ゲームジャンルの掛け合わせ、その相性はいかに……?

 どちらかというと私は、複雑なゲームよりも、単純なゲームが好きです。

 複雑なことをうまく 理解できない、自身のスペックの問題もあるにはあるのですが、「せっかくゲームで遊ぶのなら、現実よりも高い抽象度の世界で戯れたい」と いう願望のほうが、強いです。人生をフルコースの料理とするならば、ゲームはクセになるデザートとして存分に楽しみたいというか……あまり いいたとえじゃないけど、そんな感じです。

 その点、『クリプ ト・オブ・ネクロダンサー』の第一印象は、少し構えてしまうものでした。

 自動生成マップやランダム出現アイテムの偶然性を楽しみながら、マイペースにダンジョンを探索できるローグライクゲームと、譜面に合わせたリアルタイムアク ション操作で優劣が競われるリズムゲーム。「プリンとパフェって、別々に食べたいじゃないですか!!」みたいな、別々でも十分においしくいただけるゲームジャンルの混合ぶりに、私の理解力は さっそく限界寸前でした。

リズミカルなダンジョン探索は、継続することに意義がる

 始めてみると、案の定、わけのわからないうちにダメージを食らい、立て続けにゲームオーバー。プレイヤーが何か行動を起こさない限り消費されないはずの、ローグライクゲームの1ターンが、BGMのビート1拍として容赦なく過ぎ去っていく絶望感たるや、相当のものです。

 再スタートは気軽にできるので、懲りずに続けてみると、「ここに気をつければ多少は死ににくくなるんだな」というセオリーのようなものが見えてきます。移動やアイテム・呪文使用のキー入力タイミングは、そこまで神経質にならなくても、ふつうのゲームで、なんとなくBGMに合わせて操作しちゃってる感覚で十分だとか、ちゃんと敵ごとにアルゴリズムがあって、やたら突っ込み過ぎず、退いたり様子を見たりすることも大事だとか、“ゲームそのもののグルーヴ”が徐々につかめていくのが、楽しいです。

 ゲームオーバーになると身ぐるみはがされて一からスタート……がローグライクゲームの常ですが、本作では、探索中に入手したダイヤだけ、メインメニューを兼ねた“ロビー”で、消費アイテムとして使えます。具体的には、ランダム出現するアイテムの種類を増やしたり、同系統で性能が低い”被りアイテム“を出現デッキから外したりといったことが可能です。ダイヤは一度の探索分しかストックされず、しかも、階層ごとに入手できるダイヤの数が決まっているので、高コストのアイテムをアンロックするには、おのずと限界があります。それでも、可能な範囲でロスの少ない出現デッキを作成し、何度もプレイするうちに、より深く進めるようになっていきます。ほんの少し前まで絶好調だったのに、ちょっとした不注意がアダとなり一瞬でゲームオーバー……というジェットコースター展開をも愛せることが、本作の何よりの攻略法ともいえます。

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『クリプト・オブ・ネクロダンサー』プレイインプレッション――ノリノリになるため何度もダンジョンに潜る_02

ノリノリになるため、私は何度もダンジョンに潜る

 最初の印象のわりにずいぶん楽しんでいるなぁと、我ながら思います。これというのも、本作の“リズム感”に、すっかり魅せられてしまったからです。チップチューンのテイストをふんだんに盛り込んだ、ビートの利いたBGMが好みというのもありますが、ゲームに登場するキャラクターたちが、カラダを揺らしたり、いっしょに歌ったりと、それにノリまくっている姿が、いちいちグッときます。「すごい一体感を感じる」というヤツです。プレイするからには、ローグライクゲームとしてよい結果を出したい気持ちもありますが、それ以上に、「アイツらのいる場所に行くか!」という、クラブにでも通うような気持ちが、あるときからプレイ・モチベーションにすり換わっていたのです。

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 ちなみに、特定のプレイヤーキャラクターでプレイすると、ごくふつうのターン制ローグライクゲームとして遊ぶことも、可能です。アクション要素がない分簡単ですが、やはり物足りなさを感じます。実際、そのキャラクターでゾーンクリアーしても、ゲーム内では参考記録的に扱われることからも、本作の“ノーリズム・ノーライフ”の徹底ぶりが、おわかりいただけるのではないでしょうか。

 本作を販売するスパイク・チュンソフトの作品『ダンガンロンパ』シリーズのファンにとっては、シリーズ作収録の楽曲のリミックスバージョンでプレイできる……という楽しみも用意されています。各楽曲の長さやテンポは、『クリプト・オブ・ネクロダンサー』のオリジナルトラックと同じ条件で調整されているので、ゲームプレイに有利不利が発生することはありません。また、プレイヤーキャラクターのビジュアル(アバター)を、『ダンガンロンパ』、『風来のシレン』、『喧嘩番長』シリーズに登場するキャラクターに切り換えて遊ぶこともできます。いずれもオプション設定ですぐに利用できるので、ぜひ使っていただきたいです。

『クリプト・オブ・ネクロダンサー』プレイインプレッション――ノリノリになるため何度もダンジョンに潜る_01

クリプト・オブ・ネクロダンサー
メーカー スパイク・チュンソフト
対応機種 PSVPlayStation Vita / PS4プレイステーション4
発売日 2016年1月18日発売
価格 1800円[税抜](1944円[税込])
ジャンル RPG
備考 ダウンロード専売、クロスバイ対応、開発:Brace Yourself Games