『ワールド オブ ファイナルファンタジー』の楽曲を制作した浜渦正志氏とトーセサウンドチームの内容モリモリ座談会!

『ファイナルファンタジー』シリーズのキャラクターが多数登場する『ワールド オブ ファイナルファンタジー』。本作の大きな魅力となっている楽曲の制作を担当するのは、『FFX』や『FFXIII』、そして『サガ』シリーズなどでユーザーを魅了してきた浜渦正志氏と、本作の開発を手掛けたトーセのサウンドチームの面々。彼らに『WOFF』の楽曲を手掛けることになった経緯や、曲についての想いなどをたっぷりうかがった。

●浜渦氏とトーセサウンドチームによる新たな『FF』サウンド

 『ファイナルファンタジー』シリーズのキャラクターが多数登場するプレイステーション4、プレイステーション Vita用タイトル『ワールド オブ ファイナルファンタジー』(以下、『WOFF』)。シリーズの枠を超えた『FF』キャラクターの掛け合いや、謎めいた物語、特徴的な“ノセノセ”のシステムなどと並び、本作の大きな魅力となっているのが音楽。作曲を担当するのは、『FFX』や『FFXIII』、そして『サガ』シリーズなどでユーザーを魅了してきた浜渦正志氏。そして、本作の開発を手掛けたトーセのサウンドチームの面々だ。本記事では彼らにお集まりいただき、『WOFF』の楽曲を手掛けることになった経緯や、曲についての想いなどをたっぷりうかがった。サウンドトラックも発売中なので、記事をチェックしたら改めて聴き込むべし!

▲左から、
プロジェクトマネージャー兼トーセBGMディレクション 加藤健次郎氏(トーセサウンドチーム/文中は加藤)
サウンドマニピュレート 中村雅人氏(トーセサウンドチーム/文中は中村)
BGMコンポーズ&アレンジ 片岡真悟氏(トーセサウンドチーム/文中は片岡)
メインコンポーザー 浜渦正志氏(MONOMUSIK/文中は浜渦)
『WOFF』ディレクター 千葉広樹氏(スクウェア・エニックス/文中は千葉)

●浜渦氏もやる気のオーラを感じたトーセサウンド

――まずは今回、『WOFF』のメイン楽曲を、浜渦さんに依頼された経緯をお聞かせください。

千葉 開発当初、『WOFF』が新規IPとして成り立つよう、“新しい『FF』”の曲を作ってくれる方が必要だということになり、誰にお願いしようかと思いを巡らせました。そこで最初に出てくるのは、やはり植松伸夫さんなんですけど、僕は最近の浜渦さんの曲も、とても『FF』らしいなと感じていて。僕個人として、浜渦さんとのお仕事はやりやすいというのもありました。浜渦さんはお忙しい方なので、「今回は断られちゃうかな?」と思いつつも、お話を持っていったら受けてくださって、うれしかったですね。

――千葉さんの浜渦さんへのラブコールは、これまでにもたびたびお聞きしていました。

浜渦 ありがとうございます。

千葉 「こんな感じの曲が欲しいんですけど、お任せします」とニュアンスだけで発注しても、思っていたものよりさらに上回った仕上がりの曲が返ってくるんです。それが、すごく気持ちいいんですよ。

――いい意味で予想を裏切られる快感があるのですね。新規楽曲はおもに浜渦さんが作曲されたわけですが、アレンジ曲をトーセさんがご担当されたいきさつというのは?

