新たなステルスアクションを世界に提示したシリーズの最新作
ベセスダ・ソフトワークスから2016年12月8日にプレイステーション4/Xbox One/PCで発売予定の『ディスオナード 2』。超常能力とガジェットを駆使して、プレイヤーのおもむくままにアクションが楽しめる本作。その奥深さは、独特かつ突出して優れたデザインがあってのものだ。本誌2016年11月3日号(10月20日発売)では、キャラクターと世界観の新たなデザインとともに、『ディスオナード 2』のクリエイティブ・ディレクターを務めるArkane Studiosのハーヴェイ・スミス氏のインタビューを掲載しているが、その完全版をお届けしよう。
能力なしでプレイできる「ノーパワーズモード」も選択可能
――Arkane Studiosは、いまや『ディスオナード 2』と『Prey』という、ふたつの大作級プロジェクトを開発しています。しかも初代『ディスオナード』からはターゲットとなるゲーム機の世代も変わった。どうやっているんですか? チームの規模を2倍にしたとか?
ハーヴェイ 実際、野心的なことをやってると思うよ。初代『ディスオナード』のときはリヨンとオースティンにまたがったひとつのチームとして動いていたんだ。開発が進むに連れて規模がどんどん大きくなっていったんだけど、その終盤には一方のチームがあと30人ぐらい人を加えれば「次」に取り掛かる準備ができていた。そして、もうひとつはもう少し時間がかかったけど『Prey』のチームへとなっていったんだ。
――本作でエミリーはコルヴォと同様に超常的な能力を使えるわけですが、ということは彼女はコルヴォと同様に“ヴォイド”に行ってアウトサイダーに会うんでしょうか?
ハーヴェイ イエス。ゲームの中でエミリーとコルヴォはヴォイドに行って、アウトサイダーが能力を提供しようと言う。ただし今回は事情が違って、アウトサイダーの申し出に「ノー」と言うこともできるんだ。すると、ゲームを通じて能力ナシでプレイすることになる。僕らはこれを「ノーパワーズモード」と呼んでいる。まとめると、コルヴォの能力はある、エミリーの能力もあって両者は異なるプレイを提供する。しかしさらに、パワーなしという選択肢もあるのさ。
――それはかなりチャレンジングですよね。プレイヤースキルとガジェットでなんとかしなきゃいけない。
ハーヴェイ 全部がガラッと変わるよね。角から先の警備を覗き見して立ちまわったり、高所から落下して倒すことはできても、ブリンク(任意の場所にワープする移動技)、ポゼッション(他人や動物に憑依する技)、ラットスウォーム(凶悪なネズミの群れを放つ技)、そういった便利な技はない。まずはステルスの知恵が必要だ。でもプレイヤーがこういうのを気に入るんじゃないかと思っていたんだ。
――「基本的な攻略の前提となる能力がない」っていうのは、やり込みとしていいですよね。
ハーヴェイ そう、だから発表したときの反応もすごく良かったよ。ちょっと皮肉だよね、僕らは能力を使ったプレイを生み出すのに全精力をかけているけど、それを「今度はナシにもできる!」と、すべて取り去るオプションを用意すると盛り上がる。でもまぁ、そういうものだよね。
――コルヴォは確か本作では54歳になって、肉体的にも精神的にも(前作の)39歳の彼とは同じではないはずですよね。そのあたりはゲームに影響しますか?
ハーヴェイ 彼は確かに年をとったけども、そういう(老いをゲームプレイ面でも表現するような)アプローチはしていないんだ。アウトサイダーによって彼の肉体はフレッシュで健康的に保たれているしね。
なったが、アウトサイダーからもたらされた超常能力で復讐を果たす。本作ではエミリーを守るべく、ふたたび戦いへ身を投じる。左は、エミリー・カルドウィン。帝国女王の娘で、次期王位継承者だったが、謎の侵略者により王位を追われてしまう。崩壊へ向かう帝国を取り戻すべく、コルヴォと同様の超常能力を手に、暗殺者として立ちあがる。
――『ディスオナード』の世界では海は重要な存在(※編注:クジラのような大型の海の生物が動力源などに活用されているという設定がある)ですが、実際のゲームプレイではあまり活用されてきませんでした。今回は海でのミッションはありますか?
ハーヴェイ 水の上ということであれば“Dreadful Wale”という船が基地代わりに登場する。ここでキャラクターと話したりもするし、クロックワークソルジャーを倒したらヤツの頭が飾られるといったように、ミッションが進むに連れて細かいところがアップグレードもされていく。でも海のミッションという形ではないな。なんで?
――もしクジラにポゼッションできたり、船から船へブリンクしなきゃいけないようなシーンがあったらいいなぁと思ったんですよ。
ハーヴェイ それは確かにおもしろそうだね。でも実際は、いま話したとおりだ。
――新しいダンウォールがゲームの冒頭と終盤で出てくるということですが、これはフルスクラッチで作ったんですか? それとも『ディスオナード HD』バージョンの素材からアップデートしたものなんでしょうか。
ハーヴェイ 初代『ディスオナード』のダンウォールをリファレンスモデルとして参照しながら、スクラッチで作っている。モデリングツールの“Maya”でオリジナルのデータを見ながら作りこんでいって、最後にオリジナルを消すという感じだ。便利なようにいくらか変更点も加えつつ、もちろんより大きく、さらに高解像度な素材になっていて、ふたたびダンウォールを訪れたときのノスタルジアも感じられるはずだ。
――コルヴォで遊んだミッションをエミリーでクイックリプレイするようなことはできませんか?
