買ってでも遊びたくなるゲームを求めて

ネクソンが日本で運営するPCオンラインタイトルを取り仕切る運用部部長の山崎克臣氏に、2017年の同社の展望を直撃。併せて、いわゆる“ガチャ”システム導入者のひとりでもある同氏に、当時の導入経緯と現在の課金システムのあるべき姿を聞いた。

●“ガチャ”や“アイテム課金”の誕生秘話も必読!

 PCオンラインゲームを中心に海外の良質なコンテンツを国内に提供する、パブリッシャー・ネクソン。2016年もPC用MMORPG『Tree of Savior(ツリーオブセイヴァー)』やPC用オンラインFPS(一人称視点型シューティングゲーム)『攻殻機動隊 S.A.C. ONLINE』を世に送り出すなど、一貫して存在感を発揮し続けてきた。

 新たに迎えた2017年、同社はどのような展開を見せるのだろうか。その具体的な中身を聞き出すべく、ネクソンが日本で運営するすべてのPCオンラインタイトルを取り仕切る山崎克臣氏(※)にインタビューを決行。モバイル系のゲームに押されつつあるPCオンラインゲーム界の展望も含めて、直近の未来をお伺いした。

(※正しくは「山偏に立、可」ですが、環境依存文字のため「崎」と表記しています)

▲ネクソン運用本部/運用部部長の山崎克臣氏(文中では山崎)。

 同社のタイトルを初期の頃からプレイしてきた方はご存じかもしれないが、今回お話を伺った山崎氏は、現在ではおなじみの課金形態である“基本無料+アイテム課金”や“ガチャ”系システムが生み出された、まさに現場にいた方。そんな同氏に、その仕組みを導入した経緯と、アイテム課金のあるべき姿についてもお聞きした。

 月額課金が主流だった2000年代初頭にあって、どのようにして“プレイヤーへの貢献”を目指した一連の料金形態が考案されたのか……非常に興味深いお話が聞けたので、ぜひご一読いただきたい。

●山崎氏はネクソン日本法人の黎明期を知る“生き字引”

──山崎さんは、いままでネクソンでどのような業務に携わってこられたのでしょうか?

山崎 2001年に入社してすぐに、当時日本で新しくサービス展開することが決まった『タクティカルコマンダー』の担当になりました。その頃は本当にスタッフの数が少なくて、サーバーなど技術担当の者はいたものの、ユーザーサポートやゲーム内容の更新などを私ひとりでこなしている状況でした。
 たいへんでしたけど、ほぼすべての作業を私自身で行っていたため、(ユーザーからの問い合わせに対する)回答が担当者によって変わらないというメリットはありましたね。そういう意味で、“同じ返事が返ってくる”や“この人は理解しているんだな”といった整合性の面での安心感をユーザーさんに抱いてもらえたと思います。いま振り返ると、楽しく仕事していました。

──タクティカルコマンダー』というタイトルを、久しぶりに耳にしました(笑)。

山崎 2002年くらいにリリースされた作品ですので……。ネクソンの日本法人が設立されてから、約1年後に出たタイトルだったと記憶しています。

──私は『メイプルストーリー』が登場する少し前くらいから、ネクソンさんとお仕事をさせていただいています。2002年か2003年くらいでしょうか……懐かしいですね。当時在籍していたテックウィン編集部で、『メイプルストーリー』のアイテムがもらえるシリアルコードを雑誌に付けたのがいまでも忘れられません。当時はまだシリアルコードでアイテムを配布するような文化がなかったので、ネクソンさんにシステムを作ってもらって……いま思えば、ゲーム内アイテムを雑誌に付けるのは(おそらく)日本初の試みでした。

山崎 韓国にもそういうサービスが当時なかったはずなので、日本独自のシステムとして(開発元が)シリアルコードを制作したのだと思います。

▲『メイプルストーリー』はネクソンを代表するMMORPGのひとつ。2003年のサービス開始以来、現在に至るまで根強い人気を誇る。

──すみません、話が脱線してしまいました。山崎さんは、『タクティカルコマンダー』を担当された後、どのような業務を歴任されたのでしょうか?