千葉WOFF』は昔の『FF』のモチーフも多い作品なので、原作楽曲のアレンジも必要になるだろうというのはわかっていました。そこで浜渦さんと相談して、トーセさんにお願いしようと。トーセさんはコンシューマーゲームやアプリなどを開発されていて、『WOFF』の制作もお願いしているのですが、内部にサウンドチームも抱えていらっしゃいます。楽曲制作を正式にお願いする前、『WOFF』のプリプロ(プリプロダクション。本格的な制作に入る前の準備作業)の段階で、すでにいろいろとアプローチしてくれていて、その流れもありました。

浜渦 トーセさんのご提案として、最初に何曲か聴かせていただいたんですけど、クオリティーがすごくしっかりされていたんですよね。

千葉 あのときは、コーネリアの曲でしたっけ。

加藤 ええ。ゲームの開発がある程度進んだ段階で、まだ仮の曲を当てていたんですけど、開発チームの中でも「仮曲ばっかりでもなあ」という思いがありました。そこで、節目節目にちゃんとした楽曲をつけて、スクエニさんにお見せしようということになったんです。ちょうど浜渦さんにも聴いていただけるタイミングで、いくつかできあがったシーンに曲をつけたうちのひとつが『プリメロディ・コーネリア城』でした。

片岡 それと、クラウドのセイヴァー召喚のシーン(『プリメロディ・更に闘う者達』)もですね。当時は“プリメロ”の世界観ができあがってきたところで、もし弊社で楽曲制作できるなら、こんなアプローチでやらせていただきたいと、ご提案しました。

浜渦 皆さんから、やる気のオーラみたいなものを感じましたね。それでトーセさんにご担当いただくことになったんですけど、大正解でした。僕が先輩方の過去の曲をイジると、たぶん無茶苦茶にしてしまうだろうし(苦笑)。ゲームに愛情を持って音楽を作られる方がアレンジしてくれるので、ファンの方も喜んでもらえるんじゃないかなと思いました。

中村 ありがとうございます。

――これまで『FF』の楽曲は幾度もアレンジされてきましたが、『WOFF』でのアレンジはとくに新鮮でした。

千葉 ある意味、恐れを知らないアレンジですよね(笑)。いい方向に転がったんじゃないかと。

加藤 それほどガラッと変えようという意識はなかったんですけどね(笑)。『FF』シリーズのキャラクターのテーマは、ほぼすべて僕たちがアレンジしたのですが、『WOFF』はゲームとして、キャラクターはフィギュアっぽさ、舞台となる背景はジオラマっぽさがあるので、“オモチャらしさ”というキーワードが挙がっていたんです。音楽もそのイメージに乗っかるべきだろうと、千葉さんにもご相談して、そのコンセプトで行こうということになりました。そういった意味では、ほかの作品のアレンジ楽曲とはちょっと違う、『WOFF』ならではの雰囲気を出せたんじゃないかなと思います。

浜渦 きちんとゲームのことを考えたアプローチをされているんですよね。たくさんの曲を作っていく中では、ちょっと力を入れる曲と、肩の力を抜いて気楽に作る曲というのが出てくるものだと思うんですけど、僕が聴いた印象としては、全部力が入っていましたね。1音1音、まったく無駄がなくて。正直に言わせていただくと、僕がこれまで聴いたゲームにおけるアレンジの中では、ダントツでよかったです。

加藤 本当ですか! 結果的にそう言っていただけてよかったものの、ビビっていたこともあったんですよ。僕が曲のイメージを中村と片岡に伝えるんですけど、何曲か作っていく途中で片岡が、「最後までネタが続くか心配」とこぼすこともあったり(笑)。

片岡 当初は、アレンジ楽曲の制作は十何曲かの予定だったんですけど、いつの間にか3倍に膨れ上がっていたりもしましたしね(笑)。

浜渦 作曲の手法には、「大体こんな感じの曲があればいいだろう」という、決めすぎないやりかたもあるんですけど、トーセさんは“このシーンにはどういう曲が最適か”を、全部きちんと計算して作られていて。それがすごくよかったです。

加藤 シーンに関しては、千葉さんが先に書き上げていたシナリオを見て、その中でキャラクターがどういうシーンで出てくるか、どんな雰囲気なのかというイメージを先に確認することができました。そこにどう音を乗せるか、イメージしやすかったんです。でも、そこへさらに僕が無茶振りをしまして(笑)。

――ど、どんな無茶振りを?

加藤 いちばんひどかったのが、「BGMだけど無音にしてくれ」っていうやつですね。

中村 どこのシーンでしたっけ?

