満を持して日野氏が“黒川塾”に登場!

 エンタメに精通したメディアコンテンツ研究家の黒川文雄氏が主催するトークイベント、“黒川塾”。第45回となる今回は“クロスメディア進化論 2017”というテーマで、レベルファイブ CEOの日野晃博氏をゲストに招き、2017年2月3日に都内で開催された。その模様をリポートしよう。

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▲イベントのナビゲーターは、セガやデジキューブなどに勤務し、豊富な実務経験と実績を誇る黒川文雄氏。
▲ゲストはレベルファイブの日野氏。数々のクロスメディア展開を成功させてきた。

 イベントはまず冒頭、日野氏みずからが解説を加えつつ、レベルファイブの会社概要を紹介。ここでは、過去の発売タイトルの1タイトル平均売上本数が“98万5000本以上”という驚異的な実績が発表されたほか、同社のモットーや特徴なども説明された。
 そうしたデータ的な面からの紹介に続いて、実際に代表作の映像を放映。好評発売中の『妖怪ウォッチ3』や、『レディレイトン 富豪王アリアドネの陰謀』や『スナックワールド』など、開発中のタイトルのPVも披露された。

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▲ゲームの1タイトル平均売上本数がほぼミリオンという、ものすごい実績を誇るレベルファイブ。
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▲会社の特徴としては、5つのポイントが挙げられていた。
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▲『レディレイトン 富豪王アリアドネの陰謀』、『オトメ勇者』、『妖怪妖怪ウォッチ3』、『ファンタジーライフ オンライン』、『二ノ国II レヴァナントキングダム』、『スナックワールド』、『イナズマイレブン アレスの天秤』、『メガトン級 ムサシ』など、最新作や開発中の作品がPVで紹介。

全方位に展開した『妖怪ウォッチ』

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 会社紹介がひととおり終わったあとは、本題であるクロスメディア展開について。ここで日野氏が挙げたテーマは、“妖怪ウォッチの場合”、“スナックワールドの場合”、“今後の展開タイトルの場合”の3つで、まずは大ヒットした『妖怪ウォッチ』シリーズの事例が紹介された。

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 『妖怪ウォッチ』でのクロスメディア展開で、日野氏が強調したポイントは、“全方位クロスメディア”。従来はゲーム、マンガ、アニメでの同時展開が中心だったところをさらに広げて、『妖怪ウォッチ』では玩具や音楽、映画にも進出した。
 「そこまでの『イナズマイレブン』、『ダンボール戦記』のヒットで、賛同企業も多い状態で企画を進められた点は大きかったと思います」と、企画当初を振り返った日野氏。ちなみに映画化の話については、ゲームもアニメも立ち上げたばかりのときに話を受けたそうで、かなり迷ったというエピソードも語ってくれた。

 続いて日野氏が説明したのは、メディアごとに異なるアプローチについて。まずアニメについては、アニメ制作サイドにおまかせではなく、シナリオや設定にもしっかり関わっていることが紹介され、実際に例として『妖怪ウォッチ』のアニメ映像が流された。日野氏いわく、アニメについてはただストーリーを追う内容ではなく、「バラエティー番組のような構成を心がけた」とのこと。ミニシリーズやパロディーなどは、まさにバラエティー感覚だ。

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▲『妖怪ウォッチ』の大きな柱となった3つのメディア。
▲片手間ではなく、レベルファイブがしっかりと内容を監修。
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▲『ターミネーター』ならぬ“ニャーミネーター”など、大人が楽しめるパロディー要素も満載。

 映画は現在まで3作が公開されているが、日野氏によると、それぞれにコンセプトを変更。1作目はいわゆるふつうの物語で、2作目はオムニバス、3作目はアニメと実写の融合というコンセプトで制作されたことが紹介された。またここでは3作目の裏話として、日野氏が企画当初の制作事情を暴露し、「実写とフルCGで全編は無理です。40分くらいなら作れるかもしれません」と制作チームから言われて、それを逆手に取ったストーリーを考えたというエピソードを語ってくれた。

