目の前で何度も殺されるアイドルの命を救え!

 2016年3月23日、東京・アジトオブスクラップ下北沢ナゾビルにて、『Ever17』や『極限脱出 9時間9人9の扉』、『極限脱出ADV 善人シボウデス』などを手掛けた、スパイク・チュンソフトのシナリオライター打越鋼太郎氏が企画・監修を務めるリアルタイムループゲーム“アイドルは100万回死ぬ~繰り返す死の時間から脱出せよ!!~”のデバッグ公演が開催された。本記事では、その模様をネタバレなしでお届する。記事の最後には、打越氏のコメントも掲載しているので、そちらも必見!

 まず、アジトオブスクラップとは、参加者自身が“本当の密室”に閉じ込められ、部屋の中を自由に探索し、謎を解きながら密室から脱出を目指すリアル脱出ゲームが体験できる専門店のこと。リアル脱出ゲームというと、大型会場などで期間限定開催されるものが多い中、アジトオブスクラップは常設店として営業しており、日本全国にある店舗でほぼ毎日リアル脱出ゲームを楽しめるのが特徴だ。そんな、アジトオブスクラップの新店舗が3月24日、下北沢にオープン。そして、そのこけら落とし公演として、打越鋼太郎氏が企画・監修を務める、リアルタイムループゲーム第一弾“アイドルは100万回死ぬ~繰り返す死の時間から脱出せよ!!~”が開催されている。

 打越氏は、前述の通り、『Ever17 -the out of infinity-』などのループ作品や、脱出を題材にした『極限脱出』シリーズを手掛けており、“リアル脱出ゲーム”דタイムリープ”がテーマの本公演の企画・監修にはうってつけの人物といえるだろう。

 公演のストーリーは以下の通り。

■ストーリー
あなたが閉じ込められたのは不思議な部屋。
その隣りの部屋でアイドルが殺された!!!
驚くあなた。
しかしさらに驚くべきことに、突然時間がさかのぼりアイドルの死ぬ前に戻された。
あの手この手でアイドルを救おうとするが、どうしてもアイドルは殺されてしまう。
この死の運命からは逃れられないのか?
残されたタイムループはあと10回。
限られた“時間ループ”の中で、あなたはアイドルを救う方法を見つけ出すことができるだろうか?

 本公演のポイントは、“リアル脱出ゲーム”ではなく、“リアルタイムリープゲーム”となっている点。このタイムリ―プ(ループ)部分には、大きな仕掛けがあり、脱出ゲーム初体験の人はもちろん、これまで数多く体験した人でも新鮮な気持ちで楽しめること間違いなし。また、詳細を書くとネタバレになるので深くは言及しないが、本公演では、単純に自身が部屋からの脱出を目指すのではなく、10回のループ以内にアイドルの死を回避することが目的となっていることも、注目すべき要素のひとつだ。

 ちなみに、このデバッグ公演に、ファミ通チームはリアル脱出ゲーム経験者3人、未経験者3人の計6人(※最大参加可能人数は10人)で挑戦。勢いよくスタートしたものの、この新感覚の謎解きに大苦戦……。後半に怒涛のラストスパートで巻き返すも、前半のロスが響き、あと一歩及ばず脱出失敗となってしまった。しかし、残念ながら脱出に失敗したとしても、最後にどうすれば正解だったのか解説があり、モヤモヤを抱えたまま帰るということはないのでご安心を。

「どうしたらアイドルを助けられるんだ……」――打越鋼太郎氏が企画・監修を務めるリアルタイムループゲーム“アイドルは100万回死ぬ”デバッグ公演リポート_01
▲目の前で何度も殺されてしまうアイドルを助けよう。

 リアルタイムループゲーム“アイドルは100万回死ぬ~繰り返す死の時間から脱出せよ!!~”は2016年3月24日~2016年5月31日の期間、アジトオブスクラップ下北沢ナゾビルにて開催中。チケットや休演日など詳細な情報は公式サイトをチェック。

「どうしたらアイドルを助けられるんだ……」――打越鋼太郎氏が企画・監修を務めるリアルタイムループゲーム“アイドルは100万回死ぬ”デバッグ公演リポート_03
「どうしたらアイドルを助けられるんだ……」――打越鋼太郎氏が企画・監修を務めるリアルタイムループゲーム“アイドルは100万回死ぬ”デバッグ公演リポート_02
▲アジトオブスクラップ 下北沢ナゾビル 外観写真

