ゲームプレイ当時の思い出が蘇る、フルオーケストラアレンジアルバム

 2016年3月23日に発売された、『サガ』シリーズのオーケストラアレンジアルバム『サガオケ! The Orchestral SaGa -Legend of Music-』。豪華2枚組のこのアルバムには、『魔界塔士サ・ガ』から『ロマンシング サガ -ミンストレルソング-』まで、歴代シリーズ作の楽曲が詰め込まれている。

 意外にも、『サガ』シリーズのオーケストラアルバムが発売されるのは、今回が初のこと。迫力溢れるオーケストラで奏でられる名曲の数々の聴きどころやこだわりを、『サガオケ!』の監修を担当した伊藤賢治氏にお話をうかがった。

『サガ』シリーズ初のオーケストラアルバム『サガオケ!』の聴きどころは? 伊藤賢治氏インタビュー_02
『サガオケ! The Orchestral SaGa -Legend of Music-』
スクウェア・エニックス
2016年3月23日発売 4104円[税込]

『サガ』シリーズ初のオーケストラアルバム『サガオケ!』の聴きどころは? 伊藤賢治氏インタビュー_03

伊藤賢治氏
1990年にスクウェア(現スクウェア・エニックス)に入社し、『サ・ガ2 秘宝伝説』以降、数々の『サガ』シリーズの楽曲を手掛ける。2001年に独立し、現在はフリーの作曲家として活動中。近年は『勇者死す。』(日本一ソフトウェアより2016年2月25日発売)、『カルドセプト リボルト』(任天堂より2016年7月発売予定)などの楽曲を手掛ける。また、『サガ』シリーズ最新作である『サガ スカーレット グレイス』(2016年発売予定)の作曲を担当。

全曲聴くとドッシリ感があると思います

――シリーズ初のオーケストラアルバムとなる『サガオケ!』ですが、このCDを作ることになったきっかけを教えてください。
伊藤 スクウェア・エニックスさんからご提案いただいたのがきっかけですね。そのときは細かいことはまだ決まっていなかったのですが、話が進むうちに、シリーズの全作品の曲を収録することになって。植松さん(植松伸夫氏)や笹井さん(笹井隆司氏)、浜渦くん(浜渦正志氏)の曲もあるけど、誰が指揮を執るのか? と思ったら、まさかの自分で。シリーズファンを裏切ってはいけない、と気を引き締めて担当させていただきました。

――Disc1の楽曲はプラハで録音されたとのことですが、プラハのオーケストラを選んだ理由とは?
伊藤 自分が作る『サガ』の音は、ハリウッド系ではないと言いますか、派手系の音ではないと思うんですよ。どちらかと言うと、ストリングスをきれいに響かせたかったので、ヨーロッパ系のオーケストラがいいなと思い、プラハのオーケストラにお願いしました。

――プラハでの収録はいかがでしたか?
伊藤 2泊3日で収録したのですが、スケジュールがかなりキツくて、「本当に全部収録できるのか?」と、胃が痛くなるほどでした(笑)。それでも、「完成させなければ!」と、みんなで真剣に取り組みました。いろいろな想いが詰まった、充実した内容になったと思います。全曲聴くと、ドッシリ感があるんじゃないかと思いますね。

――『サガオケ!』は、『魔界塔士サ・ガ』から『ロマンシング サガ -ミンストレルソング-』まで、全シリーズ作の楽曲が収録されていて、ファンにはたまらない内容になっていると思います。収録する曲は、どのようなコンセプトで選んだのですか?
伊藤 自分の楽曲については、基本的には『Re:Birth II』シリーズ(『サガ』シリーズのバンドアレンジアルバム)とかぶらないものを、と考えて選びました。もちろん、人気のあるバトル曲などはかぶってしまうのですが。植松さん、笹井さん、浜渦くんの楽曲については、ご本人やスクウェア・エニックスのスタッフに意見を聞きながら選びました。

――オーケストレーションは、山下康介さんが担当されていますね。
伊藤 山下くんとは、PRESS START(2006年に始まり、2015年にフィナーレを迎えたゲーム音楽のコンサート)で知り合って、「いつかいっしょに仕事をしよう」と言っていたんです。ついにこの『サガオケ!』で実現できましたね。
※山下康介氏は、映画やドラマ、アニメなど、さまざまなジャンルで活躍している作曲家・編曲家。2015年11月22日に放送されたテレビ朝日の音楽番組『題名のない音楽会』で、伊藤氏が作曲した「Departure」(『パズル&ドラゴンズ』より)の編曲を担当したこともある。

――今回の収録曲の中で、とくにお気に入りの楽曲はどれですか?
伊藤 それはもう、ハンバーグがいいか、カレーがいいか、みたいな話ですよね(笑)。ひとつ選ぶのは難しいのですが、やっぱり1曲目の「魔界吟遊詩 -サガシリーズメドレー2016」でしょうか。この曲だけでもお腹いっぱいになるくらいの世界観なので。

――「魔界吟遊詩」は、12分にも及ぶ大曲ですよね。
伊藤 この曲を、CDの最初に入れるか、最後に入れるか、悩んだんですよ。決め手は河津さん(河津秋敏氏)のひと言でしたね。「1曲目だよ、これは」って。ちなみに、『サガオケ!』の曲名は、すべて河津さんが考えたものですよ。

――どの曲名も素敵です。
伊藤 さすがですよね。『サガオケ!』には、自分が担当していない作品の曲も入っていますし、僕では曲名を考えるのは難しかったので、河津さんにお願いしてよかったと思います。