山崎 ゲームサポートや課金を担当するグループの取りまとめを担当しました。何人かのアルバイトの方とともに動いていた時期なので、まだ部門として成立する前の段階です。その後『メイプルストーリー』がリリースされた頃から会社が大きくなり始めて……。当時は私も、職場で仕事をしながらずっとプレイしていました(笑)。それが当時の社長の目に留まり、「そんなに『メイプルストーリー』が楽しいなら担当者になってみては」と言われたことがきっかけで、仕事として同作に携わるようになったんです。

──なるほど。

山崎 そうして社内の組織が大きくなるにつれて、運用を行うチームが(タイトル別に)分かれることになり、私はその運用部門のチームリーダーになりました。そこからさらにタイトルが増えて業務が細分化された結果、(運用全般を統括する)“室”ができました。その“室”の下にいくつかのチームが設けられる形になり、最終的にいまの“部長”という肩書に行き着いています。ひとつのタイトルの担当者からスタートして以来、ずっとネクソンで仕事を続けてきたという感じではあります。

──山崎さんが敷設されたレールに乗って、会社が発展してきたのですね。

山崎 私自身はレールを引いていないと思いますよ(笑)。レールを敷設した人が別にいて、そのちょっと後ろを走ってきた感じです。ただ、会社やオンラインゲーム業界が成長していく姿を間近で見てきたのは確かです。ちなみに、当時の私の社員番号は8番でした。

──ひとケタですか!

山崎 2003年に社員番号制が発足したんですが、氏名の“あいうえお順”で数字が割り振られたために、私よりも後に入った人が(8番よりも)若い番号が与えられていたりしました(笑)。

──入社した順番でいうと、何番目になるのでしょう?

山崎 現在も会社に残っている者でいうと、3番目くらいですね。(入社時に)正社員だったというくくりであれば、私がいちばんの古株ではないでしょうか。

──まさにネクソンの生き字引ですね。

●海外産のPCオンラインゲームを運営する喜びと苦しみ

──オンラインゲームの運営は、どういった部分が楽しく、また難しいものなのでしょうか?

山崎 ご存じの通り、ネクソンの日本法人は基本的にパブリッシングを行ってきた会社です。開発元は、グループ会社である韓国のネクソンが中心になります。日本で運用を行っているのに、開発は外部どころか海外で行われている……この部分がすごく難しいところではあります。
 加えて、開発元はグローバル展開していますので、いろいろな国から寄せられた要望が開発を行っている国で取りまとめられ、その答えが(バランス調整や新規コンテンツという形で)各国に届けられていきます。当然ながら、日本人の好みにマッチした企画だけが送られてくるとは限らないので、そこに難しさを感じることもやはり多いです。とりわけ中国や韓国とは歴史的な問題があったりするので、ケースによっては「どうしても無理」と開発元に伝えたこともあります。

──やはり、そういう部分はとくに丁寧に扱わなければいけないですからね。

山崎 一方で、日本とまったく関係のない国の意見を反映させて入れたものが、意外なほど国内ユーザーからご好評をいただいたりすることもあります。
たとえば『メイプルストーリー』はいろんな国で運用されており、各国から寄せられたさまざまな意見を集約させて開発が進められるのですが、中には日本人が絶対に思い付かないようなコンテンツが仕上がってきたりもするのです。

──山崎さんがそうしたコンテンツを初めて目にしたとき、「これはいける!」と直感されるのでしょうか? それとも、リリース後のユーザーの反応を見て「そこに興味を持つのか!」と後で感じるものですか?

