1979年のテレビ放送放送開始から36年、初の公式ファンクラブが始動!
1979年に放送が開始されるや一大ブームを巻き起こした、日本ロボットアニメの金字塔『機動戦士ガンダム』。放送開始から36年を経て、ついに公式ファンクラブ“ガンダムファンクラブ(GUNDAM FAN CLUB)”が始動。10月1日より、アプリがApp StoreとGoogle Playにて配信開始された。
まさに、満を持してのスタートとなるこの公式ファンクラブでは、歴代シリーズの映像が見られるほか、盛りだくさんの特典が用意されている。ここでは、ファンクラブを運営するバンダイナムコ ライツマーケティングの三原一晃氏と服部龍彦氏、『機動戦士ガンダム』の制作を手掛けるサンライズ 大野勇氏に、ファンクラブ設立の経緯や今後の展望などを聞いた。
バンダイナムコ ライツマーケティング
第1事業部 マネージャー
三原一晃氏(中央)
バンダイナムコ ライツマーケティング
第1事業部 エキスパート
服部龍彦氏(左)
サンライズ
ハイエンドワークス事業部
ガンダム課 ネットメディアチーム リーダー
大野 勇氏(右)
スマホの普及が後押しした、初の公式ファンクラブ
――1作目の『機動戦士ガンダム』の放送が開始されてから36年目となりますが、なぜこのタイミングでファンクラブのサービスを開始することになったのですか?
ハイエンドワークス事業部
ガンダム課 ネットメディアチーム リーダー
大野 勇氏
大野 いままで公式ファンクラブがなかったことを、よく不思議がられます(笑)。じつはファンクラブ自体は、ずっと検討していました。ただ、なかなかまとまらなかったんです。ご存じの通り『ガンダム』はシリーズ作も多く、さらにはフォローしている領域も多岐にわたります。アニメそのものが好きな方もいれば、ガンプラのファンもいるし、ゲームから入っている方もいます。どこまでカバーすべきか、なかなか判断がつかなかったんですね。さらには、どのような形態にするのかも悩みの種でした。いわゆる会報として月に1回出すべきか、それともデジタルがいいのか……。つまり、検討すべきことが多くて、なかなか前に進めなかったんですね。
――では、どのような転機があって状況が動き出したのですか?
大野 スマートフォンの存在が大きかったですね。ここまで普及しているし、気軽に使える。これだったらいけそうだ……ということで、実現に向けて進むことになったんです。そこからはけっこうなスピード感で進んでいきましたね。
――ファンクラブを作るにあたっての方針を教えてください。
服部 やはり『ガンダム』に関するすべてを網羅したいというのは基本方針としてありました。ただ、先ほどもお話ししたとおり、いろいろな作品と商品が混在しているので、ファンの方にとっては、同じ『ガンダム』でも、ときに興味のない対象になってしまう可能性もある。私たちとしては、興味のあるコンテンツを入口にして、そこからほかの作品も好きになってもらいたいという願いがありましたので、いかにユーザーの皆さんにストレスを与えずに、サービスを使っていただくか……という点をけっこう検討しましたね。
三原 間口を広くしつつ、幅広いコンテンツに興味を持ってもらうということですね。それは、“ガンダムファンクラブ”での大きな注力ポイントになってくるかと思うのですが、現時点で取り組んでいるのは、ファンの皆さんによる交流です。たとえば、“ガンダムファンクラブ”では、アニメ本編を見たあとに、「あのシーンがよかった」、「あのキャラがカッコイイ」といった感想を自由に書き込めるようになっているんです。
服部 これはほかにはない機能だと思うのですが、今回“シーンを投稿する”という機能を入れていまして、選択したシーンの前後15秒ずつ合計30秒を切り取って、コメント付きで投稿できるようにしているんですね。特定のシーンに興味を持ってもらって、そこから作品そのものまで見てもらうという導線を作っているんです。
三原 さらに、“ガンダムファンクラブ”には投稿などへのタグ付け機能があります。自分が興味のある単語を拾っていただいて、好きな『ガンダム』に関連する投稿だけを閲覧することが可能なんです。それにより、たとえばガンプラ(モビルスーツ)のタグを閲覧していて、いままであまり興味のなかったアニメシリーズのガンプラに興味を持ってもらい、引いてはそのアニメシリーズを見る……といった感じで広がりを持たせられればと思っています。
――ちなみに、やっぱり同じ『ガンダム』作品でも、それぞれシリーズごとに個別にファンがいてあまり交わらなかったりする感じですか?
