ゲーミング座椅子にはこたつが似合うと思うのだ


ゲーミングチェアが一般的になって数年が経つ。
人間工学に基づいて設計されたゲーミングチェアは長時間座っていても疲れにくい。疲労が軽減されるという点では高級オフィスチェアも同様だが、それよりも安価に買えるのがうれしい。
たしかにゲーミングチェアはいいものだ。「イスにもこだわってこそのゲーマー」みたいな空気もある。そんな中、僕は批判を恐れず、声を大にして訴えたい。
「ふつうのゲーミングチェアだとこたつでぬくぬくゲームできないんだよ!!!!!!!!!」
僕の主張は以上だ。こたつとは日本が誇る冬の象徴。こたつをないがしろにして何が日本人か。日本人の誇りを、魂を、忘れること。それは死と同義である。
日本人ゲーマーよ、立ち上がれ。いや、座るのだ。ゲーミング座椅子に。

仰々しい前ふりを書いてしまったが、要は座椅子に座ってこたつでゲームするのっていいよね、という話である。
職場にゲーミング座椅子を設置しよう
職業柄、僕はオフィスでゲームをすることが多い。疲労が軽減されれば仕事の効率も上がるし、そもそも床面に座るほうが落ち着く。ゲーミング座椅子を置くことは会社にとっても悪い話ではないだろう。
できることならゲーミング座椅子の実力を完璧に引き出したい。そう思い至ったため、こたつも併せて設置することにした。隙のない理論展開。

今回、オフィスに設置したのはテックウインドの“AKRacing 極坐”だ。AKRacingシリーズの上位モデル“Pro-X”をベースにサイズを微調整し、足元を回転台にチェンジしたものと考えると分かりやすい。
AKRacingシリーズはレーシングカーのシートみたいな形状が特徴なだけに、脚を伸ばして座るのが妙にしっくりくる。ちなみに、市場想定価格は4万2,800円[税込]だ。






表面に張られた素材はPU(ポリウレタン)レザー。汚れが付きにくく、公式サイトでの説明によると経年劣化にも強いそうだ。イスは長く使うものなので、見た目の高級感が持続するのはありがたい。
AKRacingシリーズのデザインはオフィスチェアとしても違和感がない。事実、僕はAKRacing Nitroを会社で愛用している。さて、AKRacing 極坐はどうか。



違和感は、ある。だが、それはオフィスにこたつが置かれているせいであって、AKRacing 極坐は悪くない。個人的には作業環境が整ったことに大満足である。これでばりばり仕事とゲームをしてやるぜ。

AKRacing 極坐は悪魔か(人を堕落させるから)
わくわくしながら腰を下ろしてみると、その安定感は想像以上。背もたれの両サイドが体を包み込むような形状になっているからだろう。総務部にばれたら叱られるという恐怖すらも優しく包み込んでくれる。
しっかりとしたホールド感を得られるとはいえ、背もたれ部の横幅は54センチと広めの設計。窮屈な感じはない。体にフィットし過ぎると座ったままミカンを取ったりしにくいので、これくらいのサイズがちょうどいい。
クッション材にはやや高反発なウレタンが使われていて、体が沈み過ぎることはない。足元の回転台のおかげで360度に向きを変えられ、立ち上がるのも楽々。
ずぶずぶと沈み込むクッションはたしかに気持ちいいのだが、眠くなってしまうので職場には不向きだ(職場に座椅子が不向きかどうかという議論はスルーして話を進めます)。立ち上がるのが億劫になったり、姿勢を変えにくいのも困る。ゲームに集中するためにも、適度な硬さはあったほうがいい。





僕は座椅子に座ると体がずり下がっていくクセがあるのだけど、AKRacing 極坐ではそれが気にならなかった。腰のクッションが体重を支えてくれて、なおかつ座面が水平ではなく、後方が少し低くなっているからだと思う。姿勢が悪くなるのを防げるのはとても助かる。
また、オフィスチェアでも靴を脱いであぐらをかくクセがある僕にとっては、座面の幅が39センチと広めなのが好印象だ。あぐらをかいても正座しても収まりがいいのがたまらない。くつろぎすぎて仕事にならん。これはまずい。



座面の下に回転台がある関係で、AKRacing 極坐は一般的な座椅子よりも座る位置が少し高い。完全に脚を投げ出すよりも少し膝を立てたほうが体勢が安定したのだが、こたつやテーブルが低いと腿がうまく収まらないかもしれない。少々悩ましいところである。

ここが会社であることを忘れる前に、つぎはゲームやPCでの作業との相性をチェックしよう。
PCでゲームや作業をすると、自然とやや前傾気味になる。何も支えがないと疲れてしまうが、腰にクッションが当たるように座るとあら不思議。体の重みが分散して疲れにくくなる。この辺はAKRacingシリーズの他製品と同様だ。エルゴノミクス(人間工学)設計万歳である。




前傾気味の姿勢を補助してくれるだけでも問題はないのだけど、せっかくこたつを設置したのだから、もっと楽な姿勢で仕事がしたい。そう思って、リクライニングを少し倒して体重を完全に預けてみた。するとどうだろう。ヘッドレストが首にフィットし、みるみる堕落していくのがわかる。AKRacing 極坐は悪魔か。
聖人は強靭な精神力で悪魔の誘惑を断ち切るのだろう。だが、僕には無理だ。ああ、凡人でよかった。誘惑に負けてもオーケーな凡人でよかった! おーい誰かー、ビール持ってきてー。




AKRacing 極坐の甘やかしっぷりは止まらない。AKRacing 極坐は180度近いリクライニング機能を備えているので、疲れたらすぐに横になれるのだ。そんなの寝ざるを得ないだろ。腰のクッションを使って背筋を伸ばす。しかも職場で。背徳感すら覚える気持ちよさったらない。

腰のクッションを外すと、ほぼフラットな簡易ベッドにもなる。僕は編集者として数多くのイスで寝てきたが、AKRacing 極坐はそのどれよりも寝やすい。だが、あまりにも熟睡してる感が強いので、ビジュアル的にオフィスでの仮眠用途には向かないかもしれない。

健康面と心地よさをを考慮するなら大いにアリ
満喫した。座椅子の心地よさを満喫した。いったん横になって気づいたら20分経過していたという恐怖にも似た感情を覚えるほどに満喫した。オフィスにこたつとAKRacing 極坐を置くと自分の家っぽくなるのは発見であった。
さて、ここでひとつ注意事項を。こたつとAKRacing 極坐を組み合わせようとした場合、アームレストが引っかかって座面を布団のなかに収めにくいこともあると思う。これ、じつはいいストッパーなんじゃないかと思うのだ。

というのも、ポリウレタン系の素材は熱に弱いのである。80℃を超えるような高温にならない限り溶けることはないだろうが、それでも念には念を入れて、座面を布団に入れずに使うのがベターだと思う。そうしたほうが本体を回転させて立ち上がりやすいし。
「イスにこだわる」という意識がゲーマーに広まって久しい。でも、ローテーブル(こたつ)と座椅子でゲームをしたい人は多いはずだ。だって日本人だもん。
健康面を考慮するなら、いい座椅子を買うのは大いにアリだ。腰痛でゲームが苦痛になるのは困る。とはいえ、今回の検証でオフィスにこたつを置くのはオススメできないことがわかった。同僚との仲が気まずくなるので強い心が必要である。
近い将来、大規模なゲーム大会の決勝の舞台に、こだわりのデバイスとしてAKRacing 極坐を持ち込むプレイヤーが登場するのを期待したい。