山崎 両方ですね。日本側から提出した企画はリサーチを行い、ユーザーさんの動向や好みを踏まえたうえで作っています。それをリリースした後に反響をすぐに得られること自体が、やりがいにもつながります。総スカンを頂戴することも少なからずありましたが(苦笑)。
 ユーザーさんの反応をダイレクトに見られることは、喜びであると同時に辛さでもあります。海外の開発元とのやり取りについても同様で、うまくいくこともあれば失敗することもあります。そのハードルが高いほど、成功時の喜びが増大する感じです。

●「PCを買ってでもプレイしたい」と思わせる品質を目指して

──スマホゲームを競合相手と仮定した場合、PCオンラインゲームは現在どのような状況にあるとお考えですか?

山崎 日本の市場という視点とネクソンが置かれた立場で、お答えが変わってきます。まずはネクソンが置かれた立場についてですが……じつは、我々のグループ全体がモバイル系のゲームに若干乗り遅れていた時期があり、その反省から、韓国でモバイルゲームの開発に注力していた期間がありました。

──PC向けのゲームをまったく作っていなかったということですか?

山崎 いえ、すでにサービスが展開されているタイトルについては、もちろん開発は継続されていました。新規タイトルに関してはモバイル寄りになっていたということです。いまはその波が過ぎ、PC向けのゲームとモバイル系のタイトルが半々くらいの割合で作られるようになってきています。ネクソン日本法人の立場からすると、韓国の開発元がPC用ゲームを継続して作ってくれていることは、タイトル数の安定確保につながるのでありがたく思っています。

──では日本の市場についてはいかがでしょう?

山崎 日本について言えば……その前に個人的なことをお話させていただくと、私は『旧ファイナルファンタジーXIV』がリリースされた当時、それをプレイするためだけに数十万円のPCを何台も買ったりしたタイプの人間です。

──それほどPCのオンラインゲームがお好きなんですね。

山崎 はい。『旧ファイナルファンタジーXIV』の発売から時は過ぎましたが、いまの市場においても、それだけのクオリティーや期待を感じさせるタイトルであれば、私と同じ行動を取るプレイヤーの方はいらっしゃるのではないかと思っているのです。

──そうした期待をユーザーに抱かせる条件みたいなものは何でしょうか?

山崎 日本のIP(知的財産。ブランド力のあるタイトル)が使われていて、かつ知名度も高い作品です。また、たとえば『Tree of Savior』のように、同じ開発者が過去に手掛けたゲームが存在し、それを継続的に追いかけている方から多くの期待を寄せていただいた結果、成功を収められた面もある……というパターンも存在します。
 こうした条件みたいなものがあるので、韓国で新規に開発したIPをいまの日本に持ち込んだとしても、そこまでの成功を収めるのが難しいのが現状です。(家庭用ゲーム機と同様に)PC向けゲームの市場においても、「PCを買ってでもプレイしたい」とみんなに思わせるくらいハイクオリティーなゲームを目指す。これがいちばん重要なのかなという気がしています。

▲『Tree of Savior(ツリーオブセイヴァー)』の開発は、日本でも多くのファンを持つキム・ハッキュ氏が率いるIMC Gamesが担当している。

──「PCを買ってでもプレイしたい」と思えるタイトルは、見た瞬間にそれがわかるものですか? あるいは、そうした作品を見分ける価値基準のようなものがあるのでしょうか?

山崎 「いちゲーマーの自分がお金を出して買ってもいいかな」という自身の判断だけです。

──なるほど。スマホゲームの市場が大きくなっているのは間違いないので、そちらに注力するメーカーさんが増えることはある意味自然だとは思います。そんな中で、ネクソンさんほどPC向けのタイトルに情熱を注いでいるメーカーは少ないですし、山崎さんをはじめとする方々がしっかりしたゲームを運営していきたいと思っておられるのは、ユーザーの立場からすると頼もしく感じます。

山崎 ありがとうございます。

●『攻殻機動隊 S.A.C. ONLINE』と『Tree of Savior』の今後にも注目

──2016年にリリースされた『Tree of Savior』の最近の反響および感触は、どのようなものでしょうか?