ハーヴェイ それはできない。ゲームの序盤でコルヴォでプレイするかエミリーでプレイするかを選んだら、あとは選んだ側でプレイすることになる。その例(コルヴォで遊んだからエミリーでミッションをリプレイする)だと、エミリーでニューゲームをふたたび選ぶことになるね。
――Twitterで質問に対して、“ダウド(※編注:前作の事件の元凶であり、DLCの主人公でもある)は生きているはずだ”と回答していましたね。
ハーヴェイ 確かに。僕らはコルヴォがダウドを生かす選択をしたと考えている。
――前作のセーブデータを持っていることによってゲームに影響が出るようなことはありますか?
ハーヴェイ それは検討したんだけれど、(現世代機版はあるものの)Xbox 360からXbox One、PS3からPS4という世代間の移行を挟んでいるので、あまりいい方法がなかったから採用しないことにした。
本作を表現する言葉は「スーパーナチュラルアサシン・イン・スチームパンクシティ」
――では、『ディスオナード』という作品の続編として、本作の企画書の最初の行に記すような、もっとも重要なことは何でしたか?
ハーヴェイ 自分たちがやってきたことを振り返るようにしているんだけど、オリジナルの『ディスオナード』自体、さまざまな要素が入り組んだ深みのあるゲームだったから、短く要約するのが難しかった。僕らは「スーパーナチュラルアサシン・イン・スチームパンクシティ(スチームパンク都市の超常的暗殺者)」というフレーズを使っている。これ以上短くすると『アサシン クリード』との区別がつかなくなっちゃうし、“超能力”を取り出しても違うし、“スチームパンク都市”だけ取り出しても、ほかの「現実とは異なる動力源で発展した都市のゲーム」とは違う。これらが全部お互いに影響しあったものこそが『ディスオナード』だ。だから、今回も本作が何であるかを言い表すいちばん最初の言葉は「スーパーナチュラルアサシン・イン・スチームパンクシティ」なんだ。
――DLCであったようなチャレンジモードはありますか?
ハーヴェイ 『Dunwall City Trials』(※編註:前作の第1弾DLC。ステルス、パズルやレースなどをテーマにした10種類のチャレンジを収録)のような? そういうモードは今回用意していないけれど、プレイのバリエーションはすごく幅広いものになっていると思う。エミリーでもコルヴォでもプレイできて、それぞれ異なる能力を持っているし、1回のプレイスルーですべての能力を手に入れるのは無理だ。エミリーで彼女の能力をすべて手に入れるなら3回はプレイが必要で、コルヴォでも2回か3回はプレイしなければいけないだろう。さらにハイカオスなプレイで行くか、ローカオスなプレイで行くか(アグレッシブに殺しまくるプレイか、ステルスメインで不殺寄りで行くか)という選択もある。そして、ノーパワーズモードについてもさっき触れたよね。ひとつのミッションの中ですらも、いくつものの選択肢や攻略ルートがある。これだけあれば、あらゆる人にとってチャレンジがそこにあると考えているよ。
――今回、街に蔓延する新たな生物としてブラッドフライが出てきますが、“害虫駆除”はどうすればいいですか?
ハーヴェイ ヤツらは火に弱いんだ。クロスボウの矢に火を点けて巣に向けて撃って巣が燃えると、近くのブラッドフライにも燃え移る。ウィスキーボトルなんかを利用するのもいい。ウィンドブラストやグレネードで吹っ飛ばす手もある。一方で駆除というよりも単に邪魔でやり過ごしたいというだけなら、“QuakeCon”のデモ映像みたいに、ポゼッションでブラッドフライに乗り移って先に行ってしまうということもできる。
――デモではブラッドフライとして巣を通りすぎてからドアの手前でコルヴォに戻っていましたが、ドアの隙間をすり抜けることは?
ハーヴェイ 鍵穴からドアの向こうを覗くことはできるけど、すり抜けまではできないね。ついでなのでアビリティのアップグレードについて話しておきたい。初代『ディスオナード』に出てきたコルヴォの能力はすべて出てくるけれど、ツリー形式でアップグレードの幅が増えている。前作でもアップグレードはできたけど、たとえばラットスウォームだと、まず能力が手に入って、後は処理速度が上がるという感じだった。今回はそれだけじゃなくて、ふたつの群れを放ったり、2倍の大きさの群れにしたり、あるいはコルヴォに付いて来させるようにする強化もある。これらの強化を組み合わせることも可能だ。だからベースは同じでも、おなじみの能力の新たな活用法が見つかるだろう。
一方でエミリーの能力はすべて新しいし、いま話したようなツリー形式のアップグレードもある。カギ穴まわりでもいろいろできて、カギを探さなくてもよくなったり、ポゼッション以外にもネズミの通り道を使う手があったり……(ここでPR氏からタイムオーバーが告げられる)まぁとにかく、アップグレードによってもプレイが違ってくる。これは楽しいよ!