『FFXIV』のコンテンツはこうやって作られる! ラスベガスファンフェスティバルのステージイベント“開発パネル”リポート

アメリカ・ラスベガスにて、2016年10月14日から10月15日(現地時間)にかけて開催された、『ファイナルファンタジーXIV』の大規模ファンフェスティバル“FINAL FANTASY XIV FAN FESTIVAL 2016 Las Vegas”。初日に行われたステージイベント“開発パネル”の模様をお届けする。

●『FFXIV』の大ヒットコンテンツの制作秘話

 アメリカ・ラスベガスにて、2016年10月14日から10月15日(現地時間)にかけて開催された、『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)の大規模ファンフェスティバル“FINAL FANTASY XIV FAN FESTIVAL 2016 Las Vegas”。1日目のステージイベントとして行われた“開発パネル”の模様をお届けする。

 このステージイベントでは、吉田直樹プロデューサー兼ディレクターのほか、『FFXIV』のモンスター班(コンテンツ内のモンスターバトルを制作するチーム)に所属するエネミーデザイナー・中川誠貴氏が登壇。『FFXIV』のボスバトルがいかにして作られるのかなど、開発の内側が語られた。

▲大勢の観客を前にして、やや緊張した様子の中川誠貴氏(右から2番目)。

▲もともと『旧FFXIV』プレイヤーだった中川氏。フォーラムの吉田氏の書き込みを見て、それをきっかけにスクウェア・エニックスに入社。『旧FFXIV』ではアイテムの性能などを調整していたが、『新生FFXIV』からはモンスター班に異動。

▲これまでに中川氏が制作したコンテンツの一覧。これ以外にも、インスタンスダンジョンのボスバトルや、クエストバトルなど、数多くのコンテンツを手掛けている。

▲こちらがモンスター班の仕事のおもな流れ。企画の考案から完成までさまざまなステップが待っている。

 今回は、パッチ3.3で追加された24人レイド“禁忌都市マハ”のボスバトルのひとつである“オズマ”とのバトルを例として挙げ、どのように企画・開発が進められていたのかが解説された。

▲まず、世界設定やバトルコンセプトを考えることから企画がスタート。このふたつはバトルのおもしろさの根幹となる部分なので、時間をかけてしっかりとおもしろいアイディアを捻出。世界設定に関しては、世界設定班から提示される場合と、モンスター班から提案する2パターンがあるという。

 中川氏は、以下の3つのルールを設けてボス企画を作っている。これは、ボスバトル企画のクオリティーを一定以上に保つための、中川氏ならではのものだという。

【中川氏がボス企画を作る際のルール】

◆60秒ルール
 世界設定やバトルコンセプトをなにも知らないスタッフに60秒で説明して、興味を抱かれなかったらすべてのアイディアをボツにする。説明に60秒以上かかる場合は、大抵そのコンセプトが複雑で、おもしろいコンテンツを作れないことが多いのだとか。

◆ユニークな要素
 プレイヤーにつねに驚きや感動を味わってほしいと考える中川氏。そのために、過去のボスバトルにはないユニークな要素を取り入れるようにしているという。

▲オズマ戦では、“形態変化”や“ブラックホール”をユニークな要素として取り入れた。

▲蛮神シヴァとのバトルでは、3つの武器を持ち替えて戦う“ウェポンスワップ”や、床が凍ってプレイヤーが滑るという、これまでにはない要素が採用されている。

▲蛮神リヴァイアサン戦は、バトルフィールドが傾くというダイナミックな要素が特徴。じつは、傾いているのは地面ではなく、海と空のほう。制作段階でフィールドを傾ける仕様の実現が困難だったため、さまざまな開発メンバーの知恵を借り、背景を傾けるというアイデアが生まれたのだとか。

▲女神ソフィアにも同様にフィールドが傾くというギミックがあるが、これは企画当初から存在していたわけではなく、メインとなるギミックは“魔法のコピー”だった。しかし、これは前述の60秒ルールでは説明しきれなかったため、代わりとなるメインコンセプトを考えた結果、天秤のアイデアにたどり着いたという。

◆過去のコンテンツよりもおもしろいものを作る
 最新のパッチをリリースするたびに最高のコンテンツを作り、そのつぎのパッチではさらにおもしろいものを作ることが、プレイを継続してもらうために必要。

 自身に課した上記の3つのルールを守りつつ、企画のベースが固まったら、詳細を煮詰めていく作業に。ようやくここから実装されるコンテンツの骨組みが見えてくる。

▲オズマ戦の場合は、3つの形態ごとにどのようなアクションを用意するか、プレイヤーをオズマ内部にどのような方法で突入させるかなどが考えられた。また、この時点で、ほかのボスバトルよりも多くのリソースコストがかかることが予測できていたため、デザイナーへの相談も同時に進めたという。

