VR対応でも、ディースリー・パブリッシャーイズムは健在!
ディースリー・パブリッシャーから2017年冬発売予定のプレイステーション4用ソフト『しあわせ荘の管理人さん。』。プレイステーション VR対応の恋愛シミュレーションということでも注目を集める同作だが、ここでは、プロデューサーの岡島信幸氏に、『しあわせ荘の管理人さん。』の開発秘話を聞いた。
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ディースリー・パブリッシャー
上席執行役員
コンテンツ事業部 事業部長
岡島信幸氏
キャラクターはマイナーチェンジをする
――『しあわせ荘の管理人さん。』をプレイステーション VR対応で開発中とのことで、びっくりしました。けっこう早い時期からVRに取り組んでいたのですね?
岡島 そうですね。ソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジア(SIEJA)さんから、「こういうものがあります」というお話をいただいて、かぶったら虜になりました(笑)。臨場感がすごくあって、大きな可能性を感じました。
――それで、『しあわせ荘の管理人さん。』を企画された?
岡島 『しあわせ荘の管理人さん。』の企画自体は、VR云々の前から企画案だけは存在していたんですよ。当時は『管理人(仮)』というプロジェクトだったのですが、主人公がマンションの管理人になって、住人とコミュニケーションを取りながらさまざまなイベントをこなしていくという恋愛シミュレーションだったんです。『管理人(仮)』は、アイデアのストックのひとつとしてあったのですが、プレイステーション VRを体験して、「あの、管理人の企画をVR化したらマッチングがいいだろうな」と発想しまして。それで企画がゴーとなりました。
――しかも、登場キャラクターが3人というのは、大盤振る舞いですね。
岡島 そう言っていただけると、すごくほっとするのですが、あのマンションの外観で、3人しか住んでいないとどう思われるだろう……みたいな心配はありました(笑)。「少なくとも、3人くらいはご用意しないと」とは思っていました。とはいえ、VR対応で3人分造形するというのが、けっこうな労力で……。
――ですよね。開発は、タムソフトさんですよね?
岡島 そうですね。タムソフトさんとは長いおつきあいになりますね。タムソフトさんには、古くは『SIMPLE』シリーズから、『ドリームクラブ』シリーズ、『お姉チャンバラ』シリーズなど、ずっといっしょにお仕事をさせていただいております。私がとても信頼しているデザイナーの手塚さんという方がいらっしゃるのですが、今回のモデリングに関しては、「ぜひともその手塚さんに担当していただきたい!」ということで、お願いしました。その方がいちばんよいと思うものを作ってくださればいいということでお任せしています。ただ、タイトルだけ先行して発表していたので、ファンの方は『ドリームクラブ』のようなビジュアルを予想されていたみたいなんですね。それで、「これじゃない!」という方も多くて……。
――VRの特性を考えたときに、やはり方向性としてはフォトリアルで行きたかったということですね?
岡島 その通りです。セミリアルで“仮想現実にいる”という感覚が大事なのであって、これをトゥーンタッチでやったら意味がない。本作のいちばんいいところは、ひとり暮らしの女の子の部屋に入ってコミュニケーションを取れるという、そこに尽きると思うんです。そのような体験は、現実世界ではお金を払ってもなかなかできないことですから。
――たしかにそうですね。
岡島 アニメっぽいキャラクターよりはリアリティーがあるけれど、現実ではない。そんな世界を表現したいと思っていました。狙ったのは、『お姉チャンバラ』のモデルよりも、さらに上位のクオリティーだったのですが、「ちょっと濃い」と言われてしまいましたね(笑)。
――実際にVR空間でプレイしてみると、“濃い“という感じはまったくしないですけどね……。
岡島 そうですね。“体験すればわかる”というのがVRのよいところでもあり、反面わかりづらいところで……。SIEJAさんが積極的に体験会を実施されるのも、プレイステーション VR訴求のためには欠かせないことなのかなと。いずれにせよ、ユーザーさんのご意見をいただいて、キャラクターのほうは少し変更しようかと思っています。
――けっこう大きく変わるのですか?
岡島 そんなに大きくは変わらないですよ。これがいいとおっしゃってくださる方もいらっしゃいますので、マイナーチェンジです。でも印象が少し変わる程度の変化はあるといます。僕らとしても、「体験していただければわかる」という思いはあるのですが、それはこちら側のひとりよがりでもありますし、お客様の意見が少しでも反映されたほうがいいというのであれば、そこは僕らのプライドは捨てるべきかなと思いまして。やれるべきところはやろうかなと。もちろん、まったく違うものにはなりませんが、たとえば静香さんはもうちょっと眉毛がすっきりする感じに改造されます。
――改造(笑)。
岡島 ぱっと見は区別が付かないかもしれませんが、印象は何となく変わるとは思います。比べたらわかると思いますよ。






もうちょっとリアルを超えた何かが欲しいですよね?
