プレイヤーに没入感を抱いてもらうために注力した
2Kから2016年2月5日に発売予定のPC用ゲーム『XCOM 2』。ここでは、韓国・ソウルで行われたプレスツアーから、開発元であるFiraxis Games(フラクシス・ゲームズ)のアート・ディレクター、グレッグ・フォートッシュ氏へのインタビューの模様をお届けしよう。
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――世界中で評価の高かった『XCOM: Enemy Unknown』ですが、その続編制作にあたり、前作を踏襲したところと、大きく挑戦した点を教えてください。
グレッグ 『XCOM: Enemy Unknown』は非常によくできた内容だったと自負していますが、続編を制作するうえで、もっと素晴らしい、深く掘り下げたゲーム体験をみなさんにお届けすることは私たちの命題です。シリーズ作品として踏襲した点としては、戦力強化や装備を開発する“ストラテジー”部分と実際の戦場マップでくり広げられる“戦略”の部分、これらがゲームの軸となることは今作でも同じです。ただ、それら個々は大幅に進化しており、とくにこのシリーズを通して非常に重要となる自動生成(プロシージャル)をつぎのレベルに持っていくことは、私たちにとって大きな挑戦でした。
――“自動生成”にしっかり対応したAIを……ということで、アルゴリズムを構築するのもたいへんだったのですね?
グレッグ そのとおりです。すべての要素が“自動生成”とからみ合っていて、その点はたいへんでした。“自動生成”とひと言で言っても、エイリアンや人間側のアビリティ、武器の性能など、バランス調整がものすごく難しい。その調整は、難易度が高くて、とてもタフな作業でした。
――エイリアンも種族によって取る行動が違いますしね。
グレッグ はい。すべての種族で違いますね。さらに言えば、けっこう違いを強調していたりします。たとえば、敵となるアドヴェント側の兵士であるスタンランサーは電気を帯びた刃を用い、特殊攻撃により相手兵を行動不能にする強敵です。このようにすべての敵に特徴があり、攻撃の性質が大きく異なるんですよ。
――臆病な種族は逃げたり、勇敢な種族は猪突猛進したり?
グレッグ そうですね。エイリアンの種族によってアグレッシブだったり、比較的そうでなかったりといったタイプがありますよ。
――本作のシナリオは、“エイリアンの支配下に置かれた人類を救うべく、レジスタンスとして再結成されたXCOMが反撃に出る“ということで、従来の人類=防衛側、エイリアン=侵略側というスタンスと逆転していますが、逆転の構造にした理由を教えてください。
グレッグ まずは続編としてユニークなアプローチをしたかったというのがあります。そんななかで、これまでプレイしてくれた人の共通の体験として、“負ける”、“失う”という要素があることに気づいたんです。みんな同じ体験をしていて、それを共通した体験として共有して、そこから物語を始めるのが斬新なのでは……と思ったんですね。それがユニークで新しいチャレンジであるということをスタジオのみんなで話し合って決めました。ということは、XCOM側がゲリラ戦を強いられるということですよね。その戦いかたも『XCOM』のテーマに合っているということで、シリーズの方向性ともしっかり合致しましたね。それを加味したうえで、“挑戦”として、人類が敗北するというバックストーリーになっています。
――“潜伏”や“監視”といった新要素は、そういうストーリーの必然性から生まれたものですか?
グレッグ ゲームデザインのメカニックに影響している部分ですね。“監視”システムに関してはちょっと違いますね。『XCOM 2』を作るにあたっては、まず「こういったコンセプトで作る」といった形で、社内でビデオを制作したのですが、そのときにたまたま“監視”の要素が入っていたんですね。前作ですでに“監視”の機能はあったのですが、このビデオ内で描かれたもののコンセプトが非常によかったんです。そこからこれを実現し、ゲームに盛り込んでより強力な機能にしました。
――カスタマイズした武器持った兵士が倒された場合は、回収しないと2度と使えないというシステムが印象的ですが、そうした理由は?
グレッグ プレイヤーの皆さんに、新たな選択の幅を広げたかったんです。実際のところ、兵士の亡骸を持ち帰っても持ち帰らなくてもいいのですが、動機付けを与えたかったんです。ある人はそのキャラに愛着があってするかもしれないし、武器がもったいないからするかもしれない。まあ、兵士の亡骸を持ち帰っても、生き返ることはないわけですが……。
――プレゼンで説明されていた“インテル”に関してもう少し詳しく教えてください。
グレッグ “インテル”は、“ゲリラオペレーションミッション”をこなすことで入手できる新しいリソースのひとつです。インテルを得るためにバラエティー溢れる新ミッションも追加されています。使いかたはさまざまなのですが、ひとつの使いかたとしては、“ダークイベント”があります。たとえば、エイリアンが“ダークイベント”でいろいろと画策していているんですね。“インテル”のポイントが溜まっていれば、その“ダークイベント”をのぞき見して、その内容を確認できるんです。引いてはそれが後々のプレイヤーの行動にも影響を及ぼすわけです。
――アート・ディレクターとして、本作に注力しているポイントは?
グレッグ そうですねえ……。ひとつがカメラの動きやアニメーション(動き)ですね。『XCOM 2』においてより大事なことは、没頭してゲームにプレイしてもらうことです。“没頭”をいうことを前提にした、カメラの動きやアニメには気を配っています。今回このプロジェクトでハッピーだった点は、“自動生成”の環境なども含めて、しっかりと細やかに表現できたところです。より没入感が促されるのではないでしょうか。カメラワークやアニメーションにとどまらず、表現全体で没入感は最注力ポイントと言えるでしょうね。
――ちなみに本作の開発期間はどれくらいなのですか?
グレッグ 明確に何年間というのは言いづらいですね。企画としては前から動いていましたし、ほかにも順次新作などを手掛けたりしているので……。まあ、あえて言えば、『XCOM: Enemy Unknown』(2012年)の直後からからですかね。
――最後に、本作を楽しみにしている日本のゲームファンに向けてのメッセージをお願いします。
グレッグ 『XCOM: Enemy Unknown』からのファンの方も、本作から初められる方でも、タクティカルゲーム、ストラテジーゲームがお好きな方ならば、絶対に楽しめる作品であると確信しています。前作と比較してもユニークな内容になっていますので、楽しみにしていてください。