シリーズ20周年記念作として制作中の『METAL SLUG ATTACK』

 既報の通り、SNKプレイモアがパチスロ事業からの撤退を発表。今後は、ゲーム開発体制を強化していくことを明らかにした。ゲーム事業は、SNKプレイモアが保有する人気IP(知的財産)の活用を中心としつつ、家庭用ゲーム機からPC、スマートフォン向けまで、幅広いプラットフォームをフォローするものとなる。中でも、SNKプレイモアが2016年の最重点タイトルとして期待しているのが、プレイステーション4用ソフト『THE KING OF FIGHTERS XIV(ザ・キング・オブ・ファイターズ XIV)』と、スマートフォン用アプリ『METAL SLUG ATTACK(メタルスラッグ アタック)』(⇒関連記事はこちら)。

 『THE KING OF FIGHTERS XIV』の詳細については、ファミ通.comに掲載したインタビュー記事をご確認いただくとして、ここでは『METAL SLUG ATTACK』の概要を紹介しよう。

 最初におさらいをしておくと、『METAL SLUG ATTACK』は、2014年5月に配信されるや全世界で2700万ダウンロードを記録しているタワーディフェンスゲーム『METAL SLUG DEFENSE(メタルスラッグ ディフェンス)』の続編。ご存じの通り『メタルスラッグ』は、1996年にアーケード版が展開されるや、世界的に高い人気を博した2D横スクロールアクションシューティングゲーム。スマートフォン向けゲームとして開発された『METAL SLUG ATTACK』は、そのシリーズ最新作にあたる。今回は、同作を立ち上げたプロデューサーの山本圭氏にそのへんの経緯からお話をうかがってみた。

『METAL SLUG ATTACK(メタルスラッグ アタック)』 のプロデューサーに聞く 全世界2700万DLを記録したモンスターソフトの続編はここまで進化する_03

山本 圭氏

SNKプレイモア
ゲーム事業本部 第二企画部
シニアマネージャー

『メタルスラッグ』というIPはスマートフォンに適していた

――『METAL SLUG ATTACK』のことをうかがうにあたり、まずは『METAL SLUG DEFENSE』のお話から聞かせてください。『METAL SLUG DEFENSE』は全世界で2700万ダウンロードを達成していますが、ヒットの要因はどのへんにあったと分析していますか?
山本 ちょっとお恥ずかしい話なのですが、『METAL SLUG DEFENSE』のサービスを開始したときは、ここまで行くとは思っていなかったんです。大々的にプロモーションをしたわけでもなく、いままで通りにふつうに配信したところ、初日からものすごい数の人が入ってきてくれまして。1日で当初目標としていた月間ダウンロード数を突破してしまって、「これは数え間違いではないのか?」と何度も確認し直したくらいです(笑)。そういう意味では、ユーザーさんが広げてくださったおかげだと思います。

――そもそもなぜ、『メタルスラッグ』をスマートフォン向けに配信しようと思ったのですか?
山本 それまで私は『THE KING OF FIGHTERS XIII』などを手掛けていて、スマートフォン向けゲームは『METAL SLUG DEFENSE』が初めてだったんです。そこで、「当社のIPでスマートフォン向けゲームにいちばん向いているのは何だろう?」と考えたときに、まっさきに思い浮かんだのが『メタルスラッグ』でした。アクションも簡単操作なので、スマートフォンでちゃんと再現できるし、武器などのカスタマイズ要素も適している。企画書もとても書きやすくて、「これならいける!」という自信はありましたね。

――先ほど“ユーザーさんが広げてくれた”とおっしゃっていましたが、元がよくないとお話にならないわけで、そういう意味では『メタルスラッグ』というIPがスマートフォンに適していたんですね。
山本 とはいえ、家庭用ゲーム機向けのアクションゲームを単純にスマートフォン向けに移植するだけというのは以前から行なっていて、それだけだとさすがに操作性に難がある。そこでアクションゲームとしての『メタルスラッグ』というゲームの本質を見極めたうえで、「これであれば、『メタルスラッグ』としての遊びが再現できる」と判断できて、ようやくプロジェクトにゴーサインを出したんです。結果として高評価で受け入れていただけましたね。

