キミは“弁当の小宇宙(コスモ)”を感じたことがあるか? ラショウ氏&小清水史氏(ピグミースタジオ)インタビュー 『ボコスカウォーズ2』の最新画面写真も公開!

異色の弁当屋経営シミュレーションゲーム『素晴しい弁当をあの2度3度』のiOS版、Android版が、2015年12月24日にリリースされた。それを記念して、開発・販売を手掛けたピグミースタジオの主要スタッフに、インタビューを行った。注目のプレイステーション4用ゲーム『ボコスカウォーズ2』に関する最新情報もあり。

●最新作情報にぐぐっと踏み込んでみた!

 2014年12月リリースの『LA-MULANA EX』が、全世界で50万ダウンロードに迫る勢いでセールスを伸ばしているなど、好調のピグミースタジオ。2015年末から2016年初頭にかけては、『ボコスカウォーズ』の作者である伝説のクリエイター、ラショウ氏が原作・ディレクションを手掛けるタイトルを中心とした、iOS、Android、プレイステーションVitaのマルチプラットフォームリリースを展開している。

 今回は、同作品のディレクションを務めたゲームクリエイター、ラショウ氏と、“工場長”ことピグミースタジオ代表・小清水 史氏に、最新作『素晴しい弁当をあの2度3度(以下、弁当の素晴よ)』についてや、ラショウ氏ならではのシミュレーションゲーム制作作法について伺ってみた。

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▲ラショウ氏(右)と小清水史氏(左)。

■『弁当の素晴しさをあの2度3度』は、女性向けゲームだった?

──『弁当の素晴よ』は、1990年代にイタチョコシステム(※ラショウ氏が個人運営するソフトメーカー)からリリースされた『あの素晴しい弁当を2度3度(以下、オリジナル)』の続編というか、パワーアップ版とのことですが……タイトルの日本語が、崩壊していますね。

小清水 ラショウさんと毎週行っている打ち合わせの時に、どういう流れでそうなったかは覚えていないんですけど、言葉のイントネーションがおもしろくて、勢いで決めたと思います。

ラショウ 無理やり感が、なんかいいなあって。冷静になってみてみると、恥ずかしいですね(笑)。ソフトには、日本語・英語の2か国語用のテキストが収録されていて切り替え表示できるんですけど、英語版も、日本語版のちょっと怪しい言語テイストを再現しています。

小清水 ちなみに、近日リリース予定のプレイステーションVita版は、本体を縦持ちしてプレイします。

──プレイステーション Vitaの縦画面は、なかなかの鬼門だと思いますが。

小清水 たしかに、いろいろと議論はありました。操作はiOS版、Android版同様タッチパネルオンリーで、操作感覚もいまっぽくていいですね。片手操作はさすがに難しいですが、一方の手でしっかり固定して操作すると、案外持ちやすいんです。

ラショウ お弁当箱を大きく見せるには、やっぱり縦画面かなと。

──販売する弁当の中身を、好きな具材で自由にレイアウトできるのが、オリジナルの大きな特徴でしたが、『弁当の素晴よ(スバルよ?)』でも、そこは存分に楽しめると。

ラショウ 具材は初期状態で50種類、ゲーム内ミニゲームで増やすと、100種類に増えます。

──倍増ですね。どのような具材を選べるのでしょうか。

小清水 オリジナルにあるものは、20年前と同じ元画像を使っています。今回追加したものは、ピグミースタジオの隣のビルのお弁当屋で買ったものを取り込んでいます(笑)。

ラショウ 彩り鮮やかな野菜など、女性プレイヤーにも楽しんでいただけるような具材を多く追加しています。また、今回は新たに”デザート編集機能”を追加しています。もしやりたければ、弁当屋ではなく、デザート屋さんとしてもやっていけるんです。女性プレイヤーはどちらかというと、スイーツ作りに夢中になるかもしれませんね。

──随分と、女の子ユーザー受けを意識されているようですが……。

ラショウ それは単に、私がモテたいからかも知れません(笑)。

小清水 実際、いまの女の子から、ラショウさんの絵が「かわいい」という感想を多くもらうんですよ。『野犬のロデム』(PSM版)をリリースした時、そうなんだなって思いました。

▲スマートフォンやタブレット、プレイステーション Vitaというマルチプラットフォームで遊べる『弁当の素晴しさをあの2度3度』。配信開始時から、日本語や英語、中国語などに対応しているとのこと。

■ラショウ氏の考える“シミュレーションゲーム”の真髄とは

──本作の”弁当屋経営シミュレーション”としての側面について、詳しく伺います。目的は”自分の弁当屋を繁盛させること”で、いいんですよね?

