体験すると違いがわかる!
アメリカのネバダ州ラスベガスで開幕した家電ショーCES。パナソニックブースの今後事業化を目指す新技術を集めたコーナー“Future Tech Lab.”で、VRヘッドマウントディスプレイのプロトタイプを体験してきた。
このプロトタイプの最大の特徴は、中央と左右の3枚のディスプレイパネル構成で視野角220度という超ワイドな映像表示が可能なこと。現行のVRヘッドマウントディスプレイでは110度前後が主流なのだが、これぐらいでも十分にVR世界に自分が入ったような感覚を得ることができる。じゃあ些細な違いかと言われると、比べてみると如実に違うというのが面白い。
デモは360度の全天球映像を再生するもので、最初は視野角110度近辺で動作し、途中から220度に切り替わるという仕掛けだったのだが、切り替わった瞬間、思わず声が出てしまった。何とも説明にしくいのだが、黒縁のメガネをかけていて外した瞬間、フレーム部分でいかに視界が遮断されていたか気づくような、そんな瞬間だった。
かと言って、その後に別のブースでOculus RiftやHTC Viveを被って普通に没入できたので、「もう戻れないね」ってなわけでもない。いわば前者は高い没入感のVR体験として必要条件で、220度は十分条件に近付いて行くといった感じだろうか。
その“違い”は、後方にあるものを見ようとした時に一番わかる。首の回転より先に視線が視界の端に動いて行くと、そこに鮮明な映像がちゃんとあるのだ。「何言ってんだお前」と思った人は正しい。現実世界では当たり前だ。でもこれまでの市販のVRヘッドマウントディスプレイでは実はそうじゃなかったのが、220度を体験するとわかる(ちなみに200度オーバーのVRヘッドマウントディスプレイにはStarBreezeの“StarVR”があるが、市販向けではない)。
一方で現状での課題はいくつかあり、まずは左右の視野角に対して上下の視野角は既存のものとそこまで変わらないので、中央の上下が少しだけ視野が抜けているような感じになっている。また中央のパネルと左右のパネルの継ぎ目のようなものがうっすらと見えてしまうというのも残念な部分だが、これはレンズの改良を進めていくことで改善したいとのこと。ドットの隙間が見える網目感も(致し方ないレベルながら)少しあったが、これもレンズの改良で低減できるのではないだろうか。
なお解像度は中央のパネルの半分とサイドのパネルの分を足して片目分とすると、片目3400ドット×1400ドット。これは3Dゲームの場合だとかなりハードな演算量が必要になるはずなので、市販向けというよりも、StarVRと同じく、アトラクション施設などへの用途の方が向いているだろう。
そのほかにもサウンド部分に骨伝導を採用していたり、ピーキーな構成になっていた本プロトタイプ。事業化に向けてどうなっていくかわからないが、日本発の新たなハイエンドVRヘッドマウントディスプレイとして花開くのを期待したい。