3Dで蘇る名作ゲームたちの共演、ついにフィナーレ!

 2016年12月22日に発売となる『セガ3D復刻アーカイブス3 FINAL STAGE』。これまでにセガの1980年代の名作タイトルを3D立体視化して現代に蘇らせてきた“セガ3D復刻プロジェクト”のタイトル5本に加え、前作のユーザーアンケートで移植希望1位を獲得した『ターボアウトラン』、ドラマチックな経緯で実現したテクノソフト製シューティングゲーム『サンダーフォースIII』、初移植となるアーケード版ホラーアクション『エイリアンシンドローム』、さらにメガドライブ版『コラムス』、さらに今回発表された連動オマケの2作を加えると全11タイトルという、驚異的な収録本数となった。

 そこで恒例となった、この発売日ロングインタビューでは、企画スタートを決意した経緯から、ラインアップが決まる流れ、開発中のエピソードをセガ・シリーズプロデューサー奥成洋輔氏とリードプロデューサーの下村一誠氏、エムツー代表の堀井直樹氏にたっぷりと語っていただいた。ゲームに負けてなるものかと大ボリュームとなったので、じっくりと読み進めていただきたい。

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▲左からセガゲームス奥成洋輔氏、エムツー堀井直樹氏、セガゲームス下村一誠氏。すっかりおなじみとなった顔ぶれだが、いつにもまして丁々発止(!?)なツッコミがいのあるトークがくり広げられた。

▼収録タイトル(新規)
・『ターボアウトラン』(アーケード版)
・『サンダーフォースIII』(メガドライブ版)
・『エイリアンシンドローム』(アーケード版)
・『コラムス』(メガドライブ版)

▼収録タイトル(配信版からの収録)
・『アフターバーナーII
・『スーパーハングオン
・『ソニック・ザ・ヘッジホッグ2
・『ベア・ナックルII 死闘への鎮魂歌
・『ガンスターヒーローズ

▼ボーナス収録
・『チャンピオンボクシング
・『ガールズガーデン

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事前予想とは違うユーザーアンケート結果から波乱の幕開け!

――まずは順番に『セガ3D復刻アーカイブス3』がどのように企画→開発をされていったのかをお聞かせください。

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▲奥成洋輔氏。

奥成 まず『アーカイブス2』が2015年の12月をリリースする際の受注状況・消化状況を見て、プロジェクトのスタートを決めたんですよね。

下村 そうだね。発売前の販売店様からの受注が我々の目標に近づいてきていて、「つぎも行けそうだ」という感触を得たので、エムツーさんには「次作を視野に入れた検討を始めましょう」となったんです。ただ、「ユーザーさんのアンケートで収録タイトルを決めるので、覚悟だけはしておいてください」とは告げました。

堀井 初手から覚悟ですからね(笑)。

堀井 アンケートは絶対なので、どんなタイトルが来てもやるしかない。「1位は無理なので2位を入れました」では格好がつかないですから、やるからにはどんなモノでもやるという話をしてました。

奥成 アンケート前は「サターンでもドリームキャストでもなんでもこい!」と言っていましたよね。

堀井 それ、いつの年末発売になるかわかりません……。

下村 とはいえ、僕らが気持ち的にやりたいタイトルは、こういったインタビューの場である程度“すりこみ”をしていたわけです。

奥成 “すりこみ”だったんですか!? 僕はさすがに『2』が最後だと思っていたので「『バーチャレーシング』で4人通信対戦がやりたいです」といった無茶を言っていました(笑)。

下村 そういった下地を意識して作っていたつもりだったので、ニンテンドー3DSで先行して『バーチャレーシング』や『バーチャファイター』の研究を進めてもらったところ「なんとか行けると思います!」という力強い言葉をいただいていました。

堀井 カッコいい絵が出ていたんですけどね。

下村 そこから僕は『3』に向けての予算取りといった社内営業や、社内にソースや資料が残っているかの確認で動き始めました。

――最終的に『ターボアウトラン』に決まるまでの流れというのは?

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▲下村一誠氏。

下村 弊社のアンケートのシステムは、1ヵ月で速報、3ヵ月で集計完了となるのですが、速報のときは『バーチャレーシング』が1位、『ターボアウトラン』が2位だったんです。

奥成 ほかにも『アウトランナーズ』など、レースゲームが強かったんですね。販売実績としても『3D アウトラン』は人気があったので、レースゲームが遊びたいという需要が高いということがわかったんですね。反面、上位に来ると思っていた『バーチャファイター』、『バーチャファイター2』はいずれも下位で、これからどんなに票が伸びても1位になることはないだろうという順位だったんです。意外と思いつつも、そこで『バーチャファイター』の研究はストップしました。

下村 『バーチャレーシング』を仮の1位として、社内向けの企画書には「『バーチャレーシング』を収録(※アンケートの結果による変わる可能性があります)」と記して、予算を確保しました。そこから本格的に開発が本格スタートをさせました。しかし『バーチャレーシング』はワイド化などの強化をするとノーマルの3DSではしんどいかも、という声が挙がってきて「New3DS用にしませんか?」ということも言われたのですが、それはダメだと。

――途中までは開発が進んでいたんですね。

堀井 画面が動くところまではきていたんですけどね。

下村 その後3ヵ月での最終集計があがってきたところ『ターボアウトラン』が1位となり、途中まで進めていた『バーチャレーシング』はあえて捨てることになりました。ユーザーさんとの公約通りに進めることが前提でしたからね。