ラショウ 初級、中級、上級の難易度で用意されたシナリオごとに、”大口顧客を確保する”とか、”チェーン店から独立して一店支配を崩す“といった大きな目標がありますが、基本的にはそうですね。

小清水 『弁当の素晴よ』は、店の繁盛ぶりをあらわすメーターが最大までたまるとクリアー、というわかり易いシステムを採用しています。このラショウシミュレーションは独特なモノなのですよ。

──「弁当を◎個売ればいい」というのとも、少し違うんですね。

小清水 自分の店で弁当が売れると上がっていくのが基本ですが、他店との売り上げ差とか、いろんな指標に基づいて上下する、不思議な指標です。

──ルールはシンプルだけど、その中身は複雑怪奇だと(笑)。

小清水 僕は“イタゴリズム”って呼んでいるんですけど、すべては、ラショウさんが構築したアルゴリズムによって判定されます。

ラショウ 作った弁当がどういうお客さんに受けるかっていうのは、具材の置き方や合計カロリーによって変わります。あまりお金を持っていない人は安くて高カロリーの弁当がいいとか、女性は色味がきれいな方がいいとか、そのあたりは、ちゃんとしたアルゴリズムですべてシミュレートしています。具材のカロリーは実際の数値に基づいて設定しているので、本物のお弁当作りの際の“カロリー・シミュレーター”としても利用していただけます。

──「経営シミュレーションゲーム内で、オリジナルのお弁当を作れる要素もありますよ」どころの話ではないんですね。

ラショウ そうです。しかも今回は、恋愛シミュレーションとしての要素もありまして。

──なんですと!?

ラショウ ランダムで登場するアルバイト店員は、それぞれスキルを持っているんですけど、その中のひとつの“バイトの恋心”というモードを発動させると、ハートを飛ばした相手を、客としてお店に呼ぶことができるんです。

──それって、恋愛というより、“営業”なのでは?

ラショウ バイトの子も、その相手を好きになるんです。もしそのお客が来なくなると、フラれた悲しみで、お店をやめてしまうんです。

──アルバイト店員の恋愛事情まで……。もはや、経営シミュレーションの枠を超えたシミュレートぶりですね。

ラショウ 私は、世の中のいろんなものをシミュレーションしたいという思いがあるんです。『弁当の素晴よ』では、お弁当に集約された世界というものを作ってみたかったんですね。

──弁当で世界を……“枯山水”のようですね。

ラショウ うーん。それはまさに、私が気づかなかったことを言ってくださったような気がします。弁当の小宇宙……枯山水の、庭石をどう置くかの計算に近いと思います。

──ラショウさんが手掛ける作品のジャンルを“環境シミュレーション”と便宜的に括るとしたら、各作品はどのような関係にあるのでしょうか? それぞれ独立した世界なのか、それとも、根っこが共通しているのか。

ラショウ 根っこは同じじゃないかなと。ある物事が成り立っているものを数字で見て、それがちゃんと計算できるなら、シミュレーションとして成り立つのではないかと思っています。『弁当の素晴よ』にしても、まず、当てずっぽうに計算するんです。このおかずはどういう人からどういう評価を得られるかっていうのは、本当のところはわからないけど、見た目はいくつ、味はいくつ……と、実際の数字で出してみて、それで大ざっぱにお弁当を作ってみます。そして、それぞれ傾向を持たせた街の人に、自由に買わせてみると、ちゃんと、おおよその傾向が出てくるんです。それが現実に近ければ、そのおかずにつけた、とりあえずの点数が合っているということなので、それはシミュレーション内で機能することがわかる。この“わかること”が、作り手としては非常におもしろいわけなんです。この作品の“お弁当”と、『ボコスカウォーズ』の“戦い”も、一見、共通点がなさそうですが、どこかそういうつながりが、数字に変換した時に浮かび上がる法則というものは、あるかもしれませんね。私はそれをずっと探っているんじゃないかなって思います。

小清水 ラショウさんの作るシミュレーションの特徴は、“虚構”を作らないことなんです。作り手が意図するところにお客さんを導く、サービスの一環でもある仕掛けを作ることを、ラショウさんは嫌うんです。

ラショウ このゲームに当てはめるならば、意味もなくお客が弁当を買いにくる救済措置コマンドや、儲かり過ぎたら急に売れない弁当が出てくるバランス調整になると思いますが、それがあったら“シミュレーション”ではなくなってしまいます。いい弁当を作ったら、ひたすら売れるべきだし、悪いことも、その理由を改善しない限り起こり続ける……というようにしておかないと、その世界の仕組みがわからないと思うんですよね。私は、ゲームとしての楽しみを提供したいというよりは、世界の仕組みをわかってほしいというほうが強いのかもしれません。それを“売れるゲーム”として見せていくためには、演出をしてはいくんですけど、その演出の中にも嘘はない感じにしたいと思っています。

小清水 そのあたり、ラショウさんは、脳汁……アドレナリンが出る仕掛けというか、展開の起伏を感覚的に心得て作られているんだと思います。

ラショウ 脳汁が出るタイミングって、たとえば『ボコスカウォーズ』だと、「あー、敵に当たっちゃった!」っていうのと、「でも戦闘に勝った!」っていう勝敗判定の、ふたつの快感をセットにしているところがありますね。

■『ボコスカウォーズ2』最新情報&スクリーンショットを公開!