加藤 海底神殿の場面(『プリメロディ・海底神殿』)ね。「海の中だし、基本は無音で行こう」と。自分で言ってて「ひどいなあ」と思いました(笑)。

片岡 でも、あのアレンジ、僕も割と気に入っているんですよ。無音ぽくして、アンビエンス(周囲を取り巻く音、環境音)のようにしようという試みで。

加藤 BGMなのか、SE(効果音)なのかME(ジングル)なのかよくわからない感じですね。

片岡 あえて、パッと聴いたときに原曲が何かわからないようなイタズラを仕掛けてあります。僕自身が、そのまま音を乗せるのは苦手というか、ひねくれ者なので(笑)。

中村 でも結果オーライでしたね(笑)。

加藤 もうひとつ、僕が無茶を言ったなというのが「1曲を3分割して」というオーダーでした。『ビッグブリッヂの死闘』なんですけど、もともと『FFV』ではバトルに突入しても曲が切り替わらずに、同じ曲が流れ続けるんです。今回はデータの管理上、シーンが変わると同じ曲が最初から再生される形になるんですが、そこをフィールドではAメロ、Bメロ、バトルに入ったらサビが鳴るように曲を分けて、と。

――それは盛り上がる演出ですね。

加藤 とくに、ギルガメッシュが出てくるところは、イベントの内容も相まっておもしろいアレンジになっていると思いますよ。

●無茶振りにも難なく応える!? アイデアの詰まった浜渦氏の楽曲

――お話をうかがっていると、楽曲制作にあたっては、千葉さんからオーダーが細かくあったというよりは、トーセさん側で提案されていった部分が多かったんですね。

片岡 ええ。すでにできあがったプロットに対して、どういう音を当てはめようか、という作りかたでしたね。

千葉 トーセさんにお任せしていたら、どんどん提案していただけるもので、曲数が予想以上に増えていきました(笑)。曲数で言えば、浜渦さんもこんなにたくさん書いてくださるとは思っていませんでしたね。スケジュールも、すごく余裕があるわけではなかったのに。

浜渦 そうですね。でもギチギチというわけではなかったので、いい塩梅で作れたと思います。

中村 浜渦さんは最初、PVのためのメインテーマを作られていたんですよね。

浜渦 はい、『ビューティフル・ワールド』を。あれは去年の春くらいに作った曲でした。

片岡 E3(Electronic Entertainment Expo。アメリカで開催される世界最大級のゲーム見本市)で流すPVの曲でしたよね。

千葉 僕から「PVを作るから、完成したメインテーマが欲しい」と無茶振りをしまして。

浜渦 東京ゲームショウとか、そういうイベントで使う曲が先に必要になるものなんですよね。『ビューティフル・ワールド』は、その後にゴージャスになるよう録り直して、尺も長くアレンジし直しました。

――さすがにメインテーマということで、千葉さんからはどんな曲で、というオーダーを……?

千葉 いや、もう「メインテーマを!」みたいな感じで!(笑)

加藤 そのすごい振りかたをされたときのメール、拝見していましたよ(笑)。

浜渦 まあ、千葉さんとはすごく長いお付き合いなので(笑)。『ダージュ オブ ケルベロス -ファイナルファンタジーVII-』のときもごいっしょさせていただきました。直接楽曲を発注いただくようになったのは、『シグマ ハーモニクス』からです。そのときも、細かい指示とかはあまりなかったかな。

千葉 基本、無茶ばっかり言っています。「とりあえず、バトル曲を12曲!」とか(笑)。

浜渦 あれはすごく楽しかったですよ。1曲1曲は容量の都合で短かったんですけど、「これ、バトルかなあ?」という曲もオーケーをいただいて、うまく使っていただけたり。僕としても千葉さんとはやりやすいんです。今回も、本当に好きに作らせていただきました。