――VRということで言うと、いろいろな角度からキャラクターを見ることができますが、そのへんでご苦労はなかったのですか?
岡島 そこはですね、粗が出てはいけないという思いはありますが、モデリングを担当したデザイナーさんとは、とくにそういう話しはしてないですね。これまで私たちは3Dのモデルが登場するゲームをたくさん手掛けてきましたが、だいたい回転できますし、スカートも覗けます(笑)。360度見られるように作ってきましたので、そういう意味では大丈夫でした。
――ディースリー・パブリッシャーさんとタムソフトさんは、図らずもVRでの使用に耐えるクオリティーの素材を作り続けてきていたということですね。
岡島 こだわりと言えば、体型はひとりひとり異なるスタイルで作られています。たとえば、クリスティーネさんはハーフであることから、お尻の位置がほかのふたりより高くなって、いわゆる外人体型になっているなど、頭身や体型などが3人ともそれぞれ異なるんです。
――ひとりひとり個性があるんですね。
岡島 はい。お尻の形、ぜんぜん違いますよ。
【キャラクターの立ち絵を紹介】



――プレイして思ったのが、表情の豊かさです。眉の動きや口角などの細かいところにもこだわって作っているのかなと。歯の表現も印象的でした。
岡島 フェイシャルにはものすごく注力しています。歯と舌の表現に関して言えば、『ドリームクラブ』のころからちゃんとモデルを作ってあったんですよ。バナナを食べさせるとか、ソフトクリームをなめさせるとか、そういう表現の際に研究しておりまして。『ドリームクラブ』でのノウハウを活かしつつ、さらに精巧にしている感じですね。表情については、やはりお酒を飲むシーンもありますので。静香さんの部屋にはベッドがありまして、ふたりで腰掛けてお酒を飲むというシチュエーションがあるんですよ。
――いろいろなシチュエーションを楽しんでもらうためにも、豊かな表情は必須ということですね。そういえば、プールのシーンも公開されましたが、どういうシチュエーションなのでしょう?
岡島 プールの底から泳いでいる静香さんを見上げているシーンですね。これは今後のお楽しみ……ということで、みなまでは言えないのですが、この管理人はただの管理人ではないんですよ。大きな秘密がありまして……。管理人のスキルを使うと、こういう状況もあり得るんです。
――管理人のスキルですか? となると、たとえば着替えのシーンが見られたり?
岡島 申し訳ないですが、いまはまだお話しできないんです。でも、ふつうの管理人さんだったら、着替えているところには絶対に入っていけないですよね。それではやっぱりイヤじゃないですか? ゲームですからね。もうちょっとリアルを超えた何かが欲しいですよね?
――どうやら、本作でもディースリー・パブリッシャーイズムに溢れているようですね(笑)。
岡島 いろいろなことができるようになってくるので楽しみにしていてください。
――登場キャラクターが3人ということで、理想の女性像を3人に集約したかと思うのですが、設定に関してはやはりご苦労したのですか?
岡島 最初のころはありましたね。けっこういろいろなアイデアが出たのですが、けっきょくは“お嬢様”、“ツンデレ”、“不思議ちゃん”決まりました。
――男性の理想が3タイプに集約された感じですね?
岡島 そうですね。で、ここから先がたいへんだったんですよ。3タイプが決まったとして、誰を巨乳にして、誰を貧乳にするかとか(笑)。
――スタッフの皆さんのあいだで、組み合わせを巡っての試行錯誤があった?
岡島 そうですね。タムソフトさんのディレクターの小名さんデザイナーの手塚さんを交え、さまざまな見地から設定を詰めていったのですが、結果的にお嬢様は巨乳になって……。
――年齢も微妙に異なりますよね。
岡島 そうですね。「静香はお酒が飲める年齢にしたいので、20歳にしよう」なんて話は出ました。一方で、「高校生もいてほしいよね」とか(笑)。
――なぜ、お酒を飲めるようにしたかったのですか?
岡島 せっかく管理人として住人たちとコミュニケーションを取っていくのですから、家庭用ゲーム機の中で実現できる、ぎりぎりのことをしたいじゃありませんか。

――(笑)。ゲーム内容に関して少し聞かせてください。本作は恋愛シミュレーションなんですよね?