奥成 アンケートの結果が出たのが3月末で、4月くらいには『ターボアウトラン』に一本化しましょうということになったのですが、エムツーさんは両方できないかと6月くらいまでやってましたよね。

堀井 やっていましたねー。

奥成 今回収録タイトルが多いので、「早く本来の作業に絞らないとマズいですよ」と焦っていたのですが、「もしかしたら両方入れられるかも」と引っ張っていました。チームの中では一番『バーチャレーシング』を移植してほしかったひとりだったと思うんですけど、下村には「止めないと間に合わなくなってヤバイですよ」と伝えていました。

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▲堀井直樹氏。

堀井 いやー、相変わらずドット絵の基板ばかりなので、ここでポリゴン基板のゲームが入ればラインアップに“コクが出る”かなー、と思っていたんですが無理でしたね。

――(『バーチャレーシング』などの)MODEL1基板ともなると、これまでの移植とは勝手がだいぶ違うでしょうからね。

堀井 3D画像を出すまではすんなりいったのですが、オブジェクトの挙動がおかしいままだったんですよ。クルマがすっ飛んでいったりとか、まるでマンガ『グランツーリスモを創った男たち』みたいなことを、なんで俺たちはやっているんだと思っていました(笑)。もしかしたら解決の糸口が見つかれば、一気に完成まで持っていけたかもしれません。

下村 エムツーさんには、「作ってもらったものは何か違う形で世に出るかもしれないので、いまは『ターボアウトラン』に集中してください」いうところで納得してもらいました。

『ターボアウトラン』と『バーチャレーシング』がまさかの同時進行!?

――そうして『ターボアウトラン』の移植作業が本格スタートしたと。

奥成 『ターボアウトラン』は、タイトルを決める際にアンケートの速報で『バーチャレーシング』と『ターボアウトラン』が上位に来ていたので、エムツーさんに移植の可能性を調べてもらった際に、難易度が高いことが判明していたんです。アンケートの結果が拮抗していたので、『ターボアウトラン』のほうも併せて確認しましょうと、両方の資料を提供しました。

堀井 そうですね。

奥成 『ターボアウトラン』は『アウトラン』のときもそうだったんですけど、グラフィックの差し替えなど、移植にあたっての作業があることが判明しました。“セガ3D復刻プロジェクト”の『3D アウトラン』は移植にあたって、原作の30フレーム/秒を60フレーム化とパワーアップ要素を追加しているのですが、それらもできるのかどうかを調べる必要があったわけですね。

――なるほど。ちなみに『ターボアウトラン』の基板というと。

堀井 『アウトラン』と同じボードですね。

奥成 もともとROMのコンバージョン(差し替え)で筐体を流用できるというシステムなので、『アウトラン』から3年後のゲームですが基本的には同じハードで動いています。メインプログラマーも初代に参加している三船敏さんですし、アウトラン開発経験者が手掛けているということですね。

――逆に初代と違った点は?

奥成 大きな点は鈴木裕さんが参加していないことですね。また、3年後のゲームなのでプログラム的にも技術的な向上もあってかなり違うものになっているんです。なので、ROMデータを差し替えるだけで移植完了、みたいに簡単なわけではありませんでした。

堀井 理屈で言ったらそれでも動くんです。ただ、60フレーム化やワイド画面化、パワーアップ要素を加えた上で期日までに完成できるかどうかは正直微妙で、見切り発車と言っていいと思います。

奥成 しかも『ターボアウトラン』と『バーチャレーシング』のどちらか片方の研究は無駄になってしまうわけで。『ターボアウトラン』はわりとすんなりとできたんですか?

堀井 それがまたそうでもなくて、60フレーム化ってプログラムひとつを手直しすればいいわけではなくて、各オブジェクト1個1個の描画処理を60フレームに描かないといけないわけで、見落としがあった場合、たとえば道路は60フレームになっているけど看板は30フレームということがありえる。事前に「この部分は60フレーム化が必要だろう」というリストを用意して逐一潰していくわけですが、そのリストから漏れたものは目で見て確認していく。この作業をやっているときは、どちらになるのかがわからず作業を進めていましたので、担当者としては「どちらかが無駄になるのはもったいないな。できれば両方収録する方向までいってほしいな」と思いながら作業をしていましたね。

下村 うまくいけば両方収録できていました?

堀井 下村さんがプロデューサーになって一番変わったのは「これは無理でしょ!」というのが入るようになったところなんですよ。

――それはつらい(笑)。

堀井 シリーズを重ねるごとに単体で出ていないタイトルの比率が上がっていて、開発は血反吐を吐くことになる。僕の知らないやる気の出させかたを持っているんじゃないかと思うくらいに(苦笑)。

下村 そのへんの腕は多少ね(ポンポンと腕を叩きなら)。

堀井 『ターボアウトラン』よろしく、ターボボタンをうまく使われましたよ。オーバーヒートをしないように(笑)。

奥成 話を戻すと、初代『アウトラン』のときは、「サターン版であった60フレームモードを再現してほしい」ということだったんです。ですので、今日は地面だけ、翌週は操作の受付といったように、徐々に60フレーム化がなされていったんですね。ですので、『ターボアウトラン』でも同様にひとつづつやっていくのかと思ったら、意外に早かったですよね。