千葉 浜渦さんの曲は、聴いていて“心地いい”んですよ。お願いして上がってきたものは、毎回「やったあ!」という感じです。

――では、リテイクはほとんどなかったのでしょうか。

千葉 ええ。たまにあるとすれば、お互いのやり取りの中で「この曲は、こちらのシーンのほうが合うかも」と、使いどころを調整するといったことでした。浜渦さんが、「どこで使えるかわからないけど」と言いながら、お願いしていないぶんまで曲を作ってきてくださることもあって。

浜渦 それは自分なりの作りかたでもあるんです。昔からわりとよくやっているんですけど、全体の10%ぐらいは、どこで使うかを決めずに作る曲があって。そういうものが意外なところにハマッたときに、すごくおもしろい効果があるんです。和声がボヤーッと深めな曲調のものは、意外とバトル系にも合うし、静かなシーンにも合ったり。捨て曲にはならないですね。

――そういった曲を、千葉さんがうまく使われるわけですね。

浜渦 そうなんです。僕が突拍子もない歌モノを作って「もし使いどころがあれば」とお送りしたら、「じゃあココ!」と。

千葉 今回はナイン・ウッズヒルの曲(『ナインウッズヒル・ワールド』)がそうでした。

浜渦 「これはさすがに合うところはないかな」って思っていたんですけど(笑)。でも多少、合っていなくても、長いゲームの中でドキッとする曲は必要かなと思います。

千葉 内容を含めて、ホームグラウンドに合っている曲だなって思いましたよ。

加藤 ピッタリですよね。

浜渦 よかったです。この曲で声を入れているのは7人の女性で、4小節ごとに入れ替わり立ち代わり歌っています。皆さんは歌手ではなく、デザイナーさんだったり、女子高生がいたり、どっかの社長がいたりと全員が素人なんですが。

――7人も!? それは気づきませんでした。皆さん、歌手ではないというと、どういうご縁だったのですか?

浜渦 このアイデアを思いついたときに、たまたま全然関係ない打ち合わせなどでお会いした方に順番に声をかけていきました。自分の曲は、“歌い上げる”人よりも、そういう方のほうが合うというか。BGMとしても合うだろうなと。

――突然なのに、皆さん快く引き受けてくださったんですね。

浜渦 そうですね。ひとりずつ声を掛けると怪しまれるかもしれませんが、2~3人単位でお願いすると大丈夫という(笑)。

――そんなテクニックが(笑)。ちなみに、女子高生というのはもしかして……。

浜渦 ええ、じつは娘です。1ヵ所だけフレーズが余っていたので頼みました。彼女には幼稚園くらいから手伝ってもらっていましたが、ついに高校生になりまして。もう年ごろ的に反抗するかなと思っていたので、「やる? やらないよね?」みたいな感じで声をかけたら、「やる」と(笑)。

――微笑ましいエピソードです(笑)。歌詞が日本語というのも、『FF』シリーズでは珍しい曲になりましたね。

浜渦 最初はこういう曲は英語かなとも思ったんですけど。僕のほうで日本語で作詞しました。

千葉 当初は英語で録り直すという話もありました。

浜渦 でもやっぱり日本語がよさそうだったので。もし、このまま海外で聴かれても「そういう言葉なんだ」と思っていただけるのではと。韻を踏んでいるというか、「~たり」、「~たり」が続く歌詞で、呪文みたいな感じに聴こえたりしていいかなと。

千葉 海外の方も、日本語だからどうこうと気にしていないみたいです。

片岡 発音の柔らかい感じが、プリメロの雰囲気にピッタリ合うんでしょうね。

――ゲーム自体もなるべく用語を使わないで、日本語にしているところがありますよね。曲名にしてもカタカナでわかりやすいです。

千葉 和製英語というか、中学生でもわかるような単語だけチョイスしています。固有名詞は若干入っていますけど。

浜渦ラァン・メロディ』とか。

千葉 そのまんまですよね(笑)。

片岡 大別すると、曲名に“メロディ”と付くものがキャラクターのテーマで、“ワールド”がエリアの曲です。

千葉 曲名は想像しやすく、ネタバレがないようにしています。アレンジ曲で原曲があるものも、そのままだったり、英語のタイトルの場合は和訳しているだけとシンプルです(笑)。