 そして、最後にファミ通チームの参加者のひとりであり、ファミ通でアドベンチャーゲームを多く担当する、世界三大三代川のインプレッションと、ファミ通チームが体験する様子を見学していた打越氏のコメントをお届けして、本記事の締めとさせていただく。

10回のループの中で味わう達成感と無力感と焦燥感

 タイムループものと聞いて、『シュタインズ・ゲート』や『魔法少女まどか☆マギカ』などを想像したあなた。合ってます。このゲームに参加したプレイヤーは、岡部倫太郎や暁美ほむらよろしく、悲劇(今回の場合、アイドルの死)を回避すべく、いろいろと試行錯誤し、歴史がどう変わるのかを、実際の目で身体で体験していくことになるのです。これまでの脱出ゲームと比べると、部屋の中にある謎解きなどは少なめ。その代わり、自分たちの行動が、謎解きが、歴史にどう影響するのかを確かめながらプレイを進める必要があるため、まさにトライ&エラーで進めていくことになるのです。

 って、冷静に書いてるけど、プレイヤーとしてはもうとにかく焦る! 自分たちの行動次第で、目の前にいるアイドルが死んでしまう! しかも、見る限り、怪しい仕掛けもちらほら見える。このままでは彼女が死んでしまう。わかっているけど、どうすれば未来を変えられるのか。変えた未来は正しいのか。この感覚を何万回とくり返した岡部やほむらちゃんの苦労が垣間見えます。

 でも、確実に進んでいる達成感と、「今回のループはムダにしてしまった」という無力感と、10回のループ制限が迫ってくる焦燥感の融合は、リアル脱出ゲームではなく、ループものならではの感覚。リアル脱出ゲーム好きはもちろん、アドベンチャーゲーム好きな人たちは、ぜひ挑戦してください! ちなみに僕らの敗因は、目の前のアイドルにはしゃぎすぎたこと……かなあ? あー、悔しい。記憶をなくして、もう一度挑戦したい!!!

Text by 世界三大三代川


 このゲーム、もともとはSCRAP代表の加藤さんの発案から始まったのですが、企画構成をしている段階では、純粋に“ロジカルな謎解き”を楽しんでもらおうと思ってぐりぐりと考えてきました。そして実際、ロジカルな謎解きが大好きな方には絶対にハマってもらえる自信があります!

 が、何度かデバッグプレイを拝見しているうちに、じつはもうひとつ、別の楽しみかたもあるんじゃないかと思い始めました。それはズバリ、アイドルを愛でる楽しみ……というよりは愉しみ! 喜びというよりは悦び!

 こんなことを言ったら加藤さんに怒られちゃうかもしれませんが(あるいは褒められちゃうかもしれませんが)、とにかくアイドルのめぐるちゃんがめちゃめちゃかわいいんですよー! 顔とか仕草とか反応とかたたずまいとか……。あとはもちろんダンスもね!

 てなわけで、SCRAPさんならではの洗練された謎解きに加えて、ハイクオリティーな”アイドルエンターテインメント”としても、十分成立しているんじゃないかと……。でれ〜っと鼻の下を伸ばして食い入るようにめぐるちゃんを見つめるファミ通チームの野郎ども……もとい殿方たちの姿を見て、なんとなくそんなことを思ったしだいです。いや、食い入るように見つめて正解なんですけどね。そういうゲームですから(笑)。

 最初はクールな感じでめぐるちゃんを眺めていたおっさんたち……もとい紳士たちでしたが、ループを経るごとにしだいにヒートアップ。目の前には触れることさえ叶わぬ美少女がひとり……。彼女の命を救うべく、一致団結して運命の流れに立ち向かっていくその姿は、さながらひとりの姫君を守らんとする中世の騎士団のように勇ましくも見え、ときに哀愁さえ感じさせ……。いや、ほんとに皆さん、ゲームの登場人物みたいにキャラが立っててすばらしかったです!

 って男性目線でばっかり語ってしまいましたが、もちろん女性だけでも、男女混合のチームでも絶対に楽しめます。あとは「暗号とか計算とか苦手ー」って人でも、今回のリアルループはそういう系の謎解きとはちょっと違うので全然大丈夫! 老若男女、万人が楽しめるインタラクティブリアルゲームです。知人、友人、恋人、家族、皆様お誘い合わせのうえ、ぜひともご参加ください。

企画・監修 打越鋼太郎