堀井 じつはその理由は意外と単純で、『ターボアウトラン』へ腕利きの優秀なプログラマーを“60fps化専属”として抜擢したからです。デキる人が60fps化だけをまっしぐらにやっていたので、奥成さんが思っている以上に早く60fps化が実現したんだと思います。さらに彼には『サンダーフォースIII』も『コラムス』も担当させていたので、年末発売に間に合わせるため、いままでやっていた最高速をどこまで維持しながら作業ができるかというのが目標でした。もしこれで『バーチャレーシング』まで入っていたら、「世界中のどこのメーカーでも真似できないことを成し遂げました!」くらいいっていたと思います。

奥成 結果として完成した『ターボアウトラン』は、60フレーム化とパワーアップパーツのオン/オフが任意にできるようになったので、難易度の高い『ターボアウトラン』でも快適に遊べるようになっています。けっきょく、『アウトラン』でやったことはほとんどできたんですよね。

堀井 そうですね。このシリーズを追いかけてくれている人なら言うまでもないことですが、この基板での立体視はとても気持ちがいいです!

奥成 もともと『アーボアウトラン』は1988年稼動の『パワードリフト』の半年後にリリース作られたゲームで、アーケード収録タイトルでは一番後期。当時遊ぶと、すでに新基板で稼動していた『パワードリフト』や『ギャラクシーフォース』よりも、基板の性能もあってやや貧弱に思えたのですが、20年以上経って遊んでみると、その差が大して気にならない。いまなら『ターボアウトラン』を素直な目で見られるんじゃないかなと。

堀井 「PCエンジンとメガドライブとスーパーファミコンは同世代だよね」と言ってしまうくらいの雑さ(苦笑)。移植している側からすると、ちょっと悲しいんですけど、そういうことなんです。

奥成 『ターボアウトラン』は『アウトラン』の続編ではなくて、“新しい『アウトラン』を作る”というコンセプトの元に制作され、『アウトラン』にはなかった演出や要素をどれだけ盛り込めるかという作品なんです。そういった部分はこの2年間で『3D アウトラン』を遊んでくださった皆さんにとっては新鮮に映る気がします。ちょうどリリースの間隔もオリジナルの『アウトラン』と『ターボアウトラン』と同じくらいですしね。

堀井 この空きかたはそんな感じですね。

――音楽のジャンルではよくあるように、時代を経ての再評価に足り得るタイトルだと。

奥成 はい。ゲーム的には、ターボボタンでの加速にライバルカーとの追いつ追われつのカーチェイスといった部分が。助手席の女の子がライバルカーと行き来するという部分もおもしろいですよね。演出的にはオブジェクトが大きく描かれていたり、アメリカ横断ということでステージの土地柄の変化を意識していること、そして音楽が風景にあわせたものになっていることが挙げられます。『ターボアウトラン』というと、「音楽がいい」という方が多いかと思いますが、これまではサントラでしか聴いたことがなかった方には、「ここでこの曲が流れることに意味がある」ということを改めて理解してもらえたら嬉しいですね。

堀井 今回は難易度を相当下げられますしね。

奥成 後半のステージ14とかの不理尽な部分も難易度を下げてもらえれば必ずエンディングまで行けますので。

――音楽の話が出たところで、そこを少し掘り下げたいのですが。

堀井 基板は共通だし、作曲者もHiro師匠なので『アウトラン』と同じです。『ターボアウトラン』は高木保浩氏も参加されています。

奥成 サウンドドライバーは、『パワードリフト』のものが使われていて、エンジン音は複数のPCMを重ねて使っていたりしたので、『アウトラン』から進化していました。

――あの当時の日進月歩なコンピューター技術の進歩があるとは言え、楽曲の印象はまったく異なりますね。

奥成 音楽に関しては、意図的にロック調であることを演出指示したという話です。やっぱり『アウトラン』と違うものを目指すという意味で、ヨーロッパの街並みをゆったりと流す初代と、アメリカをいち早く横断するためにターボでかっ飛ばすという内容では、アップテンポなモノにするでしょうね。

――“セガ3D復刻プロジェクト”全体に言えるのでしょうけど、当時は気が付かなかった部分への再評価をユーザーどうしで語り合ったりしてくれたらいいですよね。

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▲『ターボアウトラン』

『III』、それとも『IV』? 揺れたテクノソフト枠

――『サンダーフォースIII』収録について改めてお聞かせいただけますでしょうか。

奥成 2番目に収録が決まったのが『サンダーフォースIII』です。東京ゲームショウなどでお話したとおり、テクノソフト権利獲得の提案を下村のほうで社内調整をかける中で、「これを実現させるためには『アーカイブス3』を承認させよう」という動きとなり、卵が先か鶏が先かみたいなことになっていました(笑)。具体的にちゃんと売上が立つプロジェクトにくっつけるのが一番確実な方法ですからね。

――権利を取得したいんです、だけでは会社は納得してくれませんものね。

奥成 ええ。それもあって、テクノソフトのタイトルを契約後すぐに収録をしようということで、“テクノソフト枠”がひとつできました。

下村 どのタイトルにするかを堀井さんと相談したんですが、僕としては「当然『IV』でしょう!」と言ったわけです。

堀井 僕からの返事は「2年かかりますけどいいですか?」でした(笑)。じつは奥成さんにはずっと以前から「ステージ1に勝手に立体視をつけてみたんだけど、それがすごいんですよ!」と吹聴していたので、ここで『IV』と言わない手はないんですけど……。

奥成 話を“セガ3D復刻プロジェクト”の最初に戻すとですね、第一弾が『スペースハリアー』に決まって、さあ初期のラインアップを選ぶぞという段階で、エムツーさんからはタイトルをいくつか提案していただいたモノの中に、『サンダーフォースIV』や『武者アレスタ』をやりたいという意見もあったんですよ。いわく「ラスタースクロールや多重スクロールがマッチする」って。セガのタイトルじゃないのに!