大野 宇宙世紀ものが好きな方は、それ以外のものは好まなかったり……というのはありますね。あとは、『機動戦士ガンダムSEED』や『機動戦士ガンダムOO』には女性ファンが多かったりとか。
――ある意味で、好みの違うユーザーどうしを結びつけるのも、ファンクラブの大きな使命になるわけですね?
第1事業部 マネージャー
三原一晃氏
三原 そうですね。ただ、『ガンダム』もシリーズごとにファン層が分かれているのですが、ひとつだけ共通点があるんですよ。それは皆さん「新しい『ガンダム』を見たい」ということです。新しい『ガンダム』に関しては、誰もが興味をお持ちなんです。そこにひとつのゴールがある。新しい『ガンダム』を入り口にして、歴代『ガンダム』といかに結びつけていくのか、そこが重要なのだと思います。皆さん、「友だちに勧められて見たらおもしろかった」ということが、『ガンダム』を好きになるきっかけになる方も多いようなので、そういった場をご提供できたらいいなと。
――『ガンダム』コンテンツ相互で広がりが生まれるということですね?
三原 さらに言えば、“ガンダムファンクラブ”設立にあたっては、歌手のファンクラブなどもけっこう参考にしています。ファンの方が歌手のファンクラブに入る大きな目的として、ライブのチケットが先行で買えることが挙げられるかと思うので、『ガンダム』でも同等のことを実施したいと考えました。ですが、なかなか思い浮かばない。というのも、先ほどもお話にあったように、『ガンダム』の場合はファン層が多岐にわたっているので、目的が共通ではないんですね。私たちで、ファンの方たちが喜ぶような特典を何か作らなければいけないと思ったんです。
――アニメのファンとガンプラのファンでは、おのずと求めるものが違ってきますからね。
三原 それは何か? ということを考えたときに、やはり歌手のファンクラブの特典を再度参考にして、“早く提供する”ということは、プライスレスで価値のあることだと気づいたんです。そこで、“ガンダムファンクラブ”のスタートに際しては、最新作『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』をどこよりも早く提供したのですが、おかげさまで大好評でした。そういう“共通の目的”を、ひとつずつ見つけていきたいです。
――では、ファンクラブ運営にあたっての注力ポイントみたいなものはありますか?
三原 ファンクラブの最低限の機能として、『ガンダム』の最新情報をいち早くお届けしたいというのはあります。とはいえ、情報だけに限るとサンライズさんが運営しているGUNDAM.INFOがいちばん早いんですね。このサイトに『ガンダム』の情報がすべて集約されている。現状その体制が整っている上で、「では、ファンの方がさらに楽しめる場にするにはどうすればいいのか?」というところにフォーカスしたいというのが、方針としてあります。
――情報にさらに価値を付けるということですね?
三原 そうですね。一例を挙げると、先日ガンダムフロント東京の特設巨大ドームのDOME-Gで新しい映像を上映したんですよ。実際のところ、ファンクラブの方でしたら、たぶん何も言わなくても情報をキャッチして足を運んでいただけるんです。では、そこにファンクラブならではの価値を付けるためにはどうずればいいのか……ということで考慮して、ファンクラブに入会するともらえるデジタル会員証を当日提示すると、500円で入場できるようにしたんです。そうした具体的なアクションを起こして、ファンの皆さんと楽しむ場を作っていくことが大事かなと。
――ファンの方との“コミュニケーション”という点でいうと、そのほかにはどんな取り組みを?