山崎 オープンβテストの接続数が想定の2倍を超えたことが示す通り、1年前に発表した当時も含めて、ものすごく大きな反響をいただいています。サーバーの増設に追われるなど、うれしい悲鳴を上げていたサービス開始直後の日々が思い出されます。あのような体験をするのは本当に久しぶりなので、技術部門のスタッフも含めて、昔を思い出してある意味では楽しく仕事をさせていだたきました。現在は“プレイして楽しいと感じた方に残っていただいている”くらいに落ち着いています。

──当時の混乱は収まっている感じですね。今後は何か大きな動きがあるのでしょうか?

山崎 大きいアップデートは……ご迷惑をお掛けして申し訳ありません(苦笑)。不具合が出てしまわないように、今後2~3ヵ月をかけてキッチリやろうという動きを現在進めています。その後、1月25日に公式サイトのお知らせで公開させていただいた内容で、アップデート作業に入る流れになるかと思います。

※関連リンク
2017年2月以降のアップデートスケジュールについて

──状況を整理しつつ前に進む感じですね。

山崎 そうなります。

──では、『攻殻機動隊 S.A.C. ONLINE』の感触はいかがですか?

山崎 アニメの『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』を観た方の多数が、『攻殻機動隊 S.A.C. ONLINE』を遊んでくれているような感触です。やはりIPの力というものをかなり感じているところです。

▲『攻殻機動隊 S.A.C. ONLINE』は、同名の人気アニメを題材とするPC向けオンラインFPS。スキルの効果を味方のプレイヤーと共有できる“スキルシンク”のシステムが大きな特徴だ。

──個人的には「よくできたFPSだなぁ」と感じているのですが、サービス開始当初はクランに関する機能がありませんでした。

山崎 クランが実装されたのが2016年の12月前半で、クランマッチが導入されたのが12月後半です。それ以前は、基本機能ともいうべきクランがない状態で運用していたので、この問題点を解決すべく、開発に強くお願いして実装しました。『攻殻機動隊 S.A.C. ONLINE』は、いよいよこれからという感じです。

──今後、FPSとしての広がりが本格的に始まるわけですね。

山崎 一方、原作の『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』が好きでゲームを始めていただいた方は、FPSにあまり本腰を入れてプレイされないせいか、対戦をバリバリ楽しむという感じでもありません。たとえば、ゲーム内で『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』の声優さんによる話し声が聞ければ、それだけで心がホワッと満たされる……みたいな方が多いかと思います。ですので今後は、PvPだけでなく、原作のアニメが好きでゲームを始めていただいた方が楽しめるコンテンツにも力を入れていく必要がある、と考えているところです。

──対戦ゲームが苦手な人でも『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』としての魅力を味わえるように、ですよね。いまの『攻殻機動隊 S.A.C. ONLINE』は、骨太のFPSというイメージが強いわりに、従来のFPSタイトルとは違う流れを形成しつつあるということでしょうか?

山崎 FPSに慣れ親しんでいるユーザーさんの多くが、いったん触れに来てくれているとは思います。(中にはゲームから離れる方もいますが)通常のFPSに電脳戦的なスキルを入れ込んだ表現を採用しているため、既存のFPSユーザーになじみやすい作りであることは確かです。
 その一方で、全体のおそらく半分くらいは、『攻殻機動隊』というIPの力でプレイをはじめてくださった方になります。そのせいか、すぐにプレイをお休みされる方がいることも確かです。

──自分がイメージする『攻殻機動隊』とマッチするかどうか、という部分ですね。

山崎 そうです。そこがすごく重要になるので、そうした部分をうまくカバーできるようなアップデートを行う必要があるとも思っています。

──そのほかのタイトルの様子はどうですか?

山崎 全体の話を申し上げますと、2015年はKPI(重要業績評価指標。業務などにおける目標達成の基準となる指標)がおしなべて下降傾向でしたが、2016年からはそれが改善傾向にあります。

──全体で見れば、いい方向に進みつつあると。

山崎 そうですね。とはいえ、新規の方が大幅に増えたというわけではないので楽観はできません。お休みしていたユーザーの方にお戻りいただけているだけでなく、スマホ系のゲームから移って来られる方も多いようです。この部分は、本当にうれしい数値の動きです。

──そうした流れを踏まえて、今後どういったタイトルやサービスを提供していくべきだとお考えですか?

