唯一無二の『NieR』音楽の秘密に(それなりに)迫る!

 スクウェア・エニックスから2017年初頭に発売予定のプレイステーション4用ソフト『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』。その音楽制作を担当するのは、前作に引き続き、岡部啓一氏率いるMONACA。今回は、そのMONACA(モナカ)のスタジオに潜入。『NieR:Automata』の音楽が生み出された現場を公開するとともに、楽曲制作を担当した岡部啓一氏と帆足圭吾氏、そして齊藤陽介プロデューサーへのインタビューをお届けしよう。

【MONACAとは】
ナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)に所属していた岡部啓一氏によって、2004年に設立された音楽制作を行うクリエイティブスタジオ。テレビゲームだけではなく、テレビアニメ(『アイドルマスター』、『アイカツ!』、『Wake Up, Girls!』)やテレビドラマ(『真夜中のパン屋さん』ほか)などのBGMを手掛けている。

『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』の音楽はこうして作られる! MONACAのスタジオに潜入、2バージョンのテーマ曲も公開_13
『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』の音楽はこうして作られる! MONACAのスタジオに潜入、2バージョンのテーマ曲も公開_01
▲スタジオに飾られていた、MONACAが手掛けたおもな作品のパッケージ。人気作品ばかり! 売れっ子集団です。
『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』の音楽はこうして作られる! MONACAのスタジオに潜入、2バージョンのテーマ曲も公開_14
▲展示されたトロフィーに混じって、ファンから贈られたエミールが……。(オフィシャル写真)

[関連記事]
『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』を開発するプラチナゲームズに潜入! 開発真っ只中の現場をリポート

MONACAスタジオで生み出される『NieR:Automata』の音楽

 『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』の楽曲は、いまや主流になったDTM(デスクトップミュージックの略。PCで音楽を作成すること)で作られている。
 
 DTMでは、PCにインストールされたソフトを使って、ギターやマイクやキーボードなど外部ハードウェア機器で演奏した音のレコーディングやミックスダウン、マスタリング作業など、音楽制作のほぼすべてを行うことができる。

 MONACAでは、ストリングスなど一部の演奏の収録、ミックスダウンなど専門のエンジニアが必要とされる工程以外は、ほぼ社内のスタジオで制作を行っているという。

■作曲の手法

岡部 「(メロディーなどが)降りてくる」という作家さんはいっぱいいますが、私はぜんぜん降りてこないですね(笑)。

齊藤 降りてこないんですか?

岡部 降りてこないですねぇ。

齊藤 どちらかというと岡部さんが降りる派で、帆足くんのほうがスコアを書いては消し書いては消しというイメージだった。

帆足 全体像がいきなり降りてくることはありますね。

岡部 私は、メロディがというより、こういう組み合わせをしたらおもしろくなるかなというのはありますね。あとは音場感というか……。たとえば、すごく閉鎖的なところから開放的なところに出たときの気持ちが動く感じのイメージが、日常でパッと浮かぶことはありますね。ですので、それ以外のメロディの作成などは、基本的に鍵盤を使い、鼻歌を歌いながらトライアンドエラーをして詰めていくタイプですね。

『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』の音楽はこうして作られる! MONACAのスタジオに潜入、2バージョンのテーマ曲も公開_06
▲接続した MIDI入力デバイス(ここではキーボード)を使ってピアノパートのレコーディング。演奏データはPCで録音。録り込むソフトは『Logic Pro』を使用。
『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』の音楽はこうして作られる! MONACAのスタジオに潜入、2バージョンのテーマ曲も公開_07
▲歌もスタジオで収録可能(囲っているのは吸音パネル)。ちなみに、MONACAのスタッフのひとり、瀬尾祥太郎氏に撮影用に歌っていただきました(美声)。
『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』の音楽はこうして作られる! MONACAのスタジオに潜入、2バージョンのテーマ曲も公開_03
『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』の音楽はこうして作られる! MONACAのスタジオに潜入、2バージョンのテーマ曲も公開_02
▲各音源データがトラックに分けられ、それぞれの一部をカットしたり、伸ばしたりといった基本的な作業や、リバーブエコーなどのエフェクトを追加するなどの調整を行う。
『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』の音楽はこうして作られる! MONACAのスタジオに潜入、2バージョンのテーマ曲も公開_04
『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』の音楽はこうして作られる! MONACAのスタジオに潜入、2バージョンのテーマ曲も公開_05
▲楽曲のバランス取りは『Pro Tools』で行う。「最近は、ノートPCでも音楽編集ソフトがサクサク動くので、ちょっと前まではスタジオじゃないと作業できないことが、自宅や外出先などでもできるようなりましたね」(岡部氏)
『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』の音楽はこうして作られる! MONACAのスタジオに潜入、2バージョンのテーマ曲も公開_18
▲ストリングスは都内のスタジオにてレコーディング。本作ではストリングスは生音を使用している。(オフィシャル写真)
『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』の音楽はこうして作られる! MONACAのスタジオに潜入、2バージョンのテーマ曲も公開_19
▲奥のブースで弦楽クインテットが演奏している。(オフィシャル写真)
『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』の音楽はこうして作られる! MONACAのスタジオに潜入、2バージョンのテーマ曲も公開_16
▲レコーディングのディレクションをする岡部啓一氏と帆足圭吾氏。(オフィシャル写真)
『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』の音楽はこうして作られる! MONACAのスタジオに潜入、2バージョンのテーマ曲も公開_15
▲ストリングスレコーディング用のシーケンス。(オフィシャル写真)
『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』の音楽はこうして作られる! MONACAのスタジオに潜入、2バージョンのテーマ曲も公開_17
▲ヴァイオリンからコントラバスまで、帯域が広いためアナライザーも活用。(オフィシャル写真)
『NieR:Automata(ニーア オートマタ)』の音楽はこうして作られる! MONACAのスタジオに潜入、2バージョンのテーマ曲も公開_20
▲「廃墟都市」BGMの弦楽器用の譜面。(オフィシャル写真)