監視カメラ越しに囚われた女性の脱出を手助けする間接ステルスゲーム

 カモフラージュの『Republique(リパブリック)』は、思想統制が行われている近未来全体主義国家を舞台にしたステルスアドベンチャーゲーム。「囚われた女性“ホープ”を脱出させるべく、プレイヤーがハッキングした監視カメラから間接的に手助けする」というスマートフォン/タブレットでも操作可能な間接的ステルスを実現し、海外ではiOS/Android/PC/Macで配信されてきた(日本からも購入自体は可能)。

※『Republique(リパブリック)』の最初のeはアキュートアクセントつき。

▲メインキャラクターのホープ(右)の脱出を手助けするのが目的。全5章で描かれる。

 そして先日、ガンホー・オンライン・エンターテイメントから2016年にPS4版が発売されることが発表。待望の日本語化が行われるほか、現在開発中のエピソード4、5も収録する完全版となる予定で、いよいよ日本上陸といったところ。
 今回サンフランシスコで行われたPlayStation Experienceに合わせて、カモフラージュを率いるライアン・ペイトン氏にPS4日本語版のデモを見せてもらいつつ、話を聞いてきたので、その模様をお届けしよう。

PS4版ではコントロールなども一新

 まずデモを見て最初に気付いたのが、「監視カメラをハッキングして切り替えながら、戦闘能力を持たないホープの脱出を手助けする」という部分こそ変わらないものの、プレイヤーが左スティックでホープを直接操作可能になっていること。
 エピソード1が海外で配信された際に執筆したレビューでも紹介したように、本作のスマートフォン版でのキャラクター操作は、ホープに行ってもらいたい場所をタッチして、移動はオートで行われるという設計だった。これはタッチパネルでの操作に最適化したステルスゲームを作るための方法だったのだが、コントローラーが使える今回はそれに合った方法で作り直したわけだ。

▲PS4版では左スティックでホープの直接操作が可能に。

 そして本作の間接的ステルスのもうひとつの特徴である、監視カメラからゲームを一時停止させてハッキング可能なものを選ぶ“OMNIビュー”の設計も変更に。こちらは選択可能なものにコントローラーの各ボタンが割り振られ、対応するボタンを押すと選択されるという形になっている。

▲ゲームの進行を一時停止し、監視カメラ経由でハッキングする“OMNIビュー”も、コントローラー操作を前提にした設計に変更。画面内の干渉可能なオブジェクトが各ボタンに自動的に割り当てられる形になる。ちなみに種別によってある程度割り当てられるボタンが決まっているという親切設計。

 このふたつの設計変更により、ゲームの体感速度が上昇。直接操作の導入によってオート操作ではチャレンジしようと思わなかった大胆なアプローチも可能になっていて、ゲームの緊張感が上がったと思う。
 一方、監視カメラを切り替えながら手助けするという核の部分は変わっていないので、「ホープをカメラ越しに見守る」という本作の独特の雰囲気の部分は維持。ジョージ・オーウェルの小説「1984年」などを思わせるダークなディストピア世界にマッチした絶妙な距離感を、ちゃんとPS4版でも味わうことができる。

▲体制側の道具である監視カメラを反逆のために逆利用することや、物語が起こっている場所を間接的に覗きこむといったひねりに注目。ストーリーに独特な雰囲気をもたらしている。

 なお、ローカライズはインターフェースや字幕の日本語テキスト化という形。これは海外でのフランス語版やドイツ語版などと同様で、実は英語ベースの中に突然フランス語のセリフが入ってきたりするので、ややこしくなりそうなボイスローカライズよりはこの方が合っているのだと思う。
 ちなみに収集要素として出てくるゲームのカートリッジ(さまざまなインディーゲームが登場。スマートフォン版では購入ページへの直接リンクなどもあった)についても、PS4版では独自の試みを検討しているそうなのでお楽しみに。