(一同笑い)

奥成 このプロジェクトが大成功したら数年後にサードパーティのライセンスを獲得して出せる可能性があるかもしれないけど、いまは『ソニック』とかセガのタイトルを作りましょう、という経緯があったんです。ここまでが回想。

――わかりやすい(笑)。

奥成 ですので、この(テクノソフト枠)話が持ち上がったときは「きっと堀井さんは喜んでくれるな~」と思っていたんです。

堀井 喜びましたよ。当時、弊社プログラマの齊藤が好き放題にやっていて自慢をしていたのですが、「すべてのステージをやったらどうなるの?」と聞いたら「えらい時間がかかりますね」とニッコリ笑って。

奥成 ゲームの容量だけじゃなくて、ステージだったり演出といった映像が展開していく分だけ3D化する手間はどんどん増えていく。ですから、ステージ中やボスごとの展開がバンバン変わっていく『3D ガンスターヒーローズ』は立体視をつけたら1年でできないと思っていましたもん。それもエムツーさんが「じつは1年間ナイショで作っていた」ということで完成を得たんですけど(笑)。さすがに『サンダーフォース』はセガのタイトルじゃないから、勝手に作るわけにもいかない。

堀井 もしセガさんが「理由は言えないけど、『サンダーフォース』がそのうち移植できるから」と言ってくれれば、先行して作業を進めていた。ただ、それが早めにわかっていればいるほどに『パワードリフト』がヤバくなっていた、みたいなことはあると思う(笑)。

奥成 開発リソースは有限ですからね(笑)。

堀井 いきなり『IV』をやって『III』が出なくなるよりはよいかと思ったのですが、う~~ん、どうかなあ(頭を抱える)。

奥成 その段階では、既存の5本に『ターボアウトラン』だけだと、1作目と同じくらいになっちゃうから、せめて『2』に合わせた7本を目指そうということで『サンダーフォース』が決まったんです。

――堀井さんから変な笑いが漏れていた気もしますが(笑)。新たな注文が入るところで「無理です!」ということはなかったんですか?

堀井 「いろいろ無理です」と言っています(笑)。

奥成 『IV』が無理だと言うので『III』を選んでもらったんですけど、その『III』も『ガンスターヒーローズ』に次ぐくらいの物量だったんです。

堀井 加えて言うと、“2Dの嘘”をいっぱいついていて、立体情報を加えようとしたときに「???」と悩むケースがけっこうあったんです。それを立体視にしたことで、初めて形状が固定された。

奥成 『サンダーフォースIII』はメガドライブの初期タイトルなので、カートリッジ容量が4Mビットと小さく、その分背景をたくさん作るために抽象的なパーツにならざるをえないんです。

堀井 絵としての解釈よりは、8x8ドットのキャラクターチップをうまく使ってそれっぽく見せている。ゲームとして成立させることを優先しているんです。

――なるほど。

奥成 しかも『サンダーフォースIII』の音楽はテクノソフト謹製の超イカす音が鳴るサウンドドライバーで演奏されているんですけど、それの処理落ちが最後の最後まで取れなかったんですよ。

堀井 いじくり倒してなんとかなりました、ということだけは言っておきます!

奥成 それにしても本当に移植が実現できて夢のようですね。いまだからお話しできますけど、10年前のWiiのバーチャルコンソールのころも水面下で交渉をして実現できませんでしたし。だから『サンダーフォースIII』の復活がサターン版『サンダーフォース ゴールドパック1』以来なので、かなり久しぶりにプレイされる方が多いでしょうね。今回当時の開発状況を伺ったところ、企画職が不在で、プログラマー主導でストーリーとかに関係なく好きなものを詰め込んでいくという作りかたをしていたそうなんです。ですので、ステージごとにデザインやギミックが異なっていておもしろい。本作では当時のシューティングゲームの集大成的な側面も楽しんでもらえたらいいですね。

――追加要素としてはKIDSモードがあります。

奥成 サターン版にもあったKIDSモードは難易度がかなり下がります。今回エムツーさんが移植を手掛けて判明したことなのですが、日本版と海外版は共通のバイナリー(ROMに収録されているデータ)なんですけど、海外版のほうが難易度が低いんです。しかもゴールドパック1の移植は海外版が元になっているので、海外版+KIDSモードであれば、久々に遊ぶ方も楽しみつつエンディングまでたどり着けるのではないかと。

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▲『サンダーフォースIII』。

[関連記事]『サンダーフォースIII』はいかにして『セガ3D復刻アーカイブス3』に収録されることになったのか? 元テクノソフト新井氏を交えてのスタッフインタビュー

まだまだ増えるよ『エイリアンシンドローム』!

