ゲームはすでに日本語対応済みだが、インディーと翻訳の関係を注目

 戦時下を生きる市民のサバイバルを描いた、11 bit Studiosのシミュレーションゲーム『This War of Mine』。世界的に高い評価を受けている本作は、ローンチ以降徐々に対応言語を拡大し、現在は日本語を含む12言語ローカライズで配信されている。

 その対応をさらに拡大すべくスタジオが本日発表したのが、“Babel”システム。参加者が翻訳を行っていくWebサービスと、その成果物をダウンロードして導入できるゲーム側の機能から成り立つ、公式な形でコミュニティ翻訳を取り込む仕組みだ。まずはSteamでのPC版から対応アップデートが配信され、その他のプラットフォームについては対応可能かどうか調査中とのこと(ゲームはPC版以外に、iOS/Android版も存在する)。

 小規模チームによる作品や、本作のような独立系スタジオによる広義のインディーゲームが必然的に抱えるのが、ゲーム開発(と場合によっては運営)が精一杯で、ローカライズをやりたくてもその費用も人員もなかなか割けないこと。大作であったり運が良ければパブリッシャーやプラットフォーマーが費用を出してやってくれるかもしれないが、そううまく話が決まるタイトルばかりではない。

 そこで小回りがきくインディーだからこそ検討されるのが、各言語のプレイヤーコミュニティに属するファンが行う、いわゆる“有志翻訳”を取り込むこと。ローカライズのクオリティコントロールにはあまり関われないが、少なくともコスト問題は解決できる(どのみち対象言語がわかるスタッフがいることはほとんどなく、ざっくり言ってしまえば質を翻訳会社が保証するかコミュニティが保証するかの違いでしかない)。
 というわけで過去にもお伝えしたように、アドベンチャーゲーム『Gone Home』がファンに翻訳してもらうための仕組みを整備していたり、最近ではサバイバルアドベンチャーゲーム『The Long Dark』など、Steam Workshopを通じてModとしてファン翻訳を提供してもらうタイトルも存在する。

 Babelの場合は、その翻訳およびレビュー(チェック)を行う場すらもツールの一部として公式に提供することで、言語によるコミュニティの分断(まさにバベル的状況)を翻訳作業のレベルでも防ぎ、スタジオのもとで各言語が結束して作業を進められるという試みだ。まずはテストケースとしてベトナム語とハンガリー語のプロジェクトが行われ、作業完了に至っている。

 今回、本作の日本語対応自体はiOS版展開のタイミングで行われているため、直接的に日本のプレイヤーとは関係のないニュースかもしれないが、海外ゲームと翻訳の関係は、日本語圏のゲーマーとして付き合い続けなければならない課題のひとつ。今回のような取り組みが拡大していくのか注目したい。