山崎 先ほどもお話ししましたが、「PCを買ってでもプレイしたい」と思えるタイトルをいかに見つけられるかどうか。あるいは、(サービス中のタイトルであれば)そうした魅力を秘めた要素を開発元に制作してもらえるよう、いかに提案して日本に持ってくるか。やはりこれに尽きますね。

●多忙な時代にマッチしたPCオンラインゲームのありかたとは

──世代を問わず、最近はPCを起動し腰を落ち着けてゲームをプレイする時間を取ることが難しい方が増えてきていると思います。そうした状況を踏まえると、コンシューマー(家庭用ゲーム機)のタイトルも含めて、PC向けのゲームを開発・運営する姿勢としてはどうあるべきだとお思いですか?

山崎 非常に難しいご質問ですね。私を含めたネクソンの日本法人は開発を行っていないため、これからお話することは(日本でサービスを展開する)タイトルの選定やテストに関わる者としての意見になります。
 そのうえでお話しすると、いまのPC用ゲームとコンシューマー系のゲームをプレイする方の多くは、腰を落ち着けてプレイする時間がなかなか取れない……この現状は、たしかにあるとは思います。ご質問の回答にならないかもしれませんが、ゲームという面で見ればPCとスマホとタブレットの垣根は徐々になくなっていくと思います。ですが、いまはまだその垣根が取り払われたわけではありません。その状況が進行していくことを祈るばかり、という状況です。

──そう思います(笑)。

山崎 ゲームをする時間がなくなっているわけではなく、何らかのおもしろいスマホゲームをプレイしているために、PCやコンシューマー機を起動することなく、部屋の中でそれ(スマホゲーム)を継続的に遊ばれているのだと思います。プレイ時間が単純にPCやコンシューマー向けのゲームにまで届いていないのです。
 そこを解決するに当たってPCゲームはどうすべきか……ここはタイトルの選定基準にも関わる部分ですが、たとえばPCやコンシューマーならではの没入感や操作感が得られるかどうかが重要になってくると思います。

──スマホにはない、もしくはスマホとは違った魅力が大事ということでしょうか。

山崎 (スマホゲームは)近くで見るものですし、解像度自体もさほど荒くありませんので、グラフィックは双方のあいだで差は小さくなってきています。そうした現実を考えると、大画面のモニターでプレイすることで没入感を得られるかどうかが重要。そのためにはデバイスが重要になってくるので、そうした部分でスマホゲームと競合しないタイプの作品であったり、それ以上の(ハイクオリティな)タイトルを選定できるかどうかにかかっているでしょう。

──モバイル向けのゲームをプレイしている人の多くは、なかなかPCのゲームに行かないのですね。

山崎 以前からPCゲームを遊んできた方の中には、双方を掛け持ちでプレイされる方もいらっしゃるでしょう。ですが、そうでない方は、家族が使っているPCが家にあったり、古いコンシューマーの本体があったとしても、「スマホで遊べるし」みたいな感じになっているのだと思います。

──私のような古くからゲームに親しんでいる者は、スマホゲームをプレイしつつPCゲームも楽しむことへのハードルが低いのだと思います。ですがその一方で、いまの10~20代の方たちは、ゲーム以外のホビーやエンタメの選択肢も多いぶん、そのハードルがやや高いのかもしれません。

●初期のMMORPGの魅力を現在の若者に伝える難しさ

──山崎さんは、MMORPGをかなり昔からプレイしてこられたとお伺いしました。

山崎 私が初めて触れたオンラインゲームは『ウルティマオンライン』です。当時はUS(北米地域)のサーバーしか存在しないにも関わらず、まったく英語が話せない状態で遊んでいました(笑)。アカウントの作成から支払いの方法まで紹介されている日本語サイトを探して、ゲームに接続。その先のやり取りは当然ながらすべて英語なので、最初はアイテムの売り買いに苦労したことをいまでも覚えています。結局、日本人が集まるギルドに所属しました。

──(笑)。

山崎 その後に追加された日本のサーバーにも行ってみたのですが、“やっぱりアメリカのほうがおもしろいな”と感じました。

──双方のサーバーでは、無秩序ぶりが違いましたか?