岡島 コミュニケーションソフトだと思われている方もけっこういるかもしれませんが、恋愛アドベンチャーゲームです。コミュニケーションを取りつつ、与えられた3ヵ月のあいだに住人たちとの仲を深めていくという。
――当然、プレイヤーの行動次第で、その後の展開が変わってくるのですね?
岡島 そうです。選択肢次第で、管理人への信頼度が上がったり下がったりしていきます。どのイベントを見たかによって、エンディングが変わるという、王道のアドベンチャーです。
――体験版では4択でしたね。4つも選択肢があるんですね。
岡島 そうですね。4択プラス“選択しない”というチョイスもありますので、5択になるシチュエーションもあります。必ずしも5択ではなくて、2択のときもあれば、3択のときもありますよ。
――ゲーム中は、3人のヒロインたちと、適宜コミュニケーションを取っていくことになるのですか?
岡島 そうですね。ゲームの流れとしては、自分の1日の行動を先に決めてしまって、それに沿ってプレイしていく感じになります。1日を何分割かにして、“午前中はフィットネスジムを掃除します”、“午後は誰かの部屋を訪問します”といった形で、行動していくんです。
――プレイによっては、ずっと静香さんの部屋を訪問することもできる?
岡島 できますね。かなりひとりの娘に粘着したプレイになりますが(笑)。あ、でも、静香さんは学生さんなので、学校がある日は、昼間はいませんよ。
――ちなみに、キャラクターのリアクションというところでは、プレイヤーが女の子たちのどこを見ているかによっても変わってくるみたいですね。
岡島 変わりますね。ずっと見ていると、会話を途中で止めて、「やだー胸を見てる」という心の声が聞こえてくるんですよ。
――中原麻衣さん、釘宮理恵さん、金元寿子さんという人気声優さんを起用しているのも話題ですね。
岡島 そうですね。ベストなキャスティングができたかなと思っています。ただ、とにかく収録が長かったんですよね。
――フルボイスですものね。
岡島 この3人がほとんどなのですが、ひとりあたり9500ワードくらいありまして。いやあ、長かったです(笑)。ひとり3~4日では収まらなかったですね。とはいえ、皆さんお上手な方たちばかりなので、スムーズに収録できて、本当に助かりました。というわけで、声はたくさん入っています!
――3人がほとんど……とおっしゃっていましたが、ほかにもキャラクターが登場するのですか?
岡島 端役もいますよ。現時点では情報としてはご提供していないのですが、ガイド的なキャラクターもいますし、ほかにもちょいちょい登場人物が出てきます。
――ところで、女の子たちが住んでいる部屋番号には、何か意味が込められているのですか?
岡島 そんなには……。3階あるので、各階にひとりずつ住んでいるというふうにしてあるだけです。
――続編が出たときに、空いている部屋が埋まっていくとか?(笑)
岡島 確かに空き部屋はまだありますので(笑)。安心してください。男の住人はいませんから。きっと女性限定のマンションなんでしょうね。
――でも、管理人は男です(笑)。
岡島 あと、ぜひとも強調しておきたのは、本作は“VR対応”ゲームだということです。VR版と通常版とがあると思われている方も多いようですが、1本で遊べる親切設計にしているので、安心してご購入ください。「これからプレイステーション VRを買ってみようかな」という方はもちろん、『しあわせ荘の管理人さん。』そのものに興味を抱いた方でも、気軽に楽しんでいただけます。あと、本作では、“VR対応”として、いろいろな小ネタを盛り込んでいるんですよ。そこはご覧いただきたいなと。たとえば、体験版をプレイされたときに、お部屋をご覧になりましたよね? タンスがありませんでしたか? あの中に何があるか、空けてみたくないですか?
――できるのですか?
岡島 それはやっぱりできないと(笑)。
――本当にディースリー・パブリッシャーさんは、いい意味でぶっ飛んでいますね(笑)。
岡島 ありがとうございます(笑)。
――発売は“2017年冬”とのことですが。
岡島 2017年の冬を“2017年12月”と指すと思っていらっしゃる方もいるようですが、2017年に早いほうの冬を想定しています。ただ、意外とやることが多くて……もう少し先になるかもしれません。スタッフ一同、気合を入れて制作に取り組んでいますので、いましばらくお待ちください。
というわけで、最後に『しあわせ荘の管理人さん。』の最新画像をたっぷりとお届けする。
