――もともと『メタルスラッグ』という強力なIPがあって、それをスマートフォン向けの操作に最適化したことで、世界中のファンに受け入れられたということですね?
山本 そうですね。昔から『メタルスラッグ』というIPだけは知っているけど、ゲームは遊んだことがなかったという方が、気軽に楽しめる機会をご提供できたというのはあるかもしれません。

『METAL SLUG ATTACK』はコミュニケーション要素とオンラインでゲーム性がさらに広がる

――では、続編にあたる『METAL SLUG ATTACK』は、どのような経緯で開発がスタートしたのですか?

『METAL SLUG ATTACK(メタルスラッグ アタック)』 のプロデューサーに聞く 全世界2700万DLを記録したモンスターソフトの続編はここまで進化する_02

山本 来年(2016年)『メタルスラッグ』シリーズが20周年にあたるので、「20周年で何かできないか?」というのが発想としてありました。それで、「『METAL SLUG DEFENSE』の続編を……」という話になったんです。実際のところ、『METAL SLUG DEFENSE』の人気は衰え知らずで、いまだに1日に数万ダウンロードはあったりするので、このタイミングで続編もどうかなと迷ったのですが。

――そんなにダウンロード数が?
山本 そうなんです。そういう意味では、このタイミングで続編をリリースするのはあまり前例がないかもしれませんね(笑)。つい先日始まった『METAL SLUG DEFENSE』のイベントも、たいへん好評をいただいておりまして……。そういう意味では『METAL SLUG DEFENSE』から『METAL SLUG ATTACK』に移行するというよりは、並行して楽しんでいただけるのかなと……と。両作はある程度すみ分けがなされていくのかなと想定しています。

――そんな『METAL SLUG ATTACK』ですが、どのような内容に?
山本 『METAL SLUG DEFENSE』がこれだけユーザーの皆さんに楽しんでいただいているので、これをベースにゲーム性を広げていくという形でも十分だったかもしれないのですが、「さらに新しい遊びをお届けしたい!」って思ったんです。とくにネックになったのが、『METAL SLUG DEFENSE』がサーバーに対応していないという点です。そうするとオンラインプレイやソーシャル性という面で、どうしても限られてしまう。ギルドを作ったり、レイドボス戦に対応したりしようとすると、どうしてもサーバーに対応した形で配信するしかなかった。そのために、“続編”という発想になったという一面はあります。

――その点は、ユーザーからの要望もあったのですか?
山本 そうですね。参加する人が多くなると、それだけ「いっしょに遊びたい」という気持ちも出てくるようで……。「もっとコミュニケーションを取りたい!」というご意見も多かったですね。

――コミュニケーション要素が、『METAL SLUG ATTACK』で力を入れたポイントなのですね?
山本 もうひとつの大きなポイントは、成長要素ですね。ゲームを進めてアイテムを集めてキャラクターを強化していく。ほかのゲームでは当たり前にあることなのですが、『METAL SLUG DEFENSE』にはそんな要素が少なかったんですね。そのために、なかなかモチベーションを持続させづらかった。ユーザーさんは毎日小さな目的を積み重ねてどんどん強くなっていく。『METAL SLUG ATTACK』では、“収集”や“成長”といった要素にも重きを置いています。

――なるほど。『METAL SLUG ATTACK』では、コミュニケーション要素と成長要素を加味することで、ゲームに幅と深みを持たせているのですね?
山本 そうですね。そういう要素を追加するにあたっては、ゲームのボリュームをアップしないといけないので、『METAL SLUG ATTACK』ではゲームモードも相当増やしています。