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▲映画3作品は、それぞれに制作コンセプトが異なっている。

 玩具へのアプローチでは、メインとなる“妖怪メダル”を中心とした総合連動の効果が説明された。家庭用ゲームやアーケード機など、“メダルを使うメディア”と、マンガ雑誌や映画前売り券など、“メダルを入手できるメディア”が組み合わさった図式だ
 「メダルを通じてそれぞれのメディアが連携しています。その相乗効果が、大きな反響につながったと思いますね」(日野氏)。

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▲メダルを通じて、さまざまなメディアが連携する。

“ジャラ”が現実と仮想をつなぐ

 クロスメディア展開のふたつ目のテーマは、“スナックワールドの場合”。今春からアニメがスタートし、ゲーム発売も決定しているタイトルだ。紹介PVが流れたあと、日野氏の解説となったが、まず語られたのは“玩具によって現実とゲーム空間をつなぐ”というコンセプト。その立役者となるのは、アイテム“ジャラ”だ。

 “ジャラ”はゲーム内の主人公が身につけるアイテムで、『妖怪ウォッチ』のメダルとは違い、武器だったり防具だったりとジャンルは多彩だ。忠実に再現されたグッズには、NFCチップが内蔵されていて、さまざまなデバイスとの連動も可能。たとえば伝説の大剣グッズを入手し、それをニンテンドー3DSに読み込ませると、ゲーム内でその剣を入手できるクエストが発生する、といった遊びかたもできるようになるという。

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▲フルCG のアニメ『スナックワールド』は、クロスメディア展開ももちろん充実。
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▲“ジャラ”はふだんは携帯し、バトルの際は実際に使えるアイテムのようだ。
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▲さまざまなデバイスと連動。その可能性は妖怪メダル以上?
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▲キャラクターが着る服などにも、仮想ブランドが存在。

 同作でもうひとつ注目したいのが、ブランドメーカーとのコラボ。というのは、同作ではゲーム内のアイテムに関して、仮想ブランドが設定されている。ブランド本家を模した(?)ネーミングだが、実際になんらかのコラボが実現すれば、大きな話題ともなりそうだ。

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最新作はネットとの連動がカギに

 3つ目のテーマ“今後の展開タイトルの場合”でピックアップされたのは、『イナズマイレブン アレスの天秤』、『メガトン級 ムサシ』のふたつ。まずは、前者での“イレブンバンド”の商品化や、後者における雑誌とのタッグなどの展開が紹介された。

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 続いては肝心の、クロスメディア展開について。まず両作品を通じての施策としてアピールされたのは、インターネットを利用するという点だ。『イナズマイレブン アレスの天秤』については、ネット番組『イナズマウォーカー』内で、新キャラの外見を決める企画や、本編のプロローグストーリー配信を展開中という事例を紹介。ファンからは好評を得ているという。

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▲ネット番組ではユーザー参加型の新企画も展開。

 またこの最新作2タイトルについては、テレビでのアニメ本編放送の直後に、インターネットで番外編となる5分ほどのショートストーリーを配信する予定だということも日野氏より語られた。要は本編を見たあと、PCやスマホでその後の物語を見られるわけだ。いずれも番組名は仮称だが、『イナズマイレブン アレスの天秤』では、“ロッカールーム”、『メガトン級 ムサシ』では“アフタースクール”とのこと。試合後の選手のやり取りを楽しめるのは、ファンにとっては大きな魅力だろう。

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▲つぎはネットも巻き込んだクロスメディア展開に進化!
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▲なおレベルファイブでは、2月にカンファレンスを実施。興味のある方はぜひ!

 最新作2タイトルの現状が語られたところで、イベントは終了。数々のクロスメディアを実現してきた日野氏だけに、非常に説得力が感じられたトークとなった。

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▲ラストはふたりでフォトセッション。