――これで5+新規2で7タイトルになりました。

奥成 やっと前作と同じになったわけですね。前回に習うと、ここにオマケタイトルを収録してまとまるという空気もあったのですが、アンケートを見て僕が気になっていたことに「このゲームでおもしろかったタイトルはどれですか?」という質問に対して、オマケタイトルが選ばれることがなかったということです。オマケだから当然でもあるのですが、インタビューで「『メイズウォーカー』のこの立体視が!」と熱弁していたワリにはほとんど反響はなかったんです。

――僕らみたいな好事家にとってはありがたい限りなんですけどね。

奥成 そのため、「けっこうなリソースをかけてオマケを収録する必要があるのか?」、とふと思ったんですね。『1』のときは、じつは思った以上に手間がかかることがわかってなかった。『2』のときは『メイズウォーカー』の作りかけがあるから意地で収録してくれたけど、『ファンタジーゾーンII』に知らないうちにすごく手が入っていた。そして今回、同じ手間をかけるんだったら、メインをもっと充実させたほうがいいだろうという結論に至ったわけです。

――なんか話がきな臭い感じになってきました(笑)。

奥成 (無視して)『1』の収録が6本、『2』で7本、それなら『3』は8本だろうというのは当然の帰結です。

下村 エムツーさんが『ターボアウトラン』と『サンダーフォースIII』で手一杯のところに、さらに新規タイトルを入れて欲しいと頼むのは気が重かったんです。と言いつつも、アンケート集計結果をプリントアウトしてお渡しするときに、僕が前からやりたかった『エイリアンシンドローム』のところにちょっと丸をつけて目立つようにしてたりね。そしたらエムツーさんから「もしかしたらもう1作品いけるかもしれない」という連絡が入ったんです。こちらとしては、「その言葉を待っていました」ですよ(ニヤリ)。

堀井 ちょっと試しに立体視をつけていた“叩き台”があったのでね。

――『ファンタジーゾーン』ですでにシステム16の移植は行っているからというのも?

堀井 じつはそれとは別のエミュレーターを使っているんです。というのも叩き台を作る人は、ラクガキよろしくあくまで休みを利用した趣味で作っているんです。そのラクガキの中にたまたま『ゴールデンアックス』と『エイリアンシンドローム』があって、急遽後者を選んだ、と。なので、完成までの時間は短かったけど、思っていたより苦労は多かったです。

奥成 『エイリアンシンドローム』の場合、『ファンタジーゾーン』と違って2Pのローカルプレイを実装しないといけない。その分の処理がマスターアップの数日前まで残っていましたね。

堀井 特定条件でしか発生しない処理落ちだったので、まず大丈夫だったのでしょうが、ギリギリまで「もとのゲームに手を入れて処理落ちを回避しようか……」という悪魔の囁きが聞こえるくらい苦労しました。

奥成 ほかのタイトルと比べると立体視が控えめなのですが、待望のアーケード版『エイリアンシンドローム』です。しかも日本版と海外版の両方が入っています。最初はバージョンがいずれかひとつとの予定だったんですけど、こちらからは両方のバージョンのROMデータをエムツーさんに提供したところ……。

堀井 (食い気味に)またいつもの手なんですよ!

(一同笑い)

堀井 奥成さんと下村さんの違いで一番大きいところは、下村さんの場合は今回の本数に見られるような無茶なスケジュールにゴーが出る。奥成さんの場合は、資料が莫大に出てくる。今回はそれがヴァリアブル クロスしているので、もうとてつもないことになっていました! マスターアップのときにディレクターの松岡が「いままでで一番しんどかった」と言ったくらいに。

奥成 と言うわけでめでたく、8本のメインタイトルが収録されることになりました。

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▲『エイリアンシンドローム』。

気がつけばパズル枠で『コラムス』が追加

奥成 「でも、前回はオマケをカウントすると9タイトルだったよね」という気持ちが生まれてきまして。エムツーさんは「『コラムス』だったらすぐにできるのに」と言っていたので、だったらやってもらえないかと。

堀井 『コラムス』って地味なゲームなんですけど、非常に細かく立体視を――革袋からこぼれる宝石と紐の部分違うなど、すごく見応えがある仕上がりです。原作ゲームも好きなので1プレイヤーとしてはすごくうれしいのですが、作っているのを隣で見ていたら「なんでこんなことになっているんだ」という気持ちになりました。

奥成 僕は落ち物パズルの中で一番好きなタイトルなので、『3』があるなら『コラムス』やりたいなーと思っていたので非常にうれしいです。

下村 奥成は、エムツーさんのスタッフでもないのに「あ、できますよ!」なんて軽く言っていましたからね。

奥成 (笑)。言った言った!

堀井 もうね、そのノリでゲームができる年齢だと思わないほうがいい!

奥成 『エイリアンシンドローム』が下村のわがままなら、『コラムス』は僕のわがままですね。

堀井 じゃあ今度は松岡のわがままで『バンクパニック』をセガさんにはなんとかしてもらわないと!

奥成 ぜひ! と言いたいところですけど、今回“ファイナルステージ”ですので!