山崎 ぜんぜん違いましたね。その後、同じようにUSのサーバーで『エバークエスト』をずっとプレイしました。英語ができない私が、英語に満ち溢れた世界に入って、その中で必死にやり取りをしていました。

──エバークエスト』も、初期のMMORPGならではの楽しみがありました。

山崎 ゲームの中で作業と呼ばれる、『ウルティマオンライン』に例えると鉱山へ行って何時間も掛けて鉄鉱石を掘るみたいな要素があったのですが、それを行う理由は、最終的に自分が鉄鉱石から作ったインゴットを売ったり、あるいは防具を作って売りに出すためです。それを、ほかのプレイヤーが買ってくれて最終的に自分の利益になる……自分が作ったものを誰かが使ってくれるということも、すごくうれしかったですね。たしかに作業は面倒くさかったですが、“その先”が感じられる喜びがあったと思っています。
仮に、いまのグラフィックのクオリティで『ウルティマオンライン』がまったく同じ状況でリリースされたとしたら、僕はまたプレイすると思います。

──いまの山崎さんは、当時のシステムに満足できるでしょうか?

山崎 僕はプレイできると思いますが、世間一般の方たちが楽しめるかと聞かれると……難しいかなと(苦笑)。たしかに初期のMMORPGなので粗削りな部分はありましたが、自由度の高さという意味では、『ウルティマオンライン』を超えるゲームはいまでも存在しないと思っています。

──長時間待たされるなど不便なシステムも無数に存在しましたが、個人的に、そういう部分にも楽しみはあるといまでも思っています。この部分について、山崎さんはどうお考えですか?

山崎 当時を知る、我々のような世代のプレイヤーの中には遊んでくれる方もいるとは思います。ですが、オートバトルが主流のいまのスマホゲームに慣れ親しんだ方が、いきなり『ウルティマオンライン』の世界に放り込まれたら、「えっ?」と感じるでしょうね。

──特定のコンテンツの一部分にそうした要素を取り入れたとしても、やはり受け入れられないでしょうか? 極端な例ですが、現在主流の短時間で興奮や満足感が得られるゲームの中のほんの一部分に、“20時間に1体しか出現しないレアモンスターを10数人で取り合う”みたいな遊びがあってもいいのではとも思うのですが。

山崎 おもしろいとは思いますが……(苦笑)。

──それを現在のゲームでストレートに表現することの難しさは、誰もがわかっていることだと思います。そこをどうにかする方法は、あるものでしょうか?

山崎 粗削りな部分は、チュートリアルを設けるなどすれば改善できるはずです。ですが、たとえば特定の獲物を討伐するために20時間もゲームに貼り付くといったノートリアスモンスター的な要素は……なかなか難しいかもしれません。

──オンラインゲームをある程度経験してきた開発者や運営者は、そこに歯がゆさを感じているのではないでしょうか。自分たちがおもしろいと感じてプレイしてきたものを、若い方々にも体験してほしいのに、それをどう伝えるべきかわからない……しばらくは答えが出ない問題かもしれません。

山崎 そうですね。僕自身もそういうゲームが好きですし、社内で意見を述べるときもそういう視点で物申すことが多いです。たいてい煙たがられますが。「『DARK SOULS』をノーデスでプレイするような人の意見はけっこうです」と(笑)。

──ひどい!(笑) 偉そうな物言いで恐縮ですが、個人的には、いまお話しされてきたことをつねに意識しておいてほしいなという気持ちはあります。

山崎 私としても、どこかのタイミングでねじ込みたいという気持ちはあります。