▲細かいインターフェースなども日本語化。

悲願の日本語化がついに実現。「PS1の頃のテイストの濃いゲームを届けたい」

 それでは後半部ではライアン・ペイトン氏へのインタビュー本編をお届けする。ちなみに日本での在住経験があり、KONAMIの旧小島プロダクションでの勤務経験などもある(おまけにファミ通Xboxへの寄稿経験まである)同氏なので、インタビューはすべて日本語で行われた。


――今回PS4版でようやく『Republique』が日本上陸するわけですが、どういった経緯で決まったんですか?
ライアン・ペイトン(以下、ライアン) PC版の開発が終わった頃に、チームに内緒でブラジルのプログラマーを雇用し、コンソール版のプロトタイプを作ってもらったんだ。「こういう風にコントローラーで操作できたら面白いんじゃない?」って思って。

――それは大胆な(笑)。スタジオのトップじゃないと出来ないですね。
ライアン スマートフォン版などでは彼女(ホープ)はAIで動いていたから、プレイヤーが自分で操作できるようにして、これまでの操作系のプログラムコードから作り直してもらった。一ヶ月ぐらいかかったかな。

――そうそう、(オリジナル版では)ホープが見つかりそうになると、死角になる位置までちょっとだけ勝手に動いて調整したりするんですよね。
ライアン そう。でもコントローラーの場合は、プレイヤーが操作してないのに勝手に動いたら困惑すると思ったんだよ。だからそれはやめようと思って、PS1やセガサターンの頃のゲームみたいな、『バイオハザード』や『パラサイト・イヴ2』みたいな操作にしてくれってお願いしたんだよね。
 それで「どうして今それをやるの?」って聞かれたんだけど、『Republique』はもともとその頃の日本のゲームの影響を受けたゲームだから、ある意味元に戻ってきた感じなんだ。スマートフォン版ではワンタッチでなんでもできるようにして、PC版ではもうちょっと操作ができるようになって、それで原点に帰ってきた。「PS1のゲームみたいな操作にできたらいいな」って思ったんだ。

▲オリジナルの設計では行き先をタップすると自動的にホープがそこまで歩いて行くという形だったのだが、直接操作になったのでこれぐらいの通路はサクサク進められる。監視のすり抜けなども大胆に操作可能になったので、やり込みも変わってくるかも。

――そこからどうやってガンホーと契約することに?
ライアン その頃にガンホーさんのスタッフを紹介してもらって、最初はPS4版とかそういう話じゃなかったんだけど、森下サン(ガンホー・オンライン・エンターテイメント代表取締役社長CEOの森下 一喜氏)にプロトタイプを持って行ったんだよね。それで遊んでもらったら「これはPS4で行けるんじゃない?」って言ってもらって、スタートすることになったんだ。

――間接的ステルスというコンセプトの軸のひとつを変えるのは結構大変なことだと思うんですけど、そこはどう都合をつけたんですか? それでもやりたかったとか?
ライアン どうしてもやりたかったというのが大きいね(笑)。でもあまり詳しく話すとネタバレになっちゃうけど、この形でもテーマはちゃんと残っていると信じてる。スマートフォン版から操作が変わったPC版でもまだ「プレイヤーが彼女をリードする」という雰囲気は残っているし、そもそも彼女は(ビデオゲームでの典型的な)主人公じゃないと思うから。プレイヤーが中心で彼女はパートナーという関係なんだよね。その辺の“コントロール”とか“支配”といったテーマはゲームがもうちょっと進むと出てくるよ。

▲体制側に囚われ、尋問されるホープ。“希望”の名で呼ばれる彼女に秘められた真実とは?

