これまでとは趣が異なるミステリアスな展開
『DARK SOULS III(ダークソウルIII)』の追加DLC第1弾『ASHES OF ARIANDEL(アッシュズ オブ アリアンデル)』が、2016年10月25日にいよいよ配信を迎える。そこで今回は、そのプレイインプレッションをひと足先にお届けするのだが、ネタバレを極力避けたいので、内容についての具体的なことは書かない。とは言っても、プレイ開始直後の導入部のみ(開始後1分程度)は、本DLCの説明のために必要なので書いてしまうので、ご注意を。最初の篝火から先は、丸ごとプレイヤーみずからで楽しんでほしい。
『ダークソウル』シリーズのDLCと言えば、第1作目の『ダークソウル』で配信された『ARTORIAS OF THE ABYSS(アルトリウス オブ ジ アビス)』、『ダークソウルII』のときに配信された『Episode 1:深い底の王の冠 -CROWN OF SUNKEN KING-』、『Episode 2:鉄の古王の冠 -CROWN OF THE OLD IRON KING-』、『Episode 3:白王の冠 -CROWN OF THE ivory KING-』の4タイトルとなっている。第1作目の物語は、本編中に登場する人物“ウーラシールの宵闇”に関するもので、彼女が住んでいた過去の都市“ウーラシール”へ行き、世界の危機を(結果的に)救うというもの。ウーラシールはかつて栄えていたが、現在はすでに滅亡している都市である。プレイヤーは、深淵の侵食によって都市が滅亡目前になっている過去の時代に運ばれることで、この窮地を救うのだ。第2作目は、本編の重要人物であるヴァンクラッド王から示唆される、失われた“王冠”を集める物語。王冠は3つあり、DLCの配信を3回に分けて“深い底の王の冠”、“鉄の古王の冠”、“白王の冠”を収集する形で構成されている。さらに、それぞれで異なる世界の謎や敵に挑むという楽しみが用意されていた。前置きが少々長くなったが、シリーズ第3作目となる『ダークソウルIII』のDLC第1弾は、これまでとはおもむきが大きく異なっているのが特徴なのだ。
1作目は深淵からウーラシールを救う、2作目は王冠を集めると、これまでのDLCはいずれも主となる目的があらかじめハッキリと提示されていた。しかし、今回はそのような大きな目的が最初に提示されない。筆者もそうだったが、これまでのシリーズを経験してきたベテランでも実際にプレイを初めてみると、これから何が起こるのかわからない、ドキドキするような不安や期待に開幕直後から包まれるだろう。過去のDLCにはなかった新鮮な感覚だ。ここで体験できるのは、“目標の〇〇に向かっていく。途中で起こる××の事件も体験して、最深部にあるであろう目的にたどりつく”という流れるような冒険ではない。“〇〇にたどり着くかもしれない、いや、着かないかもしれない。それでも、そこで何が起こるのかは見届けなくては……”と思わされざるを得ない、手探りで一歩ずつ謎に迫っていく冒険なのだ。
ひとつの依頼から始まる物語
ここからは本DLCの導入を紹介する。入り口は、深みの聖堂にある“清拭の小教会”の篝火付近。その側にいるNPC(ノンプレイヤー・キャラクター)から、ある依頼をされることから始まる。目的の提示がないと書いたが、じつは、まったくないわけではなく、漠然とした提示だけはある。ただ、それがものすごく“か細い”。「ある女性に火を見せて欲しい」という内容で、どこの女性に、どんな形の火を、どこで、どうやって見せるのか、まったく説明されないままなのである。その直後に半ば強制的に、舞台であろう地に転送されてしまうことに……。その地の名前は、なんと“アリアンデル絵画世界”(!)。“絵画世界”と言えば、シリーズのファンなら誰しも1作目に登場した“エレーミアス絵画世界”を思い出すだろう。