INDIE GAME FESTAで見つけたタイトルを紹介

 2016年1月28日~2月2日、台北世貿中心(台北ワールドトレードセンター)にて、台北ゲームショウ2016が開催。開催初日にあたる1月28日は、BtoBエリアのみの展示とあって、会場も比較的おとなしめ。そんな中、熱気を放っていたのはINDIE GAME FESTA。世界的に年々大きな盛り上がりを見せるインディーゲームだが、今年の台北ゲームショウのINDIE GAME FESTAでは、去年の67社に対してほぼ倍増となる132社が出展。会場は来場者で溢れていた。

 地元台湾を筆頭に、中国、韓国、香港、シンガポール、マレーシア、タイといったアジア圏から、イギリス、ドイツ、オランダ、デンマークなど、世界中20ヵ国近くのインディーゲームデベロッパーが参加したINDIE GAME FESTAにあって、記者が注目したのが日本からの参加メーカー(および個人)。海外に出ると日本語が恋しくなるとはよく言いますが、やっぱり同じ日本人として、海外でがんばる日本人を応援したくなるのは人情というもの。ここで会ったのも何かの縁……ということで、INDIE GAME FESTAで出会った気になるタイトルをいくつか紹介していきますね。

日活によるゲームプロジェクト『刺青の国』やVRとボードゲームの融合作など、日本の気になるインディーゲームをピックアップ【台北ゲームショウ2016】_01
日活によるゲームプロジェクト『刺青の国』やVRとボードゲームの融合作など、日本の気になるインディーゲームをピックアップ【台北ゲームショウ2016】_02
▲132社が出展したINDIE GAME FESTA。

VRとボードゲームの融合『アニュビスの仮面』(ギフトテンインダストリ)

日活によるゲームプロジェクト『刺青の国』やVRとボードゲームの融合作など、日本の気になるインディーゲームをピックアップ【台北ゲームショウ2016】_03

 発売元のギフトテンインダストリはもともとボードゲームを制作する会社。その3作目となるのが、VRとボードゲームが融合した『アニュビスの仮面』だ。ゲームは3~4人で行い、ひとりずつ順番にVRゴーグルを装着。制限時間内で、各自がVR空間に見えるものをほかのプレイヤーに伝え、地図を作り上げていくことに。最後に地図の出口から入口まで正確につなげていければゲームクリアーとなる。ちなみに、ダンボール製のVRゴーグルはハコスコ社との共同開発だという。なぜ台北ゲームショウに出展したのか聞いてみたところ、代表取締役 濱田隆史氏の知人の下嶋健司氏がたまたま見つけて「目立つためにやってみよう」と誘ったとのこと下嶋氏自身はギフトテンインダストリとは関係がないらしい。奇妙な関係もなかなかに魅力的で……。『アニュビスの仮面』は3月上旬発売で、価格は3980円[税抜]。

※『アニュビスの仮面』公式サイトはこちら

日活によるゲームプロジェクト『刺青の国』やVRとボードゲームの融合作など、日本の気になるインディーゲームをピックアップ【台北ゲームショウ2016】_07
▲濱田隆史氏(左)と下嶋健司氏(右)。台北ゲームショウへの出展は、下嶋氏のひと言がきっかけ。

パラパラマンガなアドベンチャー『タロティカ・ブードゥー』(TPM.CO SOFT WORKS)

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 『タロティカ・ブードゥー』は、BitSummitなどでおなじみのタイトル。TPM.CO SOFT WORKSの代表、東郷生志氏いわく、「マウスで書いたへろへろなビジュアルが特徴の、パラパラマンガみたいなアドベンチャーゲームです」とのこと。もともとは15~6年前にリリースされたというMSX向け(!)のソフト。技術書つきで1000円で販売しているのだが、見た目が地味なためかなかなか売りづらかったという。ところがBitSummitに出展してみたところ、とくに若い女性に評判がよく、「見た目の問題さえクリアーすれば遊んでもらえるな」と自信を深めたのだとか。いまの若いユーザーはMSXのことを知らない人も多く、「“単なるシンプルなゲーム”に見えるらしいんです」という。「普遍的なゲームを作りたいと思っていたので、いま受け入れてもらえている状況に安心しています」と東郷氏。

 『タロティカ・ブードゥー』は、さらにユーザー層を拡大するために、ただいまSteam Greenlightにエントリー中。「技術書は付けられませんね」と話を振ってみたところ、英訳と、そしてことによると中文版も検討しているというから、まあ大したこだわりぶりだ。気になる方は、ぜひとも支援してあげてくださいまし。

 ちなみに、『タロティカ・ブードゥー』が台北ゲームショウ2016出展に至った経緯は、主催者側のお誘いによるもの。東京ゲームショウに出展していたところ、台湾メディアが取材して記事化してくれたのが決め手になったらしい。「台湾のメディアも興味を持ってくれたのならば、ユーザーの方にも興味を抱いてもらえるのではないか、その反応が知りたくて出展しました」(東郷氏)という。インディーの縁というのも不思議なもので……。