――まぁ確かに、直接操作は可能になったけど、カメラを切り替えたりしていると間接的な距離感はちゃんと維持されてますね。
ライアン そう、そこは残したかった部分。メタルギアの開発に関わった時もHaloの開発に関わった時もこう思っていたんだけど、みんなプレイヤーとキャラクターを一緒にしようとするでしょ? でもボクはもっと純粋に、プレイヤーはあくまでプレイヤーの視点に、キャラクターはキャラクターで別に扱ってみたかったんだ。だから実際にゲームでもホープがプレイヤーに向かって「このドアを開けて」って語りかけてくるよね。プレイヤーが男なのか女なのかもはっきりさせていないし、こういったゲームはなかなかないと思う。

――本作ではもうひとつ、スマートフォン版はエピソード配信の構成になっていて、エピソード1だけなら安く始められるようになっていて、始めやすいのもチャレンジした部分ですよね(PC版は一括購入のみ)。PS4版ではなにかそういう、エピソード1だけ安く試せるとか、体験版が出るといったことはないんですか?
ライアン そこは基本的にはPC版と同じで、エピソード5まで入ったオールインワンのパッケージになってる。だから物語を最初から最後まで遊べる。エピソードが配信されるのを待たなくてもいいっていうのも今までの『Republique』とはちょっと違う部分。
 最近、PS4をスタジオから持って帰って、自分の家でチェックしているんだけど、通しでやってみるとエピソードで分割されているというより、「ああこれでひとつの物語なんだな」って自分でも感じるよ。60ドルのゲーム(いわゆるフルプライスのゲーム)みたいにちゃんと長いしね。

▲PS4版はエピソード5までの全部入り。ちなみにこの画像はエピソード4。

――PS4日本版もダウンロード版なら3000円(税抜き)だからお買い得だぞ、と。ところでさっきもちょっと聞きましたけど、コントローラー操作に変えたらいろんな設計を変えなきゃいけなかったのでは?
ライアン そう! すごい大変でした。ほとんどのゲームデザイン要素をコントローラーを前提にしたものに変えなきゃいけなかった。ユーザーインターフェースとかもすごい変わっているよ。でもいま開発チームがみんなボクみたいに情熱を持って細かいところまで追求するようになってて、「もうこれでいいんじゃない?」って言っても「いやもっとやれる!」って言われちゃうんだよね。いい影響なのか、よくないのかはわからない(笑)。

――このゲームにとって、テーマ的に言語とか言葉ってすごい大事じゃないですか。いきなりフランス語が出てきたり、禁書とされているものがあったり。そういった中で、ついに第二の母国語みたいな日本語に訳されるのはどうですか?
ライアン 正直、英語の次に一番気にかけているバージョンですよ。オリジナルの英語では、言葉にすごく深い意味が入っている。ボクがこれまでに学んだ名文とか単語とか、影響を受けた本からの引用とか、エドワード・スノーデンの事件にまつわる言葉とかね。だから翻訳者にそこをわかってもらって、ちゃんとそういった意味のある文章にしてもらうのはすごい大変。だから8-4(翻訳会社のハチノヨン)に翻訳を頼んで、さらに自分でも、カモフラージュの日本語できるスタッフも、ガンホーのみなさんでもチェックしてる。
 というのも、時間がかかったけど、このゲームの開発当初から「このゲームがどうやって日本で発売されるか?」っていうのを気にしてきたからなんだよね。だからガンホーさんと出会って、単にダウンロード配信するだけじゃなくて、ちゃんとパッケージ版があるような、マーケティングやプロモーションもちゃんとあるような形で展開できるのは、本当に夢のような感じだよ。だから発売日には絶対に日本に行ってレジで誰かが買いに来るのを待ちますよ。

▲レジにやってくるあなたをライアンが待ち構えている……かもしれない。

――収集要素としていろんな実在のゲームや本が出てくるじゃないですか。それはPS4日本版ではどうなるんですか?
ライアン それが全部日本の本やゲームになるということはなくて、本なんかはそのままだと思う。ゲームについてはいまちょっとSCE(ソニー・コンピュータエンタテインメント)と話していて、PSのゲームを出せるんじゃないかと考えているよ。拾った時にクーパー(プレイヤーとホープを助ける謎の人物)が解説してくれるんだけど、それも楽しみだね。その他に、収集要素ではないけどホープの追加コスチュームもPS4版では入る予定だから、期待していて欲しいね。

