2016年3月24日に発売された、プレイステーション Vita版『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ- X』(※PS4版は2016年秋発売予定)。本作は、新登場の“ライブクエストモード”を主軸に、これまでのシリーズ作とは異なる遊びを生み出している。新たな挑戦に踏み切った理由や、開発時の苦労やこだわりなどを、セガゲームスの開発スタッフに聞いた。

※本インタビューは、週刊ファミ通2016年4月7日号(2016年3月24日発売)に掲載された記事に、加筆・修正を施した完全版です。

林 誠司氏(文中では林)
本作のプロデューサー。SEGA feat. HATSUNE MIKU Project公式Twitterには884Pという名前で登場。シリーズの初期から開発に関わっている。
大坪鉄弥氏(文中では大坪)
つぼーんDの愛称で知られるディレクター。メガネに対するこだわりが人一倍強い。ミクたちにつけられるアクセサリの中で、とりわけメガネの種類が充実しているのは大坪氏のこだわりゆえ。
大須賀道明氏(文中では大須賀)
本作のメインプランナー。ゲームバランスの調整や、ユーザーインターフェースの設計などを担当。リズムゲームの腕前にはそこそこ自信アリとのことで、EXTREMEの譜面チェックなども行う。
松田一裕氏(文中では松田)
本作のテクニカルディレクター/メインプログラマー。『サクラ大戦』シリーズなどに携わってきた大ベテランで、セガのコンシューマー開発スタッフは、「困ったら松田さんに聞こう」と頼りにしているとか。
深澤 準氏(文中では深澤)
本作のリードデザイナー。デザイナー全員のスケジュールを管理している。本作のロゴのチェックも担当しており、今回は“音楽”や“エリア”など、ゲームを構成する要素をロゴに入れ込むことにこだわったとのこと。

●リズムゲームを遊ぶことに特化した新たなシリーズの立ち上げ

──『初音ミク -プロジェクト ディーヴァ- X』は、これまで展開されていた“エフ”シリーズとは違う方向性の作品になっていますが、新たな路線に挑戦した理由を教えてください。

 プレイステーション・ポータブルから始まったこのシリーズですが、PS Vitaというハード移行したときに、新しい形を生み出そうと“エフ”シリーズを始めました。それから『プロジェクト ディーヴァ f』、『プロジェクト ディーヴァ F』、『プロジェクト ディーヴァ F 2nd』と展開させていただいて、開発のノウハウを蓄積できました。では、ノウハウが貯まったところで、初音ミクさんを取り巻く環境も変わってきているなか、つぎにどういうゲームを作るのかと考えたときに、リズムゲームを楽しんでもらう方向性に特化させたいな、新しい遊びを作りたいな……と思い、“エフ”ではない、新しいシリーズを立ち上げることにしたんです。

──リズムゲームに特化する……という考えから、どのようにして、今回の“ライブ&プロデュース”というコンセプトが生まれたのですか?

大坪 最初に、コンセプトをどうするかという話し合いをしたときに、“ライブ”がキーワードとして挙がったんです。ミクさんのライブは世界各地に広まっていて、僕らがモーションのデータをライブ用に提供したり、逆に提供してもらったりと、シナジーが生まれていました。この『-プロジェクト ディーヴァ-』シリーズとライブの親和性の高さを活かそう! と、“ライブ&プロデュース”をコンセプトにして、そこからどんどん肉付けしていきました。

大須賀 これまでのリズムゲームは、パーフェクトというものが存在して、そこに向かっていくゲーム性だったと思うのですが、今回は、もっとライブ感と言いますか、自分がプロデュースした結果をゲームに反映させたい、と考えました。そこで、モジュールやアクセサリでセットアップする仕組みが生まれたんです。

大坪 これまでは、パーフェクトが最上で、そこから引き算する形でスコアが出ていたのですが、今回は積み上げ式にしたかったんです。

──新しい仕組みを導入するうえで、具体的には、どのような苦労がありましたか?

大須賀 基本のリズムゲームの部分は変えずに、ゲーム全体の流れをどう変えるか、ユーザーのプレイへのモチベーションをどう高めるか、がたいへんでした。リズムゲームの腕前は人によって差がありますので、その調整にも苦労しましたね。

大坪 単純に譜面だけをやさしめにすると、リズムゲームが苦手な人がクリアーしやすくなるものの、ベテランプレイヤーにとっては、ものすごく簡単な譜面になってしまいます。そこで、
セットアップという要素がリズムゲームにおいてカギになるように調整しました。上級者でも、セットアップをおろそかにしていると、目標のボルテージに達しないこともありますし、しっかり準備すれば、初心者でもクエストをクリアーできます。

――プログラムやグラフィックの面では、どんなところがたいへんでしたか?

松田 今回は“組み合わせの自由を楽しんでもらいたい”ということで、どのステージでも、すべての曲のライブが楽しめるようになっているのですが、それを実現するためのメモリの調整などに苦労しました。

深澤 ステージを取り変えても破綻がないように作るのは、なかなかたいへんでした。どのカメラワークから見ても問題ないように作る必要もありましたし。よくやりきったな、と(笑)。

松田 3曲連続でプレイするスペシャルライブも、メモリの調整がたいへんでした。ぜったいにシームレスにしたい、と私も思っていたので、プレイヤーに気づかれないようにつぎの曲のデータをいかに読み込むか、苦心しました。

大坪 スペシャルライブは、開発初期の段階では、3曲すべてを、通常のリズムゲーム尺のままでつないでいたんですよ。そうしたら、みんなから「長い」と大不評で(苦笑)。それでも、セットリストを自分で決めて遊ぶという仕様はどうしても実現したかったので、スペシャルライブ用の短い尺を作ることで対応しました。

──本作では、リズムゲームを“自分でプロデュースする”楽しみが増えたこともさることながら、従来のDIVAルームがなくなり、HOME画面でミクたちと交流できるようになったことも印象的でした。

大坪 今回は新たなチャレンジとして、ミクさんたちと会話するシーンが入っているのですが、それならHOMEという拠点を作って、そこでも会話が発生するようにしようと考えたんです。HOMEからクエストを遊びに行って、戻ってきたらミクさんたちが反応してくれる、という風に。

松田 HOMEからエリアセレクト、セットアップに移動するところは、シームレスにこだわりました。HOMEやエリアがつながっている世界がある、ということを表現したかったので。

――確かに、HOMEからエリアに移動するとき、ロードが入りませんよね。

大坪 毎回セットアップでロードが入るとストレスになってしまうので。スタッフにはかなりがんばってもらいました。

深澤 HOMEがあって、エリアに移動してクエストを選んで、リズムゲームをして……というメインシーケンスが決まるまでにも、かなり時間がかかりました。エリアやエレメントといった言葉を選ぶまでにも試行錯誤があって。最終的には、イメージした世界をビジュアルにするところまで、がんばれたなと思っています。