いま、アメリカ市場においてゲーム生放送の分野で圧倒的なシェアを誇るのがTwitch。その日本市場でのビジネスを取りまとめるディレクターのビクター・デンチャートファーン氏と、日本人スタッフの3名、中村鮎葉氏、晃太郎 エリック氏、北垣文江氏への直撃インタビューをお届けする。

●世界屈指のゲーム生放送サイトTwitchが満を持して日本に来る!

 世界中で絶大な人気を誇るライブストリーミング配信。いま、アメリカ市場においてゲーム生放送の分野で圧倒的なシェアを誇るのがTwitchだ。今年、そのTwitchが満を持して日本市場に本格進出を果たした。9月に行われた東京ゲームショウ2015で、親会社であるAmazonと共同でブースを出展したのは記憶に新しいところだ。“ゲーム生放送の巨人”とも言うべきTwitchが日本オフィスを設立する理由とはいったい? ここでは、日本市場でのビジネスを取りまとめるディレクターのビクター・デンチャートファーン氏と、日本人スタッフの3名、中村鮎葉氏、晃太郎 エリック氏、北垣文江氏への直撃インタビューを掲載。日本市場進出の意図や今後の戦略などを聞いた。

北垣文江氏(文中は北垣)
リレーションズマネージャー

中村鮎葉氏(文中は中村)
アカウントマネージャー
Twitter:@ayuha167

ビクター・デンチャートファーン氏(文中はビクター)
ディレクター
Twitter:@Victheslik

晃太郎 エリック氏(文中はエリック)
マーケティングマネージャー

▲現在、Twitch日本のスタッフは4名。日本でのビジネスを統括するビクターさんは日本とアメリカを往復する日々。日本オフィスは来年設立予定。皆さん若々しいパワーに満ち溢れておりました!

■好きなゲームで生きていける“場”を提供したい

――まずは、皆さんが考えるTwitchの魅力を教えてください。

ビクター Twitchの特徴をひと言で要約すれば、“世界最大のゲーム生放送プラットフォーム”です。Twitchは、もともとはライブ動画配信サイトJustin.tvのサービスの一部だったのですが、ゲーム配信事業が好評だったところから、2011年に独立していまにいたっています。方針は、ゲーマー第一主義であるということ。ゲーマーの皆さんが情熱を込めている大好きなゲームで生きていけるような“場”を提供することが重要だと考えています。

――いまゲーム配信サイトは数多くありますが、Twitchならではのポイントは?

ビクター まずは、フルHDの画質を誇っており、いちばん滑らかで高画質な放送技術を持ったプラットフォームだということです。視聴者が世界規模というのも、Twitchの誇るべきところです。各国向けにゲーム配信をしているのにも関わらず、いろいろな国の方々が視聴していることも多いんです。

北垣 100万人が同時視聴しても落ちない強固なシステムも特筆すべき点と言えます。

ビクター もうひとつのポイントが収益の部分です。広告収入のほかに、“サブスクライブボタン”(スポンサー登録)が用意されていることがTwitchの特徴です。これは、視聴者が放送者を課金という形で支援できるシステムです。これにより、ゲーマーが生放送での収益を上げやすくなるんですね。

北垣 実際のところ、Twitchの生放送の収益だけで生活している方もたくさんいらっしゃいますからね。

ビクター さらに言えば、Twitchはチャットの機能なども搭載しており、ゲーマー向けのSNS的な場にもなっています。

――Twitchがユーザーどうしの“交流の場”としても機能しているということですね?

ビクター はい。Twitchを作ったときは、チャットをしたければ外部の掲示板を使うであろうと想定していたのですが、いつのまにかTwitch内で済ませるようになりました。チャット機能に代表されるように、ユーザーさんの要望により、Twitchの機能が洗練されていったという一面はあります。

中村 さらにいえば、ゲーム開発者と仲がいいので、彼らに協力してもらうことで、実況中にゲーム内アイテムが得られるといったキャンペーンを打つことができます。ゲームメーカーと積極的にコラボしているところも、Twitchの特徴と言えるでしょうね。