――どれくらいです?
山本 ゲームモードの数だけでも、最低でも3倍以上にはなっていますね。

 というわけで、山本氏が教えてくれた『METAL SLUG ATTACK』のゲームモードを簡単にご説明する。

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【『METAL SLUG ATTACK』に収録されるゲームモード】

ATTACK!:モーデン軍に占領された拠点を開放していくモード。
COMBAT SCHOOL:教官からの試練を行うモード、毎日異なる試練がある。
P.O.W. RESCUE:時間制限内に捕虜を救出するミッション。
TREASURE HUNT:海底を探索してお宝を手に入れるミッション。
BATTLE:他ユーザーとの非同期対戦(1on1対戦モード)。
TEAM BATTLE:デッキを複数使用して他のユーザーとの非同期対戦(3on3対戦モード)。
BUILD UP:“進化”や“スキル獲得”などでユニットをカスタマイズ。
SHOP:便利アイテムや一部の装備アイテムを販売。
GUILD:ユーザーどうしでギルドを結成。情報共有やギルド専用SHOPなどがある。
ONLINE:リアルタイムで他のユーザーと通信対戦。(1on1、2on2対戦モードあり)
RANKING:ギルドのランキング、個人のランキングを表示。
SPECIAL OPS:ギルドメンバーと協力して行うミッション。
MYSTERY CRANK:ユニットやアイテムを課金アイテム使って入手(ガチャ)。

 最初に解放されているのが、“ATTACK!”で、ゲームを進めていくことでモードが解放されていく。

 コミュニケーション要素の目玉となるギルドイベントの“SPECIAL OPS”では、3人以上の参加が必要で、自分がどれかひとつにトライして成功したとしても、残りはギルドメンバーに依頼して勝利してもらわないとクリアできないという。また1on1や2on2のリアルタイムバトルや、1on1や3on3の非同期バトルなどのユーザーとの対戦モードも充実している。

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▲ATTACK!
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▲SPECIAL OPS
▲TEAM BATTLE
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▲ギルドや成長要素など、やり込み要素も充実している。

――お話を伺っていると、スマートフォンアプリを詳しく研究されて、魅力的な要素を全部盛り込んだみたいな印象がありますね。

『METAL SLUG ATTACK(メタルスラッグ アタック)』 のプロデューサーに聞く 全世界2700万DLを記録したモンスターソフトの続編はここまで進化する_01

山本 自分はコンシューマーからこの業界に入ったので、“ゲームを遊びつくす”という観点から考えた設計とは言えるかもしれませんね。とはいえ、実際のところ『METAL SLUG ATTACK』の開発をスタートするにあたっては、ひとつの判断材料として、いま海外ユーザーがどんな遊びを求めているか、いろいろな国で調査をしたんです。それによると、いまは細かい要素のあるゲームを長時間遊ぶ……というところが主流になってきているんですね。日本のように暇な時間に少しずつ……というよりは、PCのオンラインゲームに近い。“長時間遊ばせてくれるものがゲーム”という認識があるみたいなので、今回はそこに着目しました。とにかく少しの時間では遊び尽くせないボリュームを用意する。じつは、そこが今後のソーシャルゲームのキモなんじゃないかなと、自分は思っています。ゲームとしてユーザーの方にとにかく楽しんでいただけるようなゲーム設計をおこなっています。

――いずれにせよ『METAL SLUG ATTACK』は、『メタルスラッグ』20周年を記念する作品になりそうですね。
山本 今後も皆さんが遊んで楽しいと思えるコンテンツをどんどん提供していきたいと思っています。今後のSNKプレイモアの方針として、“当社IPの有効活用”があるのですが、なかでも『メタルスラッグ』は屈指のIPです。必ずや皆さんに楽しんでいただけると思いますので、『METAL SLUG DEFENSE』、『METAL SLUG ATTACK』ともどもよろしくお願いします!