(一同笑い)

――まだまだ移植し足りないタイトルは多数あるぞ、と。

堀井 そうですよ。じつは毎度のごとく勝手に『スーパーロコモーティブ』と『三輪サンちゃん』の移植を進めていたんですよ。しかもメガドライブ版というのを。それを奥成さんに話したら「メガドライブってことはホンモノじゃないんでしょ」と言われ、さらに「BGMがYMOの“RYDEEN”なのでJASRACの許諾が必要ですからハードル高いですね」と言われて、けんもほろろだったんです。だったらOMY(※細江慎治氏らナムコサウンド勢によるYMOオマージュユニット)の“RYZEEN”を鳴らせばいいじゃないか! と、作曲者の細江慎治さんの許可まで取ったんですよ。

――わかる人には大爆笑のエピソードなのですが、読者がついてこれているか心配になってきました(笑)。

堀井 でも、奥成さんと下村さんが慎重に協議してくれたと思うのですが、残念ながらナシになりました。

下村 堀井さんからは、「どれも基板がプレミアム価格になっているので、収録したらユーザーは喜びますよ」という意見を聞いて、いいかなと思ったんですが、奥成は「その喜ぶユーザーはかなり少ないですよ」と。

堀井 バズるネタだとは思うんですけどね。未練がましいですけど。

奥成 こちらのオーダーを全部達成したうえで、「最後にチョロっと入れちゃいました」ならまだいいかなと思ったのですが、いかんせん『スーパーロコモーティブ』は音楽が“RYDEEN”という話題しか挙がらないくらい知名度が低い。しかも原作とは違うメガドライブ版ときたら「それはちょっと斜め上方向すぎない?」と却下させていただきました。

堀井 ほかにも意図があって、下村さんに伝えたようにいずれも基板が高い。だったら「セガのゲーム100万円分収録!」みたいな売りかたができるんじゃないかと考えていたんですよね。まあ、飲み屋で言っている話をフィルターをかけずに現実にしようとするとこうなる、ということです。やりたかったですけどね!

奥成 ぜひ“エムツー ショットトリガーズ”で自社パブリッシュしてあげてください。僕が責任を持ってライセンス交渉します(笑)。

堀井 やっべー!

(以下、アーケード基板トークが暫く続くが残念ながら割愛)

――話がだいぶ横にそれましたが、『コラムス』の収録が決定してからの流れというのは?

下村 最初はアーケード版の移植ということで話をしていたんですよ。そしたら奥成が……。

奥成 「メガドライブ版じゃないと意味がないです」と。

下村 開発的にいっぱいいっぱいの中、何とか納得してもらって収録タイトルを増やしたのに、打ち合わせから戻ってきて、さあ俺を褒めあげてくれと思っていたらこうですよ。その場で堀井さんに電話をして「昨日はアーケード版でとお話しましたけど、うちのうるさいのがメガドライブ版じゃないと意味がない」って。

(一同笑い)

奥成 当時『コラムス』をプレイしていた方ならわかると思うんですけど、メガドライブ版はアーケード版の開発チームが同じ基板で作ったアッパーバージョンなんです。ゲームの完成度が高く、かつ追加モードの“フラッシュコラムス”が、非常にデキがいい。

――BGMの追加などもありました。

奥成 ただ当時はCOM対戦がなかったので、ふたりで遊ぶ必要があったんですね。ですので、メガドライブ版かつローカル対戦が可能なところまで再現しないと、おもしろさを全部移植したことにはならない。そこは、アーケード版のダウングレード移植である『ぷよぷよ通』とは違う部分ですよね。

堀井 それは言われるまでもなく知っているんだけどね。

奥成 (流して)というわけで、気がつくと新規で『コラムス』が入っていて、しかも美しい立体視がついている。僕は今回のラインアップだと『サンダーフォースIII』か『コラムス』が立体視の完成度の極地に達したなと思います。ただ、全タイトルの発表前に「最高の立体視に期待してください!」と言っていたのですが、発表後もみんながそれが『コラムス』だと思ってくれずにモヤモヤするという。話題はちらちらと出していたんですけど。

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▲『コラムス』。

セガゲーム史のターニングポイントである2作をオマケ収録

奥成 これでやっと9タイトルが揃って、『2』と同数になりました。しかし、『2』には『1』との連動要素としてマークIII版『ファンタジーゾーンII』が用意されていました。当然、下村に聞きますよね、「連動どうします?」って。

下村 聞かれました。そして僕は「やれ」ってことだなと受け取りました(笑)。

奥成 とは言え、エムツーさんがここまでの9本でこれ以上どうにもならないことは理解しているので、以前のようなオマケを求めるのは無理だろうと。でも、マークIIIより前のSG-1000だったらどうだろうと……。

堀井 もうね、その発想がわからない! 心底理解できない!

(一同爆笑)

奥成 そもそもの発想としては、企画当初に新規タイトル1本+アーカイブ5本では弱いから、「ここにSG-1000のタイトル30本入りという数の暴力ではどうでしょう」という提案をしているんですよ。それは早々に却下されたのですが、頭の片隅に残っていたんでしょうね。幸いセガエイジス版の『モンスターワールド コンプリートコレクション』のときにSG版の『ワンダーボーイ』を収録しているので、知見はあるはず。だったら立体視のないあくまでオマケとしていけるだろ、と。SGなら画面も少ないし。

――理屈としてはあっています(笑)。

奥成 そこで『1』と『2』との連動するための各1本をどうするかというときに、そもそもSGのタイトルでは強さに欠ける。だったら“シリーズを俯瞰する”というテーマで選んだらということで、鈴木裕さんと中裕司さんのデビュー作である『チャンピオンボクシング』と『ガールズガーデン』を選んだと。

堀井 ムカつくことに、そういうところは非常におもしろいんです!

