すべてが生まれ変わったOpen Airの世界

 2016年6月14日〜16日(現地時間)、アメリカ・ロサンゼルスにて世界最大のゲーム見本市、E3(エレクトロニック・エンターテインメント・エキスポ)2016が開催。任天堂は、NX(開発コード名)でも発売が予定されているWii U用ソフト『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』(英語名:『The Legend of Zelda: Breath of the Wild』)のプレゼンテーション&試遊会を行った。プレゼンテーションには、『ゼルダの伝説』シリーズのプロデューサー・青沼英二氏を始め、ローカライズスタッフなどが登壇。生まれ変わった『ゼルダの伝説』の何が新しくなったのか、その魅力を、映像とWii Uによる実機プレイを交えながら説明した。すでに公開されている映像からでも十分に伝わるだろうが、プレゼンテーション、そして実際にプレイすることでわかる、“当たり前を見直した”『ゼルダ』の新しさを感じてほしい。

 『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は、2014年のE3で発表されたタイトル。当初は、Wii U用ソフトとして発表されたが、二度の発売延期発表を経て、現在は2017年にWii U版とNX版を同時発売することを発表している。最大の特徴は、とにかく広大な世界。ゲーム業界では一般的なオープンワールドという呼称は使わず、本作で採用しているアートスタイルや、自由に壮大な世界を探索できるゲーム性、それに合わせて制作された音楽から“Open Air(オープンエアー)”という用語で説明が行われている。なお、グラフィックは、リアルでもセル画調のアニメーションでもない独特のグラフィックで、淡い色使いながら、ほかにない独特の世界を作り上げている。

 プレゼンテーションは、トレーラーからスタート。アクションなどの各要素については後述するとして、映像だけで見られた要素を、考察を交えて解説していく。映像には、さまざまなシチュエーションが登場。ヤシの木が生えた南国風の場所や、鉱山のような荒野、巨大なスタルキッド(『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』のスタルキータ?)のようなガイコツが歩く後ろ姿が見える山、そして、『ゼルダ』らしい草原が映し出される。ほかにも、オルディン大橋のような石橋、雪山、砂漠、高い塔など、広大な世界にはいろいろなシチュエーションがあるようだ。各地をリンクみずからの足で踏破するのはもちろん、高い山や塔を上ったり、野生の馬を捕まえて駆け回ったりということもできる様子。まさに、描かれる世界のすべてが舞台になるというわけだ。そして、ストーリー的に気になるのは、英語版ロゴに描かれた錆びたマスターソード。映像の最後には、森の中で錆びたまま台座に刺さっていたが、これは長いあいだ持ち主が現れていないことを示しているのか……?

 今回のサブタイトル『ブレス オブ ザ ワイルド』(Breath of The Wild)は、これまでのシリーズのサブタイトルとは異なる傾向のもの。このタイトルについて青沼氏は、「いままではアイテム名やキャラクター名などをサブタイトルにしていましたが、今回はこの世界が主役というイメージ」と語る。“Open Air(日本語では、野外などと訳されることが多い)”というキーワードで紹介される本作の世界には、前述のようにさまざまなシチュエーションがあるほか、ランドマークとなる塔や城が多く、各地には野生の動物が暮らしていたり、魔物たちが隊形を組んで徘徊していたりと、青沼氏が“主役”と称するだけの要素が入っている様子。

 本作の広大な世界は、「『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』の約12倍の広さと言われている」(青沼氏)。これだけの世界を用意した理由として、青沼氏は「ルートが決まっている世界にしたくなくて、100人がいたら100人が違う遊びかたができるようにしたかった」と理由を語る。そんな世界を構築した青沼氏は、本作を表すOpen Airというキーワードを考えたとき、すぐに音楽のことが浮かんだそうだ。「(本作は)決められたルートに従って遊ぶのではなく、自由に遊べる。そうなると、“コースを決めて、この曲を流して盛り上げよう”という仕組みが取れないんですよね。だから、この世界の自然の音に近く、融合する音楽にしないといけないと思って。トレーラーも、冒頭にピアノのシンプルな音が鳴りましたが、ああいった自然の環境音にピアノが融合したような音にしています。ピアノの音は、人の内面に語りかける響きを持っていると思うんです。プレイしているときは自然の環境音のように感じているけど、プレイヤーが目的を持って動いたときに、ピアノの音が響いたりと、音楽がプレイヤーの行動と偶然にマッチして驚くようなことがある。音楽もそんな自由度、Open Airになったということです」(青沼氏)。

 今回のアクションの特徴として、任意にジャンプができる、ジャンプボタン(Xボタン)が搭載された。『ゼルダの伝説』シリーズでは、地面の切れ間へ走っていくと、リンクが自然と跳ぶオートジャンプがデフォルトだったが(『ゼルダの伝説 夢をみる島』では、ジャンプができる“ロック鳥の羽根”というアイテムがあった)、任意にジャンプをし、崖や塔、遺跡の壁といった場所へしがみついてそのまま自在に上れるようになったのだ(ジャンプをせず地面からジリジリ上っていくことも可能)。また、ジャンプ中に攻撃ボタンを押せば、従来にもあったアタック攻撃に近い、ジャンプ攻撃もできる。