三原 これは、権利元のサンライズさんがとても寛容で、私たちの考えを理解してくださったことで実現できたものなのですが、“ガンダムファンクラブ”では、ユーザーさんによる『ガンダム』関連の画像の投稿を許可しているんですね。
――2次利用的な扱いを許可したということですか? それは一歩踏み込みましたね!
三原 いままで公式としては、そういった行為は許容してきていませんでしたからね。今回は、有料サービスということもあり、コアな『ガンダム』ファンが集まってくださるということで、『ガンダム』体験を共有できる場を提供したいとの思いから、判断しました。
――ちなみに、サービス開始後、ファンはどんな画像をアップしているのですか?
三原 ガンプラの写真とか、ガンダムカフェを工事しているところを写した写真とか……。地方にいらっしゃる方はガンダムカフェを見る機会がなかなかないので、喜んでくださっているみたいですね。
服部 あとは、アニメのワンシーンをガンプラで再現して投稿する方もいらっしゃいますね。後は、『ガンダム』のお宝系の商品の画像とかも人気がありますね。「冷凍保存していた30年前のアイスを見つけたので、画像をアップします」とか(笑)。
三原 ちなみに、投稿画像および動画に関しては、公序良俗に反するものをチェックするために24時間365日の監視体制にしているのですが、現状、削除対象になるものはほとんどありません。
――ああ、それだけ良質なコミュニティーができあがっているということですね。
三原 そう思います。
『ガンダム』コンテンツを集約する場にしたい
――テレビシリーズ19作品が見放題というのも、ファンにはうれしいサービスですね。
三原 映像は、あくまでファンクラブの特典のひとつで、トータルでのサービスをご提供しているということを理解していただきたけるとうれしいです。
服部 ファンクラブの差別化としては、今回最新作を除く全部の作品に字幕がついています。最新作も追って追加となります。
――なるほど。スマホを対象にしたサービスだからですね。移動中に音無しでも視聴できるようにと?
服部 はい。対応しているのは、全テレビシリーズにOVAも入れると、50作品を超えます。
――とんでもない手間ですね。
第1事業部 エキスパート
服部龍彦氏
服部 そうなんです。ただ、これは今後の話になるかと思うのですが、海外で展開するとなったときに、すごく活きてくる投資ではあるんです。一度システムとして構築してしまえば、言語変更にも容易に対応できるので。それで、今回がんばって作ってしまおうと思ったんですね。
――ということは、ゆくゆくは海外展開も視野に入れている?
服部 まずはアジア展開を早々に進めたいです。ゲーム事業が今年からアジア展開を始めていることもありますし。『ガンダム』はとくにアジアの方のファンが多いので。
三原 “ガンダムファンクラブ”を使っていただくとおわかりいただけるかと思うのですが、このアプリはイベントと密接にリンクしてこそ楽しいんですね。「この『ガンダム』を見てきました」、「ここでキャンペーンをやっています」というやり取りがあってこそ盛り上がれる。そういうコミュニケーションが構築しやすい地域を優先して展開することになると思っています。
――では、今後はどのような会員向け特典を予定していますか?