奥成 アイデアの元は、裕さんと中さんのサイン入り3DS本体をプレゼントするキャンペーンをやったことなんです。これがじつに輝いていて。やはり1980~90年代のセガを振り返るときに、このふたりは外すことはできないし、しかもデビュー作はSG-1000。そこでハリアーがパッケージを飾った『1』と『3』の連動で『チャンピオンボクシング』が、ソニックがいる『2』と『3』の連動で『ガールズガーデン』が出現するという仕組みはどうだろうと。

下村 エムツーさんに相談をした当初は、「こちらの案を蹴って何を言っているんだ」という空気だったのですが、デビュー作だという説明をしたら堀井さんは「納得がいった!」と。

堀井 そう、納得行くんですよ。これまで作ってきたものの総まとめ的パッケージに、セガの立役者であるふたりのスーパープログラマーのデビュー作を入れるって、意義深いじゃないですか。……できるできないは置いておいて。

下村 その場で「できる!」というお返事はいただけませんでしたけど、置いて帰ればきっとやってくれるだろうなという確信はありました。

堀井 いつ「やりましょう」と返事をしたのかは、もはや記憶が定かでないんですけど、オーケーをしたのには理由がありまして。奥成さんの言う歴史的な意味合いもそうですし、それにプログラマーに適任がいたことが大きかったです。そのプログラマーは、以前にも別タイトルのMSX版『グラディウス2』を移植した際に、スムーススクロールを実現しているんです。その彼が、MSXとすごくアーキテクチャが似たSG-1000で、似たようなことをやったらどうなるだろう……という興味が沸いたんです。

――歴史的だけじゃなく技術面からもゲームマニアとしての興味の虫が疼いてしまったわけですね。

堀井 当初はさほど手間をかけるつもりはなかったんですが、気がつけばみっちり時間と手間をかけた……気が……します。

奥成 このプロジェクトが始まって遊べるものが最初に出来上がったのが『ターボアウトラン』。つぎがオマケの2本だったので不思議に思っていたんですが、いまの話を聞いて納得がいきました。早々に3Dが入っていましたしね。

――話題が出たところで、まずは『チャンピオンボクシング』の説明をお願いします。

奥成 対戦型のボクシングゲームなんですけど、パンチボタンのほかに3種類のパンチの打ち分けを変更するボタンがあるんです。しかも左右移動のみに特化したことで上下の打ち分けまでができるという、かなり画期的な内容でした。後の格闘ゲームっぽい要素が入っている。あまりにできがよかったからアーケードに逆移植もされたのですが、そこもまた、名プログラマーでありつつ名企画者でもあった裕さんの非凡さを感じさせるエピソードですよね。

堀井 裕さんの作るゲームにはやっぱり彼の色が出ていて、『アウトラン』と『ターボアウトラン』もだいたい同じコードで書かれているのに、ぜんぜん内容が違うのが不思議です。

――立体視以外の追加要素もあります。

奥成 “ヘルパーモード”では、3ボタンでの操作に対応して、出したい種類のパンチがワンボタンでダイレクトに出せる。なおかつ“なめらか”をONにするとボクサーがドット単位でスムーズに動くようになっていますね。

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▲『チャンピオンボクシング』。

――『ガールズガーデン』についてはいかがでしょう。

奥成 当時新入社員だった中裕司さんとHiro師匠が「まずは一本作ってみろ」と新人研修で制作したゲームです。“女の子でも遊べるゲーム”というコンセプトの元、プレイヤーの女の子が男の子に花を届けるというファンシーなゲームに仕立て上げたと。そこから「これは売れるな」という判断があったのでしょう。グラフィックデザイナーなど先輩スタッフを加えて発売されたというエピソードがあります。

堀井 着目点がすごいですよね。女の子が男の子に貢ぐゲームですからね。そんなゲーム当時はなかった!

奥成 コンシューマーで続いてきた中さんのゲームって、『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』や『北斗の拳』、さらには『大魔界村』まで含めていろいろと語られることが多いんですけど、『ガールズガーデン』だけはこれまで移植がされておらず、遊ぶためのハードルがすごく高い。それが遊べる意義は、すごく大きいと思います。唯一誤算だったのは、堀井さんから「これ、ベルトスクロールじゃん!」と言われたことですね。おかげで立体視が大変だったらしく(笑)。

堀井 いつもだと延々と苦労話を語ったうえで「でもすごいですよ!」というのがパターンですけど、今回は苦労話をはしょって、ベルトなりの空間の広さがあるんです。移植してよかった!

――苦労話をはしょらないと語りきれないボリュームということですね(笑)。

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▲『ガールズガーデン』。
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奥成 ちなみに、背景設定をデフォルトのSG-1000からマークIIIに変えると、全機種対応ソフト互換時のカラーになります。これは両機のカラーパレットが微妙に異なるからなのですが、マークIIIではちょっと濁った色で、製作者からすると望まれていない色なんです。原点を遊んでもらうという意味ではSGカラーには意義があるし、当時マークIIIで遊んだという人はそちらで懐かしさを感じてください。

――両タイトルともに1ドット単位のなめらかスクロールになっていますが、これはどのように実現されているのでしょう?