 崖や壁をどんどん上れると言っても無限ではなく、上っているあいだは『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』にもあった“がんばりゲージ”が消費される。がんばりゲージは、ダッシュ時などにも消費され、すべて使い果たすと、リンクが息切れを起こして、しばらく動きが遅くなってしまう。『スカイウォードソード』同様に、使い切る前に回復し、再びダッシュ&上るというのをくり返すのがいいだろう。ちなみに、がんばりゲージは試練の祠(詳細は後述)で手に入るアイテムで増加させられるという。映像などでは、通常の緑色のがんばりゲージに加え、横に黄色いゲージが表示されている場面もあった。

 小高い丘や大木などを上った場合、“パラセール”というアイテムを持っていれば、ゆっくりと飛んで落ちていくアクションが楽しめる(『ゼルダの伝説 風のタクト』のデクの葉、『スカイウォードソード』のパラショールのようなイメージ)。非常に高い場所で景色を一望しつつゆっくりと落下し、つぎの目標を決めるという醍醐味は、本作ならではだ。そんな魅力を青沼氏は、「高いところから自由に降りていくのも、Open Airにふさわしいと思っている」と語る。ちなみに、記者がプレイしたデータではパラセールを持っていなかったのだが、それでも高所から飛び降りた場合、ものすごい勢いで地面に叩きつけられ、そのままゲームオーバーとなった。そりゃそうだ。

 草を斬って、ハートやルピーを回収するのは『ゼルダの伝説』シリーズのおなじみの要素だが、今回は、広大な土地に無数に生えている草を斬ってもハートなどは出ないという。「今回、草を斬ってもハートなどは出てきません。では、どうやってライフを回復するのかと言うと、今回のリンクはものを食べる。狩りをしてそれを食べたり、狩りで手に入った材料を組み合わせて料理をするんです」(青沼氏)。フィールドにはいくつか焚き火などが点在しており、その側には石でできた鍋があって、それを使って手に入った材料を調理していくのだ(木の棒を使って火を移したり、木と鉱石で火を起こしたりもできる様子)。

 食材としては、木々に実っているリンゴなどの果物や、根もとに生えているキノコ、そして、フィールドを歩いているイノシシなどを倒したときに手に入る肉などが確認できた。メニュー画面のアイテム欄でそれらを選べば、そのまま食べることもできるし、HOLD(抱える)を選べば、食材を持ち運ぶこともできる。鍋の側で食材を持っていれば、鍋に投げ入れて、自然と調理がスタート。一定時間で自動的に調理が終わって、おいしそうな料理ができあがる。一方、焚き火などに食材を投げ入れれば直火のソテーもできる。とはいえ、こちらは食材に火が通ったかを自分で確認しなければいけないようだ。記者は、イノシシの肉がいい塩梅のステーキになるまで焼いたが、そのまま置いておけば焦げすぎた肉になってしまうのかもしれない。

 なお、食材単体を食べるよりは、調理したものを食べたほうが、ハートの回復量が増えるほか、がんばりゲージが回復するものなど、さまざまな効果が得られるようだ。さらに、「材料によっては料理じゃなく、薬ができることもあります。今回のリンクは、こうやってものを食べないと回復できないので、サバイバル生活のようなイメージがありますね」(青沼氏)と語る。

 リンクの武器と言えば、マスターソード。『ブレス オブ ザ ワイルド』の英語版ロゴにもマスターソードが描かれているが、今回のリンクはいろいろな武器を使って戦う。というのも、今回の武器はある程度使っていると壊れてしまうのだ。そのぶん、剣や槍、斧を拾ったり、敵を倒して敵の棍棒などの武器を奪ったりできる。武器ごとにモーションが違うのはもちろん、斧を使えば、大木を倒して谷を渡ったりといった、謎解きにも活用可能。なお、リンクは盾も装備でき、敵が攻撃する瞬間に盾で弾けば、敵をひるませて倒しやすくできる(『トワイライトプリンセス』や『スカイウォードソード』の盾アタックに近い)。

 広大な世界では、敵もただ徘徊をしているのではなく、生活をしているという。なかには、陣形を取って、指揮をするもの、見張りをするものと役割分担ができているものも。後ろで指揮を取っているようなリーダーを狙うもよし、こっそりと見張りを倒して各個撃破するという戦法も取れる。ちなみに、左アナログスティックを押し込むと、リンクは腰を落としたステルス状態になる。この状態で近づけば敵に気づかれにくいうえ、敵の背後から不意打ちで敵を倒すこともできるのだ。このときの参考になるのが、画面右下に表示されている、音量を波形表示したもの。大きな音を立てれば波形が大きく揺れるため、この波形の波をなるべく小さく留めて、不意打ちを食らわすのが理想になる。