※『タロティカ・ブードゥー』Steamサイトはこちら

日活によるゲームプロジェクト『刺青の国』やVRとボードゲームの融合作など、日本の気になるインディーゲームをピックアップ【台北ゲームショウ2016】_08
日活によるゲームプロジェクト『刺青の国』やVRとボードゲームの融合作など、日本の気になるインディーゲームをピックアップ【台北ゲームショウ2016】_09
▲こちらがMSX版に同梱されている技術書。「あったらおもしろい」というのが作った理由。何ともインディー敵な。
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▲TPM.CO SOFT WORKSの代表、東郷生志氏。

昔のMacのビジュアルでローグライクゲームを! 『Gesuido』(三原亮介氏)

日活によるゲームプロジェクト『刺青の国』やVRとボードゲームの融合作など、日本の気になるインディーゲームをピックアップ【台北ゲームショウ2016】_13

 iOS専用『Gesuido』は、自動生成される東京の地下世界を探索するというローグライクゲーム。ローグライクの元祖とも言える『ローグ』や、『ネットハック』にインスパイアを受けた1作だ。「割りとややこしいローグライクを、スマートフォンで遊びやすくしたいな」と発想したのが始まりだという。さらにこだわりは、昔の白と黒しか表現できなかったMacのグラフィックを再現している点。往年のローグライクX昔のMacと、なかなかに渋い組み合わせだが、「最近、レトロ的なビジュアルにするのは流行りではあるのですが、(『Gesuido』は)そこまでのノスタルジーというよりは、発想としては、白黒のころのMacを再現しようとする人はあまりいないな……というのがあって、隙間をついているつもりもあります。ファミコンのいわゆる8Bitでもなくて、何か違うことがしたいなという」とのこと。BitSummitに出展してみたところ、30代以上の層はもちろんのこと、大学生くらいの若い層にも新鮮に遊んでもらえたとのことだ。

 『Gesuido』のさらにユニークな点に、キャラクターが顔だけという点が挙げられる。これは往年のゲームが、主人は“@”で表記されていたところから、「記号として、顔だけでもいいのでは?」というところから発想したもので、『Gesuido』ならではの独自な世界観を作り上げているようだ。

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▲イベントのためにプレイの前にマップが出現。通常は表示させないとのこと。

 三原氏が台北ゲームショウ2016に参加したのも、主催者側のお誘いがあったから。昨年9月に韓国釜山で開催されたBusan Indie Connectに出展したところ、反響が大きく、フィードバックもたくさんいただいたという。ところが、韓国はAndroidが8~9割の市場で、iOSだときびしいという話をされ、「台湾でも試してみたい」と思い立ったのだとか。本作に関しては海外も視野に入れているようで、「マニアックな作品なので、世界中のユーザーの方に少しずつ支持していただけたらと思っています」(三原氏)とことだ。

 さて、三原氏には本職があるためなかなか開発の時間が取れず、本作は5年以上に渡って作り続けているという。「2016年にはリリースしたいです!」とのことなので、配信を楽しみに待ちたい。

※『Gesuido』公式サイトはこちら

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▲三原亮介氏。

刺青と萌えが出会った『刺青の国』(日活)

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▲厳密に言うとB2B ZONEでの出展なのですが、ご本人たちが“インディー”を謳っていることもあり、本稿で紹介させていただきます。

 最後に、INDIE GAME FESTA ではなくて、B2B ZONEで出展されていたものの、あまりに気になるタイトルだったので思わず紹介。あの日活がゲームレーベル“SUSHI TYPHOON GAMES”を立ち上げるというのも驚きなら、第1弾タイトルも相当ぶっ飛んでいる。その名もずばり『刺青の国』。リリースによると「自分の組織を育て、制圧地域の拡大・統一を目指す抗争シミュレーションゲーム」とあるが、出展されていたデモを見ると、刺青を彫っていくゲームのような……。ある意味なんとも日活らしいモチーフであるが、聞いてみるとこちらは開発元であるWhiskerpadsの持ち込み企画であるとのこと。同社の代表を務める松田知子氏の好きな刺青師が日活に所属していて、「ゲーム化したい!」と思い、日活に企画提案をしたところ、ゲーム事業を立ち上げることになったのだとか。何でも日活の住田陽一氏が大のゲームファンだったことから実現したことらしく、世の中、どう転ぶかわからないものである。

日活によるゲームプロジェクト『刺青の国』やVRとボードゲームの融合作など、日本の気になるインディーゲームをピックアップ【台北ゲームショウ2016】_05

 本作は、台北ゲームショウ2016が初お披露目の場。台北ゲームショウに出展した理由については、2016年から『刺青の国』を展開しようと計画していて、その最初の場が台湾だったからだという。実際のところ、同作を台湾でリリースすることも決まっていない。とはいえ、「台湾は文化的に日本と近いので、ここで反応を見たかった」(松田氏)ということも一面もあったようだ。今回を皮切りに、国内のイベントでも順次出展していくとのことなので、日本のファンは心待ちにされたし。「ゆくゆくはPAXにも出したいですね」住田氏。

 本作はPCを始めとするマルチプラットフォームを予定。現在3分の1程度が完成したくらいで、2016年内にはリリースしたいという。なんか、とても気になるタイトルです!

※『刺青の国』公式サイトはこちら

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▲会場でもつねにひとだかりができておりました。海外受けもよさそう。