1作目のアノール・ロンドに飾られた大きな絵画に触れることで行ける、言わば本編から隔離された隠された世界だ。「ならば、ここはエレミーアスのその後の世界なのか?」という疑問が浮かんでくるのは当然。たどり着いた地点は、山林の端にある“雪原”という篝火で、女性を探すのが先か、火を探すのが先かはわからないが、ここを起点に歩みを進めることになる。このとき、“エレーミアス絵画世界”を知るものならば、かの世界の入り口にあった印象的な“吊り橋”がここにはないことも気になるだろう。「吊り橋があるなら、どこにあるのか」という探索欲が湧いてきて、自分の中に新たな目的が芽生える(橋はないかも知れないけれど)。雪の降り続く山林の奥へ進んだところで新たな展開を迎え、そこで情報を得るころには、この世界への好奇心で頭の中がいっぱいになっている……という、見事な“運び”となっている。
手を変え品を変え、異なるシチュエーションを提示してプレイヤーを夢中にさせていく誘導が、毎度のことながら本当にうまい。まんまと作り手の術中にハマる快感を味わう一方で、複雑な構造を持つ山林を、これもまた手を変え品を変えて迫る強敵と戦いつつ、みずから困難に身を投じていくのだ。先へ進むための苦労よりも、先を見たい好奇心が勝つ。これこそ『ダークソウル』シリーズの醍醐味というところを、思う存分に味あわせてもらった。「〇〇を倒すぞ!」と拳を振り上げて挑むようなテイストとは異なり(それを期待すると、ちょっと肩すかしを食うかもしれない)、探索を一歩ずつジックリと楽しんでいくスタイル。筆者は、そんなタイプの話も大好物である。
雪原、山林、集落……そこに潜む敵
探索するエリアは、過去の“絵画世界”の伝統(?)に沿っているのか、雪原、山林、集落、教会、そして遺跡など、いずれも雪と氷に包まれている場所になる。風雪で視界が不明瞭になって敵の発見が難しかったり、高低差がある地形に迷ったりと、なかなかに歯応えのある探索が楽しめる。それに重ねて、敵のほぼすべてがこの世界で初めて出会うものなので、初見では敵の戦術も含めて苦戦するかもしれない。ボスも手強い。しかし、これまでの経験を活かせれば、探索も、また戦いにおいても突破口が開けるだろう。経験を積んでいれば、意外なものが役に立つこともわかるかも。難度的には、本編終盤のロスリック城を攻略できる程度の力がないときびしいと思われるので、そこまで進めてから挑むといいだろう。また、物語での興味や好奇心が、先を進める意欲につながる本作だが、その一方で、入手できるアイテムなども探索意欲につながる大切な事柄。もちろん、ここでしか手に入らない武器やアイテムなどが多く存在するので、それらを集めるだけでもプレイする価値は十分にある。マップ上に隠されたものをどうやって入手するのか、四苦八苦するのもまた一興(なかなか巧妙なのだ)。
さて、ひと通りプレイを終えて、本DLCをクリアーするという一応の目的は達成した。過去作を知る者には、ちょっとうれしい出会い(?)もあった。だが、好奇心がまだ収まらず、この世界をその後も幾度となく訪れている。DLCの第2弾が2017年初頭の配信で予定されているが、大きく膨れあがった好奇心を回収してくれるのだろうか……。入手できた多くの武器などを鍛えつつ、使い勝手を確かめたりしながら、そんなことを考えるプレイヤーも多いかもしれない。今回はプレイできていないオンラインでの侵入や協力は、高低差のある複雑な形のこのエリアなら、いろいろとおもしろくなりそうだ。もちろん、このDLCから実装される新しい対人戦要素“不死闘技”も加わることで、マルチプレイは新たな局面を迎えるはずだ。スキルが試される熾烈な対人戦が楽しめるというのだから、期待しないわけにはいかない。多くのプレイヤーが、この地に挑んで活気づくことを願いつつ、配信日からプライベートのデータを使ってやり込もうとウズウズしている。