 また、敵とのバトルは、武器だけでなく、地形を活かしたアイデアも重要になる。丘の上から大きな岩を落としてそのままぶつけたり、側にある蜂の巣を弓矢で落として蜂に敵を攻撃させたり、敵陣にある火薬樽に火の矢を放ち大爆発を起こしたりと、その場にあるものをうまく使って戦っていく遊びは、『ゼルダ』らしい閃きが活用できる場面でもあるだろう。

 プレゼン中のプレイでは、何気ない岩に近づいたところで、岩どうしが合体し、大きな敵になるバトルも見られた。非常に強く、一撃を食らっただけでやられてしまったのだが、青沼氏は「画面中央に敵の体力ゲージがありましたが、ものすごく長いですよね。この敵は、すごくタフだと思います。E3バージョンでも遊んでもらえますが、なかなか倒せないと思います」と語るように、非常に強力な敵があちこちに点在しているようだ。ちなみに、この岩の敵は背中にある異なる色の岩が弱点のようだった。とはいえ、そこを攻撃するだけで倒せそうな相手ではなかったが……。

 本作では、小型のタブレット端末のような“シーカースレート”を使って、マップ画面を表示できる。今回のE3バージョンのマップ画面には、宝箱の位置、敵の集落の位置、ランドマークなどが表示されている。また、マップの特定の場所を指定すれば、リンクは青い光になってワープが可能だ(いわゆるファストトラベル)。地名としては、ハイリア山、ハイリア川などが確認できたが……。そのほか、シーカースレートを使えば、遠くの景色をズームしたり(望遠鏡のような使いかた)、目的地に光の柱を立てて目印にしたりといったこともできる。

 マップに表示されるもののひとつに、“試練の祠”がある(英語版ではシュラインと呼んでいた)。「『ゼルダ』と言えばダンジョンですが、今回はいままでと違うものとして、試練の祠と呼んでいるものがあります。ダンジョンのようにフィールドから入っていくものですが、構造が違うもので、勇者を鍛える役割を持つ場所。試練の祠の中のパズルを解いてゴールまでたどり着くと、ハートやがんばりゲージを増加させることができます」(青沼氏)。今回のプレゼンで挑んだのは、“Bomb Trial”という名の試練の祠で、その名の通り、爆弾を活用した謎解きが多く用意されている場所だった。試練の祠自体はそこまで大きくないが、ゴールにたどり着くまでは複雑な構造になっており、ゴールにはミイラになっている人(名前は“ja baji”だった)からスピリットオーブが手渡されていた。青沼氏いわく、「シュラインというのは、100種類以上があって、攻略に順番はありません。解けなかった場合、外に出てもワープできるので、すぐにもう一度挑戦してもらえる。また、このシュラインとは別に、従来型のボスが存在するダンジョンも存在します。それも、いままでと違うんですが、その情報はもうちょっと先に取っておこうかなと」とのこと。

 ちなみに、爆弾を使った際、ゲージが表示されていた。おそらくそのゲージが回復するまで、つぎの爆弾が使えないという、『ゼルダの伝説 神々のトライフォース2』でアイテムを使う際に必要ながんばりゲージに近いものだと思われる。だが、弓矢の矢は従来のように数量で管理されていたため、アイテムによって数量管理なのか、ゲージ管理なのかが異なるようだ。

 なお、E3版は通常の試練の祠よりも見つけやすくなっているとのこと。ちなみに、プレゼンでは試練の祠の側に地中に埋まったガーディアンという敵がいて、リンクが近づくとレーザーを発射してきた。この敵は、2014年の本作のデビュートレーラーで、リンクを猛スピードで追いかけながらレーザーを発射してきたあいつ。どうやら試練の祠の側など、各地にいるようだ。

 プレゼンの最後に公開されたのは、『トワイライトプリンセス HD』のウルフリンクamiibo。このamiiboを使えば、本作と連動するということは発表されていたが、その連動内容は、『ブレス オブ ザ ワイルド』にウルフリンクamiiboをかざせば、ウルフリンクがゲーム内に登場するということだった。また、ウルフリンクのライフは、『トワイライトプリンセス HD』でamiiboに保存したデータと連動するという。「『ブレス オブ ザ ワイルド』はひとりで旅をしているが、これがあれば相棒が手に入ります。新作が出る前にウルフリンクを育てて挑んでほしいですね」(青沼氏)。なお、ウルフリンクがやられてしまうと、つぎに呼び出せるのは実時間で24時間後になるそうだ。

 また、『ブレス オブ ザ ワイルド』のamiiboも3種類発売される。そのうち2種類はリンクのもので、ひとつは弓矢を構えたもの、もうひとつはフードを被って馬に乗っている姿。「いままでもamiiboをたくさん作りましたが、いちばんハイディティールじゃないかなと、僕は思っています(笑)」(青沼氏)。また、最後のamiiboは、ガーディアンのamiibo。これは触手のような手足の部分が可動式になっているという、初の可動式amiiboだ。amiiboを紹介し、プレゼンは終了。最後に青沼氏は、「新しい『ゼルダ』が作れたなと思っているんですが、遊んで実感していただけないと意味がない。ぜひ体験してください」と結んだ。