▲これが形態変化のサンプルモーション。当初は四角錐だったが、3方向にビームが放たれるということで、三角錐へと変更された。

▲モンスター班は、図を使ったバトルフィールドの企画書も用意。これを用い、レベル班にやりたいことを伝え、マハの世界設定を加味してBG(Back Ground。背景)班への発注が行われる。

▲開発当初は、現在実装済みのものとは大きく異なっており、吉田氏のチェックで「あまりにも雰囲気が暗く、ヴォイドアークのイメージに寄りすぎている」という指摘を受けて修正を行い、現在のものに仕上がったという。

▲オズマ内部も同様に、企画書からラフ画まで制作されている。アトモスと戦う場所が高いのは、隕石の落下(時間切れのギミック)をプレイヤー目線で見やすくしたためだとか。

▲オズマ内部のフィールドにも試行錯誤が。当初はオズマにブラックホールで飲みこまれた後、タンク1名、DPS2名、ヒーラー1名がバラバラの位置に着地するという想定だったが、ブラックホール前にヒーラーが1名でも倒れていたら難度が著しく上昇するためボツとなった。

 と、ここで中川氏が「もしオズマの零式難度があればこの当初の内部フィールドのアイデアを……」と発言したところ、会場から歓声が。さらに、畳み掛けるように、このプレゼンテーションに合わせて制作したオズマの新形態の動画が流された。これを受けて吉田氏が「本当に零式難度ほしいの?」と会場に問いかけると、先ほど以上の歓声が巻き起こった。これに苦笑しつつも、「マハ全体ではなくオズマ専用のバトルになるけど、それでもいい? じゃあ余裕があったらやろうか。その代わり、難しすぎても文句は言わないでね(笑)」と吉田氏がコメント。これは実装される日も近い!?

▲これがオズマの新たな形態の動画。この日のためだけに用意された形態のようだが、今後実装されるであろう(?)オズマ戦の零式難度でも活用されそうだ。

 そして再び話題は本題へ。上記のようなモーションやエフェクト、背景がひと通りそろった段階で、実装作業へと進行する。

▲実装作業は、長期間に渡り、担当プログラマーと担当プランナーのマンツーマンで進められる。ここで企画段階で想像できていなかったことを見つけ、仕様を調整。動作チェックと仕様調整を行った後は、QA(Quality Assurance。品質保証)班に検証を依頼し、報告されたバグを修正しつつ、完成へと近づけていく。

▲オズマ戦では、この工程でゴーレムが空中を浮遊するというバグが発覚。地上を歩くように調整しようとしたが、実現が難しく、空中を浮遊しながら移動するタイプのゴーレムへとモデルを変更した。

▲ブラックホールで吸い込まれる際のワープ先のルールにも調整が。すでにパーティ内のヒーラーが2名戦闘不能状態の場合、別のアライアンスのヒーラーを別アライアンスのワープ地点でスタートさせる仕様が追加された。

 実装と調整の作業が終わると、いよいよテストプレイへと突入。24人でのテストプレイは、約3週間に渡って行われるという。

▲テストプレイと調整をくり返し、クオリティーを高めていく。ここでは、ボスのアクションのダメージ値や、敵のHPの値など、バトルバランスに関わる部分を調整していく。

▲24人のテストプレイは、各セクションから最低ひとりずつ参加してもらうようにしている。これは、それぞれのセクションでしかわからない、専門的なフィードバックがもらえるからだ。また、実装後を想定し、熟練者だけではなく、ミッドコアのメンバーや、ゲームに不慣れなメンバーを混ぜてテストを行っている。

▲バトル班とモンスター班のメンバーは、全員このテストに参加するようにして、その日のテストプレイが終わったら感じたことを話しながら調整内容を決める。

▲オズマ戦だけでも、これだけの調整内容が。これ以上にもまだまだ存在するとか。

▲オズマ戦で調整した内容も、調整意図とともにピックアップして紹介された。

 吉田氏は、「テストプレイ中は、参加メンバーがとにかく加速度爆弾に苦しめられた。この爆弾が円状範囲攻撃のときは、爆弾が付与されたメンバーから逃げようとしてそのほかのメンバーが落ちるという二次災害も起こった」と、当時の思い出を語った。これに対し、「零式では、加速度爆弾を範囲攻撃に戻しましょう!」と中川氏。これはますますオズマバトルの零式難度に期待が高まる!

 以上で中川氏による開発パネルが終了。ひとつのコンテンツを作るたいへんさを知るとともに、いずれ実装されるであろうオズマ戦の零式難度に期待が高まる内容だった。「これまでよりもおもしろいものを」と、求めるクオリティーがますます高まっていくわけだが、開発チームにはぜひともがんばってほしい!