――操作性なんかもいろいろ変わって、それでも『Republique』であるコアの部分、一番楽しんで欲しいところはどこでしょう?
ライアン こういう、パズルとかストーリーの要素がゲームプレイの形と融合されているゲームは最近あまりないと思うから、そこを楽しんで欲しいと思う。あっちいったりこっちいったりしている内に、違ったプレイ要素がちょくちょく出てくるとかね。そういう、ちょっと前のゲームのいい部分。
 最近の大作だと、開発の効率性が大事だから、基本の繰り返しで大きくしていくのが多いじゃないですか。そうしなきゃいけないのはボクもわかる。でも自分で遊ぶ時は飽きちゃうんだよね。毎回違うパズル、違うゲームプレイが入ってくるようなのが好き。だから『Republique』はエピソードによってパズルも、色使いも、音楽も、敵も、ゲームプレイや目的も違う。それは大変だし、効率的ではないけど、そういう手作り感のある濃いゲームをやりたいんだ。

▲ワンオフのギミックやエピソードごとの配色の違いなども注目。

――普通はプロデューサーに怒られる奴ですよね。
ライアン そう。だけどコレはボクがメインプロデューサーのゲームだから(笑)。だから4年かかったのかもしれないけどね(笑)。さっきもちょっと言ったけど、自分で遊んでいると、PS1とかセガサターンの頃の日本のゲームの細かい部分を本当によく実現できたなと思う。とくにエピソード3以降は、日本のゲームからの恩恵を受けているところがすごい増えていくよ。日本人から見るとどう思うのかが楽しみ。ウチのスタッフは日本のゲームが好きな人ばっかりだから、愛が入っているのが通じるといいな。

――ちょいちょい、90年代の日本のゲームへのオマージュを捧げたネタが入ってたりするんですよね。たまに直接言われてもこっちが元ネタを知らないぐらい。
ライアン そう。具体的なシーンやレベル(面)の設計以外でも遺伝子レベルで入っているから、「懐かしさを感じてくれるんじゃないかな?」って思ってる。

――だけど一方では非戦闘系のゲームってのが面白いですよね。
ライアン そういうバトル系のゲームはいっぱいあるからいいんじゃないかなって。『Republique』でやりたかったのは、人を殺さずに緊張感のあるゲームプレイが実現できるかどうか。メジャーなゲームのプロデューサーをやっている人にも結構遊んでもらったんだけど、「確かに人を殺さなくても緊張感があるね」って言ってもらえて、それはすごい嬉しかった。

――できることと言ったらスプレーで一時的に撃退するぐらいで、それをしくじって捕まっても、牢屋に連れていかれるだけなんですよね。「ショボーン」って連れてかれる、ちょっとあのコミカルな感じも好きで。
ライアン そこでゲームオーバーにしないようにしてある。でもその雰囲気はエピソード4では変わるよ! まだそこまでしか言えないけど。

▲たとえば警備兵に捕まっても、エリアごとの檻に連れてかれてリスタートになるだけ。

――そういえば、日本からこのゲームにKickstarterのクラウドファンディングで支援した人も多いと思うんですけど、その人達はPS4版でもクレジットや警備兵として入っているんですか?
ライアン それは絶対入れます。ローマ字だったのをカタカナにするといった感じですね。

――では最後に日本のゲーマーにあらためてアピールを。エピソード4、5を待ってる人も多いと思いますしね。
ライアン 今回出る『Republique』はPS4のゲームだけど、PS1の頃のゲームのテイストが入ったゲームにすることができました。日本のみなさんの目から見るとどう映るのかすごい気になっています。日本のゲームがどれだけ僕ら(海外のゲーマー・開発者)に影響を与えたか、みんな知らないと思うし。そこからいい意味での懐かしさを感じてくれたり、手作り感があるゲームが出たなって思ってくれたら、それだけで満足です。発売日まで毎日楽しみにして、毎日長時間働いています。シアトルでは日付変わるまで日本スタイルで働いているスタジオはあんまりないけど、それだけいいゲームを出すために愛をこめてファイトするのはいいことだと思うんだよね。みんなで頑張ってます。暖かくなった頃には出したいですね。

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