三原 これはあくまで個人的な“願望”になってしまうのですが、コミックや書籍を“ガンダムファンクラブ”で読めるようにしたいです。あとは、音楽。『ガンダム』の音楽ってステキなものが多いので、ファンクラブの中で聴けるようにしていきたい。権利関係の調整も必要ですので、なかなか一筋縄ではいかないかとは思いますが。
――『ガンダム』関連のコンテンツも多岐にわたりますからねえ。
服部 いずれにせよ、「月額600円はお得だな」と思っていただけるところまではもっていきたいです。入った方が満足していただけるようなサービスを目指しています。『ガンダム』という巨大なコンテンツの名に恥じないように、長期的な視野に立ってファンの方と向き合ってサービスを拡充していきたいと思っていますので、今後の展開にご期待ください。
――ちなみに、少し余談になってしまいますが、せっかくの機会なので、お好きな『ガンダム』作品などをお教えください。立場的なものもあるかとは思いますが、ここはいちファンの視点として……。
服部 作品としては『新機動戦記ガンダムW』が好きですね。僕は単純な人間なので、主人公の思いがダイレクトに伝わってくるのが響きました。とにかく応援したくなってしまう。
三原 難しいですね。僕は“宇宙世紀”をずっと観てきたので、今ある『ガンダム』作品の中からですと、『機動戦士ガンダムUC』がひとつの集大成かなと。クオリティーの高さが圧巻です。このあいだ若いスタッフに「『ユニコーン』ってどこがおもしろい?」って聞いたら、「カッコいいオヤジが出てくるところです」という返事だったんですね。「ああ、そういう見かたもあるんだ」という、いろいろな人に多様なガンダムの新しい見えかたを与えるのが『ユニコーン』なのだと改めて思います。
あと、個人的に好きなのは『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』ですね。ストーリーが主人公の子供の視点で展開され、日常が戦争に巻き込まれていくというリアルさが堪らない作品です。
大野 僕は、ここ8~9年GUNDAM.INFOを運営しているのですが、日々『ガンダム』に接していると、好きとか嫌いという感覚ではなくなっていくかもしれません。
――長年連れ添った奥さんみたいな?
大野 いやあ(笑)。好き嫌いとかでは言えないので、“原点”という括りであえて言うなら『機動戦士ガンダムZZ』なんですよ。なぜかというと、僕が初めて観たのが『機動戦士ガンダムZZ』で。しかも本放送ではなくて、浪人中に夜中にぼーっとしていたら、『機動戦士ガンダムZZ』が放送されていたという。
服部 ダメじゃないですか!(笑)
大野 「なに、このアニメ!?」ということで衝撃を受けましたね。それで何となく観るようになりました。それまでアニメを観る習慣はことさらなかったんですよね。子どものころから、「ロボットと言えば、『ガンダム』」という認識はあったんですけどね。
服部 子どものころだと『ガンダム』はロボットアニメという認識なんですけど、大人になって観るとむしろロボットアニメという括りじゃないことに気付かされるんですよね。ここに気づくと、たぶん『ガンダム』にハマるんです。
三原 冒頭でもお話しましたが、『ガンダム』には多様な魅力があります。入りかたも人それぞれ違いますし、楽しみかたもそれぞれです。かくいう僕自身『ガンダム』には小説から入った人なんです。尽きない深みを持つのが『ガンダム』力です。“ガンダムファンクラブ”では、そんな『ガンダム』の魅力をしっかりと伝えていければ……と思っています。
“ガンダムファンクラブ”とは?
バンダイナムコライツマーケティングが運営する『機動戦士ガンダム』シリーズ初のファンクラブ“ガンダムファンクラブ(GUNDAM FAN CLUB)”。スマートフォン専用となる同サービスの目玉となるのは映像配信。歴代『ガンダム』のテレビシリーズ19作品はいつでも見放題で、さらに、劇場版・OVA35作品についても期間限定で見放題となっている。10月からスタートした最新作『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』も、第1話から最新話まで見られるほか、12月11日からは累計140万部を誇る大ヒットコミックスをアニメ化した『機動戦士ガンダム サンダーボルト』の第1話最速先行配信がスタートする。さらに、ファンクラブ限定の映像特典やライブ配信などのお宝映像も随時追加予定だ。
また“ピクチャーコレクション”として、発売から35年分の歴代ガンプラ写真やイベント写真を定期的に配信。配信された写真はアプリ内にダウンロードすることが可能なので、いつでもどこでもコレクションした写真を楽しめる。
さらに、会員向けのイベント優待やチケット先行販売、会員限定プレゼントなどの特典を多数用意しているのも、ファンにとってはうれしいところだ。
“ガンダムファンクラブ”は月額600円[税込]で、初回7日間は無料で利用可能となっている。