──『ボコスカウォーズ』の話題が出たので、現在開発中のプレイステーション4用ソフト『ボコスカウォーズ2』についても伺います。当初は2015年内リリース、とのアナウンスでしたが。

小清水 年内で仕上げようと思ったらできたんですけど、東京ゲームショウ2015での出展バージョンの反響が良かったというのもあって、もっと作り込んで、入れたいものは全部入れて、2016年3月にリリースしようと思っています。

──おっ、ついに具体的な時期が出ましたね!

小清水 期日を言っておかないと、ズルズル延びちゃうので。開発的には、いまが佳境ですね。

ラショウ クリスマスもお正月もないかなぁという感じで進めております。

▲独占入手した『ボコスカウォーズ2』の最新スクリーンショット。全体的な構成は、イベント出展バージョンと大きく変わってはいないが、騎兵らしきユニットなど、これまでには登場していないキャラクターが、数多く登場している。これらが、製品版でどのように活躍するか、いまから楽しみだ。

──それはそれは……。となると、今年の各種イベントでプレイできたバージョンは、全体の何パーセントくらいの完成度だったのでしょうか。

ラショウ 東京ゲームショウやBitSummitで出展したのは、前作『ボコスカウォーズ』を思い出していただくというのを主な目的で作った、特別限定版のようなものです。ゲーム内容でいうと、あれから大きく変更がかかります。

──たしかに、第一報の際に発表された諸システムが入っていなかったので、「実装、やめちゃったのかな?」と思っていました。ということは、あの出展バージョンと同じものはもう遊べない?

ラショウ ゲーム開始してから最初の200メートルくらいまではだいたい同じです。それ以降は、プレイヤーの選択で、展開が変わってきます。前作のテイストも含めながら、「なぜ『2』になったのか?」ということが、皆さんにわかっていただけると思います。

小清水 現在発表している新要素は、マップの自動生成と、中立的な立場の第三国の存在です。自動生成マップの遊び心地としては、何度でも遊べる自由度はありますが、しっかりとポイントになる山があって、最後にピークが訪れるという流れが、ちゃんとできているんです。

ラショウ そういう、段階を踏む感じもあるんですが、前作のテイスト……ちょっと間違うとすぐ死んでしまうシビアさは、また感じていただけます。スレン王が最初にぶつかった敵にやられてしまう場合もあることから、当時は”運ゲー”や”クソゲー”とよく言われたものですけど、その要素はそのままに残しております。サドンデスな感じはありますが、何度もプレイもしていただければ、「戦いとはこういうものじゃないだろうか」と、統計的にわかってもらえると思います。ですから、たくさん死んでいただきたいといいますか、死んだ回数を自慢してください。どこまで進んだかなど、自分の勝率も記録されるようになっているので。

──第三国の存在が、ゲームにどう絡んでくるかについても教えてください。

ラショウ (倒すべき敵国)バザム帝国とは別のふたつの国と、いかに同盟を結ぶかによって、バザム帝国までの道のりが変わってきます。「こうすれば必ずこうなる」とは限らないし、プレイヤー自身のその日の気分によっても、まったく違う展開になったりするので、システムは一見簡単に感じられるかもしれませんけど、ひとつで何度もおいしいゲームとして楽しめると思います。

──何となくわかるような、わからないような……とにかく楽しみです。ちなみに、出展バージョンで楽しめた、ふたり協力プレイは、製品版にも残っているのでしょうか?

ラショウ はい。1プレイヤーと2プレイヤーの環境が対等ではない、2プレイヤー側はあくまでも、ゲームプレイを横から見て「ここはこうすればいいんじゃないの?」という立場でちょっとだけお手伝いできる感じの協力プレイを楽しめます。

小清水 本来のゲームコミュニケーションの再提示ですよ!

ラショウ 『ボコスカウォーズ』は親子2世代にわたるタイトルなので、子どもがやっている時に、お父さんが横からちょっと助けてあげる、なんていうことができるんです。

──ただ、歴史があるだけのゲームではなかなかできないアプローチですね。素晴らしい!

小清水 『ボコスカウォーズ2』は、親子のコミュニケーションをバックアップするゲームであります。