“あのころのRPG”への敬意と新たなるチャレンジ
スクウェア・エニックスより発売中の『いけにえと雪のセツナ』(プレイステーション4、プレイステーション Vita用ソフト)は、“とりもどそう。ボクたちのRPG”といったコンセプトのもと、開発スタジオTokyo RPG Factoryにより制作されたRPG。1990年代のRPGを彷彿とさせるシステムに加え、“せつなさ”を呼び起こすストーリーとピアノサウンドが話題を呼んでいる。本作の攻略情報はもちろん、開発インタビューや設定画などを収録した書籍『いけにえと雪のセツナ 導きと記憶の書』が2016年4月2日にファミ通より発売予定だ。そこで、本書に掲載されている開発インタビューのなかから、本作のプロデューサー内堀建吾氏および、ディレクターを務めた橋本厚志氏にお伺いした開発秘話を抜粋してお届けする。
──ゲームの発売を迎えて、いまはどんなお気持ちですか?
内堀建吾氏(以下、内堀) 発売前からずっとインターネット上の反応はチェックしていたのですが、賛否両論はあるものの、賛否のどちらも、僕自身そのとおりだと納得できるような意見が多かったので、狙い通りのゲームを作れたという自負はあります。
橋本厚志氏(以下、橋本) 無事発売を迎えられたという安心感もありますが、今回はいつも以上に発売後のユーザーさんの反応が怖かったですね。本作は、本当に自信のあるゲームが作れたと思っているので、それが受け入れられないとなると、クリエイターを廃業しなければいけないと思うほどの覚悟を持って作ったゲームでした。賛否両論いただいている中で、なかなかに厳しいことも言われていますが、それだけこのタイトルに期待してくださっているということなので、真摯に受け止めてつぎに活かしたいと思っています。
──プレイヤーの反響をご覧になってのお気持ちはいかがでしょうか?
橋本 90年代のRPGと言っても、皆さんそれぞれ期待している部分が違うということを感じました。すごく期待してくださっている方が多くて「『いけにえと雪のセツナ』は好みに合わなかったけど、プロジェクトは続けてほしい」、「ここはもっとこうしてほしかった」など、熱量の高いご意見をたくさんいただきました。こういった意見は、興味のないゲームに対しては言わないものかとも思いますので、すごくありがたいですし、参考になります。
内堀 やはり『クロノ・トリガー』が好きな方の反響が、発売前からすごかったですね。そういえば、プロモーションで『クロノ・トリガー』という単語を使うか使わないかという議論もありましたね。
──と言いますと?
内堀 プロモーションで『クロノ・トリガー』の名前を出すことは、パンドラの箱を開けるようなものだと思っていました。最初は『クロノ・トリガー』の名前を出さずに、いかにあの頃の雰囲気を感じ取ってもらうかを考えていましたが、やはりプレイステーション4のゲームを作るとなると、グラフィックに対してネガティブな意見が出てきてしまうと思いまして。「本作はあの頃のRPGがコンセプトなので、あえてこういうグラフィックにしています」といくら言ったところで、ハイエンドなゲームと比べると見劣りするのは事実。でも、実際にゲーム画面を初めて出したときに、「あの頃のRPGで、今の時代でも通用する」という確信がありました。
──『クロノ・トリガー』というキーワードを使うためにも、かなり議論がなされたんですね。
内堀 そうですね。我々の目指すゲームがどんなものなのか、このキーワードを出したことで、より明確になったと思います。その代わり、超名作を引き合いに出してしまったので、開発チームにはかなりのプレッシャーを与えてしまいましたが(笑)。
──そのほか、今だから話せるような開発中のエピソードなどがあれば、教えていただけますでしょうか。
橋本 いちばん大きかったのは、開発の中期になって、シナリオを大きく変更したことですね。シナリオを変えるということは、マップもテキストも、ゲームの長さも変わるしで、いままで作ってきたものをある程度捨てなければいけないということです。僕はもともとバトル寄りの開発をしていたので、シナリオがちょっとイマイチでも、バトルさえおもしろければ何とかなると思ったこともありました。ですが、開発スタッフと話していくうちに、全員が「このままでは、いいゲームにならない」と思うようになった瞬間がありました。スケジュール的にも非常に厳しい段階であったのにも関わらず、「ダメなら絶対に作り直さないとダメだ」と言える開発チームだったのは、僕のクリエイター人生では初めてのことでした。
──そんな出来事があったのですか。
橋本 普通でしたら考えられないですよね(笑)。ただ、シナリオの方向転換を決めたあとも文句ひとつ言わずに、ただおもしろいゲームを作るために取り組んでくれた開発スタッフには、本当に助けられました。
──そういった熱意を持った方々が作り上げたゲームだったんですね。
橋本 そうですね。こういったことは本来言うべきではないと思うのですが、このプロジェクトに関わるスタッフの、本作に注ぐ情熱を象徴するようなエピソードなので、あえて挙げさせていただきました。
以下全文は『いけにえと雪のセツナ 導きと記憶の書』でチェック!
【書籍情報】
書名:いけにえと雪のセツナ 導きと記憶の書
発売日:2016年4月2日
判型:B5判
価格:2484円[税込](本体2300円[税抜])
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