ビクター そしてもうひとつがマトリクス、つまり統計解析の部分です。Twitchでは、視聴者のアクセスデータを詳細に解析しているんですね。データを適宜放送者にフィードバックすることで、より効果的な放送ができるようになるわけです。
 ちなみに、いまTwitchでいちばん重視しているのが同時視聴者数です。「いま何人見ているのか……」という、瞬間的な注目度が大事だと考えています。この考えかたをエンゲージメントという言葉を使って表現しています。同じくらい重視しているのが、何分視聴されたかです。個々のユーザーの視聴時間を全部足して、「この放送は合計でこれだけ見られました」という数字を出せるわけです。もうひとつがジオタギング。どこから視聴されたかという地理識別データの機能ですね。これら3つのデータを合わせると、どういう人たちがどこから、何時くらいに放送を見ているかがわかる。それで、放送者も放送内容を判断できるようになるんです。

エリック Twitchは、いろいろな指標をより透明感のある形で提供することで、自分のパフォーマンスだけではなくて、ビューワーの特徴などを検出できます。それによって、いままで見えていなかったニーズも把握できる。とてもわかりやすいシステムを構築しています。

――よりきめ細かいサービスが提供できると?

ビクター サービスを提供できるための技術を持っているということが大切なのだと思います。

――2015年より日本市場に本格参入されたわけですが、その理由をお教えください。

ビクター いまTwitchは世界的に拡大していて、視聴者が増えている国がたくさんある状態です。そのうちのひとつが日本です。日本の需要が上がっていたので、日本人の視聴者にベストなサービスを提供しようということで、日本進出を決定しました。いまTwitchの日本語対応が進められていますが、Twitchにとっては初のローカライズとなります。

エリック 一方で、日本のコンテンツに興味を持たれている海外の視聴者の方も多いんですね。ですので、日本の実況市場を活性化することによって、海外からの視聴者が増えることも期待できます。グローバルの視野に立っても、日本市場の開拓は有効なわけです。

――では、日本でTwitchユーザーを増やすために、どのような施策を考えていますか?

ビクター ユーザーの方が望んでいるものを理解して、それをご提供すること。これに尽きます。Twitchというのは、ゲーマーによるゲーマーのための場所なので、日本のゲーマーが何を望んでいるかを感じて、そのニーズに応えたいです。たとえば、日本人に人気のあるゲーム会社さんと連携して、ゲームイベントを開催するといったことを考えています。

エリック イベントに限らず、今後は日本の市場に合わせた施策やマーケティングを積極的に行っていくつもりです。具体的なお話はできないのですが、楽しみにお待ちください。

――2014年にはAmazon傘下に入りましたが、そのことがもたらす効果は?

ビクター とても親和性が高いと思っています。なぜならば、いまやゲームユーザーがゲームを購入するスタイルが変わってきているからです。以前は、ゲームを買うのであれば、プロモーションビデオや掲示板を見たりして参考にしていたのですが、いまユーザーがゲームを購入しようと思ったら、まずはTwitchに来て、おもしろそうなゲームをチェックするわけです。そこからAmazonでの購入につながっていくんですね。

――ああ、新しい購入サイクルの提案ができるということですね?

エリック あと、Amazonという会社は日本での知名度が抜群に高いので、日本でTwitchというブランドを広めようと思ったら、その知名度の高さは大きな武器になります。その第一歩を踏み出したのが、先日行われた東京ゲームショウ2015で、ブランドの認知力を向上させるためにも、Amazon+Twitchという形で出展したわけです。これはAmazonにとっても、これまでの“ショッピングサイト”というイメージに留まらない、“新しいことに取り組む”というアピールにもなりました。今後Amazonとはいろいろな形で連携を図っていくことになると思います。

――ところで、Twitchはプレイステーション4やXbox Oneなどでも提供されていますが、状況はいかがですか?

ビクター 好評です。コンシューマーゲーム機での放送がTwitchの敷居を下げたことは間違いないです。必ずしも全員が機械に詳しいわけではないので、ボタンを押すことで放送ができるコンシューマーゲーム機での配信は、Twitchの敷居を大いに下げてくれました。

――視聴者も増えたのですか?

ビクター はい。相乗効果によって視聴者はかなり増えています。

■日本でのeスポーツ普及に大きな役割を果たす

――海外のTwitchでは、eスポーツの配信が人気ですが、日本でもeスポーツへの取り組みは積極的に行う感じですか?