堀井 擬似的にスクロールレジスタを持つという感じだと思うんですけど、けっこうめんどうくさいんですよね。これも『アウトラン』の例と同じで、スクロールルーチンがひとつだと修正が一箇所で済むんですけど、『ガールズガーデン』の場合は手前と奥とでスクロールの速さが違うので、そこは別々に直さないといけない。

奥成 当時を知らないユーザーだと、スクロールがガクガクしないことに逆に違和感を抱かないかもしれませんね。

――その説明で気が付きましたけど、『チャンピオンボクシング』のボクサーって、スプライトではなくてBGで描かれているんですね。マークIIIで遊んだ当時は「なんでガクガクするんだろう?」と不思議に思っていました。

奥成 マークIII版『スペースハリアー』と同じ原理で、キャラクターの大きさを重視したんですね。

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▲取材時、奥成氏にお持ちいただいた『チャンピオンボクシング』(もちろん私物!)をプレイ。大いに楽しんでしまいました。SG-1000のコントローラーに悪戦苦闘の様子。

[関連記事]『セガ3D復刻アーカイブス3 FINAL STAGE』に前作とのデータ連動で『チャンピオンボクシング』と『ガールズガーデン』が追加

足掛け11年で築き上げてきたゲーム復刻の火は消えず!

奥成 と言った経緯で、下村が望んでいた全11本が収録されるに至りました。ちなみにこれ、トリプルパックのダミーじゃない本物のパッケージなんですけど、“蘇る29本の名作たち”って記されています。そう聞くと、キリよくもう1本なんとかしたかったね。30本なら“ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ”に対抗できたのに(笑)。

堀井 じゃあ『ドットリクン』(※セガのアーケード筐体に付属する動作チェック用の基板で動作するドットイートタイプのゲーム)で! って間に合わない!

奥成 今回シリーズ最終作と銘打ったおかげか、SNSを見ていると「トリプルパックで初プレイします」という方が結構な人数いらっしゃるようです。それを考えると、29本を遊ぶってたいへんだなって思います。価格的にも1万円でお釣りがくる設定としたので。

下村 営業サイドからはもう少し高めの価格を提案されたのですが、ひとりでも多くの新しいセガファンをお迎えするのにお求めやすい価格にしようよと、この価格にしました。『セガ3D復刻アーカイブス』はこれでシリーズの幕を閉じますが、もしつぎの新しい展開などがあったときにファンになってくださった方が、駆けつけてくれるかなと。

――ファイナルと聞いたときには寂しさもありましたが、ちょうどポリゴン世代前までのセガの名作たちがアーカイブされたということも含めて、キリがいいのかもしれませんね。では最後に、ファイナルということで、これまで遊んでくださった方への惜別のメッセージをいただけますでしょうか。

奥成 これまでシリーズを応援してくださってありがとうございました。配信としての“セガ3D復刻プロジェクト”は、シングルカットの『パワードリフト』と『ぷよぷよ通』を除けばタイトルが出なくなって1年以上経ちます。その意味では、僕のペースなら1年以上をかけて“第3期です”といって出すようなタイトルが、ひとつのパッケージに収録されています。年末にたっぷりといろんなゲームを立ち上げて、シリーズ集大成を楽しんでいただければと思います。もし「一度に遊んでしまうのがもったいないな」と思われたら、3ヵ月に1作立ち上げていただけると、擬似第3期として楽しめます(笑)。

堀井 ひとりのプレイヤーとして見たときに、これほどまでにセガのゲームをひとまとめにして遊べる機会はないと思います。当時後ろ髪をひかれる思いでクリアーを諦めたゲームたちにもう一度対面できる喜びは何事にも代えがたいです。それを実現できたことを考えると、「これまでの苦労なんかどうってことないよね!」と思います。

奥成 この29本を改めて見ると、ほぼセガハードだよね。

堀井 それは本当にそう思っていて「俺の3DSは現代のセガハードだ」とおっしゃってくださる方がいっぱいいらっしゃるんです。そうした声を聞く度に、苦労が吹き飛んで報われた気持ちになる、幸せなプロダクトでした。ここまでお付き合いいただいたみなさん、本当にありがとうございます。この先どこかでまたお会いすることがあれば「またがんばるよ!」。

下村 このプロジェクトはお客様とともにあるとずっと公言してきました。そんな熱いお客様、エムツーさん、社内スタッフといった素晴らしい仲間たちといっしょに楽しい仕事ができて本当によかったと思います。ファイナルステージということで一旦は区切りをつけますが、お客様のご要望がある限り、今後もなんらかの形にしていければいいと思います。ご支援のほど、よろしくお願いします!

――これまでも何回か「これで最後!」とうたわれて復活しているプロジェクトですから、どこかでまた会えると信じています。

奥成 遡ると、プレイステーション2の初代『セガラリー』移植に始まり、プレイステーション2の『セガエイジス2500』、Wiiのバーチャルコンソール、プレイステーション3/Xbox 360の『セガエイジスオンライン』、ニンテンドー3DSのバーチャルコンソール、そしてこの“セガ3D復刻プロジェクト”と、エムツーさんとは足掛け約11年に渡って、ずっとレトロゲームの復刻を続けてきました。もはやこれは、点ではなく線なんですね。お客さんが何度でも『スペースハリアー』を買ってくださる限り、復刻の火が消えることはありません!

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[関連記事]『セガ3D復刻アーカイブス3 FINAL STAGE』の発売を記念して、“セガ3D復刻アーカイブス パッケージイラスト”テーマ3種が配信開始

幻となった『3D バーチャレーシング』の画像を独占掲載!

 インタビュー中にもあったが、開発途中でお蔵入りとなってしまった『3D バーチャレーシング』の画像を特別に提供いただいたのでここに掲載する。現状ではリリースの予定がまったくないスクリーンショットであるが、1980年代のゲーム少年よろしく、雑誌に掲載された1枚きりのスクリーンショットに熱い思いを注げば、奇跡は起こる――かもしれない!?

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