エリック 海外だと最近はeスポーツが非常に流行っているのですが、これから日本でも人気が出ていくであろうと思っています。Twitchでは、eスポーツのコンテンツがもっとも見られる傾向にありますので、そこは私たちの強みを活かして、日本でも積極的に展開していきたいです。

ビクター Twitchのスタッフには、eスポーツのプレイヤー出身者がけっこう多くて、eスポーツに対するノウハウが豊富なんですね。いざゲームメーカーさんがeスポーツの大会を実施したいとなっても、いちから立ち上げるとなると、かなり敷居が高いです。それが私たちならば、eスポーツの大会に対する経験が豊富ですので、サポートができるわけです。

エリック 要は、海外で蓄積したノウハウを日本市場にうまく合わせて展開するという、コンサルティングサービスのようなものを提供できるということですね。

――日本では、eスポーツはまだまだこれからですが、日本でeスポーツを発展させるうえで、Twitchが果たす役割は大きくなると?

ビクター そうですね。ただ誤解しないでいただきたいのは、Twitchという会社はゲームが大事なのであって、eスポーツはあくまでもそのゲームの中のいちジャンルであるということです。もちろん、いまeスポーツはもっとも人気のあるコンテンツなので、Twitchとしても注力していますが、“ゲーマー第一”というスタンスは揺るがないです。

――ところで、海外で爆発的な人気を誇る『League of Legends』の日本語版のサービス開始が来年に予定されているようですが、同作とは積極的に連携していくのですか?

エリック Twitchは、『League of Legends』の発売元であるライアットゲームズさんとは海外では密な関係を築いていますので、同じように日本でも連携していきたいですね。

――ちなみに、Twitchには、eスポーツのプレイヤーが多いとのことでしたが、先日台湾のプロゲーマーGamerbeeさんがTwitchに入社されて話題になりましたね。やはり、eスポーツプレイヤーの人材採用は積極的に?

ビクター そうですね。いちばん大事な理由は、プレイヤーはプレイヤーとつながっているからです。強いプレイヤーはそのゲームのコミュニティーと密接な関係にあるので、コミュニティーメンバーの好みを知り尽くしているんです。これからゲームを発展させていくにあたっての“大事なもの”を把握できる。それが重要だと考えています。じつは、これはTwitchの戦略と深く関わってきています。Twitchにとっては、見ている人や放送している人が幸せだったら、それがいちばんなのですが、では、見ている人やプレイしている人がどうすればうれしいのか……というのをいちばんよく理解しているのがプレイヤーというわけです。それで、eスポーツのプレイヤーを積極的に採用しているんです。

――最後に、日本市場におけるTwitchの今後の目標を教えてください。

ビクター 今後の目標は、Twitchの原点に集約されていると思います。“ゲームをすることで生きていける”です。それはゲームがうまくプレイできるのでもいいですし、おもしろい実況を提供できるのでも構いません。さまざまなゲームの魅力があって、好きなゲームへの情熱で生きていく。それを可能にするのがTwitchです。日本のゲームユーザーの皆さんがTwitchを理解してくださって、「これいいじゃん!」と興味を持っていただけることで、コミュニティーが発展していくことが何よりの目標です。


【Twitch――高画質でプレイステーション4やXbox Oneに対応】

 ゲームの実況プレイやeスポーツ大会など、ゲーム関連のコンテンツの配信に対応する、ライブストリーミング配信サイト。1080pによるフルHDの高解像度の配信を可能にするなど、高い技術力を誇る。広告収入に加えて、ユーザー個人からの課金で収入を得られる。近年は、プレイステーション4やXbox Oneなどの家庭用ゲーム機からの映像配信にも対応しており、利用者を増やしている。
Twitter:@TwitchJP

☆Twitchのおもな特徴☆
▼画質は1080pのフルHD
▼配信料は無料
▼アーカイブは7日間で誰でも見放題
▼広告とサブスクライブボタンによる収益
▼100万人が同時接続しても落ちない
▼過去動画をYouTubeにアップロードできる
